ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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六章

奴隷 2

 今の時期、夜は気温も0度を切るだろうに。
 よく生きてるものだ。
 鉄のケージ。
 しかも、それを地面に直置きである。
 冷たいを通り越してもはや痛い。
 初め刑務所と勘違いしたが、それどころか野晒し以下の環境。

 ……あぁ、なるほど。

 ぼさぼさの髪に隠れて見えづらかったが、頭の上に耳が付いている。
 獣人か。
 これ、ケモ耳ってやつだろ?
 だから生きていられたのだろう。
 彼らは人間より頑丈なのだ。
 それでも、この環境で快適って事はないだろうが。

 耳の形は猫っぽいな。
 黒猫。
 そうじゃなくても、猫科系統の獣人ではあるはず。

 保護動物とか、それに近いだろうか。
 助けられた直後。
 毛のボサボサ具合や、瞳。
 その他色々含めて。
 まぁ、現状売りに出されてる訳で。
 状況としては真逆。
 ほぼほぼペットショップなんだけど。

 俺のことは見えてるはずだが。
 反応がない。
 目に光がないとでも言えばいいのか。
 この世に希望がないのだろう。
 死人の目だ。

 奴隷なんて大体はそんなものである。
 その経緯にかかわらず。
 世界に絶望している。
 むしろ、希望に満ち溢れた奴隷なんてものがいるなら教えて欲しい。
 会って話を聞いてみたい。
 そんなの悟りでも開いてないとありえないだろうから。

 いくら路地裏とはいえ、こう堂々とやってるところを見るに正規店なのか。
 看板まで出してるし。
 国がどこまで真面目に管理してるのかは良く知らないが。
 盗賊への対応を見るに、非正規店でも案外堂々とやれる可能性もある。
 どちらにしても、奴隷自体は別に違法ではないのだ。
 許可さえあれば合法的に取引を行える。
 まぁ、そう言いつつも違法取引が横行してるのが実態ではあるんだけど。

 正規店とはいえ、仕入れには後ろ暗い所がある店も多いだろうし。
 盗賊が仕事として成り立っちゃってる世界だからね。
 人攫いなんかも多い。
 街の間での人の移動も少ないのだ。
 別の街に連れて行かれてしまえばゲームオーバー。
 探し出すのは困難。
 たかが庶民1人探すために、街を越えての捜索とか衛兵はしてくれないだろうしな。

 ここ、いわゆる観光街だからね。
 どんな人間が出入りしていても違和感を持たれにくい場所ではある。
 他の街じゃそうもいかない。
 商人でもない、街の住人でもない。
 そんな人間が頻繁に出入りしていたら門番の目に付くし。
 人攫いとなるとただでさえ荷物も多いのだ。
 別に即逮捕とはならないが。
 軽い積荷の検査ぐらいはされるはず。
 本格的にじゃない。
 とはいえ、奴隷なんてどんなにコンパクトにした所でまんま人間サイズな訳で。
 それを見逃すほど大雑把でもない。

 正規店にしろ、非正規店にしろ。
 人攫いから買う場合。
 どちらにしたってここは越えたい壁ではある。
 商人に偽装すれば違和感なく持ち込めそうなものだが。
 その場合関税があるからね。
 街に入る金だ。
 適当な役人もある程度は真面目に仕事をする。
 つまり、そういう余計なことをしたとて。
 より荷物を調べられる可能性が上がるだけって事だ。

 この街の環境。
 攫ってきた人間を売るには好都合って感じか。
 しかも、これから冬だしな。
 雪が積もる。
 今も多少積もってはいるが。
 より深く。
 そうなれば街の間の行き来は実質不可能。
 行動が制限され、陸の孤島と化す。
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