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続 6章 災禍の中の希望
16-27. 今度こそ、ブロキオンに向けて出発
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翌朝は、話し声で目が覚めた。隣を見ると、アルがいない。ブランに状況を尋ねていると、テント内にアルが入ってきた。
「ユウ、おはよう。リネが戻ってきた」
「え? もう?」
外から聞こえているのは、どんふうにモンスターを倒したかを説明しているリネと、相づちを打つ獣道の会話らしい。
この短時間でダンジョンのモンスターを掃討したのだとすれば、ダンジョンの現状が気になる。階層が全部なくなって、大穴になっていないといいけど。
リネが帰ってきたということは、ブロキオンに出発だ。行きたくないけど、ここまできたら逃げられない。しぶしぶ起き上がる僕を見て、アルが笑っている。
「ブラン、ブロキオンだよ」
『やっとか』
「楽しむといいよ」
行きたくないと、ぐだぐだ言っているものの、ブランに楽しんでほしいという気持ちは嘘じゃない。この街を守ってくれたブランへのお礼でもある。ただ、首なし騎士に会いたくないだけだ。
『最下層では、ティグリスに抱きついて目を閉じていろ。側には近寄らせない』
「ごめんね」
『フン』
ブランの首元に抱きつくと、ため息をつきながらも、尻尾が優しく背中をなでてくれる。こうやってブランが僕を甘やかしてくれるから、行きたくないと子どものように駄々をこねてしまうのだ。ブランは本当に僕に甘い。
身支度をしてテントを出ると、ティグ君の背中の上で、翼を広げてご機嫌で話しているリネが目に入る。
「全フロアを焼き尽くしたんですか?」
『見えないところも風を送っておいたから、みんな燃えたはず!』
「その炎は、いつ頃消えますか?」
『そんなの知らないよ』
なんだかとっても恐ろしいことを言っているので、このあと掃討戦に出向くアルムーザたちが引きつった愛想笑いをしている。ダンジョン内の酸素は平気だろうか。モンスターにも呼吸が必要なら、炎ではなく酸欠で全滅していそうだ。
セーフティーエリアで生き延びている冒険者はいなかったとリネは言っているけど、全フロアちゃんと確認したのかは分からない。ブランは知っていても教えてくれないだろうから、深く考えるのはやめよう。
ルフェオさんは、もうあふれたダンジョンには興味の薄れたリネから、話を聞きだそうと頑張っている。きっとアルムーザからギルドへ伝えてもらおうとしているのだろうから、僕も協力しよう。
「リネ、ありがとう。ゼリーをどうぞ」
『やっと起きた。ユウは寝ぼすけだねえ』
「待たせてごめんね。それで、燃やし尽くしたのは、片方のダンジョンだけかな?」
『両方やっといたよ。だから、ダンジョン行けるよね』
偉いでしょう、と胸を張って答えているリネが可愛い。楽しむためなら、労力は惜しまないらしい。
これ以上リネを待たせると、他のダンジョンも燃やし尽くすと言い出しかねないので、準備を急ぐ。僕以外はみんな起きて準備を終えているので、僕の準備が終われば、出発できる。
僕たちのテントを収納し、がらんとした会議室に、元々あった机と椅子を並べる。シリウスのみんなが外してくれたカーテンを片づければ、原状回復の完了だ。クリーンの魔石で掃除は不要。来たときよりも美しく、という宿泊学習の基本もちゃんと守っている。
部屋を出ようとしたところで、ギルドマスターが入ってきた。
「馬車を用意したので使ってくれ。ダンジョンの出口には、教会が司祭を派遣してくれるそうだ。王子にも見張りを出してくれるよう伝えておいた」
「ありがとうございます」
貴族が集まっているいま、騒動を起こされたくないという、ギルドマスターの強い意志が伝わる。あふれの対応に専念したい状況で、余計な手間を取らせて申し訳ない。
ギルドマスターは、ティグ君の背中に座るリネを見ると、頭を下げた。
「神獣様、このたびはあふれの制圧にご協力いただき、ありがとうございました」
『楽しかったから、いつでもやってあげるよ』
「あとは我々が対応いたしますので、ブロキオンをお楽しみください」
あふれの後でなければ、冒険者が巻き込まれてしまうので、やめてほしい。
ギルドマスターはリネの提案をさらりと流した。ギルドにとってリネは、「触らぬ神にたたりなし」というような存在なのだろう。
そういえば、ブランにいつも貢ぎものを持ってくる王都のギルドマスターさんが、リネと話しているところを見たことがない。もふらーだけど鳥に興味はないのか、避けているのか、機会があったら聞いてみよう。
ティガーとブランの希望で、ブロキオンに潜るだけのはずだったのに、その前に予想外のとんでもない事態に見舞われた。ふたつのダンジョンが同時にあふれるという前代未聞の状況だ。
王子様と国軍が近くにいて、獣道とアルがいて魔剣もあり、戦力がそろっていた。
リネがあふれたダンジョンに興味を持って、モンスターを減らしてくれた。
ブランが僕のお願いを聞いて、街を守ってくれた。
僕がいて、ポーションや食料に困らなかった。
一つでも欠ければ、冒険者や兵の士気は保てなかっただろう。絶望の中、それでも彼らは踏み止まり、自らの手でこの地を守った。
不運だったけれど、一方で運に恵まれ、希望が潰えなかった。すべてが希望の種となり、未来は紡がれた。
冒険者たちの応援を背に、ギルドの用意した馬車に乗り、ブロキオンに向けて出発した。少し足踏みをしたけれど、これで当初の予定どおりだ。
僕が行きたくないとグズグズしていなければ、あふれの一報を受けたのは、ブロキオンの中だっただろう。そうなっていたら、アルと獣道の参戦は遅れただろうし、リネがあふれているダンジョンに入ったかどうかも不明だ。その場合、あふれの影響がどこまで広がったかは分からない。
僕がなかなか気乗りしなかったのは、わがままではなく、きっとこうなるための虫の知らせだったのだ。そう前向きにとらえよう。
あふれが収まったことが広まり、街道は行き来が増えている。五周して帰るころには、通常に戻っているに違いない。そのときは、盛大に宴会を開こう。
「ユウ、おはよう。リネが戻ってきた」
「え? もう?」
外から聞こえているのは、どんふうにモンスターを倒したかを説明しているリネと、相づちを打つ獣道の会話らしい。
この短時間でダンジョンのモンスターを掃討したのだとすれば、ダンジョンの現状が気になる。階層が全部なくなって、大穴になっていないといいけど。
リネが帰ってきたということは、ブロキオンに出発だ。行きたくないけど、ここまできたら逃げられない。しぶしぶ起き上がる僕を見て、アルが笑っている。
「ブラン、ブロキオンだよ」
『やっとか』
「楽しむといいよ」
行きたくないと、ぐだぐだ言っているものの、ブランに楽しんでほしいという気持ちは嘘じゃない。この街を守ってくれたブランへのお礼でもある。ただ、首なし騎士に会いたくないだけだ。
『最下層では、ティグリスに抱きついて目を閉じていろ。側には近寄らせない』
「ごめんね」
『フン』
ブランの首元に抱きつくと、ため息をつきながらも、尻尾が優しく背中をなでてくれる。こうやってブランが僕を甘やかしてくれるから、行きたくないと子どものように駄々をこねてしまうのだ。ブランは本当に僕に甘い。
身支度をしてテントを出ると、ティグ君の背中の上で、翼を広げてご機嫌で話しているリネが目に入る。
「全フロアを焼き尽くしたんですか?」
『見えないところも風を送っておいたから、みんな燃えたはず!』
「その炎は、いつ頃消えますか?」
『そんなの知らないよ』
なんだかとっても恐ろしいことを言っているので、このあと掃討戦に出向くアルムーザたちが引きつった愛想笑いをしている。ダンジョン内の酸素は平気だろうか。モンスターにも呼吸が必要なら、炎ではなく酸欠で全滅していそうだ。
セーフティーエリアで生き延びている冒険者はいなかったとリネは言っているけど、全フロアちゃんと確認したのかは分からない。ブランは知っていても教えてくれないだろうから、深く考えるのはやめよう。
ルフェオさんは、もうあふれたダンジョンには興味の薄れたリネから、話を聞きだそうと頑張っている。きっとアルムーザからギルドへ伝えてもらおうとしているのだろうから、僕も協力しよう。
「リネ、ありがとう。ゼリーをどうぞ」
『やっと起きた。ユウは寝ぼすけだねえ』
「待たせてごめんね。それで、燃やし尽くしたのは、片方のダンジョンだけかな?」
『両方やっといたよ。だから、ダンジョン行けるよね』
偉いでしょう、と胸を張って答えているリネが可愛い。楽しむためなら、労力は惜しまないらしい。
これ以上リネを待たせると、他のダンジョンも燃やし尽くすと言い出しかねないので、準備を急ぐ。僕以外はみんな起きて準備を終えているので、僕の準備が終われば、出発できる。
僕たちのテントを収納し、がらんとした会議室に、元々あった机と椅子を並べる。シリウスのみんなが外してくれたカーテンを片づければ、原状回復の完了だ。クリーンの魔石で掃除は不要。来たときよりも美しく、という宿泊学習の基本もちゃんと守っている。
部屋を出ようとしたところで、ギルドマスターが入ってきた。
「馬車を用意したので使ってくれ。ダンジョンの出口には、教会が司祭を派遣してくれるそうだ。王子にも見張りを出してくれるよう伝えておいた」
「ありがとうございます」
貴族が集まっているいま、騒動を起こされたくないという、ギルドマスターの強い意志が伝わる。あふれの対応に専念したい状況で、余計な手間を取らせて申し訳ない。
ギルドマスターは、ティグ君の背中に座るリネを見ると、頭を下げた。
「神獣様、このたびはあふれの制圧にご協力いただき、ありがとうございました」
『楽しかったから、いつでもやってあげるよ』
「あとは我々が対応いたしますので、ブロキオンをお楽しみください」
あふれの後でなければ、冒険者が巻き込まれてしまうので、やめてほしい。
ギルドマスターはリネの提案をさらりと流した。ギルドにとってリネは、「触らぬ神にたたりなし」というような存在なのだろう。
そういえば、ブランにいつも貢ぎものを持ってくる王都のギルドマスターさんが、リネと話しているところを見たことがない。もふらーだけど鳥に興味はないのか、避けているのか、機会があったら聞いてみよう。
ティガーとブランの希望で、ブロキオンに潜るだけのはずだったのに、その前に予想外のとんでもない事態に見舞われた。ふたつのダンジョンが同時にあふれるという前代未聞の状況だ。
王子様と国軍が近くにいて、獣道とアルがいて魔剣もあり、戦力がそろっていた。
リネがあふれたダンジョンに興味を持って、モンスターを減らしてくれた。
ブランが僕のお願いを聞いて、街を守ってくれた。
僕がいて、ポーションや食料に困らなかった。
一つでも欠ければ、冒険者や兵の士気は保てなかっただろう。絶望の中、それでも彼らは踏み止まり、自らの手でこの地を守った。
不運だったけれど、一方で運に恵まれ、希望が潰えなかった。すべてが希望の種となり、未来は紡がれた。
冒険者たちの応援を背に、ギルドの用意した馬車に乗り、ブロキオンに向けて出発した。少し足踏みをしたけれど、これで当初の予定どおりだ。
僕が行きたくないとグズグズしていなければ、あふれの一報を受けたのは、ブロキオンの中だっただろう。そうなっていたら、アルと獣道の参戦は遅れただろうし、リネがあふれているダンジョンに入ったかどうかも不明だ。その場合、あふれの影響がどこまで広がったかは分からない。
僕がなかなか気乗りしなかったのは、わがままではなく、きっとこうなるための虫の知らせだったのだ。そう前向きにとらえよう。
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