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6章 あふれの渦中
6-1. あふれの渦中
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ユラカヒの街の近くの上級ダンジョンの下層を進んでいる時だった。
『あふれるぞ』
「え?」
「このダンジョンがあふれるのか?」
『そうだ』
えええ、今潜っているダンジョンがあふれるって、どういうこと。
僕は15歳でこの世界に落ちた。いろいろあったけど、今は神獣のブランと、恋人のアルとこの世界で冒険者として生きている。
この世界にはダンジョンがあって、僕が拠点にしているモクリーク王国には上級ダンジョンが多く点在する。通常ダンジョン内のモンスターは外へは出てこないが、突如として大量発生してダンジョン外に出てくることがあり、その現象をあふれると言う。そう、今まさに、潜っているダンジョンがあふれようとしている。
ダンジョンはあふれが多発する時期があり、それが200年毎なので200年周期と呼ばれていて、今は200年周期の始まりと言われている。ダンジョンを放置するとあふれが発生しやすくなるので、僕たちは国内を移動しながらダンジョンを攻略して回っている。
僕には現状世界で僕だけしかもっていないと思われるスキル「アイテムボックス」がある。中は時間が止まっていて、多分無限に収納できるので、ダンジョンに潜っている間も食べ物に困らないし、ダンジョン内の快適生活のためにテントだけでなくベッドも持ち込める。その利点をいかして、あふれの対策としてダンジョン攻略をしているが、あふれの時にダンジョン内にいるのは、初めての経験だ。
ダンジョンにはセーフティーエリアがあって、なぜかモンスターが入ってこない安全地帯だ。冒険者はここでテントを張って、寝泊まりする。
けれど、あふれの時は、セーフティーエリアにもモンスターが入ってくることがある。
モンスターは生き物に向かう性質があり、これは通常の時もあふれの時も変わらない。あふれの時に変わるのは、通常は行けない場所、ダンジョンの外とセーフティーエリアにも行けるようになることだけだ。
大半のモンスターは地上に向かうけれど、セーフティーエリアに人がいると、そこにもモンスターが向かってくる。
セーフティーエリアにいるときにあふれが発生したら、モンスターが入ってこないように戦って、あふれが収まるか、救助が来るのを待つしかない。けれど、あふれがおさまらなければ救助はまず来ない。
ダンジョンは階層間は階段で繋がっているので、地上に行くには各階の階段を上がるしかない。階段の場所は階層ごとに違うので、一気に駆け上がることも出来ない。
この階段がボトルネックになるので、あふれが発生してから、地上に下層の強いモンスターが現れるまでに時間差ができる。その間にいかに迎撃態勢を整えられるかが、あふれ対策の初動の鍵だ。
周りにモンスターがどんどん湧いてくる。これがあふれなのか。
潜り始めた頃から、このダンジョンはモンスターが多いなと思っていたけど、それはあふれの予兆だったのだろう。
「ユウ、どうする?地上まで戻るか?」
僕たちには神獣であるブランがいて、僕にはアイテムボックスがあるので、やろうと思えば、あふれが終わるまでセーフティーエリアに籠っていることもできる。
ブランの結界はモンスターを通さない。僕のアイテムボックスには多分半年は籠城できるくらいの食料がある。
冒険者はあふれの対策要員だからこそ、国から優遇されている。僕たちはSランクパーティーで、地上にいたら先頭に立って戦う義務がある。実際には、僕は戦えないし、アイテムボックス持ちを失いたくないだろう国とギルドに後方まで下げられるだろうけど。
今、僕に出来ることは何か。
ブランの戦力はあてにできない。してはいけない。ブランは僕の安全を確保する以上の手は貸してくれないのだ。人が対処すべきことだからなのか、何か制約があるのかは分からない。
「まずは冒険者を探して食料を届けるのはどうかな」
「そうするか」
『危険だと判断したら地上まで戻るぞ』
「ブランでも危ないの?」
『分からん。あふれの渦中にいるのは初めてだ』
いったい何歳なのか分からないくらい長生きなブランが初めてなのだから、僕たちを含め、渦中にいる人たちは不運だな。
下りてきた道を、地上に向けて上がっていく。僕たちより下層に冒険者がいるかどうかは分からないが、そこまで気にしていられない。
ブランがいるから命の危険はないだろうと落ち着いていられるが、何が起きるか分からないのがダンジョンだ。この世界に来て10年、冒険者は自己責任と割り切れるくらいの経験はしている。
階段を上がろうとその周りにモンスターが集っていて、後から来たモンスターに踏みつぶされているモンスターもいて、ちょっとした集団パニックにも見える。
僕たちに気づいたモンスターがこちらへ向かってこようとするが、ブランの魔法とアルの魔剣がバッサリ切っていく。アルの胸に抱き込まれ、邪魔にならないように小さくなっている僕は、転がっていくドロップ品がもったいないなと場違いなことを考えていた。
僕は何度もあふれの対応に当たっているけど、後方支援の荷運びだけで前線に出たことがないので、今この事態がとても非現実的でゲームのように思えている。
けれどこの先、おそらく惨状を目にすることになる。そのことに僕がショックを受けないか、アルとブランが心配しているのが伝わってくるが、どう心の準備をすればいいのかは僕にも分からない。ただ、覚悟だけはしている。
フロアを駆け抜けて、階段付近のモンスターを倒して、を繰り返して地上を目指すが、冒険者には会わない。セーフティーエリアを覗いてみている訳ではないけど、ブランによるといないらしい。最初からいないのか、逃げたのか、もうダンジョンに吸収されてしまったのか、ブランが知らせないだけか。
「ブラン、今夜はこの階層で休もうと思うが、大丈夫そうか?」
『ああ』
ブランの許可も下りたので、もうすぐ中層に入るあたりで休むことになった。さすがに天幕テントを出すほど気分の余裕はなくて、広々としたセーフティーエリアに、3人用のテントを出して、中に入る。セーフティーエリア全体をブランが結界で囲ってくれているので、モンスターは入ってこないはずだ。
僕が倒れると足手まといになるのでしっかり寝ないといけないと思っても、アルもブランも警戒を緩めないのが伝わってきて、浅い眠りにしかつけなかった。
中層も半ばまで上がって来たところで、階段付近のモンスターの様子が今までと違うことに気づいた。
『戦闘しているな』
「上のフロアの冒険者か」
この階段の上で、冒険者がモンスターを迎撃しているらしい。大型のモンスターには階段ギリギリの大きさのものもいるので、迎え撃つにはちょうどいい場所だ。
けれど、モンスターに混じって上がって行ったら、僕たちも攻撃されてしまうので、アルがブランから降りて、付近のモンスターを一掃するために戦い始めた。
このダンジョン、出てくるモンスターには一貫性がなく、その結果攻撃も様々だ。ゴーレムと鳥と虫と人型が一緒に向かってくるとか、殴ってくるやつと魔法を飛ばしてくるやつが一緒にいて、飛ぶやつも跳ぶやつもいるしで、ちょっとした悪夢だ。その代わりにドロップ品も多岐にわたって、レアものも出るので人気が高い。つまり潜っている最中の冒険者もたくさんいる。
付近のモンスターを倒し終え、ブランに乗って、階段を上がる準備を整えた。
「Sランクの氷花だ。これから上がっていくから攻撃しないでくれ」
アルが階段の下から大声で伝えてから、階段を上ると、武器を構えて警戒した冒険者が、階段の周りを取り囲んでいた。人数的に3パーティーかな。
「生きてたのか」
「このすぐ下はとりあえず一掃した」
「そうか、ありがとう。少し休憩できるな」
モンスターが切れないから、ずっと戦闘しているのか。
「ブランの氷でこの階段塞げないの?」
『(出来るがそんなにもたないぞ。ダンジョンに吸収される)』
「ああ、そっか。でも、やってくれる?」
いいぞ、とブランが階段いっぱいに氷の壁を作ってくれたので、その間だけでも休憩しようと、見張りを残してすぐ近くのセーフティーエリアに移動する。
この階層で迎え撃っているのは、階段とセーフティーエリアが近いからで、そのセーフティーエリアには、Sランクパーティーがあふれる前のダンジョンの異変を察知してここまで上がってくるときに合流した冒険者がいた。Sランクが1パーティー、Aランクが3パーティー、Bランクが2パーティー、それに荷物持ちが3パーティーだ。
3パーティーがセーフティーエリアに残って、そのうちの2パーティーは休み、残りの3パーティーが階段前で迎え撃つ。自分たちが生き残るために、そして少しでも地上に出るモンスターを減らすために、ここで削っているのだ。
セーフティーエリアには食料やポーションが並べられていた。全パーティーの持ち物を出して、荷物持ちのパーティーが管理しているそうなので、彼らに何が不足しているか聞いて、補充する。僕はたくさんの食べ物を収納しているけど、アイテムボックス内が時間停止しているから、保存食はあまり持っていない。これは今後の改良点だな。
「どこにいたんだ?あんたたちが下層に行ったのは見ていたから、攻略してすでに地上に出てればいいと思ってたんだ」
「下層の真ん中あたりだ。そこから従魔に乗って走って上がってきたから、階段付近以外は戦闘していない」
「そうか。このまま地上に向かうんだろう?」
「ああ、その間に冒険者がいれば物資を届けるが」
「中層と上層の境目あたりに、ここと同じように階段とセーフティーエリアが近い階層がある。籠城しているとすれば、後はそこだな」
「そこまでは、ここの全員で移動したら、どれくらいかかるんだ」
「丸一日だな」
「行くなら支援する」
少し話し合いをさせてくれと言われ、僕たちはセーフティーエリアを出た。
僕たちはブランのおかげで、下層のモンスターの集団よりも早く上がってきている。つまりこれからこの階段を抜けてくるモンスターは強くなっていく。いずれは迎撃が追い付かなくなるだろう。その後セーフティーエリアで持ちこたえられるかどうか、それはやってみないと分からないが、きっと彼らはここから帰れないことも覚悟している。
ブランの氷がダンジョンに吸収されて消えた。ずいぶん早いが、あふれの影響なんだろう。階段でせき止めていたものがなくなってモンスターが上がってくるのを、アルが魔剣で斬っている。
僕も弓を出して射てみたところ、的は階段いっぱいに広がっているので、モンスターのうちのどれかには当たる。ダメージは与えられていないけど、当たることが嬉しくてどんどんと矢を放っていると、ブランが矢にブーストしてくれるようになった。そうすると、矢が当たる毎にモンスターが光に変わっていく。僕の貢献度は5%もないけど、強くなったみたいで楽しい。状況も忘れてしばらく矢を放っていた。
『あふれるぞ』
「え?」
「このダンジョンがあふれるのか?」
『そうだ』
えええ、今潜っているダンジョンがあふれるって、どういうこと。
僕は15歳でこの世界に落ちた。いろいろあったけど、今は神獣のブランと、恋人のアルとこの世界で冒険者として生きている。
この世界にはダンジョンがあって、僕が拠点にしているモクリーク王国には上級ダンジョンが多く点在する。通常ダンジョン内のモンスターは外へは出てこないが、突如として大量発生してダンジョン外に出てくることがあり、その現象をあふれると言う。そう、今まさに、潜っているダンジョンがあふれようとしている。
ダンジョンはあふれが多発する時期があり、それが200年毎なので200年周期と呼ばれていて、今は200年周期の始まりと言われている。ダンジョンを放置するとあふれが発生しやすくなるので、僕たちは国内を移動しながらダンジョンを攻略して回っている。
僕には現状世界で僕だけしかもっていないと思われるスキル「アイテムボックス」がある。中は時間が止まっていて、多分無限に収納できるので、ダンジョンに潜っている間も食べ物に困らないし、ダンジョン内の快適生活のためにテントだけでなくベッドも持ち込める。その利点をいかして、あふれの対策としてダンジョン攻略をしているが、あふれの時にダンジョン内にいるのは、初めての経験だ。
ダンジョンにはセーフティーエリアがあって、なぜかモンスターが入ってこない安全地帯だ。冒険者はここでテントを張って、寝泊まりする。
けれど、あふれの時は、セーフティーエリアにもモンスターが入ってくることがある。
モンスターは生き物に向かう性質があり、これは通常の時もあふれの時も変わらない。あふれの時に変わるのは、通常は行けない場所、ダンジョンの外とセーフティーエリアにも行けるようになることだけだ。
大半のモンスターは地上に向かうけれど、セーフティーエリアに人がいると、そこにもモンスターが向かってくる。
セーフティーエリアにいるときにあふれが発生したら、モンスターが入ってこないように戦って、あふれが収まるか、救助が来るのを待つしかない。けれど、あふれがおさまらなければ救助はまず来ない。
ダンジョンは階層間は階段で繋がっているので、地上に行くには各階の階段を上がるしかない。階段の場所は階層ごとに違うので、一気に駆け上がることも出来ない。
この階段がボトルネックになるので、あふれが発生してから、地上に下層の強いモンスターが現れるまでに時間差ができる。その間にいかに迎撃態勢を整えられるかが、あふれ対策の初動の鍵だ。
周りにモンスターがどんどん湧いてくる。これがあふれなのか。
潜り始めた頃から、このダンジョンはモンスターが多いなと思っていたけど、それはあふれの予兆だったのだろう。
「ユウ、どうする?地上まで戻るか?」
僕たちには神獣であるブランがいて、僕にはアイテムボックスがあるので、やろうと思えば、あふれが終わるまでセーフティーエリアに籠っていることもできる。
ブランの結界はモンスターを通さない。僕のアイテムボックスには多分半年は籠城できるくらいの食料がある。
冒険者はあふれの対策要員だからこそ、国から優遇されている。僕たちはSランクパーティーで、地上にいたら先頭に立って戦う義務がある。実際には、僕は戦えないし、アイテムボックス持ちを失いたくないだろう国とギルドに後方まで下げられるだろうけど。
今、僕に出来ることは何か。
ブランの戦力はあてにできない。してはいけない。ブランは僕の安全を確保する以上の手は貸してくれないのだ。人が対処すべきことだからなのか、何か制約があるのかは分からない。
「まずは冒険者を探して食料を届けるのはどうかな」
「そうするか」
『危険だと判断したら地上まで戻るぞ』
「ブランでも危ないの?」
『分からん。あふれの渦中にいるのは初めてだ』
いったい何歳なのか分からないくらい長生きなブランが初めてなのだから、僕たちを含め、渦中にいる人たちは不運だな。
下りてきた道を、地上に向けて上がっていく。僕たちより下層に冒険者がいるかどうかは分からないが、そこまで気にしていられない。
ブランがいるから命の危険はないだろうと落ち着いていられるが、何が起きるか分からないのがダンジョンだ。この世界に来て10年、冒険者は自己責任と割り切れるくらいの経験はしている。
階段を上がろうとその周りにモンスターが集っていて、後から来たモンスターに踏みつぶされているモンスターもいて、ちょっとした集団パニックにも見える。
僕たちに気づいたモンスターがこちらへ向かってこようとするが、ブランの魔法とアルの魔剣がバッサリ切っていく。アルの胸に抱き込まれ、邪魔にならないように小さくなっている僕は、転がっていくドロップ品がもったいないなと場違いなことを考えていた。
僕は何度もあふれの対応に当たっているけど、後方支援の荷運びだけで前線に出たことがないので、今この事態がとても非現実的でゲームのように思えている。
けれどこの先、おそらく惨状を目にすることになる。そのことに僕がショックを受けないか、アルとブランが心配しているのが伝わってくるが、どう心の準備をすればいいのかは僕にも分からない。ただ、覚悟だけはしている。
フロアを駆け抜けて、階段付近のモンスターを倒して、を繰り返して地上を目指すが、冒険者には会わない。セーフティーエリアを覗いてみている訳ではないけど、ブランによるといないらしい。最初からいないのか、逃げたのか、もうダンジョンに吸収されてしまったのか、ブランが知らせないだけか。
「ブラン、今夜はこの階層で休もうと思うが、大丈夫そうか?」
『ああ』
ブランの許可も下りたので、もうすぐ中層に入るあたりで休むことになった。さすがに天幕テントを出すほど気分の余裕はなくて、広々としたセーフティーエリアに、3人用のテントを出して、中に入る。セーフティーエリア全体をブランが結界で囲ってくれているので、モンスターは入ってこないはずだ。
僕が倒れると足手まといになるのでしっかり寝ないといけないと思っても、アルもブランも警戒を緩めないのが伝わってきて、浅い眠りにしかつけなかった。
中層も半ばまで上がって来たところで、階段付近のモンスターの様子が今までと違うことに気づいた。
『戦闘しているな』
「上のフロアの冒険者か」
この階段の上で、冒険者がモンスターを迎撃しているらしい。大型のモンスターには階段ギリギリの大きさのものもいるので、迎え撃つにはちょうどいい場所だ。
けれど、モンスターに混じって上がって行ったら、僕たちも攻撃されてしまうので、アルがブランから降りて、付近のモンスターを一掃するために戦い始めた。
このダンジョン、出てくるモンスターには一貫性がなく、その結果攻撃も様々だ。ゴーレムと鳥と虫と人型が一緒に向かってくるとか、殴ってくるやつと魔法を飛ばしてくるやつが一緒にいて、飛ぶやつも跳ぶやつもいるしで、ちょっとした悪夢だ。その代わりにドロップ品も多岐にわたって、レアものも出るので人気が高い。つまり潜っている最中の冒険者もたくさんいる。
付近のモンスターを倒し終え、ブランに乗って、階段を上がる準備を整えた。
「Sランクの氷花だ。これから上がっていくから攻撃しないでくれ」
アルが階段の下から大声で伝えてから、階段を上ると、武器を構えて警戒した冒険者が、階段の周りを取り囲んでいた。人数的に3パーティーかな。
「生きてたのか」
「このすぐ下はとりあえず一掃した」
「そうか、ありがとう。少し休憩できるな」
モンスターが切れないから、ずっと戦闘しているのか。
「ブランの氷でこの階段塞げないの?」
『(出来るがそんなにもたないぞ。ダンジョンに吸収される)』
「ああ、そっか。でも、やってくれる?」
いいぞ、とブランが階段いっぱいに氷の壁を作ってくれたので、その間だけでも休憩しようと、見張りを残してすぐ近くのセーフティーエリアに移動する。
この階層で迎え撃っているのは、階段とセーフティーエリアが近いからで、そのセーフティーエリアには、Sランクパーティーがあふれる前のダンジョンの異変を察知してここまで上がってくるときに合流した冒険者がいた。Sランクが1パーティー、Aランクが3パーティー、Bランクが2パーティー、それに荷物持ちが3パーティーだ。
3パーティーがセーフティーエリアに残って、そのうちの2パーティーは休み、残りの3パーティーが階段前で迎え撃つ。自分たちが生き残るために、そして少しでも地上に出るモンスターを減らすために、ここで削っているのだ。
セーフティーエリアには食料やポーションが並べられていた。全パーティーの持ち物を出して、荷物持ちのパーティーが管理しているそうなので、彼らに何が不足しているか聞いて、補充する。僕はたくさんの食べ物を収納しているけど、アイテムボックス内が時間停止しているから、保存食はあまり持っていない。これは今後の改良点だな。
「どこにいたんだ?あんたたちが下層に行ったのは見ていたから、攻略してすでに地上に出てればいいと思ってたんだ」
「下層の真ん中あたりだ。そこから従魔に乗って走って上がってきたから、階段付近以外は戦闘していない」
「そうか。このまま地上に向かうんだろう?」
「ああ、その間に冒険者がいれば物資を届けるが」
「中層と上層の境目あたりに、ここと同じように階段とセーフティーエリアが近い階層がある。籠城しているとすれば、後はそこだな」
「そこまでは、ここの全員で移動したら、どれくらいかかるんだ」
「丸一日だな」
「行くなら支援する」
少し話し合いをさせてくれと言われ、僕たちはセーフティーエリアを出た。
僕たちはブランのおかげで、下層のモンスターの集団よりも早く上がってきている。つまりこれからこの階段を抜けてくるモンスターは強くなっていく。いずれは迎撃が追い付かなくなるだろう。その後セーフティーエリアで持ちこたえられるかどうか、それはやってみないと分からないが、きっと彼らはここから帰れないことも覚悟している。
ブランの氷がダンジョンに吸収されて消えた。ずいぶん早いが、あふれの影響なんだろう。階段でせき止めていたものがなくなってモンスターが上がってくるのを、アルが魔剣で斬っている。
僕も弓を出して射てみたところ、的は階段いっぱいに広がっているので、モンスターのうちのどれかには当たる。ダメージは与えられていないけど、当たることが嬉しくてどんどんと矢を放っていると、ブランが矢にブーストしてくれるようになった。そうすると、矢が当たる毎にモンスターが光に変わっていく。僕の貢献度は5%もないけど、強くなったみたいで楽しい。状況も忘れてしばらく矢を放っていた。
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