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最終章 手を携えて未来へ
10-8. 第三王子
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アルはしばらく僕のそばにいてくれた後、ダンジョンに潜るためにまたマグノリアに合流した。
中途半端で申し訳ないと思いながら、僕はまだ何も決められず、教会にいる。
アルがいる間、午前中のお手伝いは続けていたけど、礼拝堂にはあまり行っていなかった。
アルがいなくなって寂しく思いながらお手伝いを終えた後、いつものように小礼拝堂に入ろうとしたら、ブランが止めた。
『(待て、中に誰かいる)』
「え?」
『(出てくるぞ)』
中から出て来たのは、銀色の髪の若い男性とお付きの人数人だった。この国で銀色の髪は、王族の印だ。この小礼拝堂はもともと王族のための礼拝堂なので、いてもおかしくない。
僕は身を隠す余裕もなく、どうしていいのか分からず立ち尽くした。
「何をしている!頭が高いぞ!」
こういう場合の作法が分からない。サジェルに貴族のお茶会に招かれた場合の作法は習ったけど、王族に会ったときは習っていない。
とりあえず、教会の司祭様たちがブランの前に膝をつくのを真似て、膝をついて頭を下げた。
「待て。その従魔、そなたアイテムボックス持ちか。ここで会えるとは運が良いな。顔を見せろ」
「殿下の思し召しだ。顔を上げろ!」
僕はどうしていいのか分からなくて、下を向いたまま黙っていたら、お付きの人が近づいてきたので、ブランが僕の前に立って、近づけないようにしてくれた。軽くうなっている。
「モクリークとは仲違いしたそうだな。そのスキル、私のために使え。手始めにカルデバラの攻略だ。役に立てば愛人にしてやろう」
「お、お断りします」
その言葉にブランが牙を見せて威嚇し始め、それに対してお付きの人が剣を抜いた。
「ブラン、ダメ!」
『(何故だ)』
「ダメ、教会に迷惑がかかっちゃう」
「ユウさん、迷惑にはなりませんので大丈夫ですよ」
その声に、ブランを止めなきゃと後ろから抱き着いていた体勢のまま、力が抜けて座り込んだ。よかった。ケネス司祭様がきてくれた。
「第三王子殿下、現在はここは立ち入り禁止と王宮に通達が行っているはずです。それを破って入った上で教会のお客様への狼藉、教会として厳重に抗議いたします。直ちにご退去ください」
「無礼だぞ!」
「無礼はどちらでしょう。ここは神のお膝元たる教会です。人の階位など神の前に意味は成しません」
ケネス司祭様と王子様が舌戦を繰り広げている間に、見知った司祭様が近くに寄ってきて、足が震えている僕を支えて部屋まで連れて帰ってくれた。王子様のお付きの人が僕たちがその場を立ち去るのを止めようとしたが、それも別の司祭様が間に立って防いでくれた。
部屋に入って、やっと息が吸えるようになると、ケネス司祭様が心配になる。相手は王子って言ってた。どうしよう、僕のせいで教会と王族が対立したら。
落ち着かずに部屋の中をうろうろしていたら、ケネス司祭様が入ってきた。
「ユウさん、大丈夫ですか?何もされませんでいたか?」
「ケネス司祭様、ごめんなさい、僕のせいで、教会が、僕がすぐに引き返せばよかったのに、王子様と対立して、僕のせいで、」
「ユウさん、ユウさん、落ち着いてください。大丈夫です。もともと今はこの奥宮への立ち入りは禁止しているのに、権力を振りかざしてはいってきたのはあちらです」
「でも、僕がいなかったら、」
「ユウさん、深呼吸しましょう。はい、ゆっくり息を吸って」
そんな場合じゃないと思ったけど、ケネス司祭様の掛け声にあわせてブランが深呼吸しているのを見て、少し落ち着いた。スー、ハー。
何があったのか聞かれたが、僕が答える前に、ブランが答えた。そして、その内容を聞いて、この部屋まで連れてきてくれた司祭様が部屋を出て行った。
「愛人とはまた。あの王子殿下は終わりましたね」
「え、そうなんですか?」
「王は貴族におふたりとの接触を控えるように通達しています。そんな中で殿下を庇えば、ドガイ王家に従うものはなくなります。それに、神の怒りで塔の1つくらいは崩壊するかもしれませんし」
あれ、なんかケネス司祭様、ウキウキしてる?ブラン様に剣を向けるとは、あの王子には存分に反省してもらわないといけませんねって、なんか物騒な感じ?
ケネス司祭様ってけっこう思考が武闘派だよね。そして、ブランに塔を吹き飛ばせって言っているような。
不安やいろんな思いが入り乱れてなかなか寝付けず迎えた翌朝、塔はやっぱり吹き飛んでいた。ブランは僕が眠れるまでずっとそばにいてくれたから、僕が寝てから行ったのかな。
塔の付近はもともと人がいないところで、さらに退避命令が出ていたので人的被害はなかったと聞いたが、本当になかったのか、僕には教えてもらえないのかは分からない。王子様はどうなったのか。でも考え出すとまたハマりそうなので、そこにはいなかったということで自分を納得させた。
その後、大司教様経由で、ドガイの王様から謝罪の手紙をもらったけど、返事はしなくていいと言われたのでしていない。
王子様遭遇事件以来、人に会ってトラブルになるのが怖くて、あまり部屋から出ないで過ごしていた数日後、朝ご飯よりも早くアルが来てくれた。ちょうどダンジョンから出たところに教会から連絡があって、急いで戻ってきてくれたそうだ。
「ユウ、大丈夫か?」
「アル、アル……」
言葉にならずに抱き着いた僕を優しく撫でてくれながら、アルはブランからあの時の状況を聞いている。
「つまり、教会の禁止を破ってユウの前に現れた上に、自分のためにスキルを使い、愛人になれと」
『そうだな』
「ユウ、眠れなかったのか?大丈夫か?」
「僕のせいで教会に迷惑をかけてしまって……」
アルが僕の顔色を見て気遣ってくれるので、僕がうまく立ち回れればこんなことにならなかったんじゃないかと、胸の中のモヤモヤが言葉になってあふれでてしまった。
「ユウさん、教会は神の僕です。ブラン様の加護を持つユウさんを守るのは、教会の使命です」
「ユウ、眠れていないから後ろ向きになるんだ。少し食べて、一緒に休もう」
「そうですね。軽いものを運ばせましょう」
ケネス司祭様が朝食を持ってくるように指示を出して、すぐに朝食が用意された。もちろんブランの分もだ。
僕は眠れていないので食欲もあまりなく、果物を少しだけ食べて、アルに抱き込まれてベッドに入った。
「ユウ、王子様に求婚されたら俺を捨てるか?」
「捨てないよ。アルじゃなきゃ嫌だよ」
「よかった」
冗談を言って、額にキスをしてくれる。そんなアルが好きだよ。
アルの温もりと匂いに、心が落ち着いて、寝不足だった僕はすぐに眠りに落ちた。
中途半端で申し訳ないと思いながら、僕はまだ何も決められず、教会にいる。
アルがいる間、午前中のお手伝いは続けていたけど、礼拝堂にはあまり行っていなかった。
アルがいなくなって寂しく思いながらお手伝いを終えた後、いつものように小礼拝堂に入ろうとしたら、ブランが止めた。
『(待て、中に誰かいる)』
「え?」
『(出てくるぞ)』
中から出て来たのは、銀色の髪の若い男性とお付きの人数人だった。この国で銀色の髪は、王族の印だ。この小礼拝堂はもともと王族のための礼拝堂なので、いてもおかしくない。
僕は身を隠す余裕もなく、どうしていいのか分からず立ち尽くした。
「何をしている!頭が高いぞ!」
こういう場合の作法が分からない。サジェルに貴族のお茶会に招かれた場合の作法は習ったけど、王族に会ったときは習っていない。
とりあえず、教会の司祭様たちがブランの前に膝をつくのを真似て、膝をついて頭を下げた。
「待て。その従魔、そなたアイテムボックス持ちか。ここで会えるとは運が良いな。顔を見せろ」
「殿下の思し召しだ。顔を上げろ!」
僕はどうしていいのか分からなくて、下を向いたまま黙っていたら、お付きの人が近づいてきたので、ブランが僕の前に立って、近づけないようにしてくれた。軽くうなっている。
「モクリークとは仲違いしたそうだな。そのスキル、私のために使え。手始めにカルデバラの攻略だ。役に立てば愛人にしてやろう」
「お、お断りします」
その言葉にブランが牙を見せて威嚇し始め、それに対してお付きの人が剣を抜いた。
「ブラン、ダメ!」
『(何故だ)』
「ダメ、教会に迷惑がかかっちゃう」
「ユウさん、迷惑にはなりませんので大丈夫ですよ」
その声に、ブランを止めなきゃと後ろから抱き着いていた体勢のまま、力が抜けて座り込んだ。よかった。ケネス司祭様がきてくれた。
「第三王子殿下、現在はここは立ち入り禁止と王宮に通達が行っているはずです。それを破って入った上で教会のお客様への狼藉、教会として厳重に抗議いたします。直ちにご退去ください」
「無礼だぞ!」
「無礼はどちらでしょう。ここは神のお膝元たる教会です。人の階位など神の前に意味は成しません」
ケネス司祭様と王子様が舌戦を繰り広げている間に、見知った司祭様が近くに寄ってきて、足が震えている僕を支えて部屋まで連れて帰ってくれた。王子様のお付きの人が僕たちがその場を立ち去るのを止めようとしたが、それも別の司祭様が間に立って防いでくれた。
部屋に入って、やっと息が吸えるようになると、ケネス司祭様が心配になる。相手は王子って言ってた。どうしよう、僕のせいで教会と王族が対立したら。
落ち着かずに部屋の中をうろうろしていたら、ケネス司祭様が入ってきた。
「ユウさん、大丈夫ですか?何もされませんでいたか?」
「ケネス司祭様、ごめんなさい、僕のせいで、教会が、僕がすぐに引き返せばよかったのに、王子様と対立して、僕のせいで、」
「ユウさん、ユウさん、落ち着いてください。大丈夫です。もともと今はこの奥宮への立ち入りは禁止しているのに、権力を振りかざしてはいってきたのはあちらです」
「でも、僕がいなかったら、」
「ユウさん、深呼吸しましょう。はい、ゆっくり息を吸って」
そんな場合じゃないと思ったけど、ケネス司祭様の掛け声にあわせてブランが深呼吸しているのを見て、少し落ち着いた。スー、ハー。
何があったのか聞かれたが、僕が答える前に、ブランが答えた。そして、その内容を聞いて、この部屋まで連れてきてくれた司祭様が部屋を出て行った。
「愛人とはまた。あの王子殿下は終わりましたね」
「え、そうなんですか?」
「王は貴族におふたりとの接触を控えるように通達しています。そんな中で殿下を庇えば、ドガイ王家に従うものはなくなります。それに、神の怒りで塔の1つくらいは崩壊するかもしれませんし」
あれ、なんかケネス司祭様、ウキウキしてる?ブラン様に剣を向けるとは、あの王子には存分に反省してもらわないといけませんねって、なんか物騒な感じ?
ケネス司祭様ってけっこう思考が武闘派だよね。そして、ブランに塔を吹き飛ばせって言っているような。
不安やいろんな思いが入り乱れてなかなか寝付けず迎えた翌朝、塔はやっぱり吹き飛んでいた。ブランは僕が眠れるまでずっとそばにいてくれたから、僕が寝てから行ったのかな。
塔の付近はもともと人がいないところで、さらに退避命令が出ていたので人的被害はなかったと聞いたが、本当になかったのか、僕には教えてもらえないのかは分からない。王子様はどうなったのか。でも考え出すとまたハマりそうなので、そこにはいなかったということで自分を納得させた。
その後、大司教様経由で、ドガイの王様から謝罪の手紙をもらったけど、返事はしなくていいと言われたのでしていない。
王子様遭遇事件以来、人に会ってトラブルになるのが怖くて、あまり部屋から出ないで過ごしていた数日後、朝ご飯よりも早くアルが来てくれた。ちょうどダンジョンから出たところに教会から連絡があって、急いで戻ってきてくれたそうだ。
「ユウ、大丈夫か?」
「アル、アル……」
言葉にならずに抱き着いた僕を優しく撫でてくれながら、アルはブランからあの時の状況を聞いている。
「つまり、教会の禁止を破ってユウの前に現れた上に、自分のためにスキルを使い、愛人になれと」
『そうだな』
「ユウ、眠れなかったのか?大丈夫か?」
「僕のせいで教会に迷惑をかけてしまって……」
アルが僕の顔色を見て気遣ってくれるので、僕がうまく立ち回れればこんなことにならなかったんじゃないかと、胸の中のモヤモヤが言葉になってあふれでてしまった。
「ユウさん、教会は神の僕です。ブラン様の加護を持つユウさんを守るのは、教会の使命です」
「ユウ、眠れていないから後ろ向きになるんだ。少し食べて、一緒に休もう」
「そうですね。軽いものを運ばせましょう」
ケネス司祭様が朝食を持ってくるように指示を出して、すぐに朝食が用意された。もちろんブランの分もだ。
僕は眠れていないので食欲もあまりなく、果物を少しだけ食べて、アルに抱き込まれてベッドに入った。
「ユウ、王子様に求婚されたら俺を捨てるか?」
「捨てないよ。アルじゃなきゃ嫌だよ」
「よかった」
冗談を言って、額にキスをしてくれる。そんなアルが好きだよ。
アルの温もりと匂いに、心が落ち着いて、寝不足だった僕はすぐに眠りに落ちた。
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