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最終章 手を携えて未来へ
10-19. 付与の新商品開発
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襲撃後、僕と離れている間に腕を上げたアルの努力に釣り合うためにも、僕も付与を頑張ろう。
孤児院出身の子たちが作ってくれたテントと靴への付与は、アイテムボックスに収納して持ってきた分はここに着くまでに全て終わってしまった。
冒険者ギルドに納めるためのアイスの魔石もここのフロアボス戦の合間に集めた大きめの魔石に付与して終わらせた。冒険者ギルドはアイスの魔石を魔物の保存用に使い、定期的に解体の講習を開いているが、かなり好評だと聞いている。
最近では解体初級編、中級編、上級編とレベル分けして講習を行い、初級は小さめのよくいる魔物、中級は大きめのよくいる魔物、上級は少し珍しい魔物らしい。
ギルドは初心者の参加を見込んでいたのに、蓋を開けてみるとベテランの参加が多かったそうだ。そろそろ引退が見えてくると、その後の人生をどうやって生きていくか頭を悩ませる。そんなところに、格安で技術を学べる講習とあって、応募が殺到したそうだ。
講習で使う魔物が足りないので、初心者以外は自分で解体用の魔物を用意すること、としたところ、大きな魔獣を狩ってくるベテランもいて、それで初級、中級、上級と分けたらしい。
話を戻して付与だが、新しい商品を考えたい。
僕の持つアドバンテージは、氷魔法と、付与スキルで魔力を内包しないものにも付与が出来る、という2点だ。つまりこの2つを満たすものは多分僕の独占市場だ。
僕だけではいい案が出なかったので、みんなに聞いてみた。
「コップが冷たいってのはどうだ?冷えた酒がいつでも飲める」
「器の中に常に氷が作られる」
「暑いダンジョンで、服がひんやりしてるとか」
ビールジョッキを凍らせるのと、製氷機と、接触冷感の服だな。
母さんがよく夏にビールジョッキを凍らせていたけど、アイスの魔法を付与するとずっと冷たいままだから、口をつけるジョッキじゃなくてピッチャーのほうが向いているだろう。
接触冷感の服もよさそうだが、こちらは威力の調整をちゃんとしないと冷えすぎたり凍傷の危険がありそうだ。
製氷機は、魔石で作ったほうが効率がいい。魔力を内包しないものへの付与は、僕が付与の時に渡した魔力分しか威力を発揮しないので、魔石に付与した場合よりも効果が弱い。例えば、テントへのクリーンの付与だとテント自体は綺麗になるけど、その周りまで綺麗には出来ない。クリーンの魔石の場合は、魔石の周りのものも綺麗にできる。威力の強さと魔石が不要な軽さのどちらを選ぶかは、用途次第だ。
「教会で売るのか?」
「アイスの付与商品はこのままフェリア商会にお願いしようかなと思ってるんですけど」
「だったら商会に相談してみたら?教会との兼ね合いもあるだろうし、何が売れるかとかも詳しいだろうし」
言われてみるとその通りだ。付与での商売はもともとフェリア商会と始めたから、そのままお願いしたいと思っていたけど、教会でも販売している今、トラブルが起きても困るし、商品の開発から相談してみた方がよさそうだ。
下層2つ目のフロアボスとの戦いの合間に、ブランが連れてきたモンスターを狩って、マジックバッグと魔石を集め続けて1か月。いちおうギルドに許可をもらっている占有期間が終わった。
誰も来ないからこのまま占有し続けても問題ないけど、決まりなので切り上げて、最下層へ向かう。決して僕がもう帰ってお風呂に入りたい雰囲気を出していたからじゃないはずだ。
長かった合宿もいよいよ終わりだ。
昨日は、お昼は各自自分で作るサンドイッチ、夜はホットプレートで作るピザで、今日のための活力を充電した。食事はやっぱり大切だよね。
ガリドラさんは最下層のボス部屋は僕たちと一緒に見学になった。去年は雷の魔剣のせいで金属ゴーレムがバチバチしてしまって、近づけなくて攻撃できなくなるという事態が発生してしまったからだ。普通の剣で参加してもいいけど、使いこなしている魔剣4本で倒せるだろうという目算だ。いざとなればブランが倒してくれるしね。
「金属ゴーレムなんだ」
「あいつは魔法があまり効かないから、タムジェントさんの魔剣でも真っ二つに出来ない」
「どうやって倒すんだ?」
「地道に足を狙って、かなあ。去年はブランが最後に雷一撃で倒しちゃったけど」
あれは本当に驚いたので、今回はもし助けに入るなら氷の矢にしてほしいと何度もお願いしてある。
シリウスの3人が固唾をのんで見守る前で始まったボス戦は、終始優勢に攻撃を仕掛けて、あっさりと勝利で終了した。
攻撃が通りづらいと言っても、獣道の魔剣なしでも時間はかかりながらもなんとか倒した相手だ。普通の剣よりも威力の高い魔剣で代わる代わる攻撃していれば、いずれは関節が壊れる。
アルも最近はずっと獣道と一緒に戦っているので連携もスムーズで、一番体力のないアルがあまり動かなくていいように、獣人3人が動き回って攻撃を分散させ、魔力ポーションで魔力を補充しながら魔剣の攻撃を繰り出していたら、ゴーレムが両足を失って倒れた。そうなれば、タムジェントさんが素早くゴーレムの胴体の上に乗って、ここぞの一撃で外殻ごと核を砕けば終わりだ。
「なんだかあっけなかった」
「凄すぎて、凄さがよく分からない」
「それ分かるわ」
シリウスの3人がぽかんとしているけど、魔剣を持った獣道は本当に最強だ。これでガリドラさんが参加したらどうなっちゃうんだろう。
シリウスの3人が宝箱を開けて、中からマジックバッグを取り出した。ブランに鑑定してもらうと、容量大の時間停止らしいので、ギルドが喜びそうだ。
2か月ぶりの地上は、太陽の光が温かい。
攻略報告にギルドに顔を出すと、王都ニザナのギルドマスターがいた。そういえば、上層で絡んできたパーティーがいたから、その報告かな。
そちらはまだ分かるけど、チルダム司教様とツェルト助祭様までいる。ユウのためか、過保護だな、と獣道が話しているのが聞こえるから、やっぱりトラブルを聞いてきてくれたのだろう。ご迷惑をおかけしてすみません。
冒険者相手に治癒魔法でお小遣い稼ぎをしていたので問題ありませんよ、と茶目っ気たっぷりにチルダム司教様が答えてくれたけど、そういえばチルダム司教様はかなり高位の聖職者で、本来だったらこんなところにふらっと現れるような人じゃない。重ね重ね申し訳ない。
「ユウさん、ここの上層でユウさんに絡んだパーティーはモクリークから追放しました。すでにモクリークから出たことは確認していますが、いちおう身辺に気を付けてください。獣道の皆さんも」
「ありがとうございます」
「それから今後カークトゥルスに潜るための許可には、ギルドからの推薦状を必須にしました。すでに潜ったことのある冒険者は不要です」
「ほお、思い切ったことをするな」
「我々冒険者ギルドとしては、カークトゥルスが無法地帯になることは何よりも避けたいのです。ここは最重要ダンジョンですから」
ダンジョン内で犯罪があったとしても、ダンジョンに吸収されてしまうので証拠が残らない。他の冒険者を襲ってマジックバッグを手に入れる、というような犯罪が横行するようになれば、ここに潜る冒険者も減り、結果的にギルドの売り上げも減る。サネバの軍も入っているからそんなことにはならないだろうけど、ここのダンジョンをきちんと管理下に置いておきたいのは理解できる。
ところでマジックバッグはいくつ買取に出していただけるのでしょうか、という言葉に、話は僕たちの取ってきたマジックバッグに移った。
今回も鑑定士が2人待機している。
「下層1つ目で6、下層2つ目で120、最下層で1だ。今回は全部買取でいい。金は全て氷花へ。俺たちは魔剣と相殺だ」
「分かりました」
ただのバッグも120も積み上げれば山になる。鑑定士さんがまたかって顔をしているけど、頑張ってください。
鑑定士さんが鑑定している間に、世間話になった。
ここサネバのギルドマスターによると、ユラカヒのミランさんとクルーロさんの2パーティーが、春から最下層の攻略と、下層2つ目の占有を計画しているそうだ。前回手に入れたマジックバッグでまず寄付用のマジックバッグを入手してから最下層を攻略して、2回目の攻略で10日間占有して売りに出す用のマジックバッグを入手し、再度最下層の攻略をしてから地上に戻る予定だそうだ。
「氷花が提供してくれたマジックバッグに助けられたから、あふれの対策に使えるようにマジックバッグを出来る限り取ってきたいそうだ」
「この夏にタペラを一緒に攻略して来たが、あいつらなら最下層も大丈夫だろう」
「獣道がそういうなら大丈夫そうだな。あいつらを失うと、ユラカヒのギルドが嘆く」
潜っているダンジョンがあふれるという経験を共に潜り抜けたあの2パーティーなら、最下層のマジックバッグでもめることもないだろう。
僕たちと軍を除いて、初の占有権行使になるかもしれない。無事に最下層も攻略して戻ってほしい。
マジックバッグはブランの鑑定結果と変わりがなかったので、そのまま全部買い取ってもらった。
僕たちが使う分は十分に予備があるし、教会への寄付も信者からの寄付で購入するからと断られてしまったのだ。
ブランの恩恵だけど、僕が教会に滞在することでかかる費用はすべて教会が負担しているので、そのお礼としてモクリークでも中央教会やここに来る途中に訪れた教会の聖堂にクリーンを付与した。それでもまだ受けている恩の分を返せていない気がする。
ちなみに教会で経営している付与のお店で販売している商品の付与の代金は貰っている。これは今後の付与スキル持ちの人が現れた場合を考えると、受け取っておいたほうが良いという理由からだ。
教会のつながりで、薬師ギルドの調薬室の床にもクリーンの付与をしている。
治癒魔法とポーションという、治癒に関連して協力関係にある教会と薬師ギルドはつながりが深い。僕が聖堂にクリーンの付与をしたことを知った薬師ギルドから、とても控えめに、もし可能ならという感じで打診があったそうだ。ポーションを作るのに清潔さは重要だろうし、クリーンの魔石を置くと調薬に影響が出るらしいので依頼を受けたが、それ以外はすべて断ってもらっている。
何はともあれ今年も合宿が無事に終了したので、明日はブランと獣道のお気に入り、チーズフォンデュで打ち上げだ。
どうして明日なのかというと、もちろん今日は僕がゆっくりお風呂に入るからだ。
孤児院出身の子たちが作ってくれたテントと靴への付与は、アイテムボックスに収納して持ってきた分はここに着くまでに全て終わってしまった。
冒険者ギルドに納めるためのアイスの魔石もここのフロアボス戦の合間に集めた大きめの魔石に付与して終わらせた。冒険者ギルドはアイスの魔石を魔物の保存用に使い、定期的に解体の講習を開いているが、かなり好評だと聞いている。
最近では解体初級編、中級編、上級編とレベル分けして講習を行い、初級は小さめのよくいる魔物、中級は大きめのよくいる魔物、上級は少し珍しい魔物らしい。
ギルドは初心者の参加を見込んでいたのに、蓋を開けてみるとベテランの参加が多かったそうだ。そろそろ引退が見えてくると、その後の人生をどうやって生きていくか頭を悩ませる。そんなところに、格安で技術を学べる講習とあって、応募が殺到したそうだ。
講習で使う魔物が足りないので、初心者以外は自分で解体用の魔物を用意すること、としたところ、大きな魔獣を狩ってくるベテランもいて、それで初級、中級、上級と分けたらしい。
話を戻して付与だが、新しい商品を考えたい。
僕の持つアドバンテージは、氷魔法と、付与スキルで魔力を内包しないものにも付与が出来る、という2点だ。つまりこの2つを満たすものは多分僕の独占市場だ。
僕だけではいい案が出なかったので、みんなに聞いてみた。
「コップが冷たいってのはどうだ?冷えた酒がいつでも飲める」
「器の中に常に氷が作られる」
「暑いダンジョンで、服がひんやりしてるとか」
ビールジョッキを凍らせるのと、製氷機と、接触冷感の服だな。
母さんがよく夏にビールジョッキを凍らせていたけど、アイスの魔法を付与するとずっと冷たいままだから、口をつけるジョッキじゃなくてピッチャーのほうが向いているだろう。
接触冷感の服もよさそうだが、こちらは威力の調整をちゃんとしないと冷えすぎたり凍傷の危険がありそうだ。
製氷機は、魔石で作ったほうが効率がいい。魔力を内包しないものへの付与は、僕が付与の時に渡した魔力分しか威力を発揮しないので、魔石に付与した場合よりも効果が弱い。例えば、テントへのクリーンの付与だとテント自体は綺麗になるけど、その周りまで綺麗には出来ない。クリーンの魔石の場合は、魔石の周りのものも綺麗にできる。威力の強さと魔石が不要な軽さのどちらを選ぶかは、用途次第だ。
「教会で売るのか?」
「アイスの付与商品はこのままフェリア商会にお願いしようかなと思ってるんですけど」
「だったら商会に相談してみたら?教会との兼ね合いもあるだろうし、何が売れるかとかも詳しいだろうし」
言われてみるとその通りだ。付与での商売はもともとフェリア商会と始めたから、そのままお願いしたいと思っていたけど、教会でも販売している今、トラブルが起きても困るし、商品の開発から相談してみた方がよさそうだ。
下層2つ目のフロアボスとの戦いの合間に、ブランが連れてきたモンスターを狩って、マジックバッグと魔石を集め続けて1か月。いちおうギルドに許可をもらっている占有期間が終わった。
誰も来ないからこのまま占有し続けても問題ないけど、決まりなので切り上げて、最下層へ向かう。決して僕がもう帰ってお風呂に入りたい雰囲気を出していたからじゃないはずだ。
長かった合宿もいよいよ終わりだ。
昨日は、お昼は各自自分で作るサンドイッチ、夜はホットプレートで作るピザで、今日のための活力を充電した。食事はやっぱり大切だよね。
ガリドラさんは最下層のボス部屋は僕たちと一緒に見学になった。去年は雷の魔剣のせいで金属ゴーレムがバチバチしてしまって、近づけなくて攻撃できなくなるという事態が発生してしまったからだ。普通の剣で参加してもいいけど、使いこなしている魔剣4本で倒せるだろうという目算だ。いざとなればブランが倒してくれるしね。
「金属ゴーレムなんだ」
「あいつは魔法があまり効かないから、タムジェントさんの魔剣でも真っ二つに出来ない」
「どうやって倒すんだ?」
「地道に足を狙って、かなあ。去年はブランが最後に雷一撃で倒しちゃったけど」
あれは本当に驚いたので、今回はもし助けに入るなら氷の矢にしてほしいと何度もお願いしてある。
シリウスの3人が固唾をのんで見守る前で始まったボス戦は、終始優勢に攻撃を仕掛けて、あっさりと勝利で終了した。
攻撃が通りづらいと言っても、獣道の魔剣なしでも時間はかかりながらもなんとか倒した相手だ。普通の剣よりも威力の高い魔剣で代わる代わる攻撃していれば、いずれは関節が壊れる。
アルも最近はずっと獣道と一緒に戦っているので連携もスムーズで、一番体力のないアルがあまり動かなくていいように、獣人3人が動き回って攻撃を分散させ、魔力ポーションで魔力を補充しながら魔剣の攻撃を繰り出していたら、ゴーレムが両足を失って倒れた。そうなれば、タムジェントさんが素早くゴーレムの胴体の上に乗って、ここぞの一撃で外殻ごと核を砕けば終わりだ。
「なんだかあっけなかった」
「凄すぎて、凄さがよく分からない」
「それ分かるわ」
シリウスの3人がぽかんとしているけど、魔剣を持った獣道は本当に最強だ。これでガリドラさんが参加したらどうなっちゃうんだろう。
シリウスの3人が宝箱を開けて、中からマジックバッグを取り出した。ブランに鑑定してもらうと、容量大の時間停止らしいので、ギルドが喜びそうだ。
2か月ぶりの地上は、太陽の光が温かい。
攻略報告にギルドに顔を出すと、王都ニザナのギルドマスターがいた。そういえば、上層で絡んできたパーティーがいたから、その報告かな。
そちらはまだ分かるけど、チルダム司教様とツェルト助祭様までいる。ユウのためか、過保護だな、と獣道が話しているのが聞こえるから、やっぱりトラブルを聞いてきてくれたのだろう。ご迷惑をおかけしてすみません。
冒険者相手に治癒魔法でお小遣い稼ぎをしていたので問題ありませんよ、と茶目っ気たっぷりにチルダム司教様が答えてくれたけど、そういえばチルダム司教様はかなり高位の聖職者で、本来だったらこんなところにふらっと現れるような人じゃない。重ね重ね申し訳ない。
「ユウさん、ここの上層でユウさんに絡んだパーティーはモクリークから追放しました。すでにモクリークから出たことは確認していますが、いちおう身辺に気を付けてください。獣道の皆さんも」
「ありがとうございます」
「それから今後カークトゥルスに潜るための許可には、ギルドからの推薦状を必須にしました。すでに潜ったことのある冒険者は不要です」
「ほお、思い切ったことをするな」
「我々冒険者ギルドとしては、カークトゥルスが無法地帯になることは何よりも避けたいのです。ここは最重要ダンジョンですから」
ダンジョン内で犯罪があったとしても、ダンジョンに吸収されてしまうので証拠が残らない。他の冒険者を襲ってマジックバッグを手に入れる、というような犯罪が横行するようになれば、ここに潜る冒険者も減り、結果的にギルドの売り上げも減る。サネバの軍も入っているからそんなことにはならないだろうけど、ここのダンジョンをきちんと管理下に置いておきたいのは理解できる。
ところでマジックバッグはいくつ買取に出していただけるのでしょうか、という言葉に、話は僕たちの取ってきたマジックバッグに移った。
今回も鑑定士が2人待機している。
「下層1つ目で6、下層2つ目で120、最下層で1だ。今回は全部買取でいい。金は全て氷花へ。俺たちは魔剣と相殺だ」
「分かりました」
ただのバッグも120も積み上げれば山になる。鑑定士さんがまたかって顔をしているけど、頑張ってください。
鑑定士さんが鑑定している間に、世間話になった。
ここサネバのギルドマスターによると、ユラカヒのミランさんとクルーロさんの2パーティーが、春から最下層の攻略と、下層2つ目の占有を計画しているそうだ。前回手に入れたマジックバッグでまず寄付用のマジックバッグを入手してから最下層を攻略して、2回目の攻略で10日間占有して売りに出す用のマジックバッグを入手し、再度最下層の攻略をしてから地上に戻る予定だそうだ。
「氷花が提供してくれたマジックバッグに助けられたから、あふれの対策に使えるようにマジックバッグを出来る限り取ってきたいそうだ」
「この夏にタペラを一緒に攻略して来たが、あいつらなら最下層も大丈夫だろう」
「獣道がそういうなら大丈夫そうだな。あいつらを失うと、ユラカヒのギルドが嘆く」
潜っているダンジョンがあふれるという経験を共に潜り抜けたあの2パーティーなら、最下層のマジックバッグでもめることもないだろう。
僕たちと軍を除いて、初の占有権行使になるかもしれない。無事に最下層も攻略して戻ってほしい。
マジックバッグはブランの鑑定結果と変わりがなかったので、そのまま全部買い取ってもらった。
僕たちが使う分は十分に予備があるし、教会への寄付も信者からの寄付で購入するからと断られてしまったのだ。
ブランの恩恵だけど、僕が教会に滞在することでかかる費用はすべて教会が負担しているので、そのお礼としてモクリークでも中央教会やここに来る途中に訪れた教会の聖堂にクリーンを付与した。それでもまだ受けている恩の分を返せていない気がする。
ちなみに教会で経営している付与のお店で販売している商品の付与の代金は貰っている。これは今後の付与スキル持ちの人が現れた場合を考えると、受け取っておいたほうが良いという理由からだ。
教会のつながりで、薬師ギルドの調薬室の床にもクリーンの付与をしている。
治癒魔法とポーションという、治癒に関連して協力関係にある教会と薬師ギルドはつながりが深い。僕が聖堂にクリーンの付与をしたことを知った薬師ギルドから、とても控えめに、もし可能ならという感じで打診があったそうだ。ポーションを作るのに清潔さは重要だろうし、クリーンの魔石を置くと調薬に影響が出るらしいので依頼を受けたが、それ以外はすべて断ってもらっている。
何はともあれ今年も合宿が無事に終了したので、明日はブランと獣道のお気に入り、チーズフォンデュで打ち上げだ。
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