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3章 アルの里帰り
3-6. 昔のパーティーメンバー
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夕食は、小さな晩餐会って感じでした。晩餐会出たことないから知らないけど。
1日だけご辛抱くださいって言われたので、無の境地で乗り切った。主役はブランだ。
ブランの食事は、テーブル上にきれいな食器に入れて提供されていて、机の上に乗っていいと言われたんだけど、いつものシルバーウルフに変身して椅子に座って食べていた。
食後に、確認していただきたいものがありますと連れていかれた部屋には、屋台のお肉料理が少しずつお皿に乗せられ、部屋いっぱいに並んでいました。ほんとに見習いさんたちが買ってきてくれたようです。
ゆっくり順に歩いて、気になるお肉の前で立ち止まって食べた。え、ご飯いっぱい食べたよね?司教様たちが、足りなかったのか、と焦っている。
「ブラン、食べすぎじゃない?」
『肉は別腹だ』
ブランに取ってお肉はデザートなのか。初めて知ったよ。
結局、気になるものは全部平らげて、とっても満足気。ご機嫌は直ったみたいでよかった。
助祭様の一人が、ブランが食べたお肉を買ったお店を、屋台広場の地図に書き込んだものをくれた。アルに分かる?と渡したら、助祭様に確認していたので、たぶん大丈夫そうだ。
泊めてもらうお部屋に案内されてるんですが、ここは世界遺産の宮殿でしょうか?
「普通のお部屋はありませんか……」
ブランに泊まってもらえるお部屋はここしかないのでご容赦をって。
教会は基本的には清貧だが、信仰を集めるためには見かけも重要だから、対外的なアピールの部分は豪華だ。今日の大司教様の服装も、かなり気合入ってたもんね。
分かるよ、分かるんだけどね、庶民なの、一般市民なの。
明日のご飯は普通でお願いします!って言ってみたけど、無言で微笑まれた。
知ってる、これダメなやつだ。
朝御飯は豪華でした。肉々しい方面で。
昨日の夕食後にブランが別腹でお肉をたくさん食べたせいでしょう。ごめんなさい。
ブラン様は、朝からお肉たくさん食べてご機嫌です。よかった。
今日は、まず馬車を返し、昨日のリストアップした屋台で買い込んで、ギルドに行って指名依頼を受ける。
アルの元パーティーメンバーは、教会が全面協力で、日程調整してくれるらしい。すごいな。
「ブラン、ダンジョン行くのに、ブランに乗っていくのと、馬車で行くの、どっちがいい?」
『馬車で行くのはいいとして、ダンジョンに潜ってる間、馬はどうするつもりだ?』
そう言われて気づく。計画倒れでした。馬車の旅、楽しかったからもっと続けたかったけど、無理でした。
馬車を返し、お馬さんとお別れだ。つぶらな瞳が可愛かったのに。寂しい。
タゴヤの屋台広場はとにかく広かった。確かにこれだと1日かかる。
昨日作ってもらったリストのお店に、順番に行ってまず注文を済ませる。最初の店から、受け取って行く。
今回は、アルと僕で半分ずつだ。
アルは、ダンジョンでドロップした時間停止のマジックバッグを持っている。こちらもバレると面倒なので、時間停止がない振りをして、ちょっとでもトラブル回避を狙う。
熱々がいいものは僕で、冷めても美味しいものはアル。
気にしているのは市中で絡まれることだ。国にはアイテムボックスはばれているし、横やりは教会と冒険者ギルドが潰してくれるはず。
昨日、屋台のお肉を片っ端から集めてくれた見習いさんのおかげで、屋台のお買い物はお昼すぎで終わった。
冒険者ギルドに入ると、こちらから声をかける前に職員さんが飛んできて、流れるようにギルドマスターの部屋に案内された。案内してくれる職員さんの顔に「ギルド内で誰かが絡んでトラブル起きたら困りますので!」と書いてある。
指名依頼の手続きをしているが、もう1つ条件を追加してもらった。国及び王侯貴族からの指名依頼は一切受けない、だ。
条件の追加をと切り出した時に、ギルドマスターがものすごい警戒していたけど、内容を聞いてそれならと承諾してくれた。
おそらく今後「神のお告げ」が広まれば、上級ダンジョンの攻略依頼が増えるだろう。こうしてタゴヤギルドの依頼を受けたのだから、他からも来そうだ。その時に、権力にものを言わせて依頼されるのを防ぎたい。
それから、モクリークのギルドへ僕たちの状況を伝えてもらうようお願いした。
ギルドは通信用の魔道具を持っているので、連絡が取れる。手紙では時間がかかるのでギルドにお願いするが、本来国を越えて私信での使用は禁止されている。ギルド間の情報共有みたいな形で、上手いことやっておくと請け負ってくれた。
冒険者はどこかのギルドの所属とか専属のように縛られてはいないけれど、ホームグラウンドみたいなところはある。
「獣道」みたいに年中移動しているパーティーは少数派で、数年はここをメインに活動という場所を持つ冒険者が多い。ギルドはそういう冒険者に長くいてもらいたいので、多少は優遇してくれる。
僕たちは、ここ5年くらいモクリーク国内で活動していたので、モクリークがホームだと認識されていた。そうなるように、モクリークの国もギルドも、僕のスキルにまつわるトラブル回避に全力で対応してくれていた。そのことにはとても感謝している。モクリークにいる限り、貴族の横やりやスキルで絡まれる心配をしなくてよかった。その恩恵を、現在進行形で実感している。
今回、僕たちは、辺境の小さなギルドに「ちょっとドガイへ出かけてきます」と言って、道なき山を越えてしまった。そして、教会関係者と接触している。
この行動は事情を知らなければ、モクリークと何かあって、ドガイの教会に保護を求めた、としか見えないのだ。
でも実際は、ケネス司祭様の言葉を借りるなら「アルの里帰り」なので、他意はないし、用事を終えたらモクリークに戻る予定だ。
混乱させて本当に申し訳ない。
「アレックス、お前の知り合いのパーティーな、マグノリアはタガミハのダンジョンアタック中らしい。カレンデュラはここのダンジョンアタック中だ。下層階に行っているのでしばらく帰ってこないな」
残念だなあ。ダンジョンに会いに行く?
夕食は、お部屋に用意してもらえるということで、シュレム司祭様とケネス司祭様も一緒にと誘った。
ブランのための肉々しい食事は、見ているだけでお腹がいっぱいになりそう。
「明日の昼食は、アレックスさんの元パーティーメンバーをお招きしています。ブラン様とユウさんも一緒でよろしいですか?」
「はい。今のパーティーメンバーとして紹介したいので、お願いします」
「じゃあ僕とブランはお食事だけで、その後はみんなと話してね」
「ユウさん、その間に中央教会の中をご案内しましょうか?」
「よろしくお願いします!あ、ブランを連れて教会内を歩いたら、昨日の大司教様のように、行く先々で皆さん跪いたりとかにならないですか?」
『あれは、神気をまったく抑えていなかったからだ。もう抑えている』
昨日、僕にペット扱いされてご機嫌斜めなブラン様は、全方位に威嚇していたらしい。受信アンテナを持っていない僕には全く伝わっていなかったけど。
そのせいで、僕たちが教会に入った時点で「何か来た!まさか神の降臨か?!」と教会の、特に階位の高い方々はパニックになっていた。シュレム司祭様は、ブランがバッグの中にいるのを見た時は、自分の目が信じられなかったって。
まあ、おかげで、タゴヤの教会が僕たち(正確にはブラン)の後ろ盾になってくれたので、よかったのだろう。
今日はアルの元パーティーメンバーに会う日だ。
アルがなんとなく緊張しているので、午前中はお部屋でのんびりごろごろしようと決めて、大きくなったブランの毛に埋まりながらブラッシングしている。
ブランが神獣だってことは誰も明言していないけど、司教様たちはみんな知っている状況だ。
あわよくばブランを手に入れて、って思う人が出てこないといいなあ。ブランにかかれば全て力業で解決できるんだろうけど、権力とかめんどくさそうだな、と心配していたら、教会で権力を握れるほどの実力がある者はブランの神気で震えあがっているから、大丈夫だって。もしかして威嚇してたのって、そのためだった?
少し早めに昼食会場に行って、元パーティーメンバーを待つことにした。ブランはいつものシルバーウルフになっている。
「大丈夫だよ。カリラスさんとも仲直りできたんだし」
緊張しているのが分かるアルの手をそっと握って励ます。
ブランがアルの足を尻尾でゆるくたたいている。ブランなりの励ましなのだろう。ツンデレさんだ。
「ユウは、手を繋ぐのが好きだよな」
「そうかな?子どものころ、よく迷子になるからって出かけるときはいつも兄さんか姉さんと手を繋いでたから、それかも」
「じゃあ、これから市場では手を繋がないとな」
アルがふっと笑ってくれたので、僕の迷子体験も役に立ったかも。
扉のノック音のあと、男女3人が案内されてきた。
「アレックス……」
そう言ったまま言葉にならず、駆け寄ってきて4人で抱き合っている。
「無事でよかった」
「お前なあ、なんで相談しなかったんだよ」
「心配したのよ」
「悪かった」
彼らが落ち着くのを待って、お食事をお持ちしますね、と案内の助祭様が出て行った。
アルが僕とブランを今のパーティーメンバーと紹介し、彼らの紹介もしてくれた。
彼らは男性が拳闘士、女性が剣士と魔法使いだった。パーティーでは、カリラスとアレックスが最年少で、拳闘士さんと亡くなった盾士さんが最年長だった。
食事が運ばれてきたところで席に着いて、「教会から使いが来て驚いた」「何がどうなっているの?」という彼らにアルが、今の僕たちの状況を説明する。
「Sランクって噂には聞いてたけど、ほんとだったんだな」
「アイテムボックス持ちが買った戦闘奴隷がアレックスじゃないかって、一時期噂になったのよ。私にも聞きに来た人いたんだから」
「それよりカリラスには会ったのか?あいつ本当に心配してたんだぞ」
「最初にタサマラに行って会って来たよ。殴られた」
「それくらいは甘んじて受けろ」
冒険者をやめた後何をしているのかに話が移って、魔法使いの女性が「私今は子どもいるのよ」と言ったときに、アルがものすごく驚いていた。
その反応の理由が分からない、というのが顔に出ていたようで、魔法使いの女性が説明してくれた。
「私ね、亡くなった盾士の恋人だったの。あの時、アレックスだけパーティーから離れた場所にいたのよ。それで自分だけ助かったって自分を責めてね、借金奴隷にまでなっちゃって。カリラスには必要だったけど、私たちの治療はなくても命の危険はなかったのに」
「ただでさえアレックスに一生返せない借りができたのに、Sランクって何で返せばいいのよ。身体で払おうか?私は今フリーだから」
「やめなさい、アレックスだって相手は選びたいわよ」
「困ったときは言ってくれ、出来ることならするから。でも身体は、勘弁してくれ」
みんな優しいなあ、パーティーっていいなあ。と見ていたら、僕にも質問が飛んできた。
「ユウくんは、なんでアレックスを選んだの?」
「スキルでごたごたがあったので、Cランク以上の、ギルドとの交渉とかを任せられる人がよかったんですけど、だいたいギャンブルかお酒で借金作っちゃった人ばっかりで、依頼の違約金の人も、無謀な依頼で失敗したんだなっていう人しかいなかったんです。アルは受け答えもすごくしっかりしてて、最初からこの人良いなって思いました」
「一目惚れだったのね」
「えぇぇ?!」
「あら、隠してたの?ごめんなさい。あなたたちの態度が全然隠してないから」
「ユウは恥ずかしがり屋なんだ」
そんなに態度に出てるの?恥ずかしくて、顔が赤くなったのが自分でも分かるのに、アルは平然としている。大人の余裕みたいで、悔しいけど、かっこいい。
そろそろご飯も終わりだし、僕いなくなってもいいよね?
1日だけご辛抱くださいって言われたので、無の境地で乗り切った。主役はブランだ。
ブランの食事は、テーブル上にきれいな食器に入れて提供されていて、机の上に乗っていいと言われたんだけど、いつものシルバーウルフに変身して椅子に座って食べていた。
食後に、確認していただきたいものがありますと連れていかれた部屋には、屋台のお肉料理が少しずつお皿に乗せられ、部屋いっぱいに並んでいました。ほんとに見習いさんたちが買ってきてくれたようです。
ゆっくり順に歩いて、気になるお肉の前で立ち止まって食べた。え、ご飯いっぱい食べたよね?司教様たちが、足りなかったのか、と焦っている。
「ブラン、食べすぎじゃない?」
『肉は別腹だ』
ブランに取ってお肉はデザートなのか。初めて知ったよ。
結局、気になるものは全部平らげて、とっても満足気。ご機嫌は直ったみたいでよかった。
助祭様の一人が、ブランが食べたお肉を買ったお店を、屋台広場の地図に書き込んだものをくれた。アルに分かる?と渡したら、助祭様に確認していたので、たぶん大丈夫そうだ。
泊めてもらうお部屋に案内されてるんですが、ここは世界遺産の宮殿でしょうか?
「普通のお部屋はありませんか……」
ブランに泊まってもらえるお部屋はここしかないのでご容赦をって。
教会は基本的には清貧だが、信仰を集めるためには見かけも重要だから、対外的なアピールの部分は豪華だ。今日の大司教様の服装も、かなり気合入ってたもんね。
分かるよ、分かるんだけどね、庶民なの、一般市民なの。
明日のご飯は普通でお願いします!って言ってみたけど、無言で微笑まれた。
知ってる、これダメなやつだ。
朝御飯は豪華でした。肉々しい方面で。
昨日の夕食後にブランが別腹でお肉をたくさん食べたせいでしょう。ごめんなさい。
ブラン様は、朝からお肉たくさん食べてご機嫌です。よかった。
今日は、まず馬車を返し、昨日のリストアップした屋台で買い込んで、ギルドに行って指名依頼を受ける。
アルの元パーティーメンバーは、教会が全面協力で、日程調整してくれるらしい。すごいな。
「ブラン、ダンジョン行くのに、ブランに乗っていくのと、馬車で行くの、どっちがいい?」
『馬車で行くのはいいとして、ダンジョンに潜ってる間、馬はどうするつもりだ?』
そう言われて気づく。計画倒れでした。馬車の旅、楽しかったからもっと続けたかったけど、無理でした。
馬車を返し、お馬さんとお別れだ。つぶらな瞳が可愛かったのに。寂しい。
タゴヤの屋台広場はとにかく広かった。確かにこれだと1日かかる。
昨日作ってもらったリストのお店に、順番に行ってまず注文を済ませる。最初の店から、受け取って行く。
今回は、アルと僕で半分ずつだ。
アルは、ダンジョンでドロップした時間停止のマジックバッグを持っている。こちらもバレると面倒なので、時間停止がない振りをして、ちょっとでもトラブル回避を狙う。
熱々がいいものは僕で、冷めても美味しいものはアル。
気にしているのは市中で絡まれることだ。国にはアイテムボックスはばれているし、横やりは教会と冒険者ギルドが潰してくれるはず。
昨日、屋台のお肉を片っ端から集めてくれた見習いさんのおかげで、屋台のお買い物はお昼すぎで終わった。
冒険者ギルドに入ると、こちらから声をかける前に職員さんが飛んできて、流れるようにギルドマスターの部屋に案内された。案内してくれる職員さんの顔に「ギルド内で誰かが絡んでトラブル起きたら困りますので!」と書いてある。
指名依頼の手続きをしているが、もう1つ条件を追加してもらった。国及び王侯貴族からの指名依頼は一切受けない、だ。
条件の追加をと切り出した時に、ギルドマスターがものすごい警戒していたけど、内容を聞いてそれならと承諾してくれた。
おそらく今後「神のお告げ」が広まれば、上級ダンジョンの攻略依頼が増えるだろう。こうしてタゴヤギルドの依頼を受けたのだから、他からも来そうだ。その時に、権力にものを言わせて依頼されるのを防ぎたい。
それから、モクリークのギルドへ僕たちの状況を伝えてもらうようお願いした。
ギルドは通信用の魔道具を持っているので、連絡が取れる。手紙では時間がかかるのでギルドにお願いするが、本来国を越えて私信での使用は禁止されている。ギルド間の情報共有みたいな形で、上手いことやっておくと請け負ってくれた。
冒険者はどこかのギルドの所属とか専属のように縛られてはいないけれど、ホームグラウンドみたいなところはある。
「獣道」みたいに年中移動しているパーティーは少数派で、数年はここをメインに活動という場所を持つ冒険者が多い。ギルドはそういう冒険者に長くいてもらいたいので、多少は優遇してくれる。
僕たちは、ここ5年くらいモクリーク国内で活動していたので、モクリークがホームだと認識されていた。そうなるように、モクリークの国もギルドも、僕のスキルにまつわるトラブル回避に全力で対応してくれていた。そのことにはとても感謝している。モクリークにいる限り、貴族の横やりやスキルで絡まれる心配をしなくてよかった。その恩恵を、現在進行形で実感している。
今回、僕たちは、辺境の小さなギルドに「ちょっとドガイへ出かけてきます」と言って、道なき山を越えてしまった。そして、教会関係者と接触している。
この行動は事情を知らなければ、モクリークと何かあって、ドガイの教会に保護を求めた、としか見えないのだ。
でも実際は、ケネス司祭様の言葉を借りるなら「アルの里帰り」なので、他意はないし、用事を終えたらモクリークに戻る予定だ。
混乱させて本当に申し訳ない。
「アレックス、お前の知り合いのパーティーな、マグノリアはタガミハのダンジョンアタック中らしい。カレンデュラはここのダンジョンアタック中だ。下層階に行っているのでしばらく帰ってこないな」
残念だなあ。ダンジョンに会いに行く?
夕食は、お部屋に用意してもらえるということで、シュレム司祭様とケネス司祭様も一緒にと誘った。
ブランのための肉々しい食事は、見ているだけでお腹がいっぱいになりそう。
「明日の昼食は、アレックスさんの元パーティーメンバーをお招きしています。ブラン様とユウさんも一緒でよろしいですか?」
「はい。今のパーティーメンバーとして紹介したいので、お願いします」
「じゃあ僕とブランはお食事だけで、その後はみんなと話してね」
「ユウさん、その間に中央教会の中をご案内しましょうか?」
「よろしくお願いします!あ、ブランを連れて教会内を歩いたら、昨日の大司教様のように、行く先々で皆さん跪いたりとかにならないですか?」
『あれは、神気をまったく抑えていなかったからだ。もう抑えている』
昨日、僕にペット扱いされてご機嫌斜めなブラン様は、全方位に威嚇していたらしい。受信アンテナを持っていない僕には全く伝わっていなかったけど。
そのせいで、僕たちが教会に入った時点で「何か来た!まさか神の降臨か?!」と教会の、特に階位の高い方々はパニックになっていた。シュレム司祭様は、ブランがバッグの中にいるのを見た時は、自分の目が信じられなかったって。
まあ、おかげで、タゴヤの教会が僕たち(正確にはブラン)の後ろ盾になってくれたので、よかったのだろう。
今日はアルの元パーティーメンバーに会う日だ。
アルがなんとなく緊張しているので、午前中はお部屋でのんびりごろごろしようと決めて、大きくなったブランの毛に埋まりながらブラッシングしている。
ブランが神獣だってことは誰も明言していないけど、司教様たちはみんな知っている状況だ。
あわよくばブランを手に入れて、って思う人が出てこないといいなあ。ブランにかかれば全て力業で解決できるんだろうけど、権力とかめんどくさそうだな、と心配していたら、教会で権力を握れるほどの実力がある者はブランの神気で震えあがっているから、大丈夫だって。もしかして威嚇してたのって、そのためだった?
少し早めに昼食会場に行って、元パーティーメンバーを待つことにした。ブランはいつものシルバーウルフになっている。
「大丈夫だよ。カリラスさんとも仲直りできたんだし」
緊張しているのが分かるアルの手をそっと握って励ます。
ブランがアルの足を尻尾でゆるくたたいている。ブランなりの励ましなのだろう。ツンデレさんだ。
「ユウは、手を繋ぐのが好きだよな」
「そうかな?子どものころ、よく迷子になるからって出かけるときはいつも兄さんか姉さんと手を繋いでたから、それかも」
「じゃあ、これから市場では手を繋がないとな」
アルがふっと笑ってくれたので、僕の迷子体験も役に立ったかも。
扉のノック音のあと、男女3人が案内されてきた。
「アレックス……」
そう言ったまま言葉にならず、駆け寄ってきて4人で抱き合っている。
「無事でよかった」
「お前なあ、なんで相談しなかったんだよ」
「心配したのよ」
「悪かった」
彼らが落ち着くのを待って、お食事をお持ちしますね、と案内の助祭様が出て行った。
アルが僕とブランを今のパーティーメンバーと紹介し、彼らの紹介もしてくれた。
彼らは男性が拳闘士、女性が剣士と魔法使いだった。パーティーでは、カリラスとアレックスが最年少で、拳闘士さんと亡くなった盾士さんが最年長だった。
食事が運ばれてきたところで席に着いて、「教会から使いが来て驚いた」「何がどうなっているの?」という彼らにアルが、今の僕たちの状況を説明する。
「Sランクって噂には聞いてたけど、ほんとだったんだな」
「アイテムボックス持ちが買った戦闘奴隷がアレックスじゃないかって、一時期噂になったのよ。私にも聞きに来た人いたんだから」
「それよりカリラスには会ったのか?あいつ本当に心配してたんだぞ」
「最初にタサマラに行って会って来たよ。殴られた」
「それくらいは甘んじて受けろ」
冒険者をやめた後何をしているのかに話が移って、魔法使いの女性が「私今は子どもいるのよ」と言ったときに、アルがものすごく驚いていた。
その反応の理由が分からない、というのが顔に出ていたようで、魔法使いの女性が説明してくれた。
「私ね、亡くなった盾士の恋人だったの。あの時、アレックスだけパーティーから離れた場所にいたのよ。それで自分だけ助かったって自分を責めてね、借金奴隷にまでなっちゃって。カリラスには必要だったけど、私たちの治療はなくても命の危険はなかったのに」
「ただでさえアレックスに一生返せない借りができたのに、Sランクって何で返せばいいのよ。身体で払おうか?私は今フリーだから」
「やめなさい、アレックスだって相手は選びたいわよ」
「困ったときは言ってくれ、出来ることならするから。でも身体は、勘弁してくれ」
みんな優しいなあ、パーティーっていいなあ。と見ていたら、僕にも質問が飛んできた。
「ユウくんは、なんでアレックスを選んだの?」
「スキルでごたごたがあったので、Cランク以上の、ギルドとの交渉とかを任せられる人がよかったんですけど、だいたいギャンブルかお酒で借金作っちゃった人ばっかりで、依頼の違約金の人も、無謀な依頼で失敗したんだなっていう人しかいなかったんです。アルは受け答えもすごくしっかりしてて、最初からこの人良いなって思いました」
「一目惚れだったのね」
「えぇぇ?!」
「あら、隠してたの?ごめんなさい。あなたたちの態度が全然隠してないから」
「ユウは恥ずかしがり屋なんだ」
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