世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 1章 神なる存在

11-11. 友との会話

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「まさか貴方が神獣様の契約者になるとは。アレックス様と呼ぶべきでしょうか」
「ご容赦を。サリュー司祭様には情けないところをたくさん見られていますから」
「どうか、サリューとお呼びください」
「では、今までのようにアレックスでお願いします」
「お言葉に甘えて。神獣の契約者であるアレックスの恥ずかしい過去を話せば、皆さん大喜びでしょうね」

 言葉遣いが戻ったと思ったら、話もいつものやりとりに戻った。
 だが、暴露話はやめてほしい。成人したてのころから戦闘奴隷になるまで何かと関わりのあったサリューは、いろいろと知っている。下手に話して、セレナのときのような波風を立てないでほしい。

 今はサリューと二人で飲んでいるが、二人での飲み会を提案したユウは部屋で休んでいる。リネは、教会内のどこかにいるだろう。
 襲撃後にドガイに滞在していたときはユウのそばを離れられなかったし、ゆっくりと話すような気分でもなかったから、サリューと二人で話すのは久しぶりだ。

 サリューにドガイの冒険者たちの間での噂を聞くと、自分の知り合いがという驚き、やはりアイテムボックス持ちのパーティーメンバーだから神獣の目を引いたのだろうという推測、過去に戦闘奴隷をしていたものが神獣の契約者などという蔑みの三つに大きく分かれるらしい。二つ目は間違っていないし、三つ目はモクリークでも多少はある。ただモクリークは強ければ身分を問わない風潮があるし、ユウと氷花として活動している期間が長いので、面と向かって言われることはない。

「それで、実際のところどうなのです?」
「私に選択権はなかったので。最初は苦労しましたが、今は付き合い方も分かってきましたよ」

 こんな愚痴のようなこと、他の人には話せない。ともすれば不敬になってしまう。獣道も振り回されている仲間ではあるが、彼らといるときはリネもいるので、さすがに話せない。
 ユウには時々愚痴を聞いてもらっているが、あまり言うとユウが気にしそうなので言えない。そもそもの騒動の始まりは、ブランのユウへの甘やかしだからだ。
 ユウはきっとそういう状況を分かっていて、この飲み会を提案してくれたのだろう。
 サリューなら、神という存在についての知識もあり、ユウとブランのこと、今までの経緯も知っているので、俺の置かれた状況を誰よりも正しく分かってくれるだろう。

 リネがダンジョンで起こした騒動を面白おかしく話しているが、そもそも全て人の側の問題で起きた騒動だ。

「契約者になったからといって調子に乗ったりしない貴方だからこそ、苦労しているんですね。神とは何かをあらためて考えさせられますよ」
「契約の経緯があれですからね、調子に乗ることも出来ませんよ。ですが、こうして話を聞いてもらえるだけで、気が楽になります」

 晩餐会でのリネを見て、俺の愚痴が決して誇張ではないと分かってくれたのか、少し同情されているのを感じる。
 リネが俺のそばにいるのは、ユウのためだ。けれど周りはそんなことを知らないので、俺がどうやってリネと契約したのかを知りたがる。特に貴族たちは、リネを招待することは諦めたものの、俺への接触は諦めていない。息のかかった冒険者を送り込んできて、事情を聞きたがる。これが本当に厄介だ。冒険者同士の情報交換の中に入れてくるから、突っぱねることもできない。その会話の中で、リネがうっかりユウに関することを口に出さないように、俺はとにかくリネの気をそらすことに集中している。獣道たちは、ブランが連れてきたことを知られないように、ブランが神獣だということが知られないように、俺が必死になっていると思っているだろう。

「マーナガルム様は本当にユウさんを寵愛なさっているのですね」
「私も正直ここまでとは思っていませんでした。ユウがどんなことをしても怒らないので、ある程度は分かっていましたが」
「まさに愛し子なのですね」

 リネが気ままなのではなく、ブランがそれだけユウが人の中で生きていくうえで困らないように気を遣い、そのために魔獣に擬態までしているのだ。

 そんな話をしていたときに、リネが部屋に入ってきた。リネが入ってくることができるように、寝室以外のドアは常に少し開けてある。

『見て見て、綺麗なのもらった』
「大司教がヴィゾーヴニル様に献上すると張り切って作らせていましたが、お気に召したようで光栄です」
「似合うので良かったな」

 撫でるとすり寄ってくる。こういうところは無邪気でかわいいと思う。本当は畏れ多い存在なのだが、気まぐれに懐く野生動物のようだ。
 首飾りが似合うと褒められて、ご満悦でサリューにもなでられている。ユウ以外には気を許さないブランとは全く異なる。当たり前だが、神獣にも個性があるのだな。

 少しずつリネとの付き合い方もわかって、リネも甘えてくるようになった。何をするとブランが怒るのかも分かってきたようで、最近では神獣同士の喧嘩もなくなった。
 モクリークの大司教様にもよく甘えているし、実はさみしがり屋なのかもしれない。
 俺たちの都合にこうして付き合ってくれるのだから、リネにも楽しく過ごしてほしい。そのために、上手い落としどころを探していこう。


 ドガイの大司教様たちが帰る日、ユウが泣きそうになっている。というか泣いている。
 ドガイには今後も行く機会が多くあるだろうが、ソントにはおそらく行けない。リネを前面に出せば行けるかもしれないが、ソントの国と事を構える気はないのでなるべく近寄りたくない。そうなると会うためには店主夫妻に来てもらうしかないが、そう何度も宿を閉めていられない。もしかしたらこれが直接会うのは最後になるかもしれない。
 以前にもらったマジックバッグのお礼だと言って、ユウが容量大のマジックバッグを渡し、必死で涙をこらえている。

『今度密かに連れていってやるから泣くな』
『そうだよ、愛し子。俺が飛べばすぐだから』
「これは、モクリークに宿を移すべきですかね」

 店主が笑いながらおそらく冗談で言ったが、この国で宿を出すとなれば、教会が後ろ盾についてブランとリネの専用の部屋ができそうだ。

「ヴィゾーヴニル様、ドガイにいらっしゃる際は、ドガイ中のチーズを用意しておきます」
『行く行く~。よろしく~』

 リネが首飾りをつけているのを見て、感動して言葉の出ない大司教様に代わり、グザビエ司教様が別れの挨拶をしている。
 ドガイの教会には今までとてもお世話になっているし、俺の出身地でもあるので、大司教様にはいずれリネと一緒に行くと話してある。カリラスにもリネを紹介したい。
 リネに乗って飛んでいけばすぐだし、空を飛んでみたいと言っていたユウも連れていこう。
 リネとブランが協力してくれるなら、ソントの宿にこっそりと行くことができるかもしれないな。
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