世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

文字の大きさ
123 / 226
続 1章 神なる存在

11-12. 神獣の力

しおりを挟む
 ドガイからの司教様たちの訪問のためにダンジョン攻略を休んでいたが、そろそろ復帰しないとリネが退屈している。
 獣道は王都を離れてダンジョンに潜っているので、そこにリネに乗って移動して合流する。俺のために最近はずっと王都周辺か、カークトゥルスのあるサネバだけになっていたが、リネという移動手段もできたので、範囲を広げることにした。リネが獣道の居場所ならたとえダンジョン内であってもわかるというので、俺のことは気にせず潜ってもらって、合流することになっている。リネにとって獣道は、ダンジョンに潜るためには必要な人という認識のようだ。

 王都から馬車だと二日の距離の街の近くのダンジョンに獣道がいるというので、大きくなったリネに乗って空を飛んで向かっている。

『よけてー』
「すまない!」

 リネがダンジョン内でも飛んで移動しているので、周りの冒険者たちが驚いてる。申し訳ないが、リネが早く合流したいようで外から飛びながらそのままダンジョンに突入してしまったのだ。
 フロアボスの部屋は、リネが順番を飛ばして入り込み、サクッと倒してそのまま下へと進んだ。リネに順番待ちをするように言っても理解してもらえると思えないので、神獣の特例として許してほしい。

『追いついた! やっほー』
「神獣様、お久しぶりです」
「よお、アレックス。用事は終わったのか?」
『見て見て、この宝石似合うでしょ。もらったの』
「神獣様、お似合いですよ」
『グァリネでいいよ』

 リネは鷲の獣人であるタムジェントを特に気に入ってるらしい。よく耳の羽をつついているが、鳥の特徴を持っているからだろうか。ブランは特にキリシュに対して思うところはなさそうなので、よく分からない。

 獣道に対してドガイから贈られた宝石の首飾りをリネが見せびらかしているが、オレを乗せて飛ぶために大きくなったときには足首につけている。さっきは小さくなって外れた首輪に自分でうまく首を通していた。大司教様に調整してもらったのかもしれない。
 ドガイの国も協力して作られた超一級品なので、容量大のマジックバッグくらいの価値はありそうだ。もしかするともっと高価なのかもしれないが、宝石の価値はよく分からない。さすがに宝石全部が同じに見えていそうなユウよりは分かっているが。
 ブランは首輪はもってのほかだし、その他装飾品も嫌がって、従魔のフリをするためのプレート以外は決して身に着けないが、リネは見ようによっては首輪にも見えるこの首飾りもまったく躊躇なく着けている。
 ただ、リネの中で流行りすたりがあるようで、しばらく気に入っていた宝石も、ある日突然別のものに興味を移すこともある。

 そんな気まぐれで可愛らしいリネだが、ダンジョンの最下層でその力の一端を見ることとなった。
 獣道と共に危なげなく最下層のボスを倒し宝箱を開けたところ、中に入っていたのは虹色に輝くエリクサーだった。

「おお、エリクサーだ!」
「アレックス、いるか?」
「いや、俺は一本持っているし、リネがいるから」
「じゃあ買取金額の五分の一を払う」

 ユウとブランと氷花として、獣道と共闘するときは、パーティー単位で取り分を半分にしていた。けれど、俺だけが参加するようになって、頭数で割るように変えていた。そこにリネが参加するようになって、最初はパーティー単位の半分に戻そうと獣道は言ってくれたが、周りの冒険者へのけん制などいろいろと世話になっているので、リネを抜いた頭数での分配のままになっている。リネには、リネが気に入ったドロップ品は無条件で献上することで報酬にする。戦闘に参加するかしないかがそのときの気分によって全く違うので、そういうことになった。

 俺たちは過去にエリクサーを二本手に入れて、一本はタペラのあふれでクルーロに使ったが、もう一本は俺の時間停止のマジックバッグに入れてある。だが今はダンジョン内での俺の怪我はリネが治癒してくれることになっているので、必要ないだろう。
 俺のいらないという言葉を聞いて、獣道が喜んでいる。一本も持っていなかったので、自分たち用に持っておきたかったそうだ。このダンジョンは最下層でエリクサーが出ることがあるという噂を聞いて挑戦していたらしい。

 そこに、ボス戦も宝箱も興味なさげに見ていたリネが、耳を疑う発言をした。

『そんな質の悪いエリクサー、捨てろよ』
「リネ、多少質が悪くても、人には貴重なんだ」
『ええー、そんなの失敗作だよ?』

 治癒魔法の使えるリネにとっては価値のないものかもしれないが、人にとってはとても貴重なものだ。
 エリクサーは、たとえ致命傷を受けても死んでいなければ回復することができる。ただし、致命傷を受けてからの経過時間によってはエリクサーを使っても回復できない。質が悪ければ受傷後すぐでなければ回復しない。逆に言えば、たとえ質が悪くとも受傷後すぐに使えば死を回避できる。
 冒険者なら、たとえ質が悪くとも常備しておきたいものだ。

 そのことを説明していたら、リネにポーションを出すように言われ、よく分からないが急かすので、マジックバッグに入れていた中級ポーションを出した。
 するとリネが俺の手の中にあるポーションに羽根をかざして言った。

『はい、これが成功したエリクサーだよ』
「え?」

 中級ポーションだったものが虹色に輝いている。どういうことだ?
 リネに聞くと、中級ポーションをエリクサーに変えたらしいが、意味が分からない。いや、言葉の意味は分かるんだが、起きたことが理解できない。

 エリクサーの作り方は教会にも薬師ギルドにも伝わっていない。失伝したとも、材料が手に入らないので人には作れないとも言われているが、とにかく人には作れない。
 それを、何の苦労もなく作って見せた。
 鑑定が使えるものが誰もいないので、本当にエリクサーなのか分からないが、リネが嘘を言う理由はない。見たことがないほど虹色に輝く液体は、かなり上質なエリクサーなのだろう。

 リネと出会ってから初めて、リネは神獣であるのだと得心した。
 獣道がぽかんと口を開けている。彼らもまた、リネの我儘気ままな部分ばかりを見ていたので、驚きが隠せないでいる。

 とりあえず、地上に戻ることにしたが、このリネ作のエリクサーをどうするのか。
 まずは教会に報告したほうがいいというオラジェの提案で、中央教会に戻って教会に相談することになった。

 獣道は、ギルドにドロップ品やエリクサーを鑑定してもらい、買い取り価格の五分の一を俺に振り込んだら、また別のダンジョンに挑むので、いいときに合流してくれと少し投げ槍だ。
 「神は理不尽だ」とガリドラがつぶやいているが、せっかくのエリクサー入手の喜びを台無しにしてしまって申し訳ない。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...