世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 3章 ドロップ品のオークション

13-19. 呪いの宝石

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 剣のオークションは、なかなか見ものだった。
 リストの後ろに行くほど高性能になっているようで、国と国で競り合うようになったのだ。国の威信がかかるのか、手に入れると決めたものに対してはお互い引かないので、値段がどんどんつりあがっていく。予算はあるはずだけど、開始金額から倍になっても決まらないときには、会場が大きく沸いていた。結局予算に余裕があるほうが勝ったようだけど、国同士で遺恨を残さないのか、少し心配になる白熱度合だった。

 剣が終わると、残りは全て高価な宝石ばかりだ。
 前の宝石の落札価格よりもかなり高い金額で始まったのにもかかわらず、多くの人が参加している。貴族から代理で落札を依頼されている商会も参加しているので、会場のあちこちで札が上がっている。司会の人が金額を上げていくとだんだん札が下がるけど、それでも今までにないくらい多い。

「すごいですねえ」
「グァリネ様への献上品で宝石の取引が活発になっていますから」
「あれって、リネが気に入らなかった宝石ですよね?」
「グァリネ様がお気に召した宝石は出品していないと伝えてはあります」

 それでも加工して献上すれば、気に入ってもらえるかもしれないという望みもあるのだろう。それとは別に、貴族や王族の装飾品として使う目的もある。一体この短い時間にどれだけのお金が集まっているのか、見当もつかない。大司教様は、これで当面あふれの対策の費用は考えなくて済むと、ほくほく顔だ。
 チャリンチャリンと副音声が聞こえてきそうな落札が続いて、次の宝石が舞台上に引き出されてきたところで、それまで無関心だったブランが首を上げた。

「ブラン、どうしたの? あれ欲しい?」
『(あの宝石、呪いがかかっているぞ)』
「え?」

 思わず「呪い?!」と大声をあげそうになった口を、アルにふさがれた。そうだった。こんな注目を集めるところで、大きな声に出していい内容じゃない。
 僕が我に返ったところで、アルが口から手を離し、大司教様の耳元にささやいた。それを聞いて、大司教様はわずかに表情を変えたけど、それでも冷静にうなずき、後ろに控えていた司教様を呼んで指示を出した。

「テオリウス殿下に落札をお願いしました」
「ブラン、それって、その、普通に戻せる?」
『(ああ、解呪できる)』

 他の人の手に渡らなければ、後で何とでもできるから、まずは王子様が落札できるように応援しよう。
 僕たちが渡した宝石に、呪いのかかっているものなどなかった。ブランもリネも見ているし、ギルドだって鑑定しているのだから、三重チェックをすり抜ける手違いなんてありえない。ということは、後から呪いがかけられたか、すり替えられたか、どちらかだ。呪いはそんなに簡単にかけられるものなのかブランに聞いてみたいけど、ここでは聞けない。
 問題の宝石は、しばらく商人や貴族と競っていたけど、無事に王子様が落札してくれて、安心した。

 最後に出てきたのは、今回オークションに出すにあたって鑑定したときに、とても珍しいものだと分かった宝石だ。どこでドロップしたのか覚えていないけど、買い取ってもらえなかったということは、とても高かったのか、とても安かったのか、どっちかだ。安いものは付与に使えるかと思って集めていたけど、結局宝石を使う付与商品を思いつけなくて、アイテムボックスに眠っていた。
 この宝石は、王族も貴族も商会も札を上げて、大いに盛り上がった。最後はドガイの王様が競り落としていたけど、参加していた人たちもどうしても手に入れたいというよりも、お祭りに参加しちゃおうという雰囲気だったので、最初から落札者は決まっていて、どこまで値を釣り上げるかっていう戦いだったのかもしれない。最後まで残ったどこかの王様の陣営が札を下げたときには、拍手が沸き起こったし、もちろん僕も拍手した。

「面白かったですね」
「会場を盛り上げるのも司会の役目ですので、それを聞いて喜ぶでしょう」

 席の周りを取り囲んでいる幕のおかげで、あまり視線も気にならず、とても楽しめた。今度は何か落札してみるのも、楽しそうだ。
 参加者たちは終わっても立ち上がらないので、余韻を楽しんでいるのかなと会場を見ていたら、僕たちが退場するまで周りの人は待っているのだと教えられた。そういうのは早く言ってほしい。ウキウキとした気分から一転、人を待たせてしまったと慌てて立ち上がると、よろめいてしまい、アルに抱きとめられた。

「ごめん、焦っちゃって」
「捕まってろ」
「え?」

 ふわっと身体が浮いたと思ったら、そのまま抱き上げられて、階段の下まで運ばれて降ろされた。上がるときにつまづいたけど、あれは緊張していたからであって、こんな人前で抱き上げるなんて。しかも降ろしてから、頭のてっぺんにキスするオマケつきだ。

「ユウ、顔を上げて」
「無理! 恥ずかしい。アルのせいだ」
「誰も見てない」

 いやいや、見てるでしょう。たくさんの視線を感じるんだけど。アルの腕の中で少しだけ顔を上げると、モクリークの王子様と目が合ったけど、可笑しくてしょうがないって顔で笑いをこらえている。やっぱり見られてたじゃないの! 今僕の頬は絶対に赤くなっている。首まで赤くなっている。
 結局僕は顔を上げることができず、アルに引きずられるようにしてオークション会場を後にした。
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