世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 3章 ドロップ品のオークション

13-20. 企みの狙い

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 周りを教会の人に囲まれて馬車に乗り込み、中央教会まで戻ってきた。呪いの宝石は後で教会まで届けてくれるそうだ。
 馬車に乗って扉が閉まると、ふうっとため息が出た。視線にさらされて、思った以上に緊張していたようだ。そういえば、あの王女様に会うと嫌だなと思っていたけど、会場にいなかった気がする。僕たちの席からは、テントの布で視界が遮られていて、すぐ近くにいたドガイとモクリークの王族の席くらいしか見えなかったので、気付かなかっただけかもしれないけど。
 それよりも、呪いの宝石だ。

「ブラン、呪いの宝石って簡単に作れるの?」
『人が作れるかどうかは知らん。あれはダンジョンのドロップ品だ』
「どんな呪い?」

 僕は以前、ダンジョンの宝箱にかかった呪いのせいで、ブランにそっくりの子オオカミに変えられたことがある。しばらくすると元に戻ったので、似たようなものかと思ったけど、攻撃力がまったく違った。

『触れた者に不幸を呼び寄せる呪いを与える』
「ブラン、それは一度だけなのか?」
『何度でもだ』
「そのようなドロップ品は、ギルドで鑑定されればすぐに教会へ回されるはずですが……」

 かなり強力で害のある呪いに分類される気がする。そんな恐ろしいものがドロップするなんて、拾った人は大丈夫だったんだろうか。
 それに比べれば、僕が触れた呪いはただ動物になるだけだったし、時間がたてば元に戻るし、ダンジョンの宝箱という一度触れれば消えてしまうものだったので、呪いというよりいたずらに分類されるだろう。
 けれど、呪いの宝石がドロップ品なら、僕が寄付した宝石とどこかで入れ替えられたということだ。オークションの品を管理している人たちが呪いにかかっていないか、これからかからないか心配になるけど、すでにドガイの大司教様にも伝えてあって、適切に対処してくれているそうだ。

「でも、何のために? 誰が落札するかもわからないのに」
「ユウさん、それは……」
「ユウ、聞きたいか?」
「え?」

 それはつまり、僕は知らないほうがいいことなの? でも見つけてしまったからには知りたい。

「ユウ、お前だ」
「僕?」
「ユウが寄付したもので呪われた。それで難癖をつけるつもりだった可能性がある」

 もちろん、愉快犯とか、ある特定の人を狙った可能性もなくはないけど、僕が狙われた可能性のほうが高いそうだ。といっても僕自身に呪いをかけるのではなく、僕が寄付したもので迷惑をかけられたと被害を訴えて、アイテムボックススキルか付与スキルを使わせる、あるいはマジックバッグを謝罪としてもらう、という筋書きが考えられるそうだ。

「じゃあ、王子様と最後まで競っていた貴族が怪しいの?」
「だろうな。今ごろテオが落札して焦っているかもな」

 狙われたという事実に僕がショックを受けないか、みんな心配してくれている。多分、アルが襲撃されたときの落ち込みが酷かったからなんだろうけど、あれは僕のせいでアルが狙われたからであって、今回とは違う。
 正直なところ今回は、悪いことを企む人はどこにでもいるだろうと思っていたらやっぱりいた、くらいの感覚だ。僕の周りに実際の被害がなかったので、いまいち実感がわかないというのもある。

「ブラン、犯人探せる?」
『断る』
「ユウさん、犯人は必ず捕まえますので」

 前回僕が狙われたときにはとても怒っていたのに、今回はブランのお怒りポイントには触れなかったらしい。僕がショックを受けていないからなのか、それとも、物理攻撃じゃないものは人間でどうにかしろってことなのかな。
 寄付の品でやられたということは許せないので、ちゃんと犯人を探し出して、この世界の方法で罪を償ってほしい。ただ、僕の判断はいつも甘いようなので、口に出すのはやめておこう。僕よりも大司教様のほうが事態を重く見ていそうだ。


 教会に戻ってしばらくすると、呪いの宝石についての打ち合わせの準備が整ったと言われて会議室へと案内された。僕は出なくていいと言われたけど、寄付したのも、狙われたのも僕だから、ちゃんと話を聞きたいと主張した。
 部屋に入ると、モクリークとドガイの大司教様を始めとした教会関係者に加え、モクリークの王子様と、タゴヤの冒険者ギルドマスターもいる。ギルドマスターと一緒にいるのは、ギルドの鑑定師だろう。

「テオ、落札してくれて助かった」
「契約者様のお役に立てて光栄です。テイマー殿、お揃いの服もお似合いですよ」
「ありがとうございます」

 こういうときは僕も褒め返すべきなんだろうか。今日は他の人がいるからか王子様がアルに敬語を使っているし、王子様のお付きの人が見えるところにいるので、うかつなことを言えなくて緊張してしまう。上流階級の社交はよく分からないので、あいまいな笑顔でごまかそう。王子様はさわやかな笑顔で流してくれたので、きっとぎこちないながらも笑顔を作れていたはずだ。

 席に着くと、簡単に出席者の紹介の後、問題の宝石が運ばれてきた。きれいな箱に入れられている宝石を、ギルドの鑑定師が鑑定して、やはりダンジョンのドロップ品と断定した。直接触らなければ呪われないので、すり替えられてからはオークションの品として慎重に扱われていたおかげで、オークション関係者に被害にあった人はいないそうだ。それを聞いて、安心した。
 宝石自体は澄んだきれいな赤色で、まがまがしさなどは感じない。きっと鑑定しなければ呪いには気づかないだろう。

「ダンジョンのドロップ品か。それは元からテイマーが持っていた可能性はないのか?」
「ありません。寄付したものを分類した際に、モクリークのギルドが鑑定し直していますし、全てリネが目を通しています。もし紛れ込んでいたなら気づいています」
「じゃあ、モクリークからドガイに運んでくる間は」
「それもありません。ユウがアイテムボックスに入れる前に、リネが気づきます」
「教会内はありません。誰かしら気づきます」
「となると、王宮か……」

 僕がオークションに出品するために整えられた品物の箱を収納したとき、リネはいなかったけど、ブランはそばにいた。もしあのときすでに紛れ込んでいたら、ブランが警告していたはずだ。さらに、教会の中に呪いがかかったものが持ち込まれていたら、どんなに隠されてもブランが気づいたはずだ。大司教様たちも口には出さないけどそれは分かっているのだ。
 どう考えてもすり替えられたのはお城に運ばれてからだ。
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