162 / 181
続 3章 ドロップ品のオークション
13-21. おしゃれな宝石
しおりを挟む
そこに慌ただしく司祭様が入ってきて、ドガイの大司教様に何かを耳打ちした。何かが起きたのかとみんなが注目していると、大司教様が僕たちのほうに向かって告げた。
「王宮にもこの宝石について報告したのですが、その対応に陛下がいらっしゃったそうです。アレックス様、ユウさん、お部屋に戻られますか?」
「ユウ、戻ろう」
王様が来る前に部屋を出ようとアルに言われたところで、部屋の外から言い争う声が聞こえた。お待ちくださいと言っているのが聞こえるから、王様が静止を振り切って強引に来てしまったらしい。部屋に入ってきた王様は、アルを見つけて頭を下げた。
「契約者様、この度の不始末、ドガイの国を挙げて必ず解決いたしますので、どうか寛大なご処置をお願いいたします」
どう答えるのかアルを見ると、アルは僕のほうを向いていた。
「ユウ、ほら立って。部屋に戻るぞ」
「え? あの、王様は……」
「後はドガイの問題だ」
ここにいて何かを要求されても困るから戻ろうというアルの言葉に、それもそうかと思って腰を浮かせようとしたとき、さらなる来訪者があった。
『このおしゃれな宝石、どうしたの?』
「神獣様!」
『誰か呪いたいんだったら、こんなの使わなくても、呪ってきてあげるよ?』
「リネ、しなくていい」
突然現れたリネにドガイの人たちが騒然とする中、リネのとんでもない発言もあって場がカオスだ。
こっそりと処理したかったのにリネにばれてしまったと焦る王様たちと、気軽に呪いをかけるというリネに顔がひきつっているドガイの大司教様たち。そんな中で、「呪いもおできになるとはさすがですね」とリネに向かってにこにこ笑っているモクリークの大司教様と、そんな大司教様に苦笑している王子様。
神獣の呪いなんて、つまり神罰ってことで、何をしても解けない恐ろしい呪いになりそうだから、想像したくもない。リネもブランもこの宝石に対しては全く身構えていないので、きっと神獣にとっては取るに足らない呪いなんだろう。
それにしても、呪いの宝石の何がおしゃれなんだろうか。何の変哲もない宝石なのに。リネの感性はやっぱり僕にはよく分からない。
そのリネは、足で掴んで運んできた何かを僕の前に置いて、アルの肩に止まった。置かれたものをよく見てみると、薬箱ダンジョンの薬草だ。
『ユウがほしいって言っていた薬草、取ってきてあげたよ』
「ありがとう」
僕たちがオークションに出ている間に、薬箱ダンジョンに行ってくるとは聞いていたけど、ダンジョン内を飛び回って遊んできたそうだ。崖のすれすれを飛ぶのが楽しかったと、アルに報告している。そのときに、僕が薬草がほしいと言っていたことを思い出してとってきてくれたのがこの薬草だ。ありがとね。
「リネ、エリクサーはもってこなかったのか?」
『でき損ないだったから捨てたよ』
「でき損ない……」
ギルドマスターが衝撃を受けているけど、神様品質のエリクサーを作れるリネにとって、Bランクのエリクサーはでき損ないなんだろう。
リネのお出かけ報告が一段落したところで、アルに腕をひいて立たされて、部屋に戻ろうとしていたことを思い出した。リネがいてくれれば、どんな包囲網も突破できる。リネに対しては強気に出られない王様のすぐ横をすり抜け、お待ちくださいと口では言うものの手出しはできないお付きの人を無視して、会議室から脱出した。後は大司教様と王子様が上手くまとめてくれるはずだ。
部屋に戻ったらまずは、リネにお礼の貢ぎものを渡そう。
「リネ、クッキーとプリン、どっちがいい?」
『うーん、今はクッキーの気分』
「じゃあ、料理長の新作だよ。薬草ありがとう」
ドガイにきてから新しく作られたチーズ入りクッキーを出してみると、気に入ったようでパクパク食べている。今日のクッキーは、モクリークではめったに手に入らないチーズを使ったホロホロクッキーだ。
アルの時間停止のマジックバッグと僕のアイテムボックスに収納するために、料理長がリネのためのおやつをせっせと作ってくれるので、いろんな種類がストックされている。僕も食べていいと言われているけど、リネのために作られたものはまずリネに食べてもらいたいから、まだ手を出してはいない。それに、リネのお気に入りは早いペースで変わるから、僕はリネのチーズブームが去ってからでもいい。
「ユウ、着替えて風呂に入ってくるといい」
「うん。アルは入る?」
「いや、テオが結果を報告しにくるだろうから、今日は一人で入ってくれ」
アルは話し合いの結果を報告しにくる王子様を待つそうなので、僕はその間にゆっくりお風呂に入ろう。ブランはお風呂にウキウキしだした僕から離れて、部屋の隅で寝転がった。お風呂から出たらブラッシングをしてあげるから、拗ねないでよね。
ゆっくりのんびりお風呂を楽しんで上がると、王子様と話をするために別室へ行っているアルは不在だった。その代わりに僕の話し相手としてカリラスさんが呼ばれていて、ツェルト助祭様とオークションの話で盛り上がっている。二人とも僕たちのテントの中でオークションを見ていたけど、その場では話せなかったので、感想を言い合っていた。
僕も、呪いの宝石を見つけてくれたブランへのお礼としてブラッシングをしながら参加しよう。
「熱気があってすごかったですよね。僕も何か落札してみたいです」
「ユウくんはどんなオークションだったら参加したい?」
『肉だ』
「ブランが片っ端から落札したら、オークションにならないよ。僕は、温泉宿がいいです」
僕に聞かれたのに、ブランが乗り気で答えているけど、競り合っても絶対に譲らないだろうからブランの一人勝ちは確定だ。
僕が参加するなら、温泉宿の宿泊プランがいいな。いろんな温泉と料理のプレゼンを聞いて、行きたいところを選ぶのは、ワクワクするに違いない。でも一つに絞れないかも。
「カリラスさんは?」
「やっぱり剣でしょ。夢があるし。今日も現役のころを思い出して自分が使うならいくらまで払えるかって考えて楽しかった。助祭様は?」
「夢というなら、宝石ですね。でも本当に欲しいものとなると、私もお肉です」
ちょっと恥ずかしそうにウサ耳を伏せて笑うツェルト助祭様は、勝手に草食だと思い込んでいたけど、肉食系男子だったらしい。
「王宮にもこの宝石について報告したのですが、その対応に陛下がいらっしゃったそうです。アレックス様、ユウさん、お部屋に戻られますか?」
「ユウ、戻ろう」
王様が来る前に部屋を出ようとアルに言われたところで、部屋の外から言い争う声が聞こえた。お待ちくださいと言っているのが聞こえるから、王様が静止を振り切って強引に来てしまったらしい。部屋に入ってきた王様は、アルを見つけて頭を下げた。
「契約者様、この度の不始末、ドガイの国を挙げて必ず解決いたしますので、どうか寛大なご処置をお願いいたします」
どう答えるのかアルを見ると、アルは僕のほうを向いていた。
「ユウ、ほら立って。部屋に戻るぞ」
「え? あの、王様は……」
「後はドガイの問題だ」
ここにいて何かを要求されても困るから戻ろうというアルの言葉に、それもそうかと思って腰を浮かせようとしたとき、さらなる来訪者があった。
『このおしゃれな宝石、どうしたの?』
「神獣様!」
『誰か呪いたいんだったら、こんなの使わなくても、呪ってきてあげるよ?』
「リネ、しなくていい」
突然現れたリネにドガイの人たちが騒然とする中、リネのとんでもない発言もあって場がカオスだ。
こっそりと処理したかったのにリネにばれてしまったと焦る王様たちと、気軽に呪いをかけるというリネに顔がひきつっているドガイの大司教様たち。そんな中で、「呪いもおできになるとはさすがですね」とリネに向かってにこにこ笑っているモクリークの大司教様と、そんな大司教様に苦笑している王子様。
神獣の呪いなんて、つまり神罰ってことで、何をしても解けない恐ろしい呪いになりそうだから、想像したくもない。リネもブランもこの宝石に対しては全く身構えていないので、きっと神獣にとっては取るに足らない呪いなんだろう。
それにしても、呪いの宝石の何がおしゃれなんだろうか。何の変哲もない宝石なのに。リネの感性はやっぱり僕にはよく分からない。
そのリネは、足で掴んで運んできた何かを僕の前に置いて、アルの肩に止まった。置かれたものをよく見てみると、薬箱ダンジョンの薬草だ。
『ユウがほしいって言っていた薬草、取ってきてあげたよ』
「ありがとう」
僕たちがオークションに出ている間に、薬箱ダンジョンに行ってくるとは聞いていたけど、ダンジョン内を飛び回って遊んできたそうだ。崖のすれすれを飛ぶのが楽しかったと、アルに報告している。そのときに、僕が薬草がほしいと言っていたことを思い出してとってきてくれたのがこの薬草だ。ありがとね。
「リネ、エリクサーはもってこなかったのか?」
『でき損ないだったから捨てたよ』
「でき損ない……」
ギルドマスターが衝撃を受けているけど、神様品質のエリクサーを作れるリネにとって、Bランクのエリクサーはでき損ないなんだろう。
リネのお出かけ報告が一段落したところで、アルに腕をひいて立たされて、部屋に戻ろうとしていたことを思い出した。リネがいてくれれば、どんな包囲網も突破できる。リネに対しては強気に出られない王様のすぐ横をすり抜け、お待ちくださいと口では言うものの手出しはできないお付きの人を無視して、会議室から脱出した。後は大司教様と王子様が上手くまとめてくれるはずだ。
部屋に戻ったらまずは、リネにお礼の貢ぎものを渡そう。
「リネ、クッキーとプリン、どっちがいい?」
『うーん、今はクッキーの気分』
「じゃあ、料理長の新作だよ。薬草ありがとう」
ドガイにきてから新しく作られたチーズ入りクッキーを出してみると、気に入ったようでパクパク食べている。今日のクッキーは、モクリークではめったに手に入らないチーズを使ったホロホロクッキーだ。
アルの時間停止のマジックバッグと僕のアイテムボックスに収納するために、料理長がリネのためのおやつをせっせと作ってくれるので、いろんな種類がストックされている。僕も食べていいと言われているけど、リネのために作られたものはまずリネに食べてもらいたいから、まだ手を出してはいない。それに、リネのお気に入りは早いペースで変わるから、僕はリネのチーズブームが去ってからでもいい。
「ユウ、着替えて風呂に入ってくるといい」
「うん。アルは入る?」
「いや、テオが結果を報告しにくるだろうから、今日は一人で入ってくれ」
アルは話し合いの結果を報告しにくる王子様を待つそうなので、僕はその間にゆっくりお風呂に入ろう。ブランはお風呂にウキウキしだした僕から離れて、部屋の隅で寝転がった。お風呂から出たらブラッシングをしてあげるから、拗ねないでよね。
ゆっくりのんびりお風呂を楽しんで上がると、王子様と話をするために別室へ行っているアルは不在だった。その代わりに僕の話し相手としてカリラスさんが呼ばれていて、ツェルト助祭様とオークションの話で盛り上がっている。二人とも僕たちのテントの中でオークションを見ていたけど、その場では話せなかったので、感想を言い合っていた。
僕も、呪いの宝石を見つけてくれたブランへのお礼としてブラッシングをしながら参加しよう。
「熱気があってすごかったですよね。僕も何か落札してみたいです」
「ユウくんはどんなオークションだったら参加したい?」
『肉だ』
「ブランが片っ端から落札したら、オークションにならないよ。僕は、温泉宿がいいです」
僕に聞かれたのに、ブランが乗り気で答えているけど、競り合っても絶対に譲らないだろうからブランの一人勝ちは確定だ。
僕が参加するなら、温泉宿の宿泊プランがいいな。いろんな温泉と料理のプレゼンを聞いて、行きたいところを選ぶのは、ワクワクするに違いない。でも一つに絞れないかも。
「カリラスさんは?」
「やっぱり剣でしょ。夢があるし。今日も現役のころを思い出して自分が使うならいくらまで払えるかって考えて楽しかった。助祭様は?」
「夢というなら、宝石ですね。でも本当に欲しいものとなると、私もお肉です」
ちょっと恥ずかしそうにウサ耳を伏せて笑うツェルト助祭様は、勝手に草食だと思い込んでいたけど、肉食系男子だったらしい。
応援ありがとうございます!
21
お気に入りに追加
1,093
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる