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続 5章 カークトゥルス合宿
15-9. リネの贈りもの
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ヒオクからのパーティーは、翌朝地上に向けて帰っていった。ここから地上まで上がっていくには、それなりに時間がかかるので、食料はたっぷり渡した。といっても、彼らの希望でほとんどは保存食だ。そこまで食にはこだわりがないのだろう。
広くなったセーフティーエリアに天幕テントとトイレを設置して、いつもの合宿の始まりだ。
順番でのフロアボスへの挑戦、その合間に魔石を集めるための戦闘。僕にとっては食事以外楽しみのない一か月だ。
「風の魔法行くよ」
「任せた」
露出した核に風の魔法でヒビを入れられたゴーレムは、光になって消えた。
もはやここのフロアボスなら余裕で倒せるようになってしまったアルと獣道たちは、魔剣なし、魔法中心など、縛りをかけてボスと戦っている。ピンチになっても、いざとなれば魔剣で倒せるという自信があるから出来ることだ。魔法が効きにくいゴーレム相手に、それでもなんとか魔法中心で勝ってしまうのだから、さすがだ。
「ポーションいる?」
「頼む。久しぶりの魔力切れだ」
「最近は魔剣に頼りすぎていたな」
久しぶりに魔剣なしの戦闘を行い、魔剣を持つ前なら出来ていたはずのことが出来なくなっていたと反省している。
「万が一魔剣が壊れたときに備えて、こういう訓練も必要だな」
「魔剣って壊れるのか?」
「壊れると思っていたほうが安全だろう」
「修理は魔道具師か?」
そういえば、魔剣の耐久性は気にしたことがなかった。マジックバッグは、破れてしまえばマジックバッグとしての機能を失う。とはいえ、バッグ自体が破れにくくなっている。
「ブラン、魔剣って壊れる?」
『(普通の剣よりは強いが、それでも形あるものはいつか壊れる)』
「そっかあ」
『(予備が必要だな。五人分か)』
「壊れにくいなら、大丈夫だよ」
『(戦闘中に壊れたら困るだろう)』
一本は予備があるんだから、壊れてからでいいじゃない。しかも五人分だからって、相性があるから五回で済むとは限らない。そんなにブロキオンに付き合いたくない。
ブランの声は聞こえていないはずだけど、僕の返事から何を話しているか分かった獣道たちが、期待の目でこちらを見ている。ここは、気づかなかったふりだ。リネと行っても魔剣が出るはずだから、僕を巻きこまないでほしい。
宝箱から出たマジックバッグを収納し、セーフティーエリアへと向こう。今日の挑戦は終わったので、このあとは夕食をとって休む予定だ。
『肉だ』
「はいはい」
『今日こそ肉だ。でないと暴れるぞ』
最近ブランからのお肉要求を無視していたら、セーフティーエリアへの帰り道で脅されてしまった。野菜炒めやローストビーフ入りサラダでも、ブランにはお肉多めで出していたのに、満足出来なかったらしい。
「今日はブランも好きなピザにしようと思ったけど、お肉ね」
『ピザで手を打とう。肉は明日の朝だ』
「朝からお肉はないよ」
ブランが偉そうだ。実際偉いんだけど、僕は朝からステーキが食べられるような頑丈な胃腸を持っていない。僕だけ別メニューにしたとしても、ブランが食べているのを見るだけで、お腹がいっぱいになりそうだ。
話がよほどこじれない限り、アルは僕たちのご飯の攻防に口を出さない。いまも苦笑しながら聞いているだけだ。アルはリネの要望を必ず飲むらしいので、ブランの要求を無視している僕が、神獣への敬意を忘れていると言われても仕方がない。だけど、本来食べる必要のない神獣なのに、食べもののわがままを言うのはどうなんだと思ってしまう僕は、心が狭いのだろうか。
『明日の昼と夜は肉だ』
「分かったよ」
なんだかんだと言いながらも、こうして僕のわがままを許してくれるから、甘えてしまう。「いつもありがとう」というつぶやきへの返事は、僕の足をぺしっと叩く尻尾だった。
合宿が始まって六日目、リネが戻ってきた。
『ユウ、甘いのちょうだい』
「リネ、おかえり」
「どこに行ったんだ?」
『最下層まで行って、戻ってきたよ』
「……最下層のマジックバッグはどうした?」
『その辺にいた人間にあげたよ』
「……そうか」
最下層のボスとの戦闘はそれなりに楽しめたそうで、こうやって倒したのだと自慢げに報告している。
けれど、そんな話も耳に入らないほど、マジックバッグの行方が気になる。リネは薬箱ダンジョンの最下層のエリクサーを、失敗作だと捨てたことがあるので、単独の攻略の場合はドロップ品を気にしない思っていたけど、今回は回収したようだ。いきなりマジックバッグを渡された冒険者は驚いただろうな。
『あとね、上のフロアボス部屋の前で倒れてた人間のポーションを上級ポーションに変えてあげたよ』
「助けてあげたんだ。リネ、優しいね」
「でしょー。ほめてほめて」
僕の手元に飛んでくると、撫でろというように小さな頭をすりつけてくる。可愛いなあ。
ブラン、可愛くない牙をしまってよ。ちょっとしたスキンシップなのに、なんで僕がリネに触るのをそんなに嫌がるんだろう。
「ポーションは作るなと言ったはずだ」
『作っちゃいけないのは、エリクサーでしょ? 上級ポーションがないって言ってたから、ちゃんと上級ポーションにしたよ。クッキーが美味しかったんだ』
理由がとってもリネらしい。冒険者から頼まれたわけではなく、もらったクッキーのお礼にポーションのランクアップをしてあげたようだ。倒れている人がいるところでクッキーをもらう状況がまったく分からないけど、リネが納得しているなら問題ないはずだ。
広くなったセーフティーエリアに天幕テントとトイレを設置して、いつもの合宿の始まりだ。
順番でのフロアボスへの挑戦、その合間に魔石を集めるための戦闘。僕にとっては食事以外楽しみのない一か月だ。
「風の魔法行くよ」
「任せた」
露出した核に風の魔法でヒビを入れられたゴーレムは、光になって消えた。
もはやここのフロアボスなら余裕で倒せるようになってしまったアルと獣道たちは、魔剣なし、魔法中心など、縛りをかけてボスと戦っている。ピンチになっても、いざとなれば魔剣で倒せるという自信があるから出来ることだ。魔法が効きにくいゴーレム相手に、それでもなんとか魔法中心で勝ってしまうのだから、さすがだ。
「ポーションいる?」
「頼む。久しぶりの魔力切れだ」
「最近は魔剣に頼りすぎていたな」
久しぶりに魔剣なしの戦闘を行い、魔剣を持つ前なら出来ていたはずのことが出来なくなっていたと反省している。
「万が一魔剣が壊れたときに備えて、こういう訓練も必要だな」
「魔剣って壊れるのか?」
「壊れると思っていたほうが安全だろう」
「修理は魔道具師か?」
そういえば、魔剣の耐久性は気にしたことがなかった。マジックバッグは、破れてしまえばマジックバッグとしての機能を失う。とはいえ、バッグ自体が破れにくくなっている。
「ブラン、魔剣って壊れる?」
『(普通の剣よりは強いが、それでも形あるものはいつか壊れる)』
「そっかあ」
『(予備が必要だな。五人分か)』
「壊れにくいなら、大丈夫だよ」
『(戦闘中に壊れたら困るだろう)』
一本は予備があるんだから、壊れてからでいいじゃない。しかも五人分だからって、相性があるから五回で済むとは限らない。そんなにブロキオンに付き合いたくない。
ブランの声は聞こえていないはずだけど、僕の返事から何を話しているか分かった獣道たちが、期待の目でこちらを見ている。ここは、気づかなかったふりだ。リネと行っても魔剣が出るはずだから、僕を巻きこまないでほしい。
宝箱から出たマジックバッグを収納し、セーフティーエリアへと向こう。今日の挑戦は終わったので、このあとは夕食をとって休む予定だ。
『肉だ』
「はいはい」
『今日こそ肉だ。でないと暴れるぞ』
最近ブランからのお肉要求を無視していたら、セーフティーエリアへの帰り道で脅されてしまった。野菜炒めやローストビーフ入りサラダでも、ブランにはお肉多めで出していたのに、満足出来なかったらしい。
「今日はブランも好きなピザにしようと思ったけど、お肉ね」
『ピザで手を打とう。肉は明日の朝だ』
「朝からお肉はないよ」
ブランが偉そうだ。実際偉いんだけど、僕は朝からステーキが食べられるような頑丈な胃腸を持っていない。僕だけ別メニューにしたとしても、ブランが食べているのを見るだけで、お腹がいっぱいになりそうだ。
話がよほどこじれない限り、アルは僕たちのご飯の攻防に口を出さない。いまも苦笑しながら聞いているだけだ。アルはリネの要望を必ず飲むらしいので、ブランの要求を無視している僕が、神獣への敬意を忘れていると言われても仕方がない。だけど、本来食べる必要のない神獣なのに、食べもののわがままを言うのはどうなんだと思ってしまう僕は、心が狭いのだろうか。
『明日の昼と夜は肉だ』
「分かったよ」
なんだかんだと言いながらも、こうして僕のわがままを許してくれるから、甘えてしまう。「いつもありがとう」というつぶやきへの返事は、僕の足をぺしっと叩く尻尾だった。
合宿が始まって六日目、リネが戻ってきた。
『ユウ、甘いのちょうだい』
「リネ、おかえり」
「どこに行ったんだ?」
『最下層まで行って、戻ってきたよ』
「……最下層のマジックバッグはどうした?」
『その辺にいた人間にあげたよ』
「……そうか」
最下層のボスとの戦闘はそれなりに楽しめたそうで、こうやって倒したのだと自慢げに報告している。
けれど、そんな話も耳に入らないほど、マジックバッグの行方が気になる。リネは薬箱ダンジョンの最下層のエリクサーを、失敗作だと捨てたことがあるので、単独の攻略の場合はドロップ品を気にしない思っていたけど、今回は回収したようだ。いきなりマジックバッグを渡された冒険者は驚いただろうな。
『あとね、上のフロアボス部屋の前で倒れてた人間のポーションを上級ポーションに変えてあげたよ』
「助けてあげたんだ。リネ、優しいね」
「でしょー。ほめてほめて」
僕の手元に飛んでくると、撫でろというように小さな頭をすりつけてくる。可愛いなあ。
ブラン、可愛くない牙をしまってよ。ちょっとしたスキンシップなのに、なんで僕がリネに触るのをそんなに嫌がるんだろう。
「ポーションは作るなと言ったはずだ」
『作っちゃいけないのは、エリクサーでしょ? 上級ポーションがないって言ってたから、ちゃんと上級ポーションにしたよ。クッキーが美味しかったんだ』
理由がとってもリネらしい。冒険者から頼まれたわけではなく、もらったクッキーのお礼にポーションのランクアップをしてあげたようだ。倒れている人がいるところでクッキーをもらう状況がまったく分からないけど、リネが納得しているなら問題ないはずだ。
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