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第四話 淫魔くんのハジメテ
しおりを挟む全ての服を脱ぎ去り、裸体となったダリアン様の肉体美に一瞬呼吸すら忘れた。無駄の無い均整のとれたしなやかな筋肉は呼吸に合わせて小さく隆起し、その男らしい見事な体躯が目の前にあるだけで淫魔の本能が疼くのだ。そして何より脚の間にあるペニスは既に上に向かってそそり立ち、今まで出会ったものよりも遥かに立派なそれに釘付けになった。あれが、僕の中に入ったらどうなっちゃうんだろう。そういえば、いつもは痛みにばかり気を取られてこうしてお客様と対話をすることなんてなかったな。なんだかこの時間を2人で作り上げているみたいで、刹那のものではあっても一体感のようなものを僕は感じていた。2人で手を繋いで、僕の歩みに合わせて歩いでくれるような。いつのまにか、恐怖はすっかり消えていた。
その剛直をぴたりとあてがい、指と指を絡ませて手を繋がれた。
「じゃあ、ルフェルのハジメテ、貰っていい?」
「…はじめて?でも僕、処女では…」
「今までのはセックスなんかじゃなくてただの暴力だ。いいかいルフェル、君はまだ本当の快感を知らない。だから、…君はまだ処女だ。」
なんだか暴論のような気もするが、ダリアン様が言うのだからそうなのだろう。ずっと処女を失った時の思い出は苦いものだった。無理矢理ねじ込まれて、たくさん血が出て、痛みと恐怖でぐちゃぐちゃで気を失った。朝起きたら全身ボロボロでゴミみたいに床に横たわっていた。でも、初めてをダリアン様に捧げられるならこんなに嬉しいことはない。こんなに幸せな思い出があれば、どんな痛いことも苦しいことも耐えられる気がした。
「…嬉しい…僕の処女、ダリアン様に奪ってほしいです…」
「任せて」と嬉しそうに笑ったダリアン様は僕の目元にキスをするとゆっくりと腰を押し進めた。ぐぷぷとダリアン様のペニスを飲み呑んでいく。圧迫感はあっても痛みは一切なかった。きっと丁寧に解してくださったからだ。発情によって分泌された愛液の助けもあって、いつもの苦痛が嘘みたいにきもちよかった。
「ん、ん、ん、あっ、…んん、」
「っく、…はぁ、…見て、ルフェル、全部っ、入ったよ」
少し苦しげに眉を寄せたダリアン様は淫魔の僕以上に淫美で、僕はその色香に当てられてしまう。誘われるように自身の腹に目をやれば、確かにダリアン様のペニスがぐっぽりとハマっていた。それを見ただけで僕は今までにない充足感に満ち溢れた。
「っ嬉しい、うれしい、…ひとつになれて、幸せ…っぅ、すごく、しあわせ…」
感極まった僕はまた泣いてしまう。僕はこんなにも涙脆かっただろうか。ダリアン様に会ってから泣いてばっかりだ。でも、この涙はいつもの寂しい涙じゃなくて、温かい幸せな涙だ。
「っふ、俺も、幸せだよ、ルフェル。…っ、すごく、気持ちいい…」
少しでもダリアン様に喜んで欲しい。せめて彼が褒めてくれた笑顔で、これだけは伝えたい。僕は自分ができる最大の笑みを浮かべた。
「っダリアン様、僕も、とっても気持ちいいですっ、…だ、大好きです!」
すこし子どもっぽくなってしまったのが恥ずかしくて、僕は目の前の胸に抱きついた。「ぐっ」と低く呻いたダリアン様は一度深く息を吐くと、抱きしめ返して頭を撫でてくれた。
「っはぁーー、危ない、イクとこだった…、全く、危険な子だなぁ…」
何が危ないのかはよくわからなかったが、怒ってはいないみたいでよかった。基本的に娼館というのは一期一会。一度会ったお客様とまた会えることの方が少ないのだ。もしかしたら、ダリアン様とお会いできるのは今日で最後かもしれない。だからこそ、どうしてもこの気持ちを伝えたかった。思い残すことのないように。
「ルフェルが気持ちよくなれて、俺も嬉しいよ…それに…、俺もね、ルフェルのこと、好きだよ。」
ちゅっとおでこにキスをされて、僕はさらに真っ赤になった。
す、すきって…!僕のこと、好きって!!
嬉しくなって口元からふにゃりと力が抜けてしまう。ダリアン様の胸にぐりぐりと頭を擦り付けて、くふふと笑う。ふわふわと体が軽くなって、今にも飛んでいってしまいそうだ。
嬉しい、嬉しい、嬉しい!
もしかしたら、今日は命日なのかもしれない。一生分の幸せを使ってしまったような気がした。でも、それもいいな。僕が死んだところで喜ぶ人こそあれ、悲しむ人などいない。こんなに幸せなまま消えることができたらどれほど素晴らしいだろう。最期に神様がくれたプレゼントだっていうなら納得できた。
僕が心地よい淫蕩に揺蕩っていると、頭上から苦しげな息遣いが聞こえてきた。
「っごめん、君のナカ、良過ぎて、…そろそろ、ッ限界かも…、…動いても、イイ?」
「…はいっ、ダリアン様、…僕で、気持ちよくなってください…!」
「っふ、『気持ちよくしてください』だろ?」
ゆったりとしたダリアン様の腰使いは、余裕があって大人なダリアン様そのものだった。まるで大波が流木を浜辺へと打ち上げるように、ゆっくりと、確実に僕を快感の頂へと導いていった。少しずつ角度を変えながら前立腺を擦ったり、最奥をコツコツとノックしたり、緩急のあるストロークは僕を翻弄した。訳もわからないうちに初めての射精をして、そこから立て続けに達し続けた。
僕の腹が自分の精液でぐしょぐしょになる頃には空がもう白み始めていた。はふはふと息をするだけで精一杯だった。指先まで甘い痺れに犯され、僕の身体はダリアン様の動きに合わせて揺れるだけで、その度に「、あ、んあ、あ」と意味のない言葉が漏れ、口元からはだらしなく涎が垂れた。
「…ん、んぁ、……あぅっ、ふ、……ぅくっ、ん…」
「…っく、は、…そろそろ、っ俺も、イキそうだ、ルフェル、…一緒にイこうか?」
口を開けば喘ぎ声しか出なくて、僕は必至にこくこくと頷いた。そこからダリアン様の動きは性急さを増し、2人の息遣いが重なる。
「…ぁ、んぁあああああっ!!」
僕が達したのと同時に、胎内にどくりとダリアン様の精が放たれた。お腹の中でじわりと温かいものが広がり、そこから身体全体に精気が染み渡るのが分かった。こんなに上等な精気をお腹一杯食べられたのは初めてだ。まだ少し震える手でお腹を撫でる。ここに、ダリアン様の精液が。
「…ふふ、…お腹、いっぱい…」
食べた食べたと言わんばかりにベッドに身を沈め目を閉じると、心地よい眠気が襲う。いま寝たら、すごく、きもちいい…。今にも眠りに落ちそうなその瞬間、未だ胎内にあったダリアン様のペニスがいつのまにか硬さを取り戻し、どちゅんと最奥を突いた。
「…ひうっ?!」
「…いやぁ、こんなに早くイったのいつぶりだろう…でも、一回イったらちょっと落ち着いたよ。…まだ、落ちないでよ?」
先程の一突きで目の前を星が散っている僕はダリアン様が何を言ったのかよく聞こえていなかった。再開されたストロークは相変わらずゆったりとしていたが、より力強く、確実に僕の快感を刺激した。後ろばかりに意識がいくと今度は濃厚なキスが落とされる。上も下も、前も後ろも全部気持ちよくって、気づいたら僕のおちんちんからは透明な液体がぷしゃぷしゃと漏れていた。
「…ゃ、やぁっ!も、もれちゃっ…ひんっ」
「あらら、潮噴いちゃったかぁ…、大丈夫だよ、ルフェルが感じている証だ。」
そっか、だりあんさまがいうならいいか。
僕は考えることを放棄した。だってとっても気持ちいいし。ダリアン様も嬉しそうだし。娼夫の癖してさっきから…いや最初からずっとまぐろだけど、今日で最期だし。まあいいか。
「うん、ぼく、…っん、ぁ、とってもきもちい…」
「ちゃんと気持ちよくなれて偉いね、ルフェル」
わ、ほめてもらえた。うれしいな。ぼく、えらいんだって。ふふ。なんだか、きょうは、いいひだなあ…
目の前のダリアン様がゆらゆらと揺れ始め、自分の声すら聞こえなくなってきた。
「…可愛いなぁ…さっきから全部口に出てるよ?…ってもう聞こえてないか…」
「ふふ、…ぁんっ、…っふぁ、…うれしい、……しあわ、せ、………」
一度達したはずなのにダリアン様の攻め手が緩むことはなく、空が明けた頃、僕は気を失った。
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