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エピソード・瑠衣編
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あの場で腕を引いて太刀川は瑠衣を連れ出した。ランチタイムに向かう人波とは逆方向、ひと気がない二人にとって慣れた場所、そこの扉をあけて太刀川は瑠衣を倉庫に押し込んだ。
「ごめん、なさい……」
二人きりになったら急に青ざめたような瑠衣が頭を下げてきた。さっきまでの勢いが嘘のように怯えて震えている。
「内緒に……してって言ってたのに、私、勝手にあんなこと」
「お前は良かったわけ?周りにバレるの、本当に嫌じゃなかった?」
「私はっ――」
そこまで言いかけてまた飲み込みそうになる。でも、太刀川に見つめられながら飲み込みそうな気持ちを思い切って吐き出した。
「本当は言いたかった……太刀川さんと特別な関係になれてること、隠したくなんかなかった」
「……面倒なこと、起きるかもしれないって考えねぇの?」
「面倒な、ことって?」
「俺に関心持つ女、質悪いの多いじゃんか。嫌がらせとか嫌な思いすること絶対あるぞ」
「太刀川さんのこと好きな人が、そんなこと本気でするとか思えない。好きな人が悲しむこと、するかな」
どれだけお人好しのバカなんだと太刀川は心の中で笑った。
「好きなヤツがじゃない、お前に腹が立つならそんなことどうでもよくなるだろ。俺が苛ついてもお前が泣けば納得できるのが逆恨みなんだよ。相手傷つけさせたいヤツが思いやりとか持つなんて思うなよ。アホ」
「そんな……そうかなぁ」
どこか納得のいかなさそうな瑠衣だが太刀川にいつものように罵られてなんとなくホッとする。変なすれ違いから久しぶりに過ごす二人の時間は今までと変わらない穏やかな空気だったからだ。いつも一緒に過ごす時間が戻ってきた、それに安堵する。この流れる時間がたまらなく好きだ、そう瑠衣は思った。
「――ごめんなさい。迷惑かけて……」
そこで言葉が途切れたのは太刀川の胸の中に引き込まれたから。太刀川のいつもの香水の香りに包み込まれる。初めて感じたときは緊張しかなかった香りは今では何よりも安心する香り。瑠衣は太刀川から香るこの匂いが好きで仕方ない。
ずっと包まれていたい、その気持ちが溢れるように鼻を擦りつけて太刀川の胸に寄り添った。
「誰にもあげないって?」
「……え」
「あれ、やばかったな」
「あ、の……」
「瑠衣さぁ、普段たいして自分の気持ち言わねぇくせになんだあれ。あんな独占欲だしてくるとか聞いてねぇわ」
「ごめん、なさい」
「謝んなよ、嬉しかったのに」
(え)
「ごめん、なさい……」
二人きりになったら急に青ざめたような瑠衣が頭を下げてきた。さっきまでの勢いが嘘のように怯えて震えている。
「内緒に……してって言ってたのに、私、勝手にあんなこと」
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「私はっ――」
そこまで言いかけてまた飲み込みそうになる。でも、太刀川に見つめられながら飲み込みそうな気持ちを思い切って吐き出した。
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「……面倒なこと、起きるかもしれないって考えねぇの?」
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どれだけお人好しのバカなんだと太刀川は心の中で笑った。
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「そんな……そうかなぁ」
どこか納得のいかなさそうな瑠衣だが太刀川にいつものように罵られてなんとなくホッとする。変なすれ違いから久しぶりに過ごす二人の時間は今までと変わらない穏やかな空気だったからだ。いつも一緒に過ごす時間が戻ってきた、それに安堵する。この流れる時間がたまらなく好きだ、そう瑠衣は思った。
「――ごめんなさい。迷惑かけて……」
そこで言葉が途切れたのは太刀川の胸の中に引き込まれたから。太刀川のいつもの香水の香りに包み込まれる。初めて感じたときは緊張しかなかった香りは今では何よりも安心する香り。瑠衣は太刀川から香るこの匂いが好きで仕方ない。
ずっと包まれていたい、その気持ちが溢れるように鼻を擦りつけて太刀川の胸に寄り添った。
「誰にもあげないって?」
「……え」
「あれ、やばかったな」
「あ、の……」
「瑠衣さぁ、普段たいして自分の気持ち言わねぇくせになんだあれ。あんな独占欲だしてくるとか聞いてねぇわ」
「ごめん、なさい」
「謝んなよ、嬉しかったのに」
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