あなたはキスだけしてくれない

sae

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エピソード・瑠衣編

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 頬を染めて見上げてくる瑠衣はどうしようもなく――可愛いのだ。

「目立つのは苦手だし、そういう分類の人間じゃないってちゃんと自覚もしてます。目立ちたいとも思わないけど、太刀川さんのことは違う。入江さんにも言われた、大人しい顔してやること大胆だなって。本当にそう思う。太刀川さんのことに関してだけは全然大人しくなんかない、黙って引いたりなんか絶対したくない、嫌がらせされたって絶対別れない」
「――つぇぇ~」
 瑠衣の思いのほか強気な発言に太刀川の方が若干引いていた。

「ごめんなさい」
「だから何謝りなんだよ、謝んな。てか……お前そんな女だったんだな」
 そんな女、それの真意が読めなくて瑠衣は恐る恐る顔をあげて太刀川を見つめた。

「可愛いだけかと思ってたら、かっこいい女だったんだ」
 そう言って口づけてくる。

「ん!」
 押し付けるような強いキスが数秒重なって、鼻先が触れ合う距離で太刀川が言う。

「俺のことにだけ闘う女、やべぇじゃん。好き」
「……ぇ」
 思いがけぬ太刀川から溢された”好き”の言葉に瑠衣は耳を疑った。そしてニヤッと笑った太刀川が言ってくるのだ。

「心配しなくても、後ろ盾は全力でしてやる。弱ったときは抱きしめてやるし、無理ってなったら泣きついてこい、最後は俺が処理してやるよ」
「……処理って、なんか怖い」
「好きな女泣かされてんだからな。二度と手なんか出したくねぇくらいには絞めてやるわ」
 太刀川の含み笑いに瑠衣はゾッともしたがそれよりも嬉しさが勝った。その気持ちを持つ自分が本当にしたたかだと思うけれど好きなのだから仕方ない。

 好きな相手にそんな風に守られている、守られていたのか……それを実感したのだから。

「好きって言って?」
「……好きだよ」
「もっと、言って?」
「お前さぁ!そういう女なの?」
「嫌になった?」
「嫌じゃねぇけど……」
「いっぱい言ってほしい、好きって、私だけって、抱かれてるときだけじゃイヤ、もっと」
 そう言って抱きついてくる瑠衣に太刀川は絶句した。

「私も言うから、お願い、好きって言って?」
 心の内を言葉であふれ出させる瑠衣に戸惑う太刀川がいた。可愛いと思ってどんどんハマりかけているところにまた新たな顔を見せ始める。それにまたきっと自分はハマっていくのだろう。多分、怖いほどに。

「好き、全部全部、私のものだから――」
 囁きながら腕を首に絡ませてきてそんな風に囁く。太刀川はそんな瑠衣に心を鷲掴みにされていた。

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