あなたはキスだけしてくれない

sae

文字の大きさ
61 / 75
エピソード・太刀川編

11

しおりを挟む
 普段からはあまり感じないような殺気を太刀川が放つ。それに瑠衣はどうしようも出来ず言いかけた言葉も飲み込んでしまった。何を言っても噛みつかれそうだ、そう思ったから。なのに酒が入った國枝にはそれがわからないのか、真っ向から言い返すのでそれにも瑠衣は戸惑った。


「太刀川のその頭から人を相手にしないみたいな態度……いつも余裕で周りのこと馬鹿にしてさ、自分に出来ないことなんかないって思ってるだろ?失うものなんかなんにもないんだろ。良い身分だよな、何様だよ」
 感情が乱れだした國枝の言葉は止まらない。今までの溜め込まれた思いが悔しさがそれに拍車をかけている。

「いいじゃん、別に女の一人くらい。お前なんかどんな女でも簡単に落とせるだろ。こんな大人しそうな子遊ぶの可哀想じゃん。瑠衣ちゃんだってお前の横に並ぶのにしんどい思いしてんだよ、それもわかって縛り付けてんの傲慢だろ、可哀想だわ、瑠衣ちゃんが」

「――人を馬鹿にしてんの、お前の方だろ」
「え?」
「何回気安く名前呼んでんだ?いい加減にしろよ、本気でムカつく。お前に名前呼ばせる権利やってねぇよ、二度と呼ぶな、親しくなったとか思って勘違いしてんじゃねぇぞ、お前こそ何様なんだよ」
「俺は――」
「可哀想?どっちが傲慢だよ。お前の考え方こそ傲慢だよ。なに?俺に相手にしてほしいの?どうしてほしいわけ?仕事で蹴落としてやりたくて、女にこそこそ近づいて気づいたらマジで惚れて欲しくなった?泣いて譲ってもらえたら満足か?」
 自分が瑠衣にだんだん特別な感情を持ち始めていた気持ちを悟られていたことにカッとした。

「俺を馬鹿にすんのはいいよ、好きに言えばいい。そんなのはさ、いくらでも聞き流してこれた、でもな、瑠衣のこと馬鹿にされると、一番腹立つわ。スルーできねぇ」
 太刀川が國枝に近づく。一歩ずつ距離が縮まって、少しだけ國枝より背の高い太刀川が見下ろした。

「相手してほしいんだったらそう言えや。いくらでもこれから構ってやるよ。そのかわり、仲良くするつもりねぇよ、お前とは。意味わかるよな?」
 睨むように言われて國枝は何も言い返せない、言いたいことはもっとあったはずなのに、どれも太刀川には響かないのがわかったからだ。
 黒い漆黒の瞳、太刀川の瞳がこんなに黒いとは思わなかった。それだけ自分が今まで太刀川の視界に入っていなかったのだと知らされるだけだった。

「これ以上瑠衣に近づいたらお前のこと本気で潰してやる。忠告したからな、忘れんなよ」
 それだけ吐き捨てる様に言うと、「ふぅ――」と太刀川が息を吐いた。走ってきたから乱れた猫っ毛をわしゃっとかきあげると風に舞うように甘い匂いが漂った。

「あー、ダル……瑠衣、帰るぞ」
 明らかにめんどくさそうに國枝に背を向けて瑠衣の手を引いた太刀川はその場を去った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...