あなたはキスだけしてくれない

sae

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エピソード・太刀川編

13☆

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 いきなり膝裏に太刀川の腕が差し込まれたと思ったらそのまま抱き上げられて一瞬でお姫様抱っこ。それに瑠衣がさらに困惑する。横抱きされたことも、お仕置きのセリフも、苛ついた感じの太刀川の横顔にも……そのどれにも戸惑って、いろんな意味でドキドキがとまらない。

「柾、ちがうの、聞いてほしい。私は柾の仕事の邪魔だけはしたくなかったの。柾の負担にはなりたくないし、時間だって有効に使ってほしいって……」
「それを決めるのお前じゃねぇよ。邪魔かどうかも俺が決める。時間?それこそ俺のもんだよ、お前のために使ってるわけじゃねぇ、勘違いすんなよ」
「……」
「仕事も、瑠衣との時間も俺が考えて俺のために使ってる。瑠衣がそこに気を使ったり遠慮したりするのは違う、そんなこと頼んだ覚えもねぇしな」
「……ごめん、なさい」
 ベッドに降ろされると、太刀川が馬乗りになって瑠衣を見下ろしている。太刀川の表情は怒りも見えるがでもやはり優しさは感じる。瑠衣は見つめられてドキドキしながらも自分の太刀川へしたことを思い返して後悔した。


「ごめんなさいの意味は?」
 くちびるを太刀川の長い人差し指が撫でてくる。

「ぁ、んぁ……私がぁ……」
 國枝の話を鵜吞みにせず、太刀川に素直に話せばよかったと。言う相手が違うだろ、そう言われた言葉がすべてだ。自分が間違えていた、瑠衣はそう思った。

「そう、瑠衣が、だよ。お前が勝手に勘違いしてんだよ。俺はお前が勝手になんでも決めて答えだそうとすることに腹立ってんだよ」
 指先が、口の中に入ってくると舌を押さえつけられて指を噛まないようにしようと瑠衣は必死だ。そんな状況で話など無理に決まっている。指先を口の中で弄びながらも見つめる瞳はやはり優し気で、強い力は嘘みたいなのだ。それに瑠衣の身体は素直に反応し始める、感じ始める。

「ん、ぁ……」
 くちびるの端から唾液がこぼれる。それを恍惚とした瞳で見つめる太刀川はくすりと笑って顔を近づけてきて――口づけた。

「んんっ!」
 べろっとこぼれた唾液を舐めあげられてその舌が瑠衣の舌を弄ぶ。深いキスに徐々に変わると瑠衣の思考はだんだんまともではいられない。かぶさってくる太刀川の体に引っ付くように腕を伸ばして猫っ毛に指先を絡めた。


「んっ……ごめん、ね?柾の気持ち考えずに……はぁ、自分のしてることが、んっ、良かれと思ってた」
「アホ」
「だから謝ってる!柾のためなんて嘘、自分のためにしてた。そうするのが良い彼女なんだって」
「良い彼女ってなんだよ」
 そう言って瑠衣の首筋にくちびるを這わせてくる。熱い息がかかって瑠衣の身体が敏感に震える。付き合う前、あの身体を慣らす秘密の時間――その時太刀川に何度も首筋をなぞられた。それを身体がずっと覚えている。だから太刀川に触れられているとセンサーの様に感じてくる。首筋が、瑠衣にとっては一番感じる場所だ。

「良い彼女でいたいなら俺の傍にいろよ」

 太刀川の言葉に瑠衣が目を見開いた。
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