7 / 36
年下の部下は噛みついてくる(side誠)1
しおりを挟む
本社の品質管理から移動してきて慣れないことも多かった。
大学で化学をやっていたとはいえ、いきなり試験ばかりもしてられないし、前課長の引継ぎから溜まりまくってる報告書の承認をするのにデータを見たりしていたら時間がいくらあっても足りなくて。
部下の誰かに仕事を振るしかないのに適任がいないのが悩みの種だったが、依頼を回せば二日に一件くらいのペースで報告書を回してくる派遣の彼女に目を付けた。
測定値のばらつきもなくデータのまとめかたをみても無駄がなくてなによりミスがない。過去の試験結果を見たら値の精度の高さと再現性に驚いた。
実際業務で一番依頼試験件数を捌いているのが彼女だし、社員はほかの業務や案件を抱えているとはいえそれらの進捗状況が良いわけでもない。
つまり他の業務に手いっぱいで試験にまで手が回らないというわけではないのがわかる。そう思うと彼女の捌いている量が半端じゃなく多くてそれだけ仕事が早いのだろう。
試しに一度彼女に仕事を投げつけたら翌日には必ず報告をくれたので、仕事ができる子なのだと数週間で確信した。
「あの」
事務所で声をかけてきた彼女はどこかイラついているように見える。
(普段は割とスンッとしてるのに案外顔に出やすいんだな。おもしろ)
「なに?」
周りは結構俺に怯えて意見なんか言っても来ないのに興味深い。
「急ぎならそれを優先するのでちゃんと指示いただけませんか?」
「別に急いでないよ」
面白いくらいに応えてくるから投げつけてるなんて言ったらブチ切れそうだな、と思いつつ本音で返す。実際急ぎの案件でもない。
「空いた時間っていわれるとやりにくいんですけど」
「優先度は自分の仕事重視でいいよ」
「そういわれてもです」
「でも捌けてるじゃん」
いい返してくるから被せるように返すと噛みついてきた。
「ついでみたいにはできません!」
事務所内も変な空気になって、思わず吹き出しそうになる。とりあえず人目もあるから実験室に連れて行くとしぶしぶついてくる。
依頼の内容を説明していると依頼書をでかい目がじっと見つめている。
確かに彼女にはサンプル名さえもろくに伝えていなかった。彼女が文句を言いたくなるのもわかる。これからは正式に依頼として渡してやろうと決めた。
「負けん気強いよな」
笑って言ったら明らかにムカッとした表情でまるで殺気だった猫みたいだった。
それと同時にどこかでこの子を懐かせてみたいとも思った。部下として面白くて育ててみたくなった瞬間だった。
大学で化学をやっていたとはいえ、いきなり試験ばかりもしてられないし、前課長の引継ぎから溜まりまくってる報告書の承認をするのにデータを見たりしていたら時間がいくらあっても足りなくて。
部下の誰かに仕事を振るしかないのに適任がいないのが悩みの種だったが、依頼を回せば二日に一件くらいのペースで報告書を回してくる派遣の彼女に目を付けた。
測定値のばらつきもなくデータのまとめかたをみても無駄がなくてなによりミスがない。過去の試験結果を見たら値の精度の高さと再現性に驚いた。
実際業務で一番依頼試験件数を捌いているのが彼女だし、社員はほかの業務や案件を抱えているとはいえそれらの進捗状況が良いわけでもない。
つまり他の業務に手いっぱいで試験にまで手が回らないというわけではないのがわかる。そう思うと彼女の捌いている量が半端じゃなく多くてそれだけ仕事が早いのだろう。
試しに一度彼女に仕事を投げつけたら翌日には必ず報告をくれたので、仕事ができる子なのだと数週間で確信した。
「あの」
事務所で声をかけてきた彼女はどこかイラついているように見える。
(普段は割とスンッとしてるのに案外顔に出やすいんだな。おもしろ)
「なに?」
周りは結構俺に怯えて意見なんか言っても来ないのに興味深い。
「急ぎならそれを優先するのでちゃんと指示いただけませんか?」
「別に急いでないよ」
面白いくらいに応えてくるから投げつけてるなんて言ったらブチ切れそうだな、と思いつつ本音で返す。実際急ぎの案件でもない。
「空いた時間っていわれるとやりにくいんですけど」
「優先度は自分の仕事重視でいいよ」
「そういわれてもです」
「でも捌けてるじゃん」
いい返してくるから被せるように返すと噛みついてきた。
「ついでみたいにはできません!」
事務所内も変な空気になって、思わず吹き出しそうになる。とりあえず人目もあるから実験室に連れて行くとしぶしぶついてくる。
依頼の内容を説明していると依頼書をでかい目がじっと見つめている。
確かに彼女にはサンプル名さえもろくに伝えていなかった。彼女が文句を言いたくなるのもわかる。これからは正式に依頼として渡してやろうと決めた。
「負けん気強いよな」
笑って言ったら明らかにムカッとした表情でまるで殺気だった猫みたいだった。
それと同時にどこかでこの子を懐かせてみたいとも思った。部下として面白くて育ててみたくなった瞬間だった。
27
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛想笑いの課長は甘い俺様
吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる
坂井 菜緒
×
愛想笑いが得意の俺様課長
堤 将暉
**********
「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」
「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」
あることがきっかけで社畜と罵られる日々。
私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。
そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる