続・ゆびさきから恋をするーclose the distance

sae

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エピソード7

千夏の奮闘③

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(これは……一体誰の趣味なんだろうか)

 とりあえず目の前の身体に釘付けになって固まってしまった。

(なんだ、このAVみたいなカッコ)

 グラビアよりもエロい水着に身を包んだ千夏が俺の上に跨っていた。

(え、やっぱり夢?夢にしてはリアルだったけど。いや、これは夢想というやつか?そもそも俺ってこういうこと妄想してたんだろうか。こんなの着せたいとか思ったことなかったはずだけどな……しかしエロい、クソエロいな。千夏の身体にマイクロビキニって犯罪級にヤバくね?もはや罪レベルだろ、これは)

 脳内を整理させるつもりが余計なことばかりぐるぐるしてちっともまとまらないし、そんなことよりもただただ局部だけを隠しているような水着姿に視線だけは一切逸らせられない。

(これを今からめちゃくちゃにしてもいいということなのか?マジで?このただエロいだけのムチムチした身体を俺の好きなようにしてもいいと?ヤバいな、どうしよう、うそだろ、俺もう明日死ぬんじゃないだろうか)


「……あの」
 千夏の声で暴走しかけていた脳内の思考がやっと止まって我に返った。

「……なんか、言って?」
 うかがう様に恥しげに言う千夏に喉元が鳴った。血が逆流しそうなほど興奮している。

「……触ってよ」
 そういい胸に手を押し付けられて薄い布切れから柔らかすぎる胸の突起物がハッキリと手に触れた。そのときもう性欲も、かろうじてあったであろう理性も爆発した。


 ヘロヘロになった千夏の身体を起こして膝の上で抱えるとかぶさるように身体を重ねてきて今にも力尽きそうに肩で息をしていた。

「……ちなつ?」
「………ぁい…」
 肩越しから呟かれた返事でまだ生きているのはわかる。

「はぁー気持ちよかったー」
 ギュッと抱きしめると「……それは、よかった、です」と、ひどく掠れた声。泣き叫んだせいだな、とわかっていても罪悪感が全然湧いてこなくて自分でもひどいと思う。

「……でも、もう、むり……だよ」

(さすがにもう俺もできない)

 時計を見たら日付も変わって千夏ならもう爆睡している時間になっている。

(……やばいな、俺こんなに性欲強かったんだな)

 自分で自分に驚いて改めて思う。今までは処理的な感じでしてたんだろうか。一晩に何回もとかそれこそ十代の時以来できた試しはないのに。

 そこまで俺に火をつけたのは結局このコスプレな気もしている。この千夏の身体に全く見合わないサイズ感の水着、でもどの水着よりも興奮させるエロいマイクロビキニ――あの水着姿はヤバかった!
 なんというかもう少女趣味のアニメみたいでエロい以外ない。あまりそっちの趣味はなかったが、あれはオタクじゃなくてもエロいと思う。胸の大きな子と付き合ったことがないわけじゃないのに、やっぱり小柄だからだろうか。ムチっとした体がいやらしくて無駄にエロく見えた。

(細身の子にもう全然興味ないわ、俺……そもそも千夏以外の女、抱けない気がする)

 ぐぅ……と、肩に頭をもたれさせていた千夏から寝息が聞こえる。俺も疲れたけど、仕事とは違う疲労感。寝入った千夏を抱きかかえて寝室に運ぶ。

(俺ももう寝たい。脳みそが疲労と睡魔で死にそう)


 そのまま千夏と一緒にベッドに入ると、腕の下で寝息を立てる千夏の体をこちらに向けた。

(甘えさせたかったてなんだよ……忙しくて疲れてるだろうから?……クソ可愛いことすんな)

 俺が甘えたことなどまるでないみたいな言い方じゃないか。

 千夏はなんにも気づいていない。仕事でもプライベートでももう千夏ばかりに頼って生きている。しんどくても精神的に生きやすくなったのはきっと千夏と出会ったから、好きになったからだ。
 それを受け入れてもらえることが、甘え以外のなんだと言うんだろう。胸元に身体を引き寄せて馴染む匂いに包まれながら俺も一緒に目を閉じた。


 ふと目が覚めたら千夏がいなかった。珍しく俺のが寝入っていた。何時だろうと体を起こすと寝室の扉がちょうど開いた。

「あ、起こしちゃった?ごめんね」
「いや、起きたとこ……何時?」
「十一時まわったとこだけど……疲れてるんだね、こんなに寝ちゃうの珍しいもん。まだ寝る?」
「起きる……寝すぎて頭痛い」
「だいじょうぶぅ?」
 そう言って傍に寄ってくる。頭を撫でながらじっと見つめてくるからその瞳を見つめ返す。

「ごはん、出来てるけど食べれそう?」
 首を傾けて聞いてくる姿が可愛すぎた。

 顔だけ洗ってリビングに戻ると千夏がちょうど支度を終えたのか、席に着こうとしていた。テーブルには朝食らしい和食が並んでいる。
 白米、みそ汁、だし巻き卵、ほうれん草の胡麻和えに西京焼き、そしてきゅうりの糠漬け。千夏は和食も洋食も結構なんでも作れる。

「……いただきます」
「糠漬けまだ浅いかなぁ」
「え?これも千夏が作ったの?」
「誠くんちの冷蔵庫には実は糠床があります」
 得意そうに言うからもう、なんというか……。

「食べよ~」
 嬉しそうに手を合わせて大口を開けた千夏。

(なんだろな、この生き物は。もう可愛いにしか見えん、末期だわ)

「うん、まぁまぁ漬かってる」
「――千夏ってさぁ」
 俺の言葉の続きを待つように、きゅうりの糠漬けを頬張りながら俺を見る。

「前から思ってたけど料理うまいよな」
「ほぉ?」
 ごはんをかき込んだからかちゃんと喋れていない。

「そんなにたいした料理披露してないと思うけど」
「シンプルな飯がうまいって料理上手な証拠じゃない?仕事みてて細かい作業得意なのは知ってたけど、やっぱり器用なんだな」
 素直にそう言ったら、千夏は恥ずかしそうに俯いた。

「……作り方見たらびっくりされそうだけど……美味しいって思うのはお腹空いてるしだよ。とくに炊き立てだし余計じゃない?あとは……」

「一緒に食べてるからかな。おいしいねぇー」
 ふにゃんと笑う千夏。


 心も体も胃袋までも掴まれた。
 千夏を……もう俺の世界から切り離せるわけがない、この時そう思った。



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