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エピソード9
千秋襲来⑤
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買ったサンドイッチはアボガドとエビマヨが挟まれてカレーによくあった。
「おいしぃ」
頬張る私に二人がジッと見つめてくる。
「……もはや豚やな」
カチンとくる言葉を吐く千秋を横目に笑いながら誠くんが、「口、ついてる」と指先で指摘してくる。
「ほんまに食い意地張ってんなぁ」
大きな口でカレーを食べながら千秋が言った。
「好きなように食わせてたら確実に豚か牛になるで、ええのん?こいつさぁ、無駄に寝るやろ?食ったらすぐ寝るの、あれ食いすぎやねんって、ただの。満腹以上腹にいれるから眠くなって寝てまうんや、加減考えてセーブせぇや。これから代謝どんどん落ちてきてデブになる一方やからな」
言い返したくても言い返せない。
「――なるほど。食べすぎてて眠いのか。そういうこと?体質じゃなかったんだな」
誠くんが目から鱗みたいな顔をして感心していた。
(千秋の言い分に納得するとかやめて)
「おかわり」
千秋がお皿をよこしてくる。
「カレー好きやなぁ相変わらず」
「カレー嫌いな男ってそうそうおらんと思うけど」
たしかに誠くんもカレーは好き。二人が美味しそうにカレーを食べる姿を見ると微笑ましくて嬉しくなった。千秋がたまに誠くんに話しかけてそれに優しく答えてくれている。誠くんはめんどくさそうにすることもなく千秋に構ってくれて嬉しいしかない。
カレーを食べ終わったら千秋が誠くんに問いかけた。
「結局どうやって千夏のこと落としたん?」
「んー、力づくで」
「やっぱりパワハラやん」
「そうかも」
「千秋!誠くんも言い方!違うから!」
(誤解を招くような言い方はしないでほしい)
「職場なんかほんまに別れたら終わりやん」
千秋が言うと誠くんが笑って言った。
「別れないよ」
それだけの言葉だけどそれ以上の言葉はない。顔が一気に赤くなってしまったところを千秋に見られて顔を隠した。
「……アホらし」
「え?」
「俺、19時にツレと会わんとあかんしもう行く。ごちそうさま」
キャップを被って席を立った。
「え、千秋……」
「捨てたら半殺しにするからな。簡単に死ねるとか思うなよ」
誠くんに睨みながら物騒な事を言うからギョッとした。
「了解」
なのに、それに誠くんが可笑しそうに頷くから困惑してしまう。
「千夏!」
「なに?」
「……いらんこと言うてごめん」
(え?)
「も、行く」
逃げるように玄関に向かうから思わず追いかけてスウェットの裾を掴む。
「千秋!」
「――伸びるやろ~、離せやぁ」
「千秋」
「……なんやねん」
「私、ちゃんと今幸せ」
そう言ったら千秋がゆっくりと振り向いて見つめてくる。いつもそう、様子を伺うような、探るような瞳。私のことをまっすぐ見るその瞳は小さい時からずっと変わらない。
変わらない弟の視線。いつもいつも私にひっついて追いかけてきた。いつだって私のことを考えてくれている、その優しさはずっとわかっている。
(言いたかったんだよ、千秋にはずっと。大好きな人が出来たよって)
もう私のことばかり心配しなくていい、千秋はもっと自分のことを大事にして幸せになればいい。
――幸せになって、私みたいに。
「いつも心配してくれてるん知ってる、だから心配かけたくなかったんやけど……言えずにいてごめん。ほんまはずっと言いたかったんよ?今どんな風に暮らしてるか、私が何思って暮らしてるか……千秋にちゃんと話したかった、でも電話じゃうまく言えへんくて……うまく伝えられへんって思ってて」
大切な人に、大事な人を紹介できる幸せなんか今まで知らない。
「だから、会ってもらえて嬉しい、来てくれてありがとうな」
「――泣かされたら電話せぇよ。殴ったるから」
「千秋が殴ったらシャレにならへんやろぉ、もぉ……」
「フッ、また京都帰ってこいよ。おかんも心配してたで」
「うん……また帰るな」
生意気で余計なことしか言わない弟はそう言って帰っていった。
扉が閉まって鍵を閉める。シンッとした部屋に戻ると胸がいっぱいになった。
「……ありがと」
ギュッと背中に抱きつく。
「いつのまに千秋と連絡先交換してたの?」
「千夏が席立ってる時」
「ほんっまに抜け目ないんやからぁ」
あいかわらず隙がなくて呆れてしまう。誠くんも内緒にしないで教えてくれたらいいのに。
「それさ、ホントに可愛いんだけど」
「え?」
腰を持たれたと思ったらクルッと体が反転した。
「千夏の関西弁、なに?めっちゃ可愛い」
京都弁がモテるは本当だった。
――――――――――――――――――
「今日はありがとう」
千夏が腕の中で微笑む。
「千秋とあのまま別れなくてよかった、家まで呼んでくれてありがとう」
「千秋くんもちゃんと謝りたかったんだろ、俺は何もしてないよ」
「そんなことない」
そう言って腕を首に回すと身体が密着した。
「千夏の言語機能はもう乱れないわけ?」
「ええ?乱れてるんじゃない?なんか今日もう何弁話してるかよくわからへんし、あ、ほら今の関西弁」
「セックスしてて関西弁出ないの?」
自分でもバカなこと聞いてるのはをわかっているけど、直球で聞いたら案の定呆れられた。
「……意味がよくわからんねんけど」
「切り替える前にさせて」
(関西弁で喘ぐ千夏が見たすぎる)
呆れて逃げ腰の千夏を捕まえると困ったように笑った。
「ちょっと、ええ~なんで?も、え?今?」
そう聞かれて素直にうなずく。
「時間開くと切り替えちゃうじゃん、絶対」
「切り替えって……そんな性能なもんでもないって、ちょっとぉ!手が、ぁんっ」
「今から関西弁でお願いします」
「そんな……んっぁ」
キスすると千夏の体から力が抜けた。
「ふ……んんっ、ん」
ブラウスのボタンを外してキャミソールだけになる。
「ま、ここじゃいやや……」
(関西弁、めっちゃ可愛くないか?新鮮すぎる)
「ベッドがいぃ」
いつもと違うイントネーションで恥ずかしそうに言われて興奮する。膝の上に乗ってた状態なのでそのまま膝裏に手を入れて横抱きしたら千夏が悲鳴を上げた。
「きゃあ!待って!重いから!!」
「千夏くらいは抱けるよ。重いけど」
「重いって言ったぁ!」
「動くと落とすから!ジッとしろ」
「――お姫様抱っこ……やばぁ」
顔を真っ赤にして照れていて、ベッドに降ろすと両手を頬に添えて身悶えている。
「なに?そんな嬉しかったの?これ」
「……ぅん、憧れじゃない?お姫様抱っこって。きゃー、興奮」
(わからん)
「千夏の興奮スイッチが全然理解できない」
「それ、そっくりお返ししますから。変な興奮スイッチ入ってるの誠くんも同じやからね?関西弁?がそんなにいいのん?」
「え、うん」
「じゃあお姫様抱っこの夢を叶えてくれたから今日は特別です」
なんでも言ってみるものだ。
案の定、関西弁で喘ぐ千夏は予想よりずっとエロかった。
「や、それもうあかんってば、いややぁ、やぁ、もぅやめてぇよぉ――っ」
体を痙攣させてクタっと力が抜ける。指を抜くとドロドロに濡れて糸を引いた。
「うわー、千夏、めっちゃ濡れてる……」
「そ、いぅの言わんといてっていっつも言うてるぅ……あほぉ」
(あほってこんなに可愛い言葉だったんだなぁ。むしろもっと言ってほしい)
「関西弁の嫌って嫌に聞こえないんだけど。めっちゃいい」
「そんな、っんあ!やぁ、おっきぃ!んあ、ややぁ、も、そんなしたら……ぁっイクぅっ」
「っイッていいよ?はぁ――」
「やぁぃややぁ、わたしばっかり、っ、あんっ、ふあぁっ!」
聞きなれた声なのに発する言葉のイントネーションのせいで、千夏が千夏じゃないような気になって戸惑ってしまうが、直感的な喘ぎ方で千夏だと認識できる。
「も、おく、あかん、イク、も、イクぅっ」
「……じゃあ俺も一回イッてい?」
「ふ、ぅ――んっ、イッ……て?一緒に、一緒がいぃ――」
(可愛すぎるだろーー!!)
頭の中の血管が何本か確実に切れた。
柔らかい千夏の体を引き寄せて自身の熱を注ぎ込む。
「んああンっ!あ、はぁっ……すきぃ、めっちゃすきっ――」
抱きしめかえされて思考回路が爆発した。
「――千夏?」
「……ン、はぁ、あ」
飛びかけていた意識を呼び起こすとうっすらと目を開けて、まだ熱を孕んだ瞳で見つめて来たと思ったら――。
「……死んだかと思った」
発した言葉がそれだった。
「死ぬか」
「いつか誠くんに……殺されると思う」
(それはこっちのセリフだ)
「千夏、今度は上」
身体を抱き起こしてひっくり返す。
「ぅわぁ!ちょ、まだ体が――んあっ!」
「イッたあとの千夏の中めっちゃ気持ちいいんだよなー」
起き上がって胸に吸い付くと背中を反らして喘ぐ。
「んあんっ!一緒にはあかんの!ンぁつ、はぁ、おかしなるからやめてぇよぉ」
「やめない」
「いややぁ、あっ!舐めんのあかん、あ、ぁうっ……も、ぅっ」
「……イキそうなの?」
舐めながら聞くと何度も頷く。
「も、イッてしまうぅ、っぁは、ぁっっ――なか、くるし、いっぱいで……お腹ぁう、くるし――」キュゥゥと中が締め付けられて千夏の口から熱い吐息がこぼれた。
「ふぁ……はぁ、ぁんっ、からだ……びくびくして、もぉこわいぃ、ほんまに死ぬぅ」
「だから死なない。死なさないし、……あー、千夏、締め付けるなぁ」
熱い中はどうしようもないほどに気持ちよくて。火傷しそうなくらいに熱を帯びて絡みついてきて俺を離そうとしない。それにずっと包まれていたい。
もう千夏を離したくない、ずっと、俺の腕の中で抱きしめて俺のことだけ考えさせていたい。
「奥、気持ちいいところ当たる?」
「あぅ、あ……はぁあぅっ、もちぃ――ぁん」
「千夏、座位好きだなぁ」
「あ!はぁ、すき……これだめぇ、も、ぁっあぁっ――っ!」
何回かの絶頂を迎えて千夏が全体重をかけるように落ちてきた。その疲れた身体は俺をぎゅっと抱きしめてくる。
「イッちゃった?」
「――ふっ、ぅ……死ぬ、足痛い、もう立てへん」
ははっと笑うと睨んできた。
「――もぅ……好きやよ?」
(うわー、なにこれ)
上気した顔でそんな言葉を吐く千夏の方がいつか俺を殺すだろう。
そう思いながら千夏の赤いくちびるに口付けた。
「おいしぃ」
頬張る私に二人がジッと見つめてくる。
「……もはや豚やな」
カチンとくる言葉を吐く千秋を横目に笑いながら誠くんが、「口、ついてる」と指先で指摘してくる。
「ほんまに食い意地張ってんなぁ」
大きな口でカレーを食べながら千秋が言った。
「好きなように食わせてたら確実に豚か牛になるで、ええのん?こいつさぁ、無駄に寝るやろ?食ったらすぐ寝るの、あれ食いすぎやねんって、ただの。満腹以上腹にいれるから眠くなって寝てまうんや、加減考えてセーブせぇや。これから代謝どんどん落ちてきてデブになる一方やからな」
言い返したくても言い返せない。
「――なるほど。食べすぎてて眠いのか。そういうこと?体質じゃなかったんだな」
誠くんが目から鱗みたいな顔をして感心していた。
(千秋の言い分に納得するとかやめて)
「おかわり」
千秋がお皿をよこしてくる。
「カレー好きやなぁ相変わらず」
「カレー嫌いな男ってそうそうおらんと思うけど」
たしかに誠くんもカレーは好き。二人が美味しそうにカレーを食べる姿を見ると微笑ましくて嬉しくなった。千秋がたまに誠くんに話しかけてそれに優しく答えてくれている。誠くんはめんどくさそうにすることもなく千秋に構ってくれて嬉しいしかない。
カレーを食べ終わったら千秋が誠くんに問いかけた。
「結局どうやって千夏のこと落としたん?」
「んー、力づくで」
「やっぱりパワハラやん」
「そうかも」
「千秋!誠くんも言い方!違うから!」
(誤解を招くような言い方はしないでほしい)
「職場なんかほんまに別れたら終わりやん」
千秋が言うと誠くんが笑って言った。
「別れないよ」
それだけの言葉だけどそれ以上の言葉はない。顔が一気に赤くなってしまったところを千秋に見られて顔を隠した。
「……アホらし」
「え?」
「俺、19時にツレと会わんとあかんしもう行く。ごちそうさま」
キャップを被って席を立った。
「え、千秋……」
「捨てたら半殺しにするからな。簡単に死ねるとか思うなよ」
誠くんに睨みながら物騒な事を言うからギョッとした。
「了解」
なのに、それに誠くんが可笑しそうに頷くから困惑してしまう。
「千夏!」
「なに?」
「……いらんこと言うてごめん」
(え?)
「も、行く」
逃げるように玄関に向かうから思わず追いかけてスウェットの裾を掴む。
「千秋!」
「――伸びるやろ~、離せやぁ」
「千秋」
「……なんやねん」
「私、ちゃんと今幸せ」
そう言ったら千秋がゆっくりと振り向いて見つめてくる。いつもそう、様子を伺うような、探るような瞳。私のことをまっすぐ見るその瞳は小さい時からずっと変わらない。
変わらない弟の視線。いつもいつも私にひっついて追いかけてきた。いつだって私のことを考えてくれている、その優しさはずっとわかっている。
(言いたかったんだよ、千秋にはずっと。大好きな人が出来たよって)
もう私のことばかり心配しなくていい、千秋はもっと自分のことを大事にして幸せになればいい。
――幸せになって、私みたいに。
「いつも心配してくれてるん知ってる、だから心配かけたくなかったんやけど……言えずにいてごめん。ほんまはずっと言いたかったんよ?今どんな風に暮らしてるか、私が何思って暮らしてるか……千秋にちゃんと話したかった、でも電話じゃうまく言えへんくて……うまく伝えられへんって思ってて」
大切な人に、大事な人を紹介できる幸せなんか今まで知らない。
「だから、会ってもらえて嬉しい、来てくれてありがとうな」
「――泣かされたら電話せぇよ。殴ったるから」
「千秋が殴ったらシャレにならへんやろぉ、もぉ……」
「フッ、また京都帰ってこいよ。おかんも心配してたで」
「うん……また帰るな」
生意気で余計なことしか言わない弟はそう言って帰っていった。
扉が閉まって鍵を閉める。シンッとした部屋に戻ると胸がいっぱいになった。
「……ありがと」
ギュッと背中に抱きつく。
「いつのまに千秋と連絡先交換してたの?」
「千夏が席立ってる時」
「ほんっまに抜け目ないんやからぁ」
あいかわらず隙がなくて呆れてしまう。誠くんも内緒にしないで教えてくれたらいいのに。
「それさ、ホントに可愛いんだけど」
「え?」
腰を持たれたと思ったらクルッと体が反転した。
「千夏の関西弁、なに?めっちゃ可愛い」
京都弁がモテるは本当だった。
――――――――――――――――――
「今日はありがとう」
千夏が腕の中で微笑む。
「千秋とあのまま別れなくてよかった、家まで呼んでくれてありがとう」
「千秋くんもちゃんと謝りたかったんだろ、俺は何もしてないよ」
「そんなことない」
そう言って腕を首に回すと身体が密着した。
「千夏の言語機能はもう乱れないわけ?」
「ええ?乱れてるんじゃない?なんか今日もう何弁話してるかよくわからへんし、あ、ほら今の関西弁」
「セックスしてて関西弁出ないの?」
自分でもバカなこと聞いてるのはをわかっているけど、直球で聞いたら案の定呆れられた。
「……意味がよくわからんねんけど」
「切り替える前にさせて」
(関西弁で喘ぐ千夏が見たすぎる)
呆れて逃げ腰の千夏を捕まえると困ったように笑った。
「ちょっと、ええ~なんで?も、え?今?」
そう聞かれて素直にうなずく。
「時間開くと切り替えちゃうじゃん、絶対」
「切り替えって……そんな性能なもんでもないって、ちょっとぉ!手が、ぁんっ」
「今から関西弁でお願いします」
「そんな……んっぁ」
キスすると千夏の体から力が抜けた。
「ふ……んんっ、ん」
ブラウスのボタンを外してキャミソールだけになる。
「ま、ここじゃいやや……」
(関西弁、めっちゃ可愛くないか?新鮮すぎる)
「ベッドがいぃ」
いつもと違うイントネーションで恥ずかしそうに言われて興奮する。膝の上に乗ってた状態なのでそのまま膝裏に手を入れて横抱きしたら千夏が悲鳴を上げた。
「きゃあ!待って!重いから!!」
「千夏くらいは抱けるよ。重いけど」
「重いって言ったぁ!」
「動くと落とすから!ジッとしろ」
「――お姫様抱っこ……やばぁ」
顔を真っ赤にして照れていて、ベッドに降ろすと両手を頬に添えて身悶えている。
「なに?そんな嬉しかったの?これ」
「……ぅん、憧れじゃない?お姫様抱っこって。きゃー、興奮」
(わからん)
「千夏の興奮スイッチが全然理解できない」
「それ、そっくりお返ししますから。変な興奮スイッチ入ってるの誠くんも同じやからね?関西弁?がそんなにいいのん?」
「え、うん」
「じゃあお姫様抱っこの夢を叶えてくれたから今日は特別です」
なんでも言ってみるものだ。
案の定、関西弁で喘ぐ千夏は予想よりずっとエロかった。
「や、それもうあかんってば、いややぁ、やぁ、もぅやめてぇよぉ――っ」
体を痙攣させてクタっと力が抜ける。指を抜くとドロドロに濡れて糸を引いた。
「うわー、千夏、めっちゃ濡れてる……」
「そ、いぅの言わんといてっていっつも言うてるぅ……あほぉ」
(あほってこんなに可愛い言葉だったんだなぁ。むしろもっと言ってほしい)
「関西弁の嫌って嫌に聞こえないんだけど。めっちゃいい」
「そんな、っんあ!やぁ、おっきぃ!んあ、ややぁ、も、そんなしたら……ぁっイクぅっ」
「っイッていいよ?はぁ――」
「やぁぃややぁ、わたしばっかり、っ、あんっ、ふあぁっ!」
聞きなれた声なのに発する言葉のイントネーションのせいで、千夏が千夏じゃないような気になって戸惑ってしまうが、直感的な喘ぎ方で千夏だと認識できる。
「も、おく、あかん、イク、も、イクぅっ」
「……じゃあ俺も一回イッてい?」
「ふ、ぅ――んっ、イッ……て?一緒に、一緒がいぃ――」
(可愛すぎるだろーー!!)
頭の中の血管が何本か確実に切れた。
柔らかい千夏の体を引き寄せて自身の熱を注ぎ込む。
「んああンっ!あ、はぁっ……すきぃ、めっちゃすきっ――」
抱きしめかえされて思考回路が爆発した。
「――千夏?」
「……ン、はぁ、あ」
飛びかけていた意識を呼び起こすとうっすらと目を開けて、まだ熱を孕んだ瞳で見つめて来たと思ったら――。
「……死んだかと思った」
発した言葉がそれだった。
「死ぬか」
「いつか誠くんに……殺されると思う」
(それはこっちのセリフだ)
「千夏、今度は上」
身体を抱き起こしてひっくり返す。
「ぅわぁ!ちょ、まだ体が――んあっ!」
「イッたあとの千夏の中めっちゃ気持ちいいんだよなー」
起き上がって胸に吸い付くと背中を反らして喘ぐ。
「んあんっ!一緒にはあかんの!ンぁつ、はぁ、おかしなるからやめてぇよぉ」
「やめない」
「いややぁ、あっ!舐めんのあかん、あ、ぁうっ……も、ぅっ」
「……イキそうなの?」
舐めながら聞くと何度も頷く。
「も、イッてしまうぅ、っぁは、ぁっっ――なか、くるし、いっぱいで……お腹ぁう、くるし――」キュゥゥと中が締め付けられて千夏の口から熱い吐息がこぼれた。
「ふぁ……はぁ、ぁんっ、からだ……びくびくして、もぉこわいぃ、ほんまに死ぬぅ」
「だから死なない。死なさないし、……あー、千夏、締め付けるなぁ」
熱い中はどうしようもないほどに気持ちよくて。火傷しそうなくらいに熱を帯びて絡みついてきて俺を離そうとしない。それにずっと包まれていたい。
もう千夏を離したくない、ずっと、俺の腕の中で抱きしめて俺のことだけ考えさせていたい。
「奥、気持ちいいところ当たる?」
「あぅ、あ……はぁあぅっ、もちぃ――ぁん」
「千夏、座位好きだなぁ」
「あ!はぁ、すき……これだめぇ、も、ぁっあぁっ――っ!」
何回かの絶頂を迎えて千夏が全体重をかけるように落ちてきた。その疲れた身体は俺をぎゅっと抱きしめてくる。
「イッちゃった?」
「――ふっ、ぅ……死ぬ、足痛い、もう立てへん」
ははっと笑うと睨んできた。
「――もぅ……好きやよ?」
(うわー、なにこれ)
上気した顔でそんな言葉を吐く千夏の方がいつか俺を殺すだろう。
そう思いながら千夏の赤いくちびるに口付けた。
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