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第三章:陰謀の渦中で
しおりを挟むそれからの日々、セレナとアレクシスは密かに呪いを解く方法を探り続けた。彼らは図書館で古い魔術の本を読み漁り、宮廷の噂に耳を傾けた。しかし、決定的な情報はなかなか見つからなかった。
ある日の夕暮れ時、セレナは宮殿の庭園を歩いていた。彼女は、アレクシスとの密会の場所に向かっていた。しかし、そこに至る途中で、彼女は思いがけない会話を耳にした。
「王子の様子がおかしい。あの使用人の娘と何かたくらんでいるようだ」
「王様に報告しなければならないな。王子の呪いが解けかかっているかもしれん」
セレナは息を飲んだ。彼女とアレクシスの行動が、既に周囲に気づかれ始めていたのだ。彼女は急いで身を隠し、更なる情報を得ようとした。
「あの娘を何とかしないと。王子の心を惑わすような真似は許されん」
「そうだな。明日にでも、彼女を宮廷から追放する手続きを始めよう」
セレナは震える手で口を押さえた。彼女は急いでアレクシスとの待ち合わせ場所に向かった。
小さな東屋に着くと、そこにはすでにアレクシスが待っていた。彼の表情は、いつもより柔らかく見えた。
「セレナ、来てくれたか」
しかし、セレナの顔色が悪いのを見て、アレクシスは眉をひそめた。
「どうした?何かあったのか?」
セレナは、先ほど聞いた会話の内容をアレクシスに伝えた。彼の表情は、話を聞くにつれて厳しくなっていった。
「くそっ...」アレクシスは低い声で呟いた。「もう時間がないな」
「王子様、私たちはどうすれば...」
アレクシスはセレナの肩に手を置いた。その手は、かすかに震えていた。
「セレナ、聞いてくれ」彼は真剣な表情で言った。「もう選択肢はない。俺たちは行動を起こさなければならない」
「でも、まだ準備が...」
「時間がないんだ」アレクシスは強く言った。「明日、俺たちは全てを賭けて動く。父上の不正を暴き、民衆の前で真実を明らかにする」
セレナは驚いて目を見開いた。「そんな...危険すぎます!」
「危険は承知している」アレクシスは静かに言った。「だが、このままでは王国も、俺たちも救われない」
彼はセレナの手を取った。その手は温かく、力強かった。
「セレナ...」アレクシスは彼女の目をまっすぐ見つめた。「お前...俺と共に立ってくれるか?」
セレナは一瞬躊躇したが、すぐに決意を固めた。「はい、どこまでも」
アレクシスは安堵の表情を浮かべた。「ありがとう」
その夜、二人は最後の打ち合わせをした。彼らは、翌日の行動計画を細かく確認し合った。王国の未来が、彼らの手にかかっていた。
セレナはベッドに横たわりながら、明日への不安と期待で胸が高鳴るのを感じた。そして、アレクシスへの想いが、彼女の心の中でますます大きくなっていくのを感じていた。
翌朝、まだ日が昇る前、セレナとアレクシスは密かに宮殿を抜け出した。彼らの計画は、父王の不正を暴き、民衆の前で真実を明らかにすることだった。
二人は慎重に動き、貴族たちの証拠書類を集めていった。アレクシスは、父王の側近たちが賄賂を受け取っていた記録や、民の税金を私的に流用していた証拠を次々と見つけ出した。
「こんなにも...」セレナは驚きの声を上げた。
「ああ」アレクシスは厳しい表情で言った。「父上は、王国を食い物にしていたんだ」
彼らは、集めた証拠を民衆に公開するため、宮殿の中央広場へと向かった。しかし、その途中で、予想外の事態が起こった。
「そこまでだ、アレクシス」
振り返ると、そこには父王が護衛に囲まれて立っていた。その目は冷酷な光を放っていた。
「父上...」アレクシスの声には、怒りと悲しみが混ざっていた。
「お前が呪いを克服しようとしていることは知っていた。だが、まさか反逆まで企てるとはな」
父王は冷笑を浮かべた。
「護衛たち、あの娘を捕らえろ。息子は私が直接懲らしめてやる」
セレナは恐怖に震えたが、アレクシスは彼女を守るように立ちはだかった。
「セレナに手を出すな!」
その瞬間、驚くべきことが起こった。アレクシスの体から、まばゆい光が放たれたのだ。
「なっ...」父王は驚愕の表情を浮かべた。
光が消えると、そこに立っていたのは、まるで別人のようなアレクシスだった。その目には、今まで見たことのない温かさと強さが宿っていた。
「父上、もう終わりです」アレクシスは静かに、しかし力強く言った。「呪いは解けました。そして、私はこの国を正しい方向に導く決意をしました」
父王は怒りに震えていたが、アレクシスの威厳ある姿に、護衛たちは動揺し始めていた。
その時、宮殿の外から歓声が聞こえてきた。セレナたちが集めた証拠は、既に民衆の手に渡っていたのだ。
「皆さん」アレクシスは民衆に向かって話し始めた。「長い間、この国は闇に包まれていました。しかし、今日からそれは変わります。私は、皆さんと共に、新しいナハトグレイブ王国を作り上げていく所存です」
民衆からは歓声が上がった。父王と腐敗した貴族たちは、その場で拘束された。
混乱が収まった後、アレクシスはセレナの元へと歩み寄った。
「セレナ...」彼は優しく彼女の手を取った。「君がいなければ、この日は来なかった。本当にありがとう」
セレナは涙を浮かべながら微笑んだ。「私は...ただ、王子様の本当の姿を信じていただけです」
アレクシスは彼女を抱きしめた。「もう『王子様』なんて呼ばなくていい。これからは、二人で新しい未来を作っていこう」
二人は抱き合ったまま、朝日に照らされる宮殿を見つめた。ナハトグレイブ王国の新しい章が、今始まろうとしていた。
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