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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
絶賛連行中
しおりを挟む私はどこか知らない場所を歩いている。
私の顔には何か、布の様なものが被せられていた。視界が遮られていて、光以外何も感じない。目の前に何があるのか、己がどこを歩いているのか、そんなことさえも分からない。
足同士を何かに繋がれていて、必然的に歩幅が限られてしまう。周囲が見えず歩き難いのに、歩く行為が更に難しくなる。
私の両手は固い板の様な物によって、後ろに固定されている。横にした長方形の板に、間隔を空けた二つの穴があいている。手首がその穴に擦れ、一歩進む度に、動く度に、僅かな痛みが生まれる。
その上で、腕と胴体が、縄で厳重に縛られている。何重にも巻かれた縄は締め付けが強く、苦しい上に動き辛い。
縄を引かれて足が縺れた。踏み出した足が強く床に当たる。全体重が乗る事で、片足に酷く負荷が掛かった。裸足であるせいで余計に痛みを感じる。
最初の『歩いている』という表現は間違っていたかもしれない。正確には、『歩かされている』になるだろう。
そう、私は今連行中だ。
えっ?話飛んでるって?大丈夫。飛んではいない。そんなに気になるなら、少し回想でもしてみよう。
あの後も兵士さんと色々話し続けて、大いに盛り上がったのだが。複数の足音が聞こえてきて、会話は中断された。兵士さんの表情が固く真面目なものになるのを境に、私達二人は沈黙し、その人達がやって来るのを待った。
やって来た人々は、兵士さんと同じ様な格好をしていた。数人の兵士を先頭で率いていたのは、騎士イケメンことアレン。
アレンが兵士さんに目を向けると、兵士さんは鍵を取り出して牢の鍵を開けた。結局兵士さんの名前は聞かずじまいだ。優しい兵士さんの為にも、その方が良いだろう。
牢の扉が開くと、目の前が真っ暗になった。
そして直ぐに複数の手によって、私の両腕は無理矢理後ろに回された。両方の手首に何かを嵌められ、腕を胴体ごと何かでぐるぐるに緊く巻かれる。足首にも何かが装着された。
何かに前方から引かれ、私は大きく前に一歩踏み出す。踏み出した足が何かによってつっかえ、後ろに引っ張られると、体が前に傾き倒れそうになる。だが私は倒れずに、壁の様な何かに、思い切りぶつかった。
そして今に至る。
最初こそ歩き辛く、何度も転びそうになっていたけれど、今では少し慣れて、だいぶ歩けるようになった。
私という元御令嬢の御御足はとても柔らかかったようだ。割と最初の方で痛みが生じていた。固い床対柔らかい素足だから仕方がないのだろうけれど。あぁ、靴が欲しい。
大した事も考えず、引かれるままにぼーっと歩いていると、急に脳内に映像が現れた。
驚いた。いきなり過ぎて心臓に悪い。事前に知らせる機能とか、つけてくれないかな。
歩く事が流れ作業になっていて、足を止めたり、転けたりしなかったのは僥倖だったが。
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