25 / 49
24 プロローグのまえ(ディートハルト/エリーゼ視点)
しおりを挟む
薄暗がりの中にぼんやりと浮かび上がるケヴィンの顔が、静かに寝息をたてている。愛おしいような憎らしいような顔だ。
しかしいくらなんでも頻度が高すぎはしないだろうか。ケヴィンは毎夜のごとく俺の部屋に泊まっていくし、ことがはじまれば1度や2度では終わらないのが常だった。しかも毎回、意地の悪いやり方をする。言葉を使って俺を責めたてるのだ。
いっそこいつを殺してしまえば楽になれるのに━━妙な話だが、ケヴィンを愛おしく思うようになってから、なぜだか俺はこの男に冗談半分の殺意を抱くようになった。恋というのはこういう感情をさすのかもしれない。それでもたぶん、愛しさが勝っているうちは殺さずにすむのだろう。
結局、カーマクゥラの件は俺の手柄にならなかった。自分の有用性を陛下にアピールすることができなかった。だとしたらいまの俺は、帝室にとって、傷にしかならない存在だろう。
同性愛者というのは、社会にとって有害な存在なのだ。少なくともそれが常識だ。そんな異常者が尊き血筋から生まれでたなどと、およそ公言できるものではない。となると━━。
よくて精神異常者として幽閉。最悪、事故か病気にみせかけて殺されるに違いない。
いずれにせよ、ケヴィンと俺はこの先、公に結ばれることのない運命なのだ━━━そうだとしても、いまさら別れるつもりはない。ならば隠し通すしかない。互いに家庭をもって、まともな人間の顔をして、裏で密会を続ける。これから長く続く人生を、何十年間も。
…だめだ、俺にはそんな器用なことはできない。愛することもできない妻を迎えることはできないし、その妻に嘘をつき続けることもできない。まして━━ケヴィンが俺以外の人間を抱いているさまを想像するだけで、吐き気をもよおすほどの嫌悪を感じる。
ケヴィンとの関係を隠すのは仕方がないとして、家庭をもつのは論外だ。だとしたら、やはりエリーゼとは婚約破棄するしかない。しかしそれには、どうやって。理由もなく婚約破棄などできるはずがない。エリーゼの実家のアードルング家が黙っていないし、陛下とて許しはしないだろう━━懊悩する俺の脳裏で悪魔のささやきが聞こえた。
…大人たちを納得させる必要があるのか?
そのとき、俺は気づいてしまった。証人が大勢いる前で、婚約破棄を宣言してしまいさえすれば、あとで撤回などできようがないのだ。ことは帝室の対面にかかわることだ。婚約破棄すると言ったり、やっぱりしないと撤回したり、そんなみっともない真似ができるはずがない。
もちろん、俺は陛下から説明を求められるだろう。そうなると理由を話せないだけに、黙秘するしかない。とんだワガママ皇子だ。俺の評価は地に落ちるかもしれない。政略の意味合いが強い皇子の結婚を、みずからご破算にするのだ。政治的な失策をおかすことになる。
だがそれでも幽閉されたり殺されることはないはずだ。
失点はいくらでも取り戻せる。それよりも結婚などしてしまったら、取り返しがつかないのだ。神聖な結婚契約を、破ることはできない。それにエリーゼ━━そうだ、エリーゼも、夫婦の営みもない俺との間で家庭をつくるより、いま婚約破棄されて、ほかの男と結ばれるほうが彼女のためになる。
そうだ、これしか方法はない。学園の講堂に貴族の子女を集めて、エリーゼとの婚約破棄を宣言するのだ。
隣で寝息をたてているケヴィンの頬をなでながら、俺の気持ちは固まっていった。そうだ、そうしよう。なあ、そうだろう、ケヴィン。
この方法だけが、全員を幸せにすることができる━━たったひとつの冴えたやりかたなのだ。
☆
「エリーゼは、どういう男が好きなんだい?」
思いがけないハンナの質問に、私は驚いて沈黙してしまった。するとハンナが急に「あっ」とつぶやいた。
「いやね、あんたがディートハルトを好いているのは、よおく分かってることなんだよ。だけどさ、エリーゼはまだ若いんだから、学園にいるあいだくらい、ちょっと遊んでもいいんじゃないかねえ」
中庭に風が吹き抜けた。私の隣でベンチに腰かけ、赤い髪をそよがせているハンナを、私はまじまじと見つめた。こうして何度か中庭で会っているのだけど、やっぱりハンナは私の気持ちに気づくそぶりがない。当たり前かもしれない━━女の子同士で特別な感情をもつなんて、それこそありえないことだもの。
それにしても言うにことかいて、男遊びをしろだなんて。
「…卒業すれば帝室の一門にはいる私が、そんなはしたないこと、できるわけないでしょう」
「ウーン、ま、そりゃそうか…」
「それよりもハンナこそ、あなた、社交界デビューはしないのでしょう?学園にかよっているうちに、結婚相手を探さないと、お見合いで相手が決まってしまいますわよ?」
伯爵家にはお金がない。だから社交界デビューはできないし、社交界で出会った相手と恋愛結婚することもできない。伯爵令嬢が恋愛結婚しようと思ったら、学園で相手を見つけるしかない。ハンナが一瞬、暗い目になった。けれどすぐに笑みを取り戻す。
「…アタシのこたあ、どうだっていいんだよ。それよりもエリーゼが、あんまりディートハルトのほうばっかり見てるから、アタシはそれが心配なんだよ。あれがロクデナシだったら、あんた、どうするつもりだい」
「どうするもなにも━━」
すでに私とディートハルトさまは婚約しているのだ。よっぽどのことがない限り、そのまま結婚するしかない。たとえば女性に暴力をふるう人でも、浪費家でも、私を愛してくれなくても、耐えていくしかない。そうだ━━。
「そういえばハンナは、ディートハルトさまのお気持ちを確かめてくれると言っていたわよね?どうだったの?あの方は私との結婚に前向きでいらっしゃるのかしら」
「んなっ、それは、その、そう━━まだ確かめてないんだよ。悪いね、ちょいと忙しくて…」
ハンナの顔をじっと見つめる。相変わらずとてつもなく可愛い、けど、嘘をついている。そう、やっぱりディートハルトさまは、私を疎んでらっしゃるのね。わかっていたことだけれど━━私は嘘みたいにショックを受けていない。
この間までディートハルトさまは、私にとってベターだった。でもいまベストが見つかってしまったから、惜しむ気持ちがちっともわいてこない。だけどもし婚約破棄されてしまったら━━それだけが不安だった。私にとって結婚というのは、男性にとっての就職と同じ意味になる。嫌な職場だからといって、かんたんに仕事を辞められないように、結婚相手は大事なことだ。今度こそラングハイム公のような、倫理感の壊れた男性のところに嫁ぐことになるかもしれないのだから。
私の不安は表情にでていたのかもしれない。ハンナが慰めるように言った。
「どんなことがあっても、エリーゼは大丈夫さ。このアタシがついてるんだから」
少しも頼もしそうには見えないこの友人を見つめて、私は思わず微笑んだ。
しかしいくらなんでも頻度が高すぎはしないだろうか。ケヴィンは毎夜のごとく俺の部屋に泊まっていくし、ことがはじまれば1度や2度では終わらないのが常だった。しかも毎回、意地の悪いやり方をする。言葉を使って俺を責めたてるのだ。
いっそこいつを殺してしまえば楽になれるのに━━妙な話だが、ケヴィンを愛おしく思うようになってから、なぜだか俺はこの男に冗談半分の殺意を抱くようになった。恋というのはこういう感情をさすのかもしれない。それでもたぶん、愛しさが勝っているうちは殺さずにすむのだろう。
結局、カーマクゥラの件は俺の手柄にならなかった。自分の有用性を陛下にアピールすることができなかった。だとしたらいまの俺は、帝室にとって、傷にしかならない存在だろう。
同性愛者というのは、社会にとって有害な存在なのだ。少なくともそれが常識だ。そんな異常者が尊き血筋から生まれでたなどと、およそ公言できるものではない。となると━━。
よくて精神異常者として幽閉。最悪、事故か病気にみせかけて殺されるに違いない。
いずれにせよ、ケヴィンと俺はこの先、公に結ばれることのない運命なのだ━━━そうだとしても、いまさら別れるつもりはない。ならば隠し通すしかない。互いに家庭をもって、まともな人間の顔をして、裏で密会を続ける。これから長く続く人生を、何十年間も。
…だめだ、俺にはそんな器用なことはできない。愛することもできない妻を迎えることはできないし、その妻に嘘をつき続けることもできない。まして━━ケヴィンが俺以外の人間を抱いているさまを想像するだけで、吐き気をもよおすほどの嫌悪を感じる。
ケヴィンとの関係を隠すのは仕方がないとして、家庭をもつのは論外だ。だとしたら、やはりエリーゼとは婚約破棄するしかない。しかしそれには、どうやって。理由もなく婚約破棄などできるはずがない。エリーゼの実家のアードルング家が黙っていないし、陛下とて許しはしないだろう━━懊悩する俺の脳裏で悪魔のささやきが聞こえた。
…大人たちを納得させる必要があるのか?
そのとき、俺は気づいてしまった。証人が大勢いる前で、婚約破棄を宣言してしまいさえすれば、あとで撤回などできようがないのだ。ことは帝室の対面にかかわることだ。婚約破棄すると言ったり、やっぱりしないと撤回したり、そんなみっともない真似ができるはずがない。
もちろん、俺は陛下から説明を求められるだろう。そうなると理由を話せないだけに、黙秘するしかない。とんだワガママ皇子だ。俺の評価は地に落ちるかもしれない。政略の意味合いが強い皇子の結婚を、みずからご破算にするのだ。政治的な失策をおかすことになる。
だがそれでも幽閉されたり殺されることはないはずだ。
失点はいくらでも取り戻せる。それよりも結婚などしてしまったら、取り返しがつかないのだ。神聖な結婚契約を、破ることはできない。それにエリーゼ━━そうだ、エリーゼも、夫婦の営みもない俺との間で家庭をつくるより、いま婚約破棄されて、ほかの男と結ばれるほうが彼女のためになる。
そうだ、これしか方法はない。学園の講堂に貴族の子女を集めて、エリーゼとの婚約破棄を宣言するのだ。
隣で寝息をたてているケヴィンの頬をなでながら、俺の気持ちは固まっていった。そうだ、そうしよう。なあ、そうだろう、ケヴィン。
この方法だけが、全員を幸せにすることができる━━たったひとつの冴えたやりかたなのだ。
☆
「エリーゼは、どういう男が好きなんだい?」
思いがけないハンナの質問に、私は驚いて沈黙してしまった。するとハンナが急に「あっ」とつぶやいた。
「いやね、あんたがディートハルトを好いているのは、よおく分かってることなんだよ。だけどさ、エリーゼはまだ若いんだから、学園にいるあいだくらい、ちょっと遊んでもいいんじゃないかねえ」
中庭に風が吹き抜けた。私の隣でベンチに腰かけ、赤い髪をそよがせているハンナを、私はまじまじと見つめた。こうして何度か中庭で会っているのだけど、やっぱりハンナは私の気持ちに気づくそぶりがない。当たり前かもしれない━━女の子同士で特別な感情をもつなんて、それこそありえないことだもの。
それにしても言うにことかいて、男遊びをしろだなんて。
「…卒業すれば帝室の一門にはいる私が、そんなはしたないこと、できるわけないでしょう」
「ウーン、ま、そりゃそうか…」
「それよりもハンナこそ、あなた、社交界デビューはしないのでしょう?学園にかよっているうちに、結婚相手を探さないと、お見合いで相手が決まってしまいますわよ?」
伯爵家にはお金がない。だから社交界デビューはできないし、社交界で出会った相手と恋愛結婚することもできない。伯爵令嬢が恋愛結婚しようと思ったら、学園で相手を見つけるしかない。ハンナが一瞬、暗い目になった。けれどすぐに笑みを取り戻す。
「…アタシのこたあ、どうだっていいんだよ。それよりもエリーゼが、あんまりディートハルトのほうばっかり見てるから、アタシはそれが心配なんだよ。あれがロクデナシだったら、あんた、どうするつもりだい」
「どうするもなにも━━」
すでに私とディートハルトさまは婚約しているのだ。よっぽどのことがない限り、そのまま結婚するしかない。たとえば女性に暴力をふるう人でも、浪費家でも、私を愛してくれなくても、耐えていくしかない。そうだ━━。
「そういえばハンナは、ディートハルトさまのお気持ちを確かめてくれると言っていたわよね?どうだったの?あの方は私との結婚に前向きでいらっしゃるのかしら」
「んなっ、それは、その、そう━━まだ確かめてないんだよ。悪いね、ちょいと忙しくて…」
ハンナの顔をじっと見つめる。相変わらずとてつもなく可愛い、けど、嘘をついている。そう、やっぱりディートハルトさまは、私を疎んでらっしゃるのね。わかっていたことだけれど━━私は嘘みたいにショックを受けていない。
この間までディートハルトさまは、私にとってベターだった。でもいまベストが見つかってしまったから、惜しむ気持ちがちっともわいてこない。だけどもし婚約破棄されてしまったら━━それだけが不安だった。私にとって結婚というのは、男性にとっての就職と同じ意味になる。嫌な職場だからといって、かんたんに仕事を辞められないように、結婚相手は大事なことだ。今度こそラングハイム公のような、倫理感の壊れた男性のところに嫁ぐことになるかもしれないのだから。
私の不安は表情にでていたのかもしれない。ハンナが慰めるように言った。
「どんなことがあっても、エリーゼは大丈夫さ。このアタシがついてるんだから」
少しも頼もしそうには見えないこの友人を見つめて、私は思わず微笑んだ。
1
あなたにおすすめの小説
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる