18 / 76
王妃の反旗(1)
「おおおおお母様! お母様ぁあ!! 大変です! お、お、お兄様とオレリアの結婚が決まっちゃいました――――!!」
オレリア様との騒動の翌日。
私とアデライトは、王都から遠く離れた離宮を訪ねていた。
離宮とは、グロワール国の王妃、フロランス様の住む宮殿だ。
乙女ゲームの中では、本来はすでに亡くなっている――という王妃殿下は、もちろんご健在である。
怪我や病気の一つもなく、かつて命が危ぶまれたこともない。
アンリやアデライトとの関係も良好で、なにかあると、こうしてすぐに頼られるくらいだ。
そのフロランス様は、現在は泣きわめくアデライトを前にして、眉間に深い深い皺を刻んでいた。
「け、今朝のうちに国中に婚約が宣言されたって! 国外にも通達がされたって! 近々、盛大な婚約式をするって!!! ど、ど、どどどどうしよう、お母様ぁああああ!!!!」
「…………アデライト」
冷たく、凛とした声が響く。
声の主は、もちろんフロランス様だ。
視線を向ければ、黒真珠のような艶のある黒髪が目に入る。
髪色こそ異なるが、顔立ちはアデライトによく似ている。
きつい目元に、細い頬。今年で四十となるのに、色褪せることのない冷たい美貌。
アデライトと違い、王妃らしい威厳を備えたフロランス様は、その場にいるだけでも身を竦ませるほどの威圧感がある。
「落ち着きなさい、アデライト」
特に、怒っているのならばなおさらだ。
フロランス様は扇子を片手に、静かな声でそう告げた。
「一国の王女が――わたくの娘が、そう取り乱すものではありません」
「で、で、でも、お母様! お兄様がオレリアと結婚なんて! こ、このままじゃ私の処刑が……! それに、お兄様だってミシェル以外との結婚なんて、納得しているはずがないわ!!」
「当り前です」
涙目のアデライトを見やり、フロランス様はピシャリと扇子を閉じる。
眉間の皺は消えており、代わりに口元には、笑みのようなものが浮かんでいた。
だけど、笑みでないことはよくわかる。
フロランス様の手の中で、閉じた扇子がみしりと音を立てて軋んだ。
「アンリからも、朝一番に連絡がありました。陛下が勝手なことをしているから、力を貸してほしいと。……ふふ」
フロランス様の赤い唇が歪み、聞いているだけで震えるような笑みが漏れる。
この押し殺すような怒りに、ふと昨日のアンリの姿を思い出した。
アンリとフロランス様は、顔立ちこそ似ていないものの――やはり、親子なのである。
「わたくしに断りもなく、アンリの話すら聞かず、思い付きで勝手に結婚相手を決めるなんて――いえ、それはまだ目をつぶりましょう。でも――――あなたたち、陛下が通達した文書を読んでいて?」
フロランス様の視線に、私は頷きを返した。
隣のアデライトは泣きべそをかいているので、恐れながらも代わりに返事をさせていただく。
「今朝、アデライト様と一緒に一通り確認しました。ええと、オレリア様に対するアンリ様の深い愛に感動した――とか。それ以外にも、なんと言いますか…………」
「感情的で、支離滅裂だったでしょう?」
フロランス様の言葉は的確だ。
私も、通達文を最初に読んだときは、これが国として出した正式の文書とは信じられなかった。
書いてあったのは、オレリア様とアンリの深い愛についてだ。
それから、なぜだか陛下自身についての生い立ちも長々と記載されていた。
世界を救った勇者の父であることを強調し、回りくどい賛美が書き連ねられていた。
おまけに、時系列はめちゃくちゃ。他国への配慮がなく、下手をすれば国際問題になりそうな記述も散見された。
誤字脱字は数え切れず、文法の誤りも多い。
もはや、どこから指摘すればいいのかわからなくなるほどだ。
「あんな腹立たしい公式文書なんて、わたくし読んだことがなくてよ。国外にも出す文書だというのに、まるで勢いだけで書き上げたみたい。きっと、会議の一つも通さなかったのでしょうね、ふふふ」
国外に発布する文書は、当然ながら厳格なチェックが入るものだ。
内容について審査し、問題になりそうな部分は削除し、誤字脱字は一つも残さないよう二重三重に確認する。
なにせ、うかつなことを書けば、そのまま国同士の関係が危うくなる。
そうでなくとも、下手に自国の恥をさらさないように注意をするは当たり前――だったはずだが。
「不出来な人だとは思っていたけれど、ここまでだとは思いませんでした。ああ、それにしても面白いこと。アンリをずっと離宮に閉じ込めておきながら、こんなときだけは父親の顔をしようだなんて」
くすくすと、まったく愉快ではなさそうに笑うフロランス様の言葉は、私も同感だった。
なにせ、アンリもアデライトも、物心つくか付かないかのころには、もう陛下によって離宮に追いやられていたのだ。
そんな二人を、深い愛情でもって育てた人こそ、フロランス様だ。
幼少期こそ、フロランス様はアンリを持て余してしまっていたが、決してそこに愛がなかったわけではない。
傷つき、失敗しながらもアンリに向き合い続け、親子の関係を築いてきたのだと、傍で仕えて来た私は知っている。
一方の陛下は、そんなフロランス様の苦労も知らず、子供たちの様子を見に来たことさえない。
成長を伝える手紙を送っても返事はなく、国の行事で王子や王女の参加が必要な場合にのみ、一方的に呼びつけるだけだ。
それなのに、アンリの成長を自分の手柄のように語るのは、フロランス様でなくても腹が立つ。
――そもそも、フロランス様が離宮にいることだっておかしいのに。
フロランス様は、グロワール王国の正妃にして隣の大国ソレイユの王女である。
本来ならば陛下とは対等な関係のはずなのに、フロランス様の発言力や人望を妬んだ陛下によって、王都から馬で半日もかかるこの離宮に厄介払いされてしまったのだ。
以来、フロランス様は『無用な対立を避けるため』と大人しく離宮で暮らし続けている。
だが――。
「――――もう、いいかしらね」
それも、どうやら今日で終わりらしい。
「そろそろ、あの人にもわかってもらおうかしら」
ふ、と笑みを浮かべるフロランス様の周囲に、かすかな風が巻き起こる。
アンリの強い魔力は、魔法に長けたフロランス様譲り。
彼女の怒りが、魔力となって部屋の中に渦を巻く。
「アンリのために、いろいろ準備をしておいてよかったわ。――――ねえ、ミシェル」
「は、はい! なんでしょう!」
突然に名前を呼ばれ、私ははっと背筋を伸ばす。
冷たい怒りを笑みに変え、うっそりと微笑むフロランス様は、震えるほどに美しく――恐ろしい。
「ミシェル。あなた、覚悟は決めていて?」
「か、覚悟ですか……?」
いったい、なんの――――?
疑惑を浮かべる私を、フロランス様の夜のような藍色の瞳が射貫く。
私の心の奥底までも、貫くかのように。
「あなたはアンリのために、どんなことでもできるかしら?」
オレリア様との騒動の翌日。
私とアデライトは、王都から遠く離れた離宮を訪ねていた。
離宮とは、グロワール国の王妃、フロランス様の住む宮殿だ。
乙女ゲームの中では、本来はすでに亡くなっている――という王妃殿下は、もちろんご健在である。
怪我や病気の一つもなく、かつて命が危ぶまれたこともない。
アンリやアデライトとの関係も良好で、なにかあると、こうしてすぐに頼られるくらいだ。
そのフロランス様は、現在は泣きわめくアデライトを前にして、眉間に深い深い皺を刻んでいた。
「け、今朝のうちに国中に婚約が宣言されたって! 国外にも通達がされたって! 近々、盛大な婚約式をするって!!! ど、ど、どどどどうしよう、お母様ぁああああ!!!!」
「…………アデライト」
冷たく、凛とした声が響く。
声の主は、もちろんフロランス様だ。
視線を向ければ、黒真珠のような艶のある黒髪が目に入る。
髪色こそ異なるが、顔立ちはアデライトによく似ている。
きつい目元に、細い頬。今年で四十となるのに、色褪せることのない冷たい美貌。
アデライトと違い、王妃らしい威厳を備えたフロランス様は、その場にいるだけでも身を竦ませるほどの威圧感がある。
「落ち着きなさい、アデライト」
特に、怒っているのならばなおさらだ。
フロランス様は扇子を片手に、静かな声でそう告げた。
「一国の王女が――わたくの娘が、そう取り乱すものではありません」
「で、で、でも、お母様! お兄様がオレリアと結婚なんて! こ、このままじゃ私の処刑が……! それに、お兄様だってミシェル以外との結婚なんて、納得しているはずがないわ!!」
「当り前です」
涙目のアデライトを見やり、フロランス様はピシャリと扇子を閉じる。
眉間の皺は消えており、代わりに口元には、笑みのようなものが浮かんでいた。
だけど、笑みでないことはよくわかる。
フロランス様の手の中で、閉じた扇子がみしりと音を立てて軋んだ。
「アンリからも、朝一番に連絡がありました。陛下が勝手なことをしているから、力を貸してほしいと。……ふふ」
フロランス様の赤い唇が歪み、聞いているだけで震えるような笑みが漏れる。
この押し殺すような怒りに、ふと昨日のアンリの姿を思い出した。
アンリとフロランス様は、顔立ちこそ似ていないものの――やはり、親子なのである。
「わたくしに断りもなく、アンリの話すら聞かず、思い付きで勝手に結婚相手を決めるなんて――いえ、それはまだ目をつぶりましょう。でも――――あなたたち、陛下が通達した文書を読んでいて?」
フロランス様の視線に、私は頷きを返した。
隣のアデライトは泣きべそをかいているので、恐れながらも代わりに返事をさせていただく。
「今朝、アデライト様と一緒に一通り確認しました。ええと、オレリア様に対するアンリ様の深い愛に感動した――とか。それ以外にも、なんと言いますか…………」
「感情的で、支離滅裂だったでしょう?」
フロランス様の言葉は的確だ。
私も、通達文を最初に読んだときは、これが国として出した正式の文書とは信じられなかった。
書いてあったのは、オレリア様とアンリの深い愛についてだ。
それから、なぜだか陛下自身についての生い立ちも長々と記載されていた。
世界を救った勇者の父であることを強調し、回りくどい賛美が書き連ねられていた。
おまけに、時系列はめちゃくちゃ。他国への配慮がなく、下手をすれば国際問題になりそうな記述も散見された。
誤字脱字は数え切れず、文法の誤りも多い。
もはや、どこから指摘すればいいのかわからなくなるほどだ。
「あんな腹立たしい公式文書なんて、わたくし読んだことがなくてよ。国外にも出す文書だというのに、まるで勢いだけで書き上げたみたい。きっと、会議の一つも通さなかったのでしょうね、ふふふ」
国外に発布する文書は、当然ながら厳格なチェックが入るものだ。
内容について審査し、問題になりそうな部分は削除し、誤字脱字は一つも残さないよう二重三重に確認する。
なにせ、うかつなことを書けば、そのまま国同士の関係が危うくなる。
そうでなくとも、下手に自国の恥をさらさないように注意をするは当たり前――だったはずだが。
「不出来な人だとは思っていたけれど、ここまでだとは思いませんでした。ああ、それにしても面白いこと。アンリをずっと離宮に閉じ込めておきながら、こんなときだけは父親の顔をしようだなんて」
くすくすと、まったく愉快ではなさそうに笑うフロランス様の言葉は、私も同感だった。
なにせ、アンリもアデライトも、物心つくか付かないかのころには、もう陛下によって離宮に追いやられていたのだ。
そんな二人を、深い愛情でもって育てた人こそ、フロランス様だ。
幼少期こそ、フロランス様はアンリを持て余してしまっていたが、決してそこに愛がなかったわけではない。
傷つき、失敗しながらもアンリに向き合い続け、親子の関係を築いてきたのだと、傍で仕えて来た私は知っている。
一方の陛下は、そんなフロランス様の苦労も知らず、子供たちの様子を見に来たことさえない。
成長を伝える手紙を送っても返事はなく、国の行事で王子や王女の参加が必要な場合にのみ、一方的に呼びつけるだけだ。
それなのに、アンリの成長を自分の手柄のように語るのは、フロランス様でなくても腹が立つ。
――そもそも、フロランス様が離宮にいることだっておかしいのに。
フロランス様は、グロワール王国の正妃にして隣の大国ソレイユの王女である。
本来ならば陛下とは対等な関係のはずなのに、フロランス様の発言力や人望を妬んだ陛下によって、王都から馬で半日もかかるこの離宮に厄介払いされてしまったのだ。
以来、フロランス様は『無用な対立を避けるため』と大人しく離宮で暮らし続けている。
だが――。
「――――もう、いいかしらね」
それも、どうやら今日で終わりらしい。
「そろそろ、あの人にもわかってもらおうかしら」
ふ、と笑みを浮かべるフロランス様の周囲に、かすかな風が巻き起こる。
アンリの強い魔力は、魔法に長けたフロランス様譲り。
彼女の怒りが、魔力となって部屋の中に渦を巻く。
「アンリのために、いろいろ準備をしておいてよかったわ。――――ねえ、ミシェル」
「は、はい! なんでしょう!」
突然に名前を呼ばれ、私ははっと背筋を伸ばす。
冷たい怒りを笑みに変え、うっそりと微笑むフロランス様は、震えるほどに美しく――恐ろしい。
「ミシェル。あなた、覚悟は決めていて?」
「か、覚悟ですか……?」
いったい、なんの――――?
疑惑を浮かべる私を、フロランス様の夜のような藍色の瞳が射貫く。
私の心の奥底までも、貫くかのように。
「あなたはアンリのために、どんなことでもできるかしら?」
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!