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エンディングイベント開始(4)
「オレリアはたぶん、ゲームオーバーになったことに気付いていないのよ」
馬を追い立てながら、アデライトは話し続ける。
「魔王に憑りつかれても、すぐに魔王になるわけじゃないの。……なんて言えばいいのかしら。魔王になるって言ってもまったくの別人になるわけじゃなくて、本人の意識は残したまま少しずつ魔王に変えられていく感じ。記憶とか性格は基本的に変わらないんだけど、知らず知らず魔王寄りの邪悪な考え方になって、魔王の自覚も徐々に芽生えるの」
「知らず知らず……」
アデライトの言葉を繰り返しながら、私はオレリア様のことを考えた。
優しさで知られる博愛の心が、邪悪に変わっていくのはどれほど恐ろしいことだろう。
悪とは正反対の、穢れなき聖女が魔王に変えられるなんて、こんな残酷なこともない。
本人の意識を残したままというのなら、なおさら。
変わり果てていく自分を、オレリア様は今まさに感じているのだ。
「魔王に憑りつかれれば、それまでの魔王の記憶や力も受け継ぐのよ。魔族も従えられるし、魔物も操れるから、どんどん魔王は強くなっていくわ。……まともに戦ったら、もうお兄様も勝てないくらい」
「…………そんな」
魔王の死に立ち会うのは、勇者とその仲間――世界中から選ばれた、最強の戦士たちだ。
魔王さえも倒す彼らに、魔王の意識が憑りつけば、勝てる人間はそういない。
ましてや、これまでの魔王の力を受け継いでいるのなら、なおさら。
――いえ、それ以前に、勇者たちは仲間に剣を向けることになるのよ。
かつての勇者たちは、それができただろうか。
優しいアンリに、それができるだろうか――。
「エンディングの再現をしようとしているあたり、オレリアはまだ魔王になった自覚がないんだと思うわ。あれでも一応ヒロインだし、聖なる力も強いから、もしかして魔王の意識に抵抗できているのかも。それなら――」
「説得ができるかもしれない、ということですね!」
私は思わず腰を浮かせた。
アデライトが無茶をしてでも、私たちに付いてきたのも無理はない。
もちろん褒められたことではないけど――今は、お説教は後回しだ。
「アンリ様にお伝えしないと!」
「ええ! って言っても、お兄様たち早すぎて……!」
遅れがちな馬車とは違って、アンリは先頭を走っている。
私たちを置いていかないように、ときおり速度を落としてくれてはいるけれど、とても並んで走れそうにはない。
顔を上げれば、もう王都の外壁が近い。
外壁の門の前には兵士が数人。まるで待ち構えているかのように、こちらを向いて立っているのが見える。
どこからともなく風が吹き抜け、前を走るアンリの髪をなびかせた。
馬を追い立てながら、アデライトは話し続ける。
「魔王に憑りつかれても、すぐに魔王になるわけじゃないの。……なんて言えばいいのかしら。魔王になるって言ってもまったくの別人になるわけじゃなくて、本人の意識は残したまま少しずつ魔王に変えられていく感じ。記憶とか性格は基本的に変わらないんだけど、知らず知らず魔王寄りの邪悪な考え方になって、魔王の自覚も徐々に芽生えるの」
「知らず知らず……」
アデライトの言葉を繰り返しながら、私はオレリア様のことを考えた。
優しさで知られる博愛の心が、邪悪に変わっていくのはどれほど恐ろしいことだろう。
悪とは正反対の、穢れなき聖女が魔王に変えられるなんて、こんな残酷なこともない。
本人の意識を残したままというのなら、なおさら。
変わり果てていく自分を、オレリア様は今まさに感じているのだ。
「魔王に憑りつかれれば、それまでの魔王の記憶や力も受け継ぐのよ。魔族も従えられるし、魔物も操れるから、どんどん魔王は強くなっていくわ。……まともに戦ったら、もうお兄様も勝てないくらい」
「…………そんな」
魔王の死に立ち会うのは、勇者とその仲間――世界中から選ばれた、最強の戦士たちだ。
魔王さえも倒す彼らに、魔王の意識が憑りつけば、勝てる人間はそういない。
ましてや、これまでの魔王の力を受け継いでいるのなら、なおさら。
――いえ、それ以前に、勇者たちは仲間に剣を向けることになるのよ。
かつての勇者たちは、それができただろうか。
優しいアンリに、それができるだろうか――。
「エンディングの再現をしようとしているあたり、オレリアはまだ魔王になった自覚がないんだと思うわ。あれでも一応ヒロインだし、聖なる力も強いから、もしかして魔王の意識に抵抗できているのかも。それなら――」
「説得ができるかもしれない、ということですね!」
私は思わず腰を浮かせた。
アデライトが無茶をしてでも、私たちに付いてきたのも無理はない。
もちろん褒められたことではないけど――今は、お説教は後回しだ。
「アンリ様にお伝えしないと!」
「ええ! って言っても、お兄様たち早すぎて……!」
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私たちを置いていかないように、ときおり速度を落としてくれてはいるけれど、とても並んで走れそうにはない。
顔を上げれば、もう王都の外壁が近い。
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どこからともなく風が吹き抜け、前を走るアンリの髪をなびかせた。
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