破滅したくない悪役令嬢によって、攻略対象の王子様とくっつけられそうです

村咲

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私はヒロインなのよ! ※聖女視点

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 婚約披露宴の日。
 オレリアは、アンリたちが去っていく姿を呆然と見送った。
 周囲を魔族が取り囲んでいることなど、少しも気にしてはいられなかった。

 だって、今はハッピーエンドの最中なのだ。
 ヒロインは自分。ヒーローはアンリ。苦難の末に、二人は結ばれるはずだった。
 悪役令嬢の卑劣な邪魔にも負けず、軌道修正に軌道修正を重ね、やっとのことでここまでたどり着いたというのに――。

 どこの誰とも知らない女を連れて、アンリがいなくなってしまったのだ。

「はあああああ!? なによあれ! 私のエンディングはどうなったのよ!!」

 オレリアは頭を掻き、アンリの消えたバルコニーを睨んだ。
 いったい、今までの努力はなんだったというのだろう。上げに上げたアンリの好感度はどこへ行ってしまったのだろう。
 ヤンデレ執着アンリの重たい愛と、犯罪も辞さない囲い込みは? 妻として大切にされる日々は? 民に愛され、偉大な王妃と称えられる未来は?

 すべてが、水の泡と消えてしまった。

 ここからの軌道修正は、オレリアには思い浮かばなかった。
 エンディングは終わり、ゲームはその先に続かない。
 好感度が上がるイベントもなく、選択肢もなく、アンリがなにを考えているのかもわからない。
 それでどうやって、アンリを攻略できるというのだろう。

「なによマルティナって! どこで好感度を上げていたの!? 私のアンリになにをしてんのよ!」

 オレリアはドレス姿のまま、真っ赤になって地団太を踏む。
 その様子を、周囲の魔族がじっと見ていることには気付いていない。

「転生者は悪役令嬢だけじゃなかったの!? あの女、どこのどいつよ!」

 ゲーム知識を総動員しても、マルティナという名前は思い当たらない。
 ならば、相手はモブですらない、まったくの無名の存在だろう。
 きっとオレリアと悪役令嬢が争っている隙に、こそこそとアンリに近づいて、横取りを狙っていたのだ。

「卑怯だわ! 許せないわ! 私はヒロインなのよ!? 私がアンリと結ばれるべきなのよ!?」

 アンリを幸せにできるのはオレリアだけ。
 それは、アンリのキャラ設定を見れば誰だってわかる。

 膨大な魔力を持つアンリには、同じだけの力を持つオレリアが必要だ。
 アンリの本当の力を解放するためには、オレリアとのイベントがなければならないのだ。
 アンリが病むくらいに執着するのは、オレリアという存在ただ一人だけのはずだ。

 オレリアはこれまでも、アンリの苦しみを理解し、相談に乗り、一人になりがちなアンリに寄り添ってきた。
 アンリは遠慮して、『もう十分だ』とか『君の助けは必要ない』とか言っていたけど、本心でないことはわかっている。
 アンリは間違いなくオレリアのことを愛していたはずなのに。

「マルティナ……!」

 憎々しさを込めて、オレリアはその名前を吐く。
 あの女がすべて悪い。
 ヒロインでもないあの女が、アンリを幸せにできるはずがない。
 こんな結果は間違っている。

 どうにかして、取り返してやりたい――そう思ったときだった。

「あの娘のことが知りたいですか?」

 オレリアの背後から、知らない男の声がかけられた。
 驚いて振り返れば、無数の魔族の中から歩み出る男の姿が目に入る。

 魔族たちの中にありながら、男は魔族の特徴を持ってはいなかった。
 血の通った肌の色に、まるい耳。角はない。顔立ちさえも凡庸で、ごくありふれた人間に見えた。

 ――人間に変身している? でも、魔力が人間のものだわ。

 顔つきはしっかりしていて、洗脳されているようにも思えない。
 しかし正気なら逃げ出しそうな数の魔族を前に、男は薄ら笑いを浮かべていた。

 いぶかしむオレリアに、男は慇懃に一礼し、こう言った。

「教えて差し上げましょう。オレリア様。あなたが協力してくださるのなら――」
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