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第五話 嵐の《ヴァーン》島で微笑んで
04.嵐の中で輝いて
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出来上がったスフレオムレツをサリサが座るテーブルの前へと持っていった。
「こ、これは?」
サリサは目をまん丸にして、初めて見る料理(スフレオムレツ)を不思議そうに見つめた。
丸皿にはみ出さんとばかりに置かれたスフレオムレツが、まるで黄色いが雲が浮かんでいるようだった。
「スフレオムレツという卵料理です」
「卵!? これは卵で作ったものなの!」
折り畳んだ場所からトロリと半熟のきめ細かな泡生地が溢れている。
サリサたちが普段食べる卵料理は、主に目玉焼きやゆで卵、他にはスクランブルエッグのようなものがある。
「熱い内に食べてくださいね。冷めちゃうと萎んでしまうので。あ、仕上げにこれを忘れていた」
ヒヨリは小瓶を取り出して蓋を開けて、スフレオムレツにとろみがある液体をたらしかけると、光沢を放ち輝く。
「それは?」
「アーステイム王国で知り合ったシャーリさんからコロッケのお礼に貰った花蜜です」
「卵に花蜜!?」
「さあ、どうぞ!」
花蜜の光沢で、スフレオムレツが輝きを放っているようだった。
見た目は悪くはない……が、初めて見る料理を口にするのは躊躇うもの。サリサが怯んでいるとと、
「姉上が食べないなら、俺が食べるぞ」
ヴァイルが手を伸ばしてきたが、パチンっと反射的に叩き落とすと、そのまま睨みつけて抑止させた。
(食事にまったく無頓着だった、あのヴァイルがこんな食い意地を張るなんて……)
サリサは一呼吸をして、侍女が用意してくれていたテーブルナイフを手に取り、スフレオムレツを一口大の大きさに切って、突き刺した。
荒々しいサリサだからこそのワイルドな所作という訳ではなく、この世界では“フォーク”がないからだ。
テーブルナイフで適度に切ったものを、さっきのように刺したり、切った分を手づかみで食べるのが普通なのだ。
サリサは刺したスフレオムレツを鼻の近くに持っていき、匂いを嗅ぐ。花蜜の甘い匂いと卵の芳醇の香りが漂い、食欲が沸いてくる。やはり女性だからなのか、甘いものには目が無い。
ゆっくりとスフレオムレツを口にすると、
「ほおっ!」
ふわふわ食感に、花蜜の甘さで引き立った黄身の味を強く感じた。そして咀嚼していると「サクッ!」と何かを噛み砕いた。
二つ折りする前に振りかけていた、クッキーだ。
人が美味しく味わうためには食感も大切である。
単調な食感ばかりだと、飽きが早く訪れてしまう。特に柔らかい食べ物だとなおさらだ。そこで歯ごたえのある食材を混ぜておくことで、より食が進むのだ。
サリサは大サイズのスフレオムレツを、あっという間に平らげてしまった。
食べ終えて我を取り戻した時、サリサはみんなの視線を避けるように、ソッポを向いたのだった。
かつてのヴァイルと同じような行動に、やっぱり姉弟なのだと実感してしまった。
サリサはわざとらしく咳払いをして、前を向く。
「う、うむ……。なるほど、これは美味かった。卵がこんな料理になるとは。それに、中に入っていて歯ごたえがあったのは?」
「ああ、それはクッキーです」
「くっきー?」
聞き慣れない言葉に首をかしげるサリサに、ラトフが言い添える。
「ケックスに似ている菓子ですね」
「ああ、ケックスか。それを混ぜていたのか。というか、何処でそれを?」
「みんなのおやつ用にアーステイム王国で作っておいたものが、服のポケットに入っていたので、それを使いまし……あっ! 確か、この家にあるものを使わないといけないんでしたよね……?」
それならばクッキーだけではなく、シャーリから貰った花蜜も当てはまるだろう。これまで経緯で不正を許さないサリサに、ヒヨリは恐縮してしまい身構えた。
サリサは肩をワナワナと震わせて……「ハッハハハ!」と盛大に笑った。
「なーに、この家にあるものを使いな、と言ったんだ。ならば、この家にこっそり持ち込んでいたものも、家にあるものとして扱っても構わないよ。しかし、このスフレオムレツだけでも充分だったけど、なぜ、そのクッキーや花蜜を使ったんだい?」
「えーと、それを使った方が美味しくなるからですよ」
シンプルかつ率直な理由に、サリサはまた声を出して笑った。
サリサはヴァイルの方を見て、ほほ笑みを浮かべては、再びヒヨリの方へと顔を向ける。
「ふふ。なるほど、面白い子だね。気に入ったわ……ワカバヤシ・ヒヨリと言ったわね。ようこそ、ヴァーン島へ。貴女を歓迎してあげるわ。ついでに、シュイットもね」
自分の姉ながら面倒事が広がらなくて、胸を撫で下ろすヴァイル。
しかし――
サリサはヴァイルの元に寄り、肩に手を置いて囁く。
「けど、あの子と結婚するという話しは別だからね」
「姉上……っ!」
サリサはにっこりと笑顔を浮かべていた。今ここで下手に機嫌を損ねては、また嵐が吹き荒れるとして、ヴァイルはグッと言葉を飲み込んだ。
「解ったよ。それについても後で詳しく話すからな」
サリサは微笑み返して、ヴァイルの頭を軽く叩いたのであった。
「さて、ヨルムンガンド海賊が無事に帰ってきたことだし、いつもの宴でも開くわよ!」
サリサの掛け声にガウディたちは「おうっ!」と諾了の声を挙げた。
ヒヨリがサリサに気に入って貰えて、迎い入れてくれたことに一同は、ようやく緊張が解けたのであった。
「こ、これは?」
サリサは目をまん丸にして、初めて見る料理(スフレオムレツ)を不思議そうに見つめた。
丸皿にはみ出さんとばかりに置かれたスフレオムレツが、まるで黄色いが雲が浮かんでいるようだった。
「スフレオムレツという卵料理です」
「卵!? これは卵で作ったものなの!」
折り畳んだ場所からトロリと半熟のきめ細かな泡生地が溢れている。
サリサたちが普段食べる卵料理は、主に目玉焼きやゆで卵、他にはスクランブルエッグのようなものがある。
「熱い内に食べてくださいね。冷めちゃうと萎んでしまうので。あ、仕上げにこれを忘れていた」
ヒヨリは小瓶を取り出して蓋を開けて、スフレオムレツにとろみがある液体をたらしかけると、光沢を放ち輝く。
「それは?」
「アーステイム王国で知り合ったシャーリさんからコロッケのお礼に貰った花蜜です」
「卵に花蜜!?」
「さあ、どうぞ!」
花蜜の光沢で、スフレオムレツが輝きを放っているようだった。
見た目は悪くはない……が、初めて見る料理を口にするのは躊躇うもの。サリサが怯んでいるとと、
「姉上が食べないなら、俺が食べるぞ」
ヴァイルが手を伸ばしてきたが、パチンっと反射的に叩き落とすと、そのまま睨みつけて抑止させた。
(食事にまったく無頓着だった、あのヴァイルがこんな食い意地を張るなんて……)
サリサは一呼吸をして、侍女が用意してくれていたテーブルナイフを手に取り、スフレオムレツを一口大の大きさに切って、突き刺した。
荒々しいサリサだからこそのワイルドな所作という訳ではなく、この世界では“フォーク”がないからだ。
テーブルナイフで適度に切ったものを、さっきのように刺したり、切った分を手づかみで食べるのが普通なのだ。
サリサは刺したスフレオムレツを鼻の近くに持っていき、匂いを嗅ぐ。花蜜の甘い匂いと卵の芳醇の香りが漂い、食欲が沸いてくる。やはり女性だからなのか、甘いものには目が無い。
ゆっくりとスフレオムレツを口にすると、
「ほおっ!」
ふわふわ食感に、花蜜の甘さで引き立った黄身の味を強く感じた。そして咀嚼していると「サクッ!」と何かを噛み砕いた。
二つ折りする前に振りかけていた、クッキーだ。
人が美味しく味わうためには食感も大切である。
単調な食感ばかりだと、飽きが早く訪れてしまう。特に柔らかい食べ物だとなおさらだ。そこで歯ごたえのある食材を混ぜておくことで、より食が進むのだ。
サリサは大サイズのスフレオムレツを、あっという間に平らげてしまった。
食べ終えて我を取り戻した時、サリサはみんなの視線を避けるように、ソッポを向いたのだった。
かつてのヴァイルと同じような行動に、やっぱり姉弟なのだと実感してしまった。
サリサはわざとらしく咳払いをして、前を向く。
「う、うむ……。なるほど、これは美味かった。卵がこんな料理になるとは。それに、中に入っていて歯ごたえがあったのは?」
「ああ、それはクッキーです」
「くっきー?」
聞き慣れない言葉に首をかしげるサリサに、ラトフが言い添える。
「ケックスに似ている菓子ですね」
「ああ、ケックスか。それを混ぜていたのか。というか、何処でそれを?」
「みんなのおやつ用にアーステイム王国で作っておいたものが、服のポケットに入っていたので、それを使いまし……あっ! 確か、この家にあるものを使わないといけないんでしたよね……?」
それならばクッキーだけではなく、シャーリから貰った花蜜も当てはまるだろう。これまで経緯で不正を許さないサリサに、ヒヨリは恐縮してしまい身構えた。
サリサは肩をワナワナと震わせて……「ハッハハハ!」と盛大に笑った。
「なーに、この家にあるものを使いな、と言ったんだ。ならば、この家にこっそり持ち込んでいたものも、家にあるものとして扱っても構わないよ。しかし、このスフレオムレツだけでも充分だったけど、なぜ、そのクッキーや花蜜を使ったんだい?」
「えーと、それを使った方が美味しくなるからですよ」
シンプルかつ率直な理由に、サリサはまた声を出して笑った。
サリサはヴァイルの方を見て、ほほ笑みを浮かべては、再びヒヨリの方へと顔を向ける。
「ふふ。なるほど、面白い子だね。気に入ったわ……ワカバヤシ・ヒヨリと言ったわね。ようこそ、ヴァーン島へ。貴女を歓迎してあげるわ。ついでに、シュイットもね」
自分の姉ながら面倒事が広がらなくて、胸を撫で下ろすヴァイル。
しかし――
サリサはヴァイルの元に寄り、肩に手を置いて囁く。
「けど、あの子と結婚するという話しは別だからね」
「姉上……っ!」
サリサはにっこりと笑顔を浮かべていた。今ここで下手に機嫌を損ねては、また嵐が吹き荒れるとして、ヴァイルはグッと言葉を飲み込んだ。
「解ったよ。それについても後で詳しく話すからな」
サリサは微笑み返して、ヴァイルの頭を軽く叩いたのであった。
「さて、ヨルムンガンド海賊が無事に帰ってきたことだし、いつもの宴でも開くわよ!」
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