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第4話 容疑者逮捕
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その人物は男性である。愛斗も知っている男だ。ユメカファンのオフ会にいたケイゴである。
「どうして、ここに?」
驚いて、愛斗が聞く。ケイゴが見せたのは警察手帳だ。
「本名は鉄山恵吾(てつやま けいご)です。これでも警視庁捜査一課の刑事です。下っ端ですけど。ジムのトレーナーやってるってのは、嘘です。あまり大っぴらにできる職業じゃないですから」
「びっくりしました!」
「ごめんなさい。ところで今日は朝の9時から夜6時半ぐらいまで会社にいたそうですね?」
ケイゴの質問に、愛斗はうなずく。
「事情聴取された時にも言いましたが、当然アリバイはあります。大勢の同僚が見てますし、休憩時間も社員食堂でとりました」
「今のところ鑑識は、カグラさんが昼12時から午後2時までに殺されたと見ています。マナトさんのアリバイも、上司の方に電話して、確認済です」
「強盗じゃなさそうだって聞いたんですけど」
「そうなんです。ただカグラさんはご両親もきょうだいも妻子もいないし、友人も少なくて親戚とも疎遠だそうで、捜査は難航してますね」
ケイゴは苦い顔をした。
「しかし、酷い殺され方でしたね」
愛斗は、そう口にする。
「背中から斬り殺されたような感じですか?」
「正確に表現すると、最初に背中から斜めに斬られ、その後うつ伏せに倒れた被害者の首や背中や腰を、日本刀で滅多刺しにしたわけです。僕も以前あの部屋に招かれましたが、カグラさんの話では、余程気を許した人物じゃないと、あの部屋には入れないそうです。その時は、僕とリナさんとヲタスケさんしか、そんな人はいないと言ってました。1か月ぐらい前ですが」
「それでは犯人は、カグラさんが気を許した人物だと?」
「その可能性が高いと、捜査本部は見ています。自分も、同じ考えです」
「盗まれた物はなかったんですか?」
「カグラさんがいつもしていたローレックスの腕時計が見あたりません。上司には、僕がカグラさんと交流があった事も、ローレックスの件も話してます。ちなみに僕にもアリバイがあります。今日は1日先輩の刑事と、別の事件の捜査のため、ずっと一緒にいましたから」
「もしかして、ヲタスケさんやリナさんを疑ってます?」
「ヲタスケさんは犯行推定時刻に、勤務している会社にいたのが確認されました。リナさんは複数の友人と、行きつけのレストランで食事をしていました。店員さんもリナさんが来てたのを証言しましたし、防犯カメラにも彼女の姿が映ってました」
「でもそれじゃあ一体誰が?」
「わかりません。そのあたりは捜査中です」
「岩倉警部補に、ヲタスケさんのSNSのアカウントを教えたんですが」
「カグラさんが殺されたと知って、すぐヲタスケさんとリナさんにLINEを送って、僕が刑事だと明かして、アリバイを確認したんです。その事がまだ岩倉さんに伝わってなくて。でも、僕がここへ来る前に伝えました」
ようやくその後解放され、愛斗は赤羽のアパートに帰宅した。すでに夜11時を過ぎていた。
ワンルームの部屋に入ると、ようやく気持ちがちょっとだけ落ち着く。
自室の壁には、大きなポスターが貼ってあり、ビキニ姿のユメカがそこには映っている。
墨汁を眼球に流したような真っ黒な瞳にいくつかの光が浮かんで、まるで宇宙のようだった。
ヲタスケのSNSのアカウントからダイレクトメールがあり、警察から連絡があって、彼の住むマンションに事情聴取に来たそうだ。
ヲタスケは電話で話したいと申し出て、自分のスマホの番号を教えてきたので、愛斗は早速かけてみた。
「マナト君も大変だったね。びっくりしたろう!」
「そうですね……まさかカグラさんの遺体を発見するなんて考えもしなかったので驚きました」
「ケイゴ君が刑事だったのにも唖然とした」
「犯人の心当たりはありますか?」
「それがないんだよね。リナちゃんとも話したけど」
「ケイゴ君も言ってましたけど、日本刀のあった部屋は、気を許した人しか入れなかったそうですね」
「そうなんだよね。強盗に入られて、誰かに脅されたならありうるけど、だとしたら強盗は最初から凶器を持ってたんじゃないかってケイゴ君も話してたね。盗まれたのがローレックスの腕時計だけだってのも変な話だし」
「強盗が例えば宅配業者に化けてたとか?」
「カグラ君は虐待の影響か極端な人見知りで、例えば通販で品物を取り寄せるって事を全くしなかったんだよね。こないだ僕らが行った時みたく事前に連絡しなければ、インターホンにも出ないと言ってたし」
「握手会によく来てるムノって女性がいますよね。いつも帽子とサングラスとマスクしてる人。あの人なんかどうでしょう? なんかいつも顔隠して怪しいなって感じてるんですけど」
「いや、それはないよ」
ヲタスケが笑った。
「今みたいな猛暑で、大型感染症がまた流行りはじめているような状況じゃ、帽子にマスクは必須でしょう。それに1度ムノさんがサングラス外したのを見た時あったけど、目の色が日本人にしては薄くて茶色っぽいんだよね。僕の知り合いにもいるけど、ああいう子は強い日差しに弱いから、医者にサングラスの使用を勧められるそうだしね」
「そうなんですか」
「人見知りなのか、ムノさんはユメカちゃん以外の誰とも話さないからね。カグラ君自体人見知りで、僕とケイゴ君とリナちゃんとユメカちゃん以外の人としゃべってるの見た事ないし。そもそもムノさんはカグラ君がどこにいるかも知らないだろうし、動機がないよ」
「だったら誰が犯人なんですかね?」
「それはちょっとわからないよね。僕らは何もできなくて、本当に悔しいけど、きっと警察が捕まえてくれるよ」
そして数日後警察が容疑者を捕まえるのだが、それは意外な人物だった。
信じられない話だが、逮捕されたのは、ユメカだったのである。
「どうして、ここに?」
驚いて、愛斗が聞く。ケイゴが見せたのは警察手帳だ。
「本名は鉄山恵吾(てつやま けいご)です。これでも警視庁捜査一課の刑事です。下っ端ですけど。ジムのトレーナーやってるってのは、嘘です。あまり大っぴらにできる職業じゃないですから」
「びっくりしました!」
「ごめんなさい。ところで今日は朝の9時から夜6時半ぐらいまで会社にいたそうですね?」
ケイゴの質問に、愛斗はうなずく。
「事情聴取された時にも言いましたが、当然アリバイはあります。大勢の同僚が見てますし、休憩時間も社員食堂でとりました」
「今のところ鑑識は、カグラさんが昼12時から午後2時までに殺されたと見ています。マナトさんのアリバイも、上司の方に電話して、確認済です」
「強盗じゃなさそうだって聞いたんですけど」
「そうなんです。ただカグラさんはご両親もきょうだいも妻子もいないし、友人も少なくて親戚とも疎遠だそうで、捜査は難航してますね」
ケイゴは苦い顔をした。
「しかし、酷い殺され方でしたね」
愛斗は、そう口にする。
「背中から斬り殺されたような感じですか?」
「正確に表現すると、最初に背中から斜めに斬られ、その後うつ伏せに倒れた被害者の首や背中や腰を、日本刀で滅多刺しにしたわけです。僕も以前あの部屋に招かれましたが、カグラさんの話では、余程気を許した人物じゃないと、あの部屋には入れないそうです。その時は、僕とリナさんとヲタスケさんしか、そんな人はいないと言ってました。1か月ぐらい前ですが」
「それでは犯人は、カグラさんが気を許した人物だと?」
「その可能性が高いと、捜査本部は見ています。自分も、同じ考えです」
「盗まれた物はなかったんですか?」
「カグラさんがいつもしていたローレックスの腕時計が見あたりません。上司には、僕がカグラさんと交流があった事も、ローレックスの件も話してます。ちなみに僕にもアリバイがあります。今日は1日先輩の刑事と、別の事件の捜査のため、ずっと一緒にいましたから」
「もしかして、ヲタスケさんやリナさんを疑ってます?」
「ヲタスケさんは犯行推定時刻に、勤務している会社にいたのが確認されました。リナさんは複数の友人と、行きつけのレストランで食事をしていました。店員さんもリナさんが来てたのを証言しましたし、防犯カメラにも彼女の姿が映ってました」
「でもそれじゃあ一体誰が?」
「わかりません。そのあたりは捜査中です」
「岩倉警部補に、ヲタスケさんのSNSのアカウントを教えたんですが」
「カグラさんが殺されたと知って、すぐヲタスケさんとリナさんにLINEを送って、僕が刑事だと明かして、アリバイを確認したんです。その事がまだ岩倉さんに伝わってなくて。でも、僕がここへ来る前に伝えました」
ようやくその後解放され、愛斗は赤羽のアパートに帰宅した。すでに夜11時を過ぎていた。
ワンルームの部屋に入ると、ようやく気持ちがちょっとだけ落ち着く。
自室の壁には、大きなポスターが貼ってあり、ビキニ姿のユメカがそこには映っている。
墨汁を眼球に流したような真っ黒な瞳にいくつかの光が浮かんで、まるで宇宙のようだった。
ヲタスケのSNSのアカウントからダイレクトメールがあり、警察から連絡があって、彼の住むマンションに事情聴取に来たそうだ。
ヲタスケは電話で話したいと申し出て、自分のスマホの番号を教えてきたので、愛斗は早速かけてみた。
「マナト君も大変だったね。びっくりしたろう!」
「そうですね……まさかカグラさんの遺体を発見するなんて考えもしなかったので驚きました」
「ケイゴ君が刑事だったのにも唖然とした」
「犯人の心当たりはありますか?」
「それがないんだよね。リナちゃんとも話したけど」
「ケイゴ君も言ってましたけど、日本刀のあった部屋は、気を許した人しか入れなかったそうですね」
「そうなんだよね。強盗に入られて、誰かに脅されたならありうるけど、だとしたら強盗は最初から凶器を持ってたんじゃないかってケイゴ君も話してたね。盗まれたのがローレックスの腕時計だけだってのも変な話だし」
「強盗が例えば宅配業者に化けてたとか?」
「カグラ君は虐待の影響か極端な人見知りで、例えば通販で品物を取り寄せるって事を全くしなかったんだよね。こないだ僕らが行った時みたく事前に連絡しなければ、インターホンにも出ないと言ってたし」
「握手会によく来てるムノって女性がいますよね。いつも帽子とサングラスとマスクしてる人。あの人なんかどうでしょう? なんかいつも顔隠して怪しいなって感じてるんですけど」
「いや、それはないよ」
ヲタスケが笑った。
「今みたいな猛暑で、大型感染症がまた流行りはじめているような状況じゃ、帽子にマスクは必須でしょう。それに1度ムノさんがサングラス外したのを見た時あったけど、目の色が日本人にしては薄くて茶色っぽいんだよね。僕の知り合いにもいるけど、ああいう子は強い日差しに弱いから、医者にサングラスの使用を勧められるそうだしね」
「そうなんですか」
「人見知りなのか、ムノさんはユメカちゃん以外の誰とも話さないからね。カグラ君自体人見知りで、僕とケイゴ君とリナちゃんとユメカちゃん以外の人としゃべってるの見た事ないし。そもそもムノさんはカグラ君がどこにいるかも知らないだろうし、動機がないよ」
「だったら誰が犯人なんですかね?」
「それはちょっとわからないよね。僕らは何もできなくて、本当に悔しいけど、きっと警察が捕まえてくれるよ」
そして数日後警察が容疑者を捕まえるのだが、それは意外な人物だった。
信じられない話だが、逮捕されたのは、ユメカだったのである。
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