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第8話 衝撃
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『反逆者』という言葉がセセラギの胸に矢のように刺さった。が、彼は、巫女になったアオイを奪い返そうとしてるのだ。
反逆者呼ばわりされてもしかたない。それにイカヅチは銅貨1枚と簡単に口にしたが、貧乏な農民には、その1枚がどんなに重いものかセセラギには重々わかっていた。
イカヅチは好人物だが所詮は神官、下々の暮らし向きなどわからぬのだろう。
「どうやってアオイを救うんだ」
セセラギは、思わず身を乗りだす。小声で聞いたつもりだが、外に話が漏れたんじゃないかと、心配でしかたない。
恐る恐る周囲を見渡した。窓の外には、人っ子1人姿は見えぬ。誰かの気配もしなかった。
「11月の収穫祭の時を狙う」
小声で、神官は答えた。
「この時は導師様も巫女達も、大神殿の外に出る。大勢人が集まるので、混雑に乗じてアオイちゃんを救う」
その後イカヅチは計画の詳細を話しはじめた。
やがて訪れた11月の23日は、絵に描いたような秋晴れの天候だった。毎年この日は雨が降った例はなく、常に青空だ。いつもは硬く門を閉ざした大神殿も、この日だけは門を大きく開かれて、大神殿の前に屋台が出たり、相撲や手品や紙芝居等の、見世物をやったりしていた。
その様子を導師と神官、巫女達が、椅子に座って眺めている。かれらのそばには一様に背が高く、屈強な体格の兵衛(つわもの)が何人も立っていた。腰の両脇に1本ずつ刀を差し、背には弓矢をしょっている。かみそりのような目は、油断なくあたりを見渡していた。
セセラギは背中に綱で縛った薪を背負い、一般客に紛れて、巫女達がいる方に目をやった。皆同じような白の上着と赤い袴をはいている。若くて綺麗な娘ばかりだ。
が、やがてその中に見知った顔があるのに気づいた。アオイだ。アオイがいた。
夢にまで見た愛しい女が、目の前にいる。いつも笑みの絶えなかったその顔は、晴れ渡った空とは裏腹に、今にも雨が降りだしそうな雲行きだ。それはアオイだけではない。他の巫女達もそうだった。
「どうしたあんちゃん、祭りの日に薪なんか背負っちまって」
見知らぬ男が、声をかけてきた。服装から見て、農民だろう。気さくな性格らしく、他意のない笑みを浮かべている。顔が赤い。少々酔っているようだ。
「薪を集めて、村へ帰る途中なんで」
「重そうだから、降ろせばいいのに」
「そんなに長い時間いねえんで。導師様や巫女様の、ありがたいお姿をちょっとだけでも拝見できればと思いまして」
そう説明すると、足早にそこから離れる。そのうち誰かが接近してくる足音に気がついた。立ち止まってそちらをふりむいても、誰もいない。が、独特の足音に覚えがある。やがて足音は、セセラギのすぐそばで止まった。やがて耳元で、イカヅチの囁く声がする。彼は隠れ蓑を着ており、姿は見えない。
「計画通りぼくが騒ぎを起こすから、その隙にアオイさんを助けるんだ」
セセラギは、うなずく。やがて、見えない男がいずこかへ去る足音が聞こえた。大きな足音ではないが、周囲の者が気づきやしないか、ひやひやする。が、イカヅチの事だ。きっと、上手くやるだろう。
しばらくすると、祭りの会場にそびえたつ木製の櫓の脚がいつのまにか燃えはじめた。炎がまるで、悪魔の舌であるかのように、櫓を包んだ。火の勢いに気がついた、周囲の者からどよめきが聞こえる。やがて櫓は横倒しに横転し、派手な音が周囲に響いた。
櫓の天辺には『聖火』が燃えていたのだが、その炎が、下にあった屋台に燃えうつる。屋台の親父はすでに逃走していたが、屋台そのものは一瞬にして、燃え盛る炎と煙に包まれた。周囲から悲鳴が聞こえ、多くの者が会場の、外へ外へと走りだす。
が、あまりにも多くの人がいるために、転んだり、倒れる者も多かった。そんな混乱の中、徐々にセセラギはアオイの元へと駆けはじめた。彼の動きを気にしてる者等いない。皆逃げるか、火を消そうとして大わらわである。アオイは他の巫女や導師と一緒に、大神殿の中へ逃げようとしていた。
「アオイ、おれだ。一緒に逃げよう」
が、セセラギを見る幼馴染の顔は、怯えていた。得体の知れぬ怪物でも見ているような表情だ。次の瞬間、信じられぬ展開になる。幼馴染は、セセラギから逃げたのだ。
一瞬彼に迷いが生じた。彼女は他の巫女達と、神殿の中に吸いこまれようとしてる。このまま追わずにいた方が、むしろ彼女のためではないのか……。そう考えたが、許婚を取り戻さないと、何のためにここまで来たのかわからない。
千載一遇の機会である。セセラギは、腹の底からありったけの勇気を奮ってアオイの元へと駆けよった。彼は、ミドリの腕に手を伸ばした。やがて彼のたくましい手に、ミドリの肌のやわらかな感触が、まるで花が開いたように伝わったのだ。さすがに気配を察してか、周囲の視線が一挙に二人に集まった。
「おぬし百姓の分際で、巫女様に手だしをするとは」
まるで雷鳴が轟くような怒声が響き、屈強な体格をした兵衛(つわもの)の1人が襲ってきた。セセラギは懐に入れた隠れ蓑を2つ素早く取りだして、自分と愛しい娘の体に羽織らせた。
周囲からは、2人がまるで煙のように消えうせたとしか思えぬだろう。実際まわりの者達は、視界から二人が消えて、ぎょっとした顔をしている。大声を響かせた兵衛も、あっけにとられた顔をしていた。
彼のように大神殿の内部にいる者すら、このからくりは知らないようだ。セセラギは、背中にしょった薪の偽装に包まれた飛翔機の起動釦を押す。やがて機械の下側から勢いよく風が飛びだす音が背後からして、2人は高く舞いあがった。
セセラギが抱きしめた少女の顔は、状況の激変についていけず、釣ったばかりの魚のように目を丸くして、口をポカンと開けていた。
「おめえを助けに来た」
セセラギが、つぶやいた。
「後で、落ちついたとこでゆっくり話そう」
「大神殿に帰らないと」
悲壮な目で、両腕の中にいる娘がそう主張した。宝石のような黒い目に、朝露のような涙が浮かんだ。
「おめえが帰るのは大神殿なんかじゃねえ。おれのいるとこだ」
セセラギは飛翔機を釦で操作しながら、キリサメ公爵領へ向かった。そして彼が1人で住む、わらぶき屋根の小屋の前で降りたのだ。そして飛翔機を背から下ろし、隠れ蓑を脱ぐと、アオイを部屋へ案内する。もちろん許婚の着た隠れ蓑も、脱がせてやった。
「おれ達は、今日からここで夫婦として暮らすんだ」
「勝手すぎる」
ぴしゃりと少女が決めつけた。
「勝手すぎるって、何だ。おれ達は、許婚じゃねえか。夫婦として暮らすのに、何の問題がある」
「それは、昔の約束じゃない。あたしは巫女として、大神殿に仕える身。こんなふうに無断で導師様のもとを離れたら、ばちがあたるわ」
「おめえは理不尽だと思わねえのか。おれ達何もしてねえのに長い日照りで苦しんで、雨を降らすためには貢物をしなくっちゃならないなんて」
「理不尽も何も、それがヤマトの掟なのよ。従わなくちゃ、しょうがないよ。実際ミズウミとかいう大工は、導師様の教えに背いて雷に打たれて殺されたじゃない。天罰よ。あたしが里に帰らないと、サイハテ村の人達が、仕置きを受けるわ……あたし、神殿に帰る」
泣きながら、アオイがそう訴えた。衝撃のあまり、セセラギには返す言葉がない。
当然彼女は喜んで、自分と暮らすと思っていたのだ。
反逆者呼ばわりされてもしかたない。それにイカヅチは銅貨1枚と簡単に口にしたが、貧乏な農民には、その1枚がどんなに重いものかセセラギには重々わかっていた。
イカヅチは好人物だが所詮は神官、下々の暮らし向きなどわからぬのだろう。
「どうやってアオイを救うんだ」
セセラギは、思わず身を乗りだす。小声で聞いたつもりだが、外に話が漏れたんじゃないかと、心配でしかたない。
恐る恐る周囲を見渡した。窓の外には、人っ子1人姿は見えぬ。誰かの気配もしなかった。
「11月の収穫祭の時を狙う」
小声で、神官は答えた。
「この時は導師様も巫女達も、大神殿の外に出る。大勢人が集まるので、混雑に乗じてアオイちゃんを救う」
その後イカヅチは計画の詳細を話しはじめた。
やがて訪れた11月の23日は、絵に描いたような秋晴れの天候だった。毎年この日は雨が降った例はなく、常に青空だ。いつもは硬く門を閉ざした大神殿も、この日だけは門を大きく開かれて、大神殿の前に屋台が出たり、相撲や手品や紙芝居等の、見世物をやったりしていた。
その様子を導師と神官、巫女達が、椅子に座って眺めている。かれらのそばには一様に背が高く、屈強な体格の兵衛(つわもの)が何人も立っていた。腰の両脇に1本ずつ刀を差し、背には弓矢をしょっている。かみそりのような目は、油断なくあたりを見渡していた。
セセラギは背中に綱で縛った薪を背負い、一般客に紛れて、巫女達がいる方に目をやった。皆同じような白の上着と赤い袴をはいている。若くて綺麗な娘ばかりだ。
が、やがてその中に見知った顔があるのに気づいた。アオイだ。アオイがいた。
夢にまで見た愛しい女が、目の前にいる。いつも笑みの絶えなかったその顔は、晴れ渡った空とは裏腹に、今にも雨が降りだしそうな雲行きだ。それはアオイだけではない。他の巫女達もそうだった。
「どうしたあんちゃん、祭りの日に薪なんか背負っちまって」
見知らぬ男が、声をかけてきた。服装から見て、農民だろう。気さくな性格らしく、他意のない笑みを浮かべている。顔が赤い。少々酔っているようだ。
「薪を集めて、村へ帰る途中なんで」
「重そうだから、降ろせばいいのに」
「そんなに長い時間いねえんで。導師様や巫女様の、ありがたいお姿をちょっとだけでも拝見できればと思いまして」
そう説明すると、足早にそこから離れる。そのうち誰かが接近してくる足音に気がついた。立ち止まってそちらをふりむいても、誰もいない。が、独特の足音に覚えがある。やがて足音は、セセラギのすぐそばで止まった。やがて耳元で、イカヅチの囁く声がする。彼は隠れ蓑を着ており、姿は見えない。
「計画通りぼくが騒ぎを起こすから、その隙にアオイさんを助けるんだ」
セセラギは、うなずく。やがて、見えない男がいずこかへ去る足音が聞こえた。大きな足音ではないが、周囲の者が気づきやしないか、ひやひやする。が、イカヅチの事だ。きっと、上手くやるだろう。
しばらくすると、祭りの会場にそびえたつ木製の櫓の脚がいつのまにか燃えはじめた。炎がまるで、悪魔の舌であるかのように、櫓を包んだ。火の勢いに気がついた、周囲の者からどよめきが聞こえる。やがて櫓は横倒しに横転し、派手な音が周囲に響いた。
櫓の天辺には『聖火』が燃えていたのだが、その炎が、下にあった屋台に燃えうつる。屋台の親父はすでに逃走していたが、屋台そのものは一瞬にして、燃え盛る炎と煙に包まれた。周囲から悲鳴が聞こえ、多くの者が会場の、外へ外へと走りだす。
が、あまりにも多くの人がいるために、転んだり、倒れる者も多かった。そんな混乱の中、徐々にセセラギはアオイの元へと駆けはじめた。彼の動きを気にしてる者等いない。皆逃げるか、火を消そうとして大わらわである。アオイは他の巫女や導師と一緒に、大神殿の中へ逃げようとしていた。
「アオイ、おれだ。一緒に逃げよう」
が、セセラギを見る幼馴染の顔は、怯えていた。得体の知れぬ怪物でも見ているような表情だ。次の瞬間、信じられぬ展開になる。幼馴染は、セセラギから逃げたのだ。
一瞬彼に迷いが生じた。彼女は他の巫女達と、神殿の中に吸いこまれようとしてる。このまま追わずにいた方が、むしろ彼女のためではないのか……。そう考えたが、許婚を取り戻さないと、何のためにここまで来たのかわからない。
千載一遇の機会である。セセラギは、腹の底からありったけの勇気を奮ってアオイの元へと駆けよった。彼は、ミドリの腕に手を伸ばした。やがて彼のたくましい手に、ミドリの肌のやわらかな感触が、まるで花が開いたように伝わったのだ。さすがに気配を察してか、周囲の視線が一挙に二人に集まった。
「おぬし百姓の分際で、巫女様に手だしをするとは」
まるで雷鳴が轟くような怒声が響き、屈強な体格をした兵衛(つわもの)の1人が襲ってきた。セセラギは懐に入れた隠れ蓑を2つ素早く取りだして、自分と愛しい娘の体に羽織らせた。
周囲からは、2人がまるで煙のように消えうせたとしか思えぬだろう。実際まわりの者達は、視界から二人が消えて、ぎょっとした顔をしている。大声を響かせた兵衛も、あっけにとられた顔をしていた。
彼のように大神殿の内部にいる者すら、このからくりは知らないようだ。セセラギは、背中にしょった薪の偽装に包まれた飛翔機の起動釦を押す。やがて機械の下側から勢いよく風が飛びだす音が背後からして、2人は高く舞いあがった。
セセラギが抱きしめた少女の顔は、状況の激変についていけず、釣ったばかりの魚のように目を丸くして、口をポカンと開けていた。
「おめえを助けに来た」
セセラギが、つぶやいた。
「後で、落ちついたとこでゆっくり話そう」
「大神殿に帰らないと」
悲壮な目で、両腕の中にいる娘がそう主張した。宝石のような黒い目に、朝露のような涙が浮かんだ。
「おめえが帰るのは大神殿なんかじゃねえ。おれのいるとこだ」
セセラギは飛翔機を釦で操作しながら、キリサメ公爵領へ向かった。そして彼が1人で住む、わらぶき屋根の小屋の前で降りたのだ。そして飛翔機を背から下ろし、隠れ蓑を脱ぐと、アオイを部屋へ案内する。もちろん許婚の着た隠れ蓑も、脱がせてやった。
「おれ達は、今日からここで夫婦として暮らすんだ」
「勝手すぎる」
ぴしゃりと少女が決めつけた。
「勝手すぎるって、何だ。おれ達は、許婚じゃねえか。夫婦として暮らすのに、何の問題がある」
「それは、昔の約束じゃない。あたしは巫女として、大神殿に仕える身。こんなふうに無断で導師様のもとを離れたら、ばちがあたるわ」
「おめえは理不尽だと思わねえのか。おれ達何もしてねえのに長い日照りで苦しんで、雨を降らすためには貢物をしなくっちゃならないなんて」
「理不尽も何も、それがヤマトの掟なのよ。従わなくちゃ、しょうがないよ。実際ミズウミとかいう大工は、導師様の教えに背いて雷に打たれて殺されたじゃない。天罰よ。あたしが里に帰らないと、サイハテ村の人達が、仕置きを受けるわ……あたし、神殿に帰る」
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