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第6話 新兵器
「今後の件ですが、味方に暗号通信を送りました」
皆の腹が満ちた頃、恋紋がそう口にする。
「通常のメールの中に暗号をまぎれこませるやり方です。六角島にみなさんが遭難した件を、お伝えいたしました。1週間後の月曜をめどに、迎えの船をよこすそうです」
それでもそこに集まった同志達からは、ホッとしたような空気が流れる。ただ1人、今国を除いては。
でも彼は、安易に状況を前向きに考えたくないのかもしれない。
「そういえば水筒はなくさなかったの?」
若田部は、智恵理に聞いた。
船で隣に座った時、ほのか同様彼女も水筒を異常に大事にしてるように思えたからだ。
「大丈夫よ」
智恵理は笑ってそう答える。
「これでも体育会系だから、必死にバッグ持ってたし。しばらく真水が飲めないと思ってたから大事に持ってたけど、ここに来て事情変わったし」
「体育会系だったんだ」
「学部は文学部だけどね」
「俺は、史学部。学生運動にハマっちゃって、勉強どころじゃなかったけど」
その時である。それまで他の者達と雑談に加わっていた兵頭が、立ち上がった。皆も自然と会話をやめ、そちらを見る。
「ともかく、このたびはみんなご苦労様です。まだまだ落ち着かないとは思うが、ともかくも全員が無事で良かったです」
兵頭が、語りはじめる。
「とりあえず、この1週間が正念場です。独裁政権下で、日本に我々の居場所はない。韓国に逃げて、今後の反転攻勢を考えるしかないでしょう」
そこで兵頭は、1人1人の顔を見つめる。
「軍は毎週木曜日に、ここへ来るそうです。それ以外の時に突然現れるケースを考えて、今夜から2人ずつ交代で、夜間寝ずの番をやっていただきます」
「万が一軍が近づいてきたら、警報ボタンで全館に知らせてください」
後を引き継いだのは、恋紋である。
「後でみんなで行きますが、ここから少し北側に離れた場所に、秘密の洞窟があります。警報が鳴ったら、全員そこに逃げてください」
「最初から、その洞窟にいた方がいいんじゃないですか?」
発言したのは、水川だ。
「エンピツ屋敷で暮らしていれば、どうしたって部屋は汚れるし、僕らが逃げた後軍の連中が部屋を見れば、誰がいたかわかりますしね」
「洞窟は真っ暗ですから。居住性は、よくないです。いつも軍の人達は、部屋の方にはやってきません。それに部屋を探そうとしたら、こっちには切り札があります」
笑いながら、恋紋がウィンクした。その後恋紋が先頭に立ち、洞窟へ行く事になる。
そこは一見草むらで、ほら穴があるようには見えなかったが、長い草をかきわけると、黒い天然の出入口が顔を出す。
確かに隠れ家には良さそうだが、長時間滞在したくなるような、居心地の素敵な場所とは言い難い。
「島の北側にはモーターボートが1艘あります。韓国まで行くのは難しいかもしれないけど、すぐ動かせる状態になってます」
恋紋がそう説明する。その後再びそこに来た9人は、エンピツ屋敷の食堂に戻った。
そこで今夜の見張りをするのが兵頭と、ほのかの2人だと発表される。瀬古が舌打ちして、不愉快そうな顔をしていた。
「兵頭さんさあ、何でもかんでもあんたが決めるのって、おかしくねー?」
瀬古が、不服そうにぼやく。
「自分はパルチザンのリーダーから、君達を韓国に逃がすよう命令を受けている。一体何が不満なんだね?」
瀬古は口を開きかけたが結局黙ったままだった。兵頭は、再び言葉を綴りはじめる。
「明日以降のメンバーも、悪いが自分が今国さんと相談して決めさせてもらった。一緒に組む相手が気に入らなければ、後でこっそり教えてくれ。女性と組む男性には負担がかかるのも考えて、早乙女さんとは自分が、高西さんとは今国さんを組ませることにした。姫島恋紋さんは、見張りから外させてもらう。夜中にパルチザン支部からの緊急連絡を受ける時もあるようなので」
自衛官出身というだけでなく、兵頭にはカリスマがある。
瀬古の気持ちもわからないではないが、兵頭にリーダーの資格があるのは事実だった。でも、考えてみれば変な話ではある。
独裁政権に対する怒りから学生運動に加わって、運動のリーダーから『何かあったら鹿児島に逃げろ』と言われ、秘密警察のガサ入れがあったので、最初の指示通り鹿児島に来たのだ。
他の仲間がどうなったかはわからない。集まったのは、初対面の者ばかりだったのだ。
「噂で聞いたが現政権は、新兵器を開発したらしい。どんな兵器か知らないが、いよいよ中国あたりと、事を構える気かもしれない」
兵頭が続けて話す。日本は今もアメリカと同盟国だ。総統は以前から中国や北朝鮮に対して、敵意をむき出しにしていた。
「でも、中国は軍事大国で核兵器もあるでしょう? いくら勇ましい話をしても、日本に戦争はできないでしょう」
ほのかがそう異議を唱える。
「普通はな。でも仮に、核ミサイルのような物を保有するなら、また別だ」
皆の腹が満ちた頃、恋紋がそう口にする。
「通常のメールの中に暗号をまぎれこませるやり方です。六角島にみなさんが遭難した件を、お伝えいたしました。1週間後の月曜をめどに、迎えの船をよこすそうです」
それでもそこに集まった同志達からは、ホッとしたような空気が流れる。ただ1人、今国を除いては。
でも彼は、安易に状況を前向きに考えたくないのかもしれない。
「そういえば水筒はなくさなかったの?」
若田部は、智恵理に聞いた。
船で隣に座った時、ほのか同様彼女も水筒を異常に大事にしてるように思えたからだ。
「大丈夫よ」
智恵理は笑ってそう答える。
「これでも体育会系だから、必死にバッグ持ってたし。しばらく真水が飲めないと思ってたから大事に持ってたけど、ここに来て事情変わったし」
「体育会系だったんだ」
「学部は文学部だけどね」
「俺は、史学部。学生運動にハマっちゃって、勉強どころじゃなかったけど」
その時である。それまで他の者達と雑談に加わっていた兵頭が、立ち上がった。皆も自然と会話をやめ、そちらを見る。
「ともかく、このたびはみんなご苦労様です。まだまだ落ち着かないとは思うが、ともかくも全員が無事で良かったです」
兵頭が、語りはじめる。
「とりあえず、この1週間が正念場です。独裁政権下で、日本に我々の居場所はない。韓国に逃げて、今後の反転攻勢を考えるしかないでしょう」
そこで兵頭は、1人1人の顔を見つめる。
「軍は毎週木曜日に、ここへ来るそうです。それ以外の時に突然現れるケースを考えて、今夜から2人ずつ交代で、夜間寝ずの番をやっていただきます」
「万が一軍が近づいてきたら、警報ボタンで全館に知らせてください」
後を引き継いだのは、恋紋である。
「後でみんなで行きますが、ここから少し北側に離れた場所に、秘密の洞窟があります。警報が鳴ったら、全員そこに逃げてください」
「最初から、その洞窟にいた方がいいんじゃないですか?」
発言したのは、水川だ。
「エンピツ屋敷で暮らしていれば、どうしたって部屋は汚れるし、僕らが逃げた後軍の連中が部屋を見れば、誰がいたかわかりますしね」
「洞窟は真っ暗ですから。居住性は、よくないです。いつも軍の人達は、部屋の方にはやってきません。それに部屋を探そうとしたら、こっちには切り札があります」
笑いながら、恋紋がウィンクした。その後恋紋が先頭に立ち、洞窟へ行く事になる。
そこは一見草むらで、ほら穴があるようには見えなかったが、長い草をかきわけると、黒い天然の出入口が顔を出す。
確かに隠れ家には良さそうだが、長時間滞在したくなるような、居心地の素敵な場所とは言い難い。
「島の北側にはモーターボートが1艘あります。韓国まで行くのは難しいかもしれないけど、すぐ動かせる状態になってます」
恋紋がそう説明する。その後再びそこに来た9人は、エンピツ屋敷の食堂に戻った。
そこで今夜の見張りをするのが兵頭と、ほのかの2人だと発表される。瀬古が舌打ちして、不愉快そうな顔をしていた。
「兵頭さんさあ、何でもかんでもあんたが決めるのって、おかしくねー?」
瀬古が、不服そうにぼやく。
「自分はパルチザンのリーダーから、君達を韓国に逃がすよう命令を受けている。一体何が不満なんだね?」
瀬古は口を開きかけたが結局黙ったままだった。兵頭は、再び言葉を綴りはじめる。
「明日以降のメンバーも、悪いが自分が今国さんと相談して決めさせてもらった。一緒に組む相手が気に入らなければ、後でこっそり教えてくれ。女性と組む男性には負担がかかるのも考えて、早乙女さんとは自分が、高西さんとは今国さんを組ませることにした。姫島恋紋さんは、見張りから外させてもらう。夜中にパルチザン支部からの緊急連絡を受ける時もあるようなので」
自衛官出身というだけでなく、兵頭にはカリスマがある。
瀬古の気持ちもわからないではないが、兵頭にリーダーの資格があるのは事実だった。でも、考えてみれば変な話ではある。
独裁政権に対する怒りから学生運動に加わって、運動のリーダーから『何かあったら鹿児島に逃げろ』と言われ、秘密警察のガサ入れがあったので、最初の指示通り鹿児島に来たのだ。
他の仲間がどうなったかはわからない。集まったのは、初対面の者ばかりだったのだ。
「噂で聞いたが現政権は、新兵器を開発したらしい。どんな兵器か知らないが、いよいよ中国あたりと、事を構える気かもしれない」
兵頭が続けて話す。日本は今もアメリカと同盟国だ。総統は以前から中国や北朝鮮に対して、敵意をむき出しにしていた。
「でも、中国は軍事大国で核兵器もあるでしょう? いくら勇ましい話をしても、日本に戦争はできないでしょう」
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