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四章
本音と建前
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「たかが一人の田舎娘など、どうなってもいいと?」
「そんなことを僕に言われても、なんの意味もありませんよ。人の命は平等だ、と言いたいところですが、現実はそうではないことを、あなたはよく知っているでしょう。
しかし、そのたかが一人の田舎娘が、今や帝国にとって貴重な人物になっていることもまた現実です。
今の時点では、彼女が裁判で、いかに皇帝陛下にとって自分が役に立つかを知らしめる以外に道はないと思います。
正直に言えば、彼女が処刑されるかどうかの可能性は半々です。ですが、マリポーザが帝国にとって役に立つことを証明できれば、殺されることはないでしょう。
僕はなるべく彼女を無傷で連れ戻す。そして彼女を裁判にかけ、そこで潔白を示す方法を考えます。
ここだけの話ですが、僕はアルトゥーロ・デ・ファルネシオ特別参謀とマリポーザのことは嫌いじゃなかった。ですから、できるだけのことはします」
「食えないお人ですな。ですが今は、それに賭けるしかあるまい」
村長が小さく呟く。
「ああ、そうそう。村長さん。それと、僕が内々に話を聞きたい人がいます。その人の家の場所を教えて欲しいのですが」
フェリペがその人物の名を告げると、村長は不思議そうな顔をしつつも、家の場所を答えた。
フェリペが居間のドアを閉めて廊下に出ると、ジョルディが敬礼をして待っていた。
「大尉、俺は感動しました。貴族が村人に頭を下げるなんて、初めて見ました。大尉は意外と漢気があるんだって見直したっす」
「まったく良い迷惑ですよ。上官が頭を下げたら、部下の私たちだって下げなくてはならないでしょう。貴族には貴族の威厳というものがあるんです。もう少し考えて行動をしてほしいですね」
興奮冷めやらぬジョルディの隣では、フェルナンドが苦々しい顔をしている。
「ごめんごめん。なんだか、建前で話しているのが面倒くさくなってしまって」
「大尉、こいつこんなこと言ってますけど、フェルナンドの奴、本当は大尉が謝ったこと喜んでるんすよ。こいつ部屋出たとき笑ってましたもん」
ジョルディはにやにやしながらフェルナンドを指差す。
「そんなことはない。お前の気のせいだ」
フェルナンドは咳払いをした。
「それにしても、いつもだったら適当にその場を切り抜けるのに。一体どうしたって言うんですか?」
「ひどいなあ。素直な僕がそんなに珍しいかい?
僕が自分の家族を大切だと思うように、皆それぞれに大切な人がいるよね。マリポーザのことも、大切に思っている人がたくさんいるってことさ」
「なんですか、それ。当たり前じゃないですか」
「そういう当たり前のことを覚えている人って、どのくらいいるんだろうね」
フェリペはなんとも言えない笑みを浮かべる。フェルナンドは「よくわからない」という顔をして話題を切り替える。
「それで、これからどうするんですか、大尉?」
「村を捜索する。隅々までだ。三人一組の隊を組んでマリポーザの捜索を開始しろ」
ジョルディとフェルナンドが揃って敬礼をした。
「そんなことを僕に言われても、なんの意味もありませんよ。人の命は平等だ、と言いたいところですが、現実はそうではないことを、あなたはよく知っているでしょう。
しかし、そのたかが一人の田舎娘が、今や帝国にとって貴重な人物になっていることもまた現実です。
今の時点では、彼女が裁判で、いかに皇帝陛下にとって自分が役に立つかを知らしめる以外に道はないと思います。
正直に言えば、彼女が処刑されるかどうかの可能性は半々です。ですが、マリポーザが帝国にとって役に立つことを証明できれば、殺されることはないでしょう。
僕はなるべく彼女を無傷で連れ戻す。そして彼女を裁判にかけ、そこで潔白を示す方法を考えます。
ここだけの話ですが、僕はアルトゥーロ・デ・ファルネシオ特別参謀とマリポーザのことは嫌いじゃなかった。ですから、できるだけのことはします」
「食えないお人ですな。ですが今は、それに賭けるしかあるまい」
村長が小さく呟く。
「ああ、そうそう。村長さん。それと、僕が内々に話を聞きたい人がいます。その人の家の場所を教えて欲しいのですが」
フェリペがその人物の名を告げると、村長は不思議そうな顔をしつつも、家の場所を答えた。
フェリペが居間のドアを閉めて廊下に出ると、ジョルディが敬礼をして待っていた。
「大尉、俺は感動しました。貴族が村人に頭を下げるなんて、初めて見ました。大尉は意外と漢気があるんだって見直したっす」
「まったく良い迷惑ですよ。上官が頭を下げたら、部下の私たちだって下げなくてはならないでしょう。貴族には貴族の威厳というものがあるんです。もう少し考えて行動をしてほしいですね」
興奮冷めやらぬジョルディの隣では、フェルナンドが苦々しい顔をしている。
「ごめんごめん。なんだか、建前で話しているのが面倒くさくなってしまって」
「大尉、こいつこんなこと言ってますけど、フェルナンドの奴、本当は大尉が謝ったこと喜んでるんすよ。こいつ部屋出たとき笑ってましたもん」
ジョルディはにやにやしながらフェルナンドを指差す。
「そんなことはない。お前の気のせいだ」
フェルナンドは咳払いをした。
「それにしても、いつもだったら適当にその場を切り抜けるのに。一体どうしたって言うんですか?」
「ひどいなあ。素直な僕がそんなに珍しいかい?
僕が自分の家族を大切だと思うように、皆それぞれに大切な人がいるよね。マリポーザのことも、大切に思っている人がたくさんいるってことさ」
「なんですか、それ。当たり前じゃないですか」
「そういう当たり前のことを覚えている人って、どのくらいいるんだろうね」
フェリペはなんとも言えない笑みを浮かべる。フェルナンドは「よくわからない」という顔をして話題を切り替える。
「それで、これからどうするんですか、大尉?」
「村を捜索する。隅々までだ。三人一組の隊を組んでマリポーザの捜索を開始しろ」
ジョルディとフェルナンドが揃って敬礼をした。
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