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四章
四章① 無法魔術師は寝耳に水
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「起きろ! アテナ!」
翌朝、ほとんど耳許で響いた大音響に僕は文字どおり飛び起きた。
何事かとあたりを見まわすと、ベッドのすぐそばでライラが仁王立ちをしている。
ギョッとしてベッドの上に視線を戻すが、すできそこに鈴音さんの姿はなかった。
どうやら僕が起きる前に早々に自分の家に帰ったらしい。
鈴音さんは本当に猫のような女性で、僕に執着するような姿勢を見せる一方で、満足するとすぐにまたフラッと何処かに消えてしまう。
「いったい朝っぱらからなんなのさ」
ベッドの上で背伸びをしながら、呆れたような目でこちらを見るライラに僕が訊いた。
「もう昼前だが」
む、そんなに寝ていたか。
「それより、大変なことになった」
ライラはベッドの縁に腰を下ろしてくると、そのまま神妙な顔で続ける。
「アレスが自首してきたのだ」
「ええっ!?」
僕は思わず変な声をあげてしまう。
それは確かに大変だ。文字どおり、寝耳に水といったところだ。
「犯行を自供したってこと?」
「ああ。おかげで自治警察署内は大騒ぎだ。まだブンヤどもには嗅ぎつけられていないようだが、時間の問題だろうな……」
まあ、市民学校の教師が殺されただけでなく、その犯人も教師だとなれば、なかなかのスキャンダルではある。
「昼過ぎから取調の予定だが、おまえも同席しろ」
「え、いいの?」
「わたしの協力員として登録してあるからな。念のために手続きをしておいてよかった」
「備えあれば憂いなしだね」
「急いで着替えろ。それと、その寝具は外にでも干しておけ。随分とあの女の匂いが染みついているようだからな」
「うぇ!? き、昨日はそれを上書きするのがいいとか言ってたような……」
「それは体の話だ。いちいちモノにまでかかずらっていられるか。いいから早くしろ」
ピシャリと言われて、僕は渋々とベッドから抜け出した。
わざわざ寝具を干すだなんて面倒くさすぎて気が進まなかったが、着替えを終えた僕が何食わぬ顔で寝室を出ようとしても、ライラはベッドに怨みがましい視線も向けたまま微動だにしなかった。
こんなことで僕が意地になっても仕方がないので表に回って窓から寝具を外に引っ張り出そうとすると、そこから先はライラも手伝ってくれて、そのまま二人で庭先の物干し竿に干しておくことになった。
「まるで夫婦の共同作業のようだな!」
瞳をキラキラさせて言うライラの言葉にはだいぶ物申したい気分だったが、せっかく機嫌をなおしてくれた彼女に水を指すほど僕も愚かではない。
しかし、森を出るときに門番をしていたレイチェルが何を思ったのか僕に謎のウィンクをしてきて(普段は絶対そんなことしないのに!)、またしても機嫌を損ねたライラに僕は公園の周遊コースで何度も何度も後ろから踵を蹴り上げられることになった。
女の子はちょっとくらいヤキモチ妬きなくらいのほうが可愛らしいとは思うものの、この調子でいつか本当に後ろから刺されてしまったらどうしよう。
翌朝、ほとんど耳許で響いた大音響に僕は文字どおり飛び起きた。
何事かとあたりを見まわすと、ベッドのすぐそばでライラが仁王立ちをしている。
ギョッとしてベッドの上に視線を戻すが、すできそこに鈴音さんの姿はなかった。
どうやら僕が起きる前に早々に自分の家に帰ったらしい。
鈴音さんは本当に猫のような女性で、僕に執着するような姿勢を見せる一方で、満足するとすぐにまたフラッと何処かに消えてしまう。
「いったい朝っぱらからなんなのさ」
ベッドの上で背伸びをしながら、呆れたような目でこちらを見るライラに僕が訊いた。
「もう昼前だが」
む、そんなに寝ていたか。
「それより、大変なことになった」
ライラはベッドの縁に腰を下ろしてくると、そのまま神妙な顔で続ける。
「アレスが自首してきたのだ」
「ええっ!?」
僕は思わず変な声をあげてしまう。
それは確かに大変だ。文字どおり、寝耳に水といったところだ。
「犯行を自供したってこと?」
「ああ。おかげで自治警察署内は大騒ぎだ。まだブンヤどもには嗅ぎつけられていないようだが、時間の問題だろうな……」
まあ、市民学校の教師が殺されただけでなく、その犯人も教師だとなれば、なかなかのスキャンダルではある。
「昼過ぎから取調の予定だが、おまえも同席しろ」
「え、いいの?」
「わたしの協力員として登録してあるからな。念のために手続きをしておいてよかった」
「備えあれば憂いなしだね」
「急いで着替えろ。それと、その寝具は外にでも干しておけ。随分とあの女の匂いが染みついているようだからな」
「うぇ!? き、昨日はそれを上書きするのがいいとか言ってたような……」
「それは体の話だ。いちいちモノにまでかかずらっていられるか。いいから早くしろ」
ピシャリと言われて、僕は渋々とベッドから抜け出した。
わざわざ寝具を干すだなんて面倒くさすぎて気が進まなかったが、着替えを終えた僕が何食わぬ顔で寝室を出ようとしても、ライラはベッドに怨みがましい視線も向けたまま微動だにしなかった。
こんなことで僕が意地になっても仕方がないので表に回って窓から寝具を外に引っ張り出そうとすると、そこから先はライラも手伝ってくれて、そのまま二人で庭先の物干し竿に干しておくことになった。
「まるで夫婦の共同作業のようだな!」
瞳をキラキラさせて言うライラの言葉にはだいぶ物申したい気分だったが、せっかく機嫌をなおしてくれた彼女に水を指すほど僕も愚かではない。
しかし、森を出るときに門番をしていたレイチェルが何を思ったのか僕に謎のウィンクをしてきて(普段は絶対そんなことしないのに!)、またしても機嫌を損ねたライラに僕は公園の周遊コースで何度も何度も後ろから踵を蹴り上げられることになった。
女の子はちょっとくらいヤキモチ妬きなくらいのほうが可愛らしいとは思うものの、この調子でいつか本当に後ろから刺されてしまったらどうしよう。
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