空飛ぶパイ

emma29

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投げられたパイ

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 幼稚園の頃、私は七夕の短冊にケーキ屋さんになりたいと書いた。ケーキ屋さんになりたかったわけでも、ケーキが好きなわけでもなかったと思う。周りの女の子の大半がケーキ屋さんかお花屋さんを願い事にしていたから。ケーキ屋さんとお花屋さん、私はどちらかと言うとケーキ屋さんかな。とくに叶えて欲しくもない願いを薄桃色の短冊に乗せた。
小学生の卒業文集では将来の夢を小説家とした。今思えば、当時の私が本当に小説家を目指していたかどうかも甚だ疑問でしかない。読書感想文で何度か入賞した経験があったため、文を書くことに自信があったのだろう。
中学生に入ると部活にのめり込んだ。友達に誘われて入った吹奏楽部は、案外自分に合っていて夢中になれた。夢はなかったが、人並みに楽しめた。
高校では、JKなんてキラキラした言葉はとても似合わない地味な女子高生だった。好きな人も出来ず、数人の親友を作り、可もなく不可もない成績だった。大学は自分の偏差値を元に先生から薦められた大学を受け、難無くその大学に合格した。
そして大学に入り、実家を出て一人暮らしを始めるとますます私の人生は空っぽになった。中学や高校のように友人と深い関係も築けず、バイトに明け暮れた。とあるテレビで「アルバイトをするというのは、親が高い金を出して与えてくれた時間を安く売ってるも同然だ」という言葉を聞いた時は、私は今何をやっているんだろう、という途方も無い喪失感に駆られた。
そして社会人になって・・・ああダメだ、どうやらまだ私の中でひと段落ついていないみたい。落ち着いたらまた話すとしよう。兎にも角にも、私は私の空っぽの人生をこのままにしておかない為に一歩踏み出すことにした。これは私の人生で初めてとも言える大冒険だ。なんて、ちょっと大袈裟かな。私はイヤホンから流れる音楽に耳を傾けて少し目を閉じることにした。
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