ホワイトアフターデー

春山 一貴

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第二話

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 愛奏は、トイレに行くことは一切なく、三階のA組の教室へと向かった。

「山下くんいるー?」

 教室がざわついた。
それもそのはず、ホワイトデーに別のクラスの女子が男子を呼び出したのだから。

「あぁ、いるよー」

 廊下側にいた男子がそう答え、窓側の椅子に座り窓の外を眺めていた山下に声を掛け、愛奏の元へ連れ出した。山下は少し照れながら愛奏の元へ行き、彼の方から話しかけ始めた。

「三島さん、何?」
「あのね、ちょっと聞きたいことがあってさ」

 外野のボルテージが急上昇する。教室の奥の方から野次が聞こえ始めた。

「山下くん、悪いんだけどさここじゃちょっと話せないからついてきてくんない?」
「お、おう」

 野次が飛び交う中、二人は教室を出て、階段の踊り場の前に来たところで愛奏が立ち止まった。

「あのさ、木下舞桜ってわかる?」

「え?何だよ急に、」

「いいから答えて」

「…わかるよ。当たり前だろ?」

「だよね、チョコもらったもんね」

「(ギクッ…!!)なんで三島さんがその話すんの…?」

「舞桜の友達だから」

「はぁ…」

「で、返事はしたの?」

「(ギクッの…!!)え…??」

「返事はしたのかって聞いてんの」

「…してないよ」

「なんでしないの?」

「いや…、だって」

「私が好きなの?」

「ち、違うって…!!」

「あははっ(笑)」

「からかうなよ…」

「ごめんー(笑)」

「…。緊張して言えなかったんだよ…」

「やっぱり。そんなことだろうと思った」

「いやぁ、その…何かごめんな!」

「何であやまんの!二人してっ」

「え??」

「早くしないと、舞桜、山下くんのこと諦めちゃうよ?」

「えぇ!!」

「そういえば…、昨日話したとき、Cに気になる男子がいるとか言ってたような…」

「えっ…」

「そんなに舞桜のこと好きなら早く返事返してあげて!」

「み、三島さん…!!」

「別に今日じゃなくてもいいから。てか、逆に今日にしちゃったら私が仕組んだみたいで嫌だからむしろ明日にして」

「でも、時すでに遅して言葉もあるし…」

「それは心配ない。私が何とかするから」

「三島さん、仕組んでるよ…」

「仕組んでないよ。演出っ」

「ほぼ一緒じゃん…」

 こうして、山下は明日舞桜に告白の返事をすることを決めた。しかし、まだ舞桜はそれを知るよしもなかった。
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