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第三話
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愛奏は山下との話を終えると花摘みを済ませ、舞桜のいる教室へと帰っていった。舞桜は英語の宿題をしながら待っていたらしい。愛奏が教室に戻ってきたのをドアの開く音と同時に気付くと、ノートにアルファベットを綴りながら少し不機嫌に話始めた。
「トイレ遅かったねっ」
「そう?」
「絶対行ってないでしょ」
「舞桜、私は嘘つかないよ。トイレにはちゃんと行ったよ」
「には? 他にもどこか行ってたの?」
「さあね~。舞桜、あんまし詮索しないのっ」
「そっちだってしてきたじゃん…」
「それは、あなたのため。」
訝しそうに愛奏のことを見つめる舞桜に愛奏はひとつ考えが浮かんだ。自分のバッグから魔法瓶を取り出し軽くお茶を口に含んだあと、少し間をあけて話始めた。
「あのね、今日あいつが話に来なかったら、明日話しに行きなよ?」
「催促するの?ダメだよ…」
「なんで?」
「嫌われちゃう…」
「何言ってんの(笑)それで嫌う奴なんていないよ」
「ほんとに…?」
「うん、もしそんな奴なら舞桜は好きにならない方がいいと思うよ?」
「そこまで言わなくてもいいじゃん」
「事実は事実。それにあいつはそんなやつじゃないてしょ?」
「そうだとは思うけど…」
「なんでそんな自信ないの?」
「だって、話したことあんまりないし…私、緊張するとそっけない態度になっちゃうから…」
「ま、それでフラれたらフラれただよ。」
舞桜は手に持っていた赤のボールペンを床に落とす。彼女の頭の中では数秒時間が止まったように感じた。床に落ちたペンを愛奏は黙って手に取り、軽く会釈をして舞桜に渡した。
「どうしよう…」
「うん?何が?」
「フラれたらどうしよう」
「そんなの今考えても仕方ないでしょ(笑)」
「考えちゃうの!」
「じゃあ今行ってきな」
「え!?なんで!」
「そんなに悩むんならさっさと解決させてすっきりしなよ」
「そんな簡単に言わないで…」
「簡単だよ。なるようにしかならないって(笑)」
「愛奏は大人だね…」
「そんなことないよ? 本人じゃないから気が楽なだけっ」
そんな話をしているとき、校内に下校のチャイムが鳴りだした。結局、今日は山下からの返事は聞けずに二人は教室を出る。
校門を出たあたりで、愛奏は少し俯いている舞桜に横から声を掛けた。
「山下のライン、知ってる?」
「知ってるわけないよ…」
「私、知ってるよ」
「え!なんで…!!」
「一年の時同じクラスだったからね」
「私も同じクラスだったよ…」
「そういえば舞桜ってー、去年からずっと山下と目が合う度に固まってたもんね~(笑)そりゃあ連絡先とか交換できる余裕なかったよね~」
「…うん。」
「何落ち込んでんの(笑)」
「落ち込んでないよ…」
「落ち込んでるって(笑)」
「ないよ…」
「…(笑)」
「何笑ってんの…」
「ううん(笑)何でもないよっ。連絡先送ろうか?」
「えぇぇ~!!むりむりむり!!」
「え、むりなの?(笑)」
「いや、だからそういう意味じゃなくて!いやその…何て言うか…、えーっ…と…。」
「単純(笑)あ、私買い物頼まれてるからあっちのスーパー寄ってくね」
「う、うん…」
「明日頑張ってね」
「うん…」
「元気だせよー」
「う、うん…!!」
「んじゃ、後で連絡先送っとくねー、ばいばーい」
「うん…。…ん? ちょっと待って!愛ちゃんちょっとまってー!!」
「やだねー!(笑)ばいばーい!」
その後、舞桜は帰宅した。自分の部屋に入るなりベットの方へ直行し、カバンを置きながらそのままベットに倒れ込んだ。そして深くため息をする。
「どうしよう…。できないよ…もう一回告白なんて」
枕に顔を押し付けていると何度もため息が洩れていった。まるで恥ずかしさと空しさを枕が全て包み込むかのように。
しばらくするとスマホが鳴った。愛奏からのラインだった。唾を飲み、乾いた唇を一度軽く潤しメッセージ開いた。愛奏からのメッセージは一件ら、山下 涼介と書かれた連絡先が送られていた。それを見た舞桜は再び枕に顔を埋める。またしばらくすると再びスマホが鳴った。愛奏からライン。メッセージを開くと、がんばれと一言だけ書いてあった。
その夜、舞桜は彼に連絡をすることは無かったが、友だち追加のボタンはしっかりとタップしていた。そして、その晩、山下のスマホには木下
舞桜と書かれたアカウントが友だちに追加したことを告げる通知が密やかに行き、偶然にも山下はそれを確認していたのだった。
「トイレ遅かったねっ」
「そう?」
「絶対行ってないでしょ」
「舞桜、私は嘘つかないよ。トイレにはちゃんと行ったよ」
「には? 他にもどこか行ってたの?」
「さあね~。舞桜、あんまし詮索しないのっ」
「そっちだってしてきたじゃん…」
「それは、あなたのため。」
訝しそうに愛奏のことを見つめる舞桜に愛奏はひとつ考えが浮かんだ。自分のバッグから魔法瓶を取り出し軽くお茶を口に含んだあと、少し間をあけて話始めた。
「あのね、今日あいつが話に来なかったら、明日話しに行きなよ?」
「催促するの?ダメだよ…」
「なんで?」
「嫌われちゃう…」
「何言ってんの(笑)それで嫌う奴なんていないよ」
「ほんとに…?」
「うん、もしそんな奴なら舞桜は好きにならない方がいいと思うよ?」
「そこまで言わなくてもいいじゃん」
「事実は事実。それにあいつはそんなやつじゃないてしょ?」
「そうだとは思うけど…」
「なんでそんな自信ないの?」
「だって、話したことあんまりないし…私、緊張するとそっけない態度になっちゃうから…」
「ま、それでフラれたらフラれただよ。」
舞桜は手に持っていた赤のボールペンを床に落とす。彼女の頭の中では数秒時間が止まったように感じた。床に落ちたペンを愛奏は黙って手に取り、軽く会釈をして舞桜に渡した。
「どうしよう…」
「うん?何が?」
「フラれたらどうしよう」
「そんなの今考えても仕方ないでしょ(笑)」
「考えちゃうの!」
「じゃあ今行ってきな」
「え!?なんで!」
「そんなに悩むんならさっさと解決させてすっきりしなよ」
「そんな簡単に言わないで…」
「簡単だよ。なるようにしかならないって(笑)」
「愛奏は大人だね…」
「そんなことないよ? 本人じゃないから気が楽なだけっ」
そんな話をしているとき、校内に下校のチャイムが鳴りだした。結局、今日は山下からの返事は聞けずに二人は教室を出る。
校門を出たあたりで、愛奏は少し俯いている舞桜に横から声を掛けた。
「山下のライン、知ってる?」
「知ってるわけないよ…」
「私、知ってるよ」
「え!なんで…!!」
「一年の時同じクラスだったからね」
「私も同じクラスだったよ…」
「そういえば舞桜ってー、去年からずっと山下と目が合う度に固まってたもんね~(笑)そりゃあ連絡先とか交換できる余裕なかったよね~」
「…うん。」
「何落ち込んでんの(笑)」
「落ち込んでないよ…」
「落ち込んでるって(笑)」
「ないよ…」
「…(笑)」
「何笑ってんの…」
「ううん(笑)何でもないよっ。連絡先送ろうか?」
「えぇぇ~!!むりむりむり!!」
「え、むりなの?(笑)」
「いや、だからそういう意味じゃなくて!いやその…何て言うか…、えーっ…と…。」
「単純(笑)あ、私買い物頼まれてるからあっちのスーパー寄ってくね」
「う、うん…」
「明日頑張ってね」
「うん…」
「元気だせよー」
「う、うん…!!」
「んじゃ、後で連絡先送っとくねー、ばいばーい」
「うん…。…ん? ちょっと待って!愛ちゃんちょっとまってー!!」
「やだねー!(笑)ばいばーい!」
その後、舞桜は帰宅した。自分の部屋に入るなりベットの方へ直行し、カバンを置きながらそのままベットに倒れ込んだ。そして深くため息をする。
「どうしよう…。できないよ…もう一回告白なんて」
枕に顔を押し付けていると何度もため息が洩れていった。まるで恥ずかしさと空しさを枕が全て包み込むかのように。
しばらくするとスマホが鳴った。愛奏からのラインだった。唾を飲み、乾いた唇を一度軽く潤しメッセージ開いた。愛奏からのメッセージは一件ら、山下 涼介と書かれた連絡先が送られていた。それを見た舞桜は再び枕に顔を埋める。またしばらくすると再びスマホが鳴った。愛奏からライン。メッセージを開くと、がんばれと一言だけ書いてあった。
その夜、舞桜は彼に連絡をすることは無かったが、友だち追加のボタンはしっかりとタップしていた。そして、その晩、山下のスマホには木下
舞桜と書かれたアカウントが友だちに追加したことを告げる通知が密やかに行き、偶然にも山下はそれを確認していたのだった。
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