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第五章 神威編
135話 〈煌龍〉ハザック・エードラム
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昨日は結局、エヴァの特訓とアラン団長達との情報交換で一日が終わり、また朝がやってきた。今日は三人ともまだ宿に残っており、これから特訓に行くらしい。
「その前にリンリ。テンペスターの使い心地はどうだ?」
食堂で何気なく聞くと、リンリは少し慌てたようにパンを飲み込み、むせかけながら答える。
「あ……すいません、ずっと持っててしまって……」
「いや、それはいいんだよ。何か不備があったら困るなと思って」
「今の所は大丈夫です! 普通の剣よりも炎が乗りやすくて、威力が何倍にも感じられます」
「この前の白虎ノ太刀はすごかったでありんすからね」
「でっかい火柱立ってたよ」
二人の称賛に少し歯がゆそうなリンリだったが、嬉しそうに笑っている。正直、あの森でリヴァやアリスと戦った後、連れ帰ってきたリンリが皆と打ち解けられるか心配だったが、そんな心配も今となってはただの杞憂だった。
「さて、今日はどうするかな……」
「龍騎士団も帰っちゃったんだよね」
「ああ。レオ達がまだ到着してないのも気になるし、一度探しに行った方が良いかもな」
「それならわっちがやりんすよ。目がいいでありんすから! クロト達は引き続き修行しなんし。入れ替わりになっても困るでありんすから」
「お、助かる。じゃあ今日は俺と特訓だな」
「はぁーい」
とりあえずお互いの一日の行動も決まった。シエラとリンリはレオ達を探す為に街の周囲を散策し、俺とエヴァは昨日と同じ場所で新技の練習だ。
「一応昨日、問題点を解決出来るやり方を思いついたんだが……」
「え、すごい。ほんと?」
東門を目指して歩きながら、新技について話す。
「とは言ってもまだ現実離れした話で、上手く行くかどうかは……」
「とりあえずやってみようよ!」
「ああ、そうだな」
昨日の場所まで行き、色々と説明しながら改善を加えていく。最初エヴァからこの技を完成させたいと聞いたときはかなり驚いた。なにせかなり無謀だったから。
だが、エヴァの頑張り次第では可能性も見えてきている。俺も全力でサポートするから、頑張ってくれよな。
◇
「一つ思ったんだが」
「何? レオ」
同時刻、こちらも出発しカサドルまであと半日という距離まで進んでいた。
「お前の魔術、触れた液体を操れるんだよな」
「ええ」
「じゃあ水持ち歩くのはだめなのか? 一々川とか探すより全然戦いやすいだろ」
「……あんた、本能のままに動く獣みたいなやつだと思ってたけど案外頭いいのね」
「でも水って重いよ?持てる?」
「少量の水を操れば……いや、少量じゃ万能とは言えないわね。接近戦とかで武器による攻撃を水で防ぐには少し強度が足りないもの」
「今まではどうしてたんだよ」
「大質量で押し流す」
『脳筋だな』
「あんた達に言われたくないわよ!」
◇
ウェヌス盗賊団アルバレス支部跡地。森の中にそびえる崖に作られた支部は、戦いのあとが生々しく残っており、団長ゼノン・ディリティリトは広場から崖を見上げていた。
「ラファーム・フォルター、お前の仇はオレが取ってやる。安心して眠れやァ」
感情の読めない表情でそれだけを呟き、立ち去ろうとする。そこへ丁度ハザックが空より降り立ち、帰ってきた。
「見つかったか?」
「いえ、もうめぼしい所はカサドル、ケルターメン、クエイターンの三つかと」
「クエイターン、ケルターメンは後回しだな。クエイターンはエレノアのババアが嗅ぎつけて来そうだし、ケルターメンにはアルバレス本陣がある。カサドルへ向かえ、オレも他の奴らと合流してすぐに向かう」
「了解」
◇
「ハァ……ハァ……」
「どうだ? 掴めそうか?」
「なんとか……行けるかも……」
膝に手を付き、息切れしながらもエヴァは確かな手応えを感じたのか良い目をしていた。とはいえ魔力を使いすぎてる。少し休憩した方が良い。
「一旦休憩入れるか」
宿から持ってきた飲み水をエヴァに渡し、街の壁にもたれかかりながら並んで座る。特に言葉を交わすわけでもないが、居心地が良く、気温も心地よくて眠くなる。
この新技の片鱗を垣間見て思ったのは、今まで無意識に守らないとと思っていたエヴァが、俺の邪魔をしまいと強くなっていたって事だ。それも尋常じゃない速度で。
そして思い知らされた。俺のやろうとしている事は命懸けだ。殺されてもおかしくない。だからこそ、俺が生半可な覚悟じゃ駄目だ。エヴァだけじゃない。シエラ、リンリ、レオ、リュウ。皆を巻き込んでる。なんとしてでも魔王を……そして大魔人を倒さないといけない。その覚悟をもっと強く持たないと駄目だ。
「皆を巻き込んでるとか考えてる?」
不意にエヴァが首を傾げながら聞いてくる。ドンピシャで少し驚いた俺を見ながら、エヴァはクスッと笑った。
「何年一緒にいると思ってるの? それぐらいならわかるよ」
へへーンという効果音がなりそうなドヤ顔と共にエヴァが言い放つ。
言葉にはしなくても、エヴァが「巻き込まれてるなんて誰も思ってないよ」と言ってくれているのがわかって、少しだけ安心する。
都合のいい解釈かもしれないけど。
「さ、特訓しよ!」
「ああ」
◇
「レオ達、いないでありんすね」
カサドルを東門から出て、少し離れた森近くまで来たが人影は殆どない。たまに見かける人影も行商人であったり、冒険家であったりで、レオ達ではない。
ここ最近はアルバレス支部が壊滅したこともあり、人通りも多くなってきているそうだ。
「どんなに遅く進んだとしてももう着いていておかしくないでありんす」
「何かに巻き込まれて遅れているのかも……少なくともレオさんが居て最悪の事態になるとは思えません」
「……そうでありんすね。もう少し先まで行って見るでありんす」
「はい」
◇
「コツとか無いの?」
暫く特訓した後、エヴァに聞かれる。取っ掛かりは掴めたみたいだが、その先になかなか進めない。やっている事のレベルは高いし、簡単にうまくは行かない。
「俺のとはかなり原理が違うからな。強いて言うなら魔力の流れをもっと正確に感じる、とかかな?」
「やってみる」
「あんまり無理するなよ」
エヴァの魔力が一点に集中するのを肌で感じる。
もう連続で何度もチャレンジしてるし、魔力もそんなに残ってるわけじゃない。無理し過ぎて倒れなければいいが……
「…………?」
ひたすらに魔力を高めていたエヴァがふと何かに引かれるように顔を上げた。そして首を傾げる。俺も同じ方向を見上げるが特に何も見えない。魔力を高めてると気配を感じ取りやすくはなるが、何かを見つけたのだろうか。
「あっちあっち」
エヴァが指差す方、街の真上らへんを見ると確かに何か居た。丸い、光った物。円盤? シエラが出す結界やイザベラさんの聖域に似てるな。
「なんだあれ?」
「うーん、多分結界術を応用させて空を飛んでるんだね」
「へぇ、シエラも出来るようになれば便利なのにな」
「結界を維持したままそれを動かすのって、努力だけじゃなくて才能が無いと出来ない事らしいよ」
そんな事を話していると、似たような円形の魔法陣がいくつも出てくる。優に十は越えているだろうな。あの円盤の上に居る奴が出してるんだろうか。
「クロト……」
「ん?」
「すごい魔力が集まってる。なんかやば……」
エヴァが言い終わるよりも先に爆発が起きた。街の方から建物が倒壊する音や悲鳴、空には爆煙があがり、俺たちの間を爆風が吹き抜ける。
よく見るとさっき出てきた大量の結界から光が噴出され、街に落ちている。
「な、なにが……」
「とりあえずあの上にいる人」
「ああ、引きずり降ろす」
〈雷術奥義 雷化・天装衣〉
「続けて獄気硬化!」
雷化し、右足を硬質化させて地面を蹴る。右足は地面に沈み、周囲が裂けてへこむ。そのまま上に飛び上がり、円盤の少し上で止まる。
円盤の上に乗っているのは若い男。金髪で落ち着いた目。この男、こんな事をしているのになんて落ち着いてるんだ。いや、それよりも驚く事に俺を目で捉えている。俺がこいつの視界に入ってから一秒経っているか経っていないかのその刹那。既に肉眼で捉えている。
「……フンッ!」
殴り飛ばそうと拳を構えるが、魔方陣から放出された光に巻き込まれて右腕ごと吹き飛ぶ。
右腕の回復は後回しにしてその場で一回転。勢いを付けたところで獄気硬化したままの右足で蹴りを入れる。
「オラァ!」
蹴りが当たる直前、手を交差させて防御されたが勢いまでは殺せず、円盤から斜めに落下。街から見てエヴァがいる場所よりも少し向こうに落ちた。
それと同時に、展開されていた全ての魔法陣も消失し、街への攻撃も止まる。再び雷の特性を活かしてエヴァの近くに着地。それとほぼ同時にエヴァの詠唱が始まる。
〈氷術 武器具現 『天之麻迦古弓』 氷弓龍星群・一点氷結〉
手を叩くと同時に身長以上もある巨大な氷弓が現れ、エヴァの弓構えに対応して矢が番えられる。そして放たれると同時に分裂。何十、何百にも分裂した弓が未だ砂煙に覆われている奴の元へ集結し、巨大な氷塊に変わる。
多少狙いが逸れたとしてもこの氷結からは逃れられないだろう。
「誰だったの?」
「さぁ……? 見たことない顔だった。とにかくこれで街へ被害は出なくなる」
死んではいないだろうが氷の中に閉じ込めればちょっとやそっとじゃ出れないはず……
「……中々のコンビネーション、そして魔術の練度も高い。“私でなかったら”倒されていたかもしれません」
声が聞こえたかと思ったら氷塊が一瞬にして砂のように崩れ去り、中から無傷の男が出てくる。一瞬にして氷塊を消した。そして俺の蹴りやエヴァの攻撃を無傷で受け切った。そしてこの男の目。さっきは落ち着いたように見えたが今は目を合わせたくないと思う程重い。
無意識に勝てないと思わされるほどの圧が目を見るだけでのしかかってくる。
「ク、クロト……」
エヴァが俺の左腕をしっかりと掴む。その手、いや全身が震えている。
俺が今まで戦った中で恐らく一番強い敵はデルダイン。そのデルダインですら感じなかった恐怖をこいつは持っている。
それは単純な強さの優劣だけでは無い。今までの経験やしてきた行い、それら全てがこのプレッシャーを作り出している。
「〈煌龍〉……ハザック……」
無意識に口が動いた。
見た事も、会った事も無い。それでもこの男がそうであると確信出来る。
「その前にリンリ。テンペスターの使い心地はどうだ?」
食堂で何気なく聞くと、リンリは少し慌てたようにパンを飲み込み、むせかけながら答える。
「あ……すいません、ずっと持っててしまって……」
「いや、それはいいんだよ。何か不備があったら困るなと思って」
「今の所は大丈夫です! 普通の剣よりも炎が乗りやすくて、威力が何倍にも感じられます」
「この前の白虎ノ太刀はすごかったでありんすからね」
「でっかい火柱立ってたよ」
二人の称賛に少し歯がゆそうなリンリだったが、嬉しそうに笑っている。正直、あの森でリヴァやアリスと戦った後、連れ帰ってきたリンリが皆と打ち解けられるか心配だったが、そんな心配も今となってはただの杞憂だった。
「さて、今日はどうするかな……」
「龍騎士団も帰っちゃったんだよね」
「ああ。レオ達がまだ到着してないのも気になるし、一度探しに行った方が良いかもな」
「それならわっちがやりんすよ。目がいいでありんすから! クロト達は引き続き修行しなんし。入れ替わりになっても困るでありんすから」
「お、助かる。じゃあ今日は俺と特訓だな」
「はぁーい」
とりあえずお互いの一日の行動も決まった。シエラとリンリはレオ達を探す為に街の周囲を散策し、俺とエヴァは昨日と同じ場所で新技の練習だ。
「一応昨日、問題点を解決出来るやり方を思いついたんだが……」
「え、すごい。ほんと?」
東門を目指して歩きながら、新技について話す。
「とは言ってもまだ現実離れした話で、上手く行くかどうかは……」
「とりあえずやってみようよ!」
「ああ、そうだな」
昨日の場所まで行き、色々と説明しながら改善を加えていく。最初エヴァからこの技を完成させたいと聞いたときはかなり驚いた。なにせかなり無謀だったから。
だが、エヴァの頑張り次第では可能性も見えてきている。俺も全力でサポートするから、頑張ってくれよな。
◇
「一つ思ったんだが」
「何? レオ」
同時刻、こちらも出発しカサドルまであと半日という距離まで進んでいた。
「お前の魔術、触れた液体を操れるんだよな」
「ええ」
「じゃあ水持ち歩くのはだめなのか? 一々川とか探すより全然戦いやすいだろ」
「……あんた、本能のままに動く獣みたいなやつだと思ってたけど案外頭いいのね」
「でも水って重いよ?持てる?」
「少量の水を操れば……いや、少量じゃ万能とは言えないわね。接近戦とかで武器による攻撃を水で防ぐには少し強度が足りないもの」
「今まではどうしてたんだよ」
「大質量で押し流す」
『脳筋だな』
「あんた達に言われたくないわよ!」
◇
ウェヌス盗賊団アルバレス支部跡地。森の中にそびえる崖に作られた支部は、戦いのあとが生々しく残っており、団長ゼノン・ディリティリトは広場から崖を見上げていた。
「ラファーム・フォルター、お前の仇はオレが取ってやる。安心して眠れやァ」
感情の読めない表情でそれだけを呟き、立ち去ろうとする。そこへ丁度ハザックが空より降り立ち、帰ってきた。
「見つかったか?」
「いえ、もうめぼしい所はカサドル、ケルターメン、クエイターンの三つかと」
「クエイターン、ケルターメンは後回しだな。クエイターンはエレノアのババアが嗅ぎつけて来そうだし、ケルターメンにはアルバレス本陣がある。カサドルへ向かえ、オレも他の奴らと合流してすぐに向かう」
「了解」
◇
「ハァ……ハァ……」
「どうだ? 掴めそうか?」
「なんとか……行けるかも……」
膝に手を付き、息切れしながらもエヴァは確かな手応えを感じたのか良い目をしていた。とはいえ魔力を使いすぎてる。少し休憩した方が良い。
「一旦休憩入れるか」
宿から持ってきた飲み水をエヴァに渡し、街の壁にもたれかかりながら並んで座る。特に言葉を交わすわけでもないが、居心地が良く、気温も心地よくて眠くなる。
この新技の片鱗を垣間見て思ったのは、今まで無意識に守らないとと思っていたエヴァが、俺の邪魔をしまいと強くなっていたって事だ。それも尋常じゃない速度で。
そして思い知らされた。俺のやろうとしている事は命懸けだ。殺されてもおかしくない。だからこそ、俺が生半可な覚悟じゃ駄目だ。エヴァだけじゃない。シエラ、リンリ、レオ、リュウ。皆を巻き込んでる。なんとしてでも魔王を……そして大魔人を倒さないといけない。その覚悟をもっと強く持たないと駄目だ。
「皆を巻き込んでるとか考えてる?」
不意にエヴァが首を傾げながら聞いてくる。ドンピシャで少し驚いた俺を見ながら、エヴァはクスッと笑った。
「何年一緒にいると思ってるの? それぐらいならわかるよ」
へへーンという効果音がなりそうなドヤ顔と共にエヴァが言い放つ。
言葉にはしなくても、エヴァが「巻き込まれてるなんて誰も思ってないよ」と言ってくれているのがわかって、少しだけ安心する。
都合のいい解釈かもしれないけど。
「さ、特訓しよ!」
「ああ」
◇
「レオ達、いないでありんすね」
カサドルを東門から出て、少し離れた森近くまで来たが人影は殆どない。たまに見かける人影も行商人であったり、冒険家であったりで、レオ達ではない。
ここ最近はアルバレス支部が壊滅したこともあり、人通りも多くなってきているそうだ。
「どんなに遅く進んだとしてももう着いていておかしくないでありんす」
「何かに巻き込まれて遅れているのかも……少なくともレオさんが居て最悪の事態になるとは思えません」
「……そうでありんすね。もう少し先まで行って見るでありんす」
「はい」
◇
「コツとか無いの?」
暫く特訓した後、エヴァに聞かれる。取っ掛かりは掴めたみたいだが、その先になかなか進めない。やっている事のレベルは高いし、簡単にうまくは行かない。
「俺のとはかなり原理が違うからな。強いて言うなら魔力の流れをもっと正確に感じる、とかかな?」
「やってみる」
「あんまり無理するなよ」
エヴァの魔力が一点に集中するのを肌で感じる。
もう連続で何度もチャレンジしてるし、魔力もそんなに残ってるわけじゃない。無理し過ぎて倒れなければいいが……
「…………?」
ひたすらに魔力を高めていたエヴァがふと何かに引かれるように顔を上げた。そして首を傾げる。俺も同じ方向を見上げるが特に何も見えない。魔力を高めてると気配を感じ取りやすくはなるが、何かを見つけたのだろうか。
「あっちあっち」
エヴァが指差す方、街の真上らへんを見ると確かに何か居た。丸い、光った物。円盤? シエラが出す結界やイザベラさんの聖域に似てるな。
「なんだあれ?」
「うーん、多分結界術を応用させて空を飛んでるんだね」
「へぇ、シエラも出来るようになれば便利なのにな」
「結界を維持したままそれを動かすのって、努力だけじゃなくて才能が無いと出来ない事らしいよ」
そんな事を話していると、似たような円形の魔法陣がいくつも出てくる。優に十は越えているだろうな。あの円盤の上に居る奴が出してるんだろうか。
「クロト……」
「ん?」
「すごい魔力が集まってる。なんかやば……」
エヴァが言い終わるよりも先に爆発が起きた。街の方から建物が倒壊する音や悲鳴、空には爆煙があがり、俺たちの間を爆風が吹き抜ける。
よく見るとさっき出てきた大量の結界から光が噴出され、街に落ちている。
「な、なにが……」
「とりあえずあの上にいる人」
「ああ、引きずり降ろす」
〈雷術奥義 雷化・天装衣〉
「続けて獄気硬化!」
雷化し、右足を硬質化させて地面を蹴る。右足は地面に沈み、周囲が裂けてへこむ。そのまま上に飛び上がり、円盤の少し上で止まる。
円盤の上に乗っているのは若い男。金髪で落ち着いた目。この男、こんな事をしているのになんて落ち着いてるんだ。いや、それよりも驚く事に俺を目で捉えている。俺がこいつの視界に入ってから一秒経っているか経っていないかのその刹那。既に肉眼で捉えている。
「……フンッ!」
殴り飛ばそうと拳を構えるが、魔方陣から放出された光に巻き込まれて右腕ごと吹き飛ぶ。
右腕の回復は後回しにしてその場で一回転。勢いを付けたところで獄気硬化したままの右足で蹴りを入れる。
「オラァ!」
蹴りが当たる直前、手を交差させて防御されたが勢いまでは殺せず、円盤から斜めに落下。街から見てエヴァがいる場所よりも少し向こうに落ちた。
それと同時に、展開されていた全ての魔法陣も消失し、街への攻撃も止まる。再び雷の特性を活かしてエヴァの近くに着地。それとほぼ同時にエヴァの詠唱が始まる。
〈氷術 武器具現 『天之麻迦古弓』 氷弓龍星群・一点氷結〉
手を叩くと同時に身長以上もある巨大な氷弓が現れ、エヴァの弓構えに対応して矢が番えられる。そして放たれると同時に分裂。何十、何百にも分裂した弓が未だ砂煙に覆われている奴の元へ集結し、巨大な氷塊に変わる。
多少狙いが逸れたとしてもこの氷結からは逃れられないだろう。
「誰だったの?」
「さぁ……? 見たことない顔だった。とにかくこれで街へ被害は出なくなる」
死んではいないだろうが氷の中に閉じ込めればちょっとやそっとじゃ出れないはず……
「……中々のコンビネーション、そして魔術の練度も高い。“私でなかったら”倒されていたかもしれません」
声が聞こえたかと思ったら氷塊が一瞬にして砂のように崩れ去り、中から無傷の男が出てくる。一瞬にして氷塊を消した。そして俺の蹴りやエヴァの攻撃を無傷で受け切った。そしてこの男の目。さっきは落ち着いたように見えたが今は目を合わせたくないと思う程重い。
無意識に勝てないと思わされるほどの圧が目を見るだけでのしかかってくる。
「ク、クロト……」
エヴァが俺の左腕をしっかりと掴む。その手、いや全身が震えている。
俺が今まで戦った中で恐らく一番強い敵はデルダイン。そのデルダインですら感じなかった恐怖をこいつは持っている。
それは単純な強さの優劣だけでは無い。今までの経験やしてきた行い、それら全てがこのプレッシャーを作り出している。
「〈煌龍〉……ハザック……」
無意識に口が動いた。
見た事も、会った事も無い。それでもこの男がそうであると確信出来る。
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小説家になろうにも投稿しています。
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