5人の勇者を「500人」と報告したら、魔王様が和平の準備を始めました

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一石二鳥の和平案:勇者の懐柔と後宮の在庫処分を同時に達成せよ

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「……待てよ、ゴルドー。私は今、とてつもなく素晴らしい、救済の光明をつかんだかもしれん」

 ゼノンは、先ほどまで胃を握りつぶさんばかりに押さえていた手を離すと、パッと顔を上げた。その表情は、死刑宣告を免れた囚人のように晴れやかで、同時に、崖っぷちの経営者のように必死だった。

「和平の条件だが、大陸の半分と秘宝だけでは足りない。我がハーレム……あそこに鎮座している百人の美女たちを、勇者軍団に『一括譲渡』するというのはどうだ?」
「へっ? 後宮を、ですか……?」 

 ゴルドーは、信じられないものを見る目で目を白黒させた。 

「しかし王よ、あそこは魔王としての威光、男としての覇道の象徴ではありませんか。世界中から略奪し、献上された絶世の美女たちが揃っている。それを宿敵に明け渡すなど、あまりにも……」
「いいんだよ! というか、むしろ今すぐにでものしをつけて差し上げたいんだ!」 

 ゼノンは玉座から身を乗り出し、ゴルドーの耳元で、掠れた、しかし切実すぎるトーンで囁いた。

「いいか、ゴルドー。知っての通り、我が王妃……あの『歩く天災』様は今、ママ友たち(他大陸の魔王夫人連中)と隣の大陸へ三ヶ月の長期旅行中だ。あの方がいなくなってから、私はこの数百年でようやく、夜に枕を高くして眠れるようになったんだよ。あの方は怖い。本気で怖いんだ。もし旅行から帰ってきて、私が一人でも側室に指一本触れていたことがバレてみろ。この魔王城は跡形もなく消滅し、私の魂は永遠に塵にされるぞ」

 ゴルドーの脳裏に、かつて王妃が放った「浮気調査用の広域探知魔法(物理破壊付き)」によって、魔王軍の軍事演習場が一夜にしてクレーターと化した光景が蘇った。ガタガタと膝が笑い始める。

「で、ですが……ではなぜ、そんな地雷原のようなハーレムを維持してらっしゃるので?」
「見栄だよ、地獄のような見栄だよ! 大魔王様や他大陸の魔王が集まる四半期報告会でな、『側室が一人もいない魔王』なんて言ってみろ。『あいつ、さては家ではカカア天下だな』って、同僚に一生バカにされるんだよ! だから私は、莫大な経費をかけて百人も囲っているフリをしているだけなんだ。実際には一度も、手すら握ったことがないんだぞ……!」

 ゼノンは、もはや魔王としてのプライドをかなぐり捨て、悲痛な叫びを上げた。

「しかもお前、あいつらの維持費がどれだけ我が軍の予算を食いつぶしているか知っているか? 食費だけじゃない。最新の魔道エステ、オーダーメイドのドレス、季節ごとにねだられる宝石……。今や我が支店の……いや、アルカディア大陸軍の運営費を最も圧迫しているのは、あの動かない『超高額な置物』たちなんだ!」
「なんと……そんな切実な裏事情があったとは」
「そこへ来て、今回の『勇者500人』だ。これは千載一遇のチャンスなんだよ、ゴルドー。勇者たちが500人もいるなら、美女一人につき勇者五人でシェア……いや、無理か……とにかく! まとめて引き取ってもらえば、『勇者の懐柔』と『固定費の大幅削減』が同時に達成できる! これぞ魔王軍の構造改革だ!」

 ゼノンは、手元の魔導計算機をパチパチと狂ったように叩きながら、急速に「仕事のできる男」の活気を取り戻していく。

「それに、勇者たちに譲渡してしまえば、王妃が帰ってきた時の言い訳も完璧だ。『いやあ、勇者が500人も攻めてきたから、人身御供として仕方なく、泣く泣く差し出したんだ。私は最後まで反対したんだがね!』ってな。これなら私の身の安全と、家庭の平和も担保される!」
「王よ……。あなたは天才か、あるいは魔界一の卑怯者か、どちらかですな」
「褒め言葉として受け取っておこう。よし、すぐに娘たちも呼べ。彼女たちには『お前たちは勇者500人のリーダー格を骨抜きにするという、国家の命運を賭けたハニートラップ要員だ』と説得するんだ!」

 ゼノンは、先ほどまでの焦燥感が嘘のように、生き生きと「後宮解体及び在庫処分プラン」を練り始めた。

「勇者500人……。ふふふ、意外といいニュースだったのかもしれないな。あいつらさえいれば、私はこの忌々しい『見栄の塊』から解放されるんだ。……おい、ゴルドー。さっそく招待状……いや、和解提案書を書くぞ。 『当方、美女百名と王女三名、および大陸の五割(交渉の余地あり)を用意して、皆様の御来城を心よりお待ちしております』とな!」
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