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エピローグ
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「……けい、ご……」
目が覚めると、見知らぬ天井があった。
ピ、ピ、ピと規則的な音がしていて、消毒液のようななんとも言えないにおいが漂う。
体は金縛りのように動かず、気怠さが支配しているようだった。
「愛花」
少し経ってはっきりとしてきた視界に映ったのは夫だった。
「恵吾」
夫の名前を呼ぶと、恵吾は眉間にしわを寄せて、声にならない震えた声で、よかったって呟いたような気がした。
「今、先生呼ぶから」
そういうと、そばにあったナースコールに手を伸ばす。
それから間もなくして医師がやってきて少し話をして、検査を受けて、異常が見つからなければ退院という運びになった。
医師と夫の話を総合すると、どうやら私は娘たちを幼稚園に送った帰り道に車に轢かれて、それから数か月もの間意識を失っていたらしい。
夢から生還したってことなのだろうか。
それともこっちのほうが夢だったりして?
そんなことを考えながら私は再度目を閉じた。
次に目が覚めたとき、枕元に最近新しく出たゲーム機とソフトが二本置いてあって、そこにはメモが付けられていた。
ソフトは意識を失っていた期間に居たあの乙女ゲームだった。一本は夢に見たそのままのもので、もう一本はそのゲームの続編なのか、2と書かれている。
メモには夫の字で、今まで任せっきりにしてごめん。おまえ、こういうの好きだっただろ?って書いてあった。
改めてゲームソフトを手に取る。パッケージには見覚えがあったが、移植されたのかハードのほうは真新しいものだった。
そのとき手の間をすり抜けて何かが落ちる。どうやらソフトと一緒に積まれていたらしい。視線を落とすと、それはアルバムのようだった。
拾ってめくると、娘たちの写真だった。園内での様子らしく、先生やクラスメイトも一緒に写っている。
そのとき、ふと蘇る光景。
背後で花火の音がして、目の前には水島がいて、彼は愛花からやや視線を逸らしながら何か言っている。
声はかき消されてしまっているのか、ところどころしか聞こえない。
否、はっきりと聞こえてはいた。あのときの私は返事をしたのだから。
そのうえ、嬉しそうに笑う水島の顔も鮮明に脳裏に焼き付いているし、そのあとの顛末だってはっきりと思い出せる。
私は水島くんに告白されてOKした。そして、下の名前で呼んでいいかと聞かれて、それにもOKした。晴れて恋人に昇格した。
けれど、エンドロールはない。だって、あれは、あの瞬間は紛れもなく現実だったのだから。
もう一度、今度はゲームとして彼と出会いたい。告白されたい。
そう思ったら息をするようにソフトをハードにセットしていた。彼を攻略するために。
目が覚めると、見知らぬ天井があった。
ピ、ピ、ピと規則的な音がしていて、消毒液のようななんとも言えないにおいが漂う。
体は金縛りのように動かず、気怠さが支配しているようだった。
「愛花」
少し経ってはっきりとしてきた視界に映ったのは夫だった。
「恵吾」
夫の名前を呼ぶと、恵吾は眉間にしわを寄せて、声にならない震えた声で、よかったって呟いたような気がした。
「今、先生呼ぶから」
そういうと、そばにあったナースコールに手を伸ばす。
それから間もなくして医師がやってきて少し話をして、検査を受けて、異常が見つからなければ退院という運びになった。
医師と夫の話を総合すると、どうやら私は娘たちを幼稚園に送った帰り道に車に轢かれて、それから数か月もの間意識を失っていたらしい。
夢から生還したってことなのだろうか。
それともこっちのほうが夢だったりして?
そんなことを考えながら私は再度目を閉じた。
次に目が覚めたとき、枕元に最近新しく出たゲーム機とソフトが二本置いてあって、そこにはメモが付けられていた。
ソフトは意識を失っていた期間に居たあの乙女ゲームだった。一本は夢に見たそのままのもので、もう一本はそのゲームの続編なのか、2と書かれている。
メモには夫の字で、今まで任せっきりにしてごめん。おまえ、こういうの好きだっただろ?って書いてあった。
改めてゲームソフトを手に取る。パッケージには見覚えがあったが、移植されたのかハードのほうは真新しいものだった。
そのとき手の間をすり抜けて何かが落ちる。どうやらソフトと一緒に積まれていたらしい。視線を落とすと、それはアルバムのようだった。
拾ってめくると、娘たちの写真だった。園内での様子らしく、先生やクラスメイトも一緒に写っている。
そのとき、ふと蘇る光景。
背後で花火の音がして、目の前には水島がいて、彼は愛花からやや視線を逸らしながら何か言っている。
声はかき消されてしまっているのか、ところどころしか聞こえない。
否、はっきりと聞こえてはいた。あのときの私は返事をしたのだから。
そのうえ、嬉しそうに笑う水島の顔も鮮明に脳裏に焼き付いているし、そのあとの顛末だってはっきりと思い出せる。
私は水島くんに告白されてOKした。そして、下の名前で呼んでいいかと聞かれて、それにもOKした。晴れて恋人に昇格した。
けれど、エンドロールはない。だって、あれは、あの瞬間は紛れもなく現実だったのだから。
もう一度、今度はゲームとして彼と出会いたい。告白されたい。
そう思ったら息をするようにソフトをハードにセットしていた。彼を攻略するために。
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読んでいてとても引き込まれました。続き楽しみにしています。
返信遅くなりすみません><
ご感想ありがとうございます。うれしいです!がんばります!