Desertの憂鬱

あきすと

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無自覚

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要の家は2階が住居で、1階部分が
店舗になっている。
駅からも歩けば15分程でたどり着ける。

昔懐かしい商店街の中の一軒。
とても親しみやすい優しい街で育った方が
よく分かる。

要の両親にあいさつをして、2階へと
案内されると。

『……っ、』
急に要は振り返って僕を見て
何か言いたげにしている。
「要?」
まさか、何か気に触る事でもしたかな?

思い当たらない。

けど、何となく伝わるのは
歯痒さとか、そういった物に
間違いなさそうで。
「…あのね、要?言わなきゃ分からないよ。僕はエスパーでも無いんだから。」

要はベッドに座って、クッションを
抱き締めながら僕を見上げる。
反則、反則…それは本気で可愛い過ぎるし
誤解しちゃいそうだから。

『璃端の考える、お付き合いって何?』

「まだ高校生なんだから、よこしまな事は考えてないよ。」
多分、だけどね。
僕もまだ自分の理性にあまり
自信は無い。

『璃端、モデルさんなんだよな?』
「あ、たまーにしてるだけだよ。」
『絶対何も無くても女の子にモテるのに、何で俺なわけ?』

きちんと説明したつもりでも、まだ要は
納得がいってない様子だった。

でも、何で言えばいいんだろう?
恋に落ちたから、とか
それはもう感覚でしか無い。
落雷にも似た衝撃だった。

今までは、多少なりともすごめば
僕に恐怖を感じて目の前から
居なくなる様な人間が多かったから。

こんなにも純粋で、気取らず
偽りの無い人間がとても眩しく見えた。

音楽で繋がったと言うよりかは、
要の異様さに心が動いたんだろう。

掴みきれない性格、ふよふよしてて
時々不安になったりもするけど
僕が護りたいと思える相手。

「要は何は無くとも、僕の特別なんだ。これ以上の表現が見当たらない。…ごめんね?不安にさせちゃってる?」

要の前に屈んで、頬をふにふに触る。
まんざらでもなさそうな猫みたいに
目を細めて、要は口を開く。

『ハグくらいなら、平気かな?って思ったんだけど…やっぱり照れる。』
このクッションさえ無ければ、
すんなりと要を抱きしめられるのに。

「好きだよ。要…でも、ごめんね。もう少しこのままでも良いかな?僕が高校を卒業するまで。」
要はジッと俺を見つめながら
『そんなに我慢できるの?』
なんて聞いてくるものだから。
僕は、試されてる気分。

「大丈夫だよ。でも、早くもっと…要には触れたいのになぁって、思ってるよ。」

『…嬉しい。』

コツン、と額と額を合わせて
くすくすと笑い合う。

この日、やっと僕は要にキスをした。
触れるだけのもの静かなキスでも
要は、本当に嬉しそうに微笑むから。

僕はただ、目の前の幸せを
噛み締めていた。

やっと交際に進めた
要と僕は僕が高校を卒業して
しばらくまで付き合っていた。
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