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高校生だった頃に、要と出会ってから僕の
何となく過ぎていく日々にも、少しずつ色が付き始めた気がした。
年上の好きな人が出来た。
それも、本当に突然の予想外。
しかも、同性。
なのに自分の中ではすんなりと、この事実を受け止めてしまっている事が
不思議だった。
何の葛藤も無く、あの日の夜に現れた要にただ
強い興味と関心が向いている。
うざったい髪の長さ、表情はほんの少し陰りを持っていて
今何を考えてるのかも、分かりにくい。
だからかな、知りたくて。
前髪の奥には、あどけない表情が見え隠れしていて
その一瞬だって、本当は見逃したくないのに。
高校は別々だけれど、同じ駅を利用しているのが分かった時には
本当に嬉しくて。
駅近くの本屋さんで待ち合わせをしたりして
遊びに行く事もあった。
…あ、もちろんデートだよ。
要本人いわく、友達はあまり居ないと聞いてから
ある意味では安心しきっていた。
高校では帰宅部ではあるものの、要は週に3回バイトをしていた。
実家がどうやら商売をしているらしくて、
勉強よりも子供の頃から家の手伝いをする事の方が多かったと言っていた。
で、今目の前に対面となって座っている要が静かに
カフェで、注文した飲み物を味わっている。
眼が細められて、熱かったのかすぐにカップから口を離した。
『ぁっち…!?…はぁ…、びっくりした~』
これで、1つ年上だなんて信じがたい。
少し頼りない笑顔で、要をこちらを見て恥ずかしそうに笑った。
「大丈夫?要…猫舌なんだね、可愛い。」
うっかり思ったままの言葉で返してしまうと、要は言葉を探しながら
俯いてしまう。
本当にこの人物は、あの公園に居た同一人物なのだろうかと
疑いたくなる程に、素の要は適度に力が抜けていて自然体なんだ。
『可愛くてもなぁ、それより…璃端の何飲んでるんだ?』
僕にも、少しずつ興味を持ち始めてくれている
今日この頃、要の顔が、一瞬近くなってドキドキしながら
「これは、エスプレッソマキアートってのかな。」
答えると、視線がかち合う。
『エスプレッソだと、苦いのかぁ。』
「少しね、要は甘い方が好きみたいだね?」
改めて聞かれたのが、気になったのか
『コーヒーなんて、家ではあまり飲まないよ。』
フッ、と視線を外しながら要は答えて。
テーブルの上で頬杖をつく。
「そっか。そうだよね、要の家はお茶屋さんだったっけ。」
『…ん、そう。』
「似合わないなぁ…って思ったけど。この前、要の家にお邪魔した時はやっぱりお茶と和菓子が
出て来て、あまり慣れてないから新鮮だったなぁ。」
『お茶くらい男だとしても、淹れれる様になれ。ってのがウチの親の口癖だからさ。』
「ギャップなのかな?僕、本当に要への興味が尽きない。」
『茶道、華道、書道は問答無用で習わされた。和装の着付けまでだな。最近はかなり解放されたけど。』
要は、スプーンでラテの上に浮いている、少し焦げ目のついたマシュマロをつついている。
無意識だろうけど、顔が笑顔になっている。
きっと、物珍しくて面白いんだろう。
こんなにも、可愛いが渋滞する同性に今まで出会った事が無い。
口元を何気なく見れば、口角が上がっている。
素直な人だなぁ、と思う。
これをデートだと正式に言って、自分から誘った手前
この先の事を考えてしまう。
これは、いつもの学校帰りとは違う。
ちゃんと休日に2人で待ち合わせをして、出掛けて来ているんだから。
手だって繋ぎたいし、出来ればもっと…端的に言えば
2人きりになりたいとさえ思っている。
要は、どう思っているのかはいまだ分からない。
そーっと、両手でカップを持って恐る恐る口をつけている所を見ていると
『この後、何すんの?』
「……へ?」
『だーから、この後どこか行く予定あるのって…聞いてる。』
直球で聞かれると、正直困ってしまい
「僕の家は…すみません。家族がいて」
『俺の家で、また音楽でも聴かないか?もっと、聴いてみて欲しいのいくつもあるんだけど…。
あんまり、押しつけがましいのって迷惑かな~って、我慢してたんだけどさ。』
要が、僕に遠慮をして…我慢してただなんて。
耳を疑いかけたけど、言われてみればここ最近あんまり
音楽の話をしなくなったなぁ。とは、思っていた。
意地らしい。遠慮なく何でも言ってくれればいいのに。
案外、繊細で細かい事にも色々と悩みやすいのかもしれない。
「じゃ、是非…要の家にお邪魔させてもらいたいです。」
『俺の両親、璃端の事色々と聞いて来て面倒くさいんだよ。友達なのか?って…』
あぁ…。何となく、要の言わんとしている事が分かってしまい
苦笑いする。
「言い難いよね…。」
『んー、でも…さすがにまだ、色々と言えはしないけど。』
「一応、お付き合いを前提としたお友達っていう認識で…合ってる?」
首を傾いで要に聞くと、何故かキョロキョロと周りを見た後に
小さくうなずいた。
『俺の、我がままで友達からってのにして貰ったけど。今じゃ俺の方が、多分意識しまくってて
めっちゃ恥ずかしい。』
え、何この可愛い人。
もう、ギャップが酷すぎて頭がおっつかない。
魔性じゃないかな、要って。
これを本当に無意識でやっているって言うなら、本当にすごいと思う。
こんな可愛い人を、好きになるなって言う方が難しい。
何となく過ぎていく日々にも、少しずつ色が付き始めた気がした。
年上の好きな人が出来た。
それも、本当に突然の予想外。
しかも、同性。
なのに自分の中ではすんなりと、この事実を受け止めてしまっている事が
不思議だった。
何の葛藤も無く、あの日の夜に現れた要にただ
強い興味と関心が向いている。
うざったい髪の長さ、表情はほんの少し陰りを持っていて
今何を考えてるのかも、分かりにくい。
だからかな、知りたくて。
前髪の奥には、あどけない表情が見え隠れしていて
その一瞬だって、本当は見逃したくないのに。
高校は別々だけれど、同じ駅を利用しているのが分かった時には
本当に嬉しくて。
駅近くの本屋さんで待ち合わせをしたりして
遊びに行く事もあった。
…あ、もちろんデートだよ。
要本人いわく、友達はあまり居ないと聞いてから
ある意味では安心しきっていた。
高校では帰宅部ではあるものの、要は週に3回バイトをしていた。
実家がどうやら商売をしているらしくて、
勉強よりも子供の頃から家の手伝いをする事の方が多かったと言っていた。
で、今目の前に対面となって座っている要が静かに
カフェで、注文した飲み物を味わっている。
眼が細められて、熱かったのかすぐにカップから口を離した。
『ぁっち…!?…はぁ…、びっくりした~』
これで、1つ年上だなんて信じがたい。
少し頼りない笑顔で、要をこちらを見て恥ずかしそうに笑った。
「大丈夫?要…猫舌なんだね、可愛い。」
うっかり思ったままの言葉で返してしまうと、要は言葉を探しながら
俯いてしまう。
本当にこの人物は、あの公園に居た同一人物なのだろうかと
疑いたくなる程に、素の要は適度に力が抜けていて自然体なんだ。
『可愛くてもなぁ、それより…璃端の何飲んでるんだ?』
僕にも、少しずつ興味を持ち始めてくれている
今日この頃、要の顔が、一瞬近くなってドキドキしながら
「これは、エスプレッソマキアートってのかな。」
答えると、視線がかち合う。
『エスプレッソだと、苦いのかぁ。』
「少しね、要は甘い方が好きみたいだね?」
改めて聞かれたのが、気になったのか
『コーヒーなんて、家ではあまり飲まないよ。』
フッ、と視線を外しながら要は答えて。
テーブルの上で頬杖をつく。
「そっか。そうだよね、要の家はお茶屋さんだったっけ。」
『…ん、そう。』
「似合わないなぁ…って思ったけど。この前、要の家にお邪魔した時はやっぱりお茶と和菓子が
出て来て、あまり慣れてないから新鮮だったなぁ。」
『お茶くらい男だとしても、淹れれる様になれ。ってのがウチの親の口癖だからさ。』
「ギャップなのかな?僕、本当に要への興味が尽きない。」
『茶道、華道、書道は問答無用で習わされた。和装の着付けまでだな。最近はかなり解放されたけど。』
要は、スプーンでラテの上に浮いている、少し焦げ目のついたマシュマロをつついている。
無意識だろうけど、顔が笑顔になっている。
きっと、物珍しくて面白いんだろう。
こんなにも、可愛いが渋滞する同性に今まで出会った事が無い。
口元を何気なく見れば、口角が上がっている。
素直な人だなぁ、と思う。
これをデートだと正式に言って、自分から誘った手前
この先の事を考えてしまう。
これは、いつもの学校帰りとは違う。
ちゃんと休日に2人で待ち合わせをして、出掛けて来ているんだから。
手だって繋ぎたいし、出来ればもっと…端的に言えば
2人きりになりたいとさえ思っている。
要は、どう思っているのかはいまだ分からない。
そーっと、両手でカップを持って恐る恐る口をつけている所を見ていると
『この後、何すんの?』
「……へ?」
『だーから、この後どこか行く予定あるのって…聞いてる。』
直球で聞かれると、正直困ってしまい
「僕の家は…すみません。家族がいて」
『俺の家で、また音楽でも聴かないか?もっと、聴いてみて欲しいのいくつもあるんだけど…。
あんまり、押しつけがましいのって迷惑かな~って、我慢してたんだけどさ。』
要が、僕に遠慮をして…我慢してただなんて。
耳を疑いかけたけど、言われてみればここ最近あんまり
音楽の話をしなくなったなぁ。とは、思っていた。
意地らしい。遠慮なく何でも言ってくれればいいのに。
案外、繊細で細かい事にも色々と悩みやすいのかもしれない。
「じゃ、是非…要の家にお邪魔させてもらいたいです。」
『俺の両親、璃端の事色々と聞いて来て面倒くさいんだよ。友達なのか?って…』
あぁ…。何となく、要の言わんとしている事が分かってしまい
苦笑いする。
「言い難いよね…。」
『んー、でも…さすがにまだ、色々と言えはしないけど。』
「一応、お付き合いを前提としたお友達っていう認識で…合ってる?」
首を傾いで要に聞くと、何故かキョロキョロと周りを見た後に
小さくうなずいた。
『俺の、我がままで友達からってのにして貰ったけど。今じゃ俺の方が、多分意識しまくってて
めっちゃ恥ずかしい。』
え、何この可愛い人。
もう、ギャップが酷すぎて頭がおっつかない。
魔性じゃないかな、要って。
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こんな可愛い人を、好きになるなって言う方が難しい。
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