1 / 2
帰郷して…。
しおりを挟む
一分でも、一秒でも早く家に帰る。
と、言うか朔に早くあいたすぎて、朝からずっと
ソワソワしてて、自分でもどうかしてると思う。
携帯の連絡って、あんまり朔は返してくれないし
しつこくしちゃダメなのは、重々承知で。
やっと、大学生になってから初めての
長い休みが始まる。
嬉しい…。
春の頃は、遠く離れてしまって
朔とこんなに長い期間、会えなかったことが
無いから。
結構、しんどかった。
電車に揺られながら、緩む頬を自覚しつつ
窓の外を見つめていた。
朔は、俺の彼氏なんだけど
地元の大学に進学してしまい
内心、不安しかない。
だって、朔は昔から女の子にめちゃくちゃ
モテるから。
あーーーーー、無理。
思考するだけで、脳内湧きそうです。
今夜、会いたい。
はぁ、彼女とかできてたら
許さないし。
…俺がいても、彼女いたりしたら
そうだなぁ…、控えめに言って
裂くね。
ふふっ、なぁーんてね、
あ。もう、下車しなきゃ。
ホームに降り立ち、ムッとした外の熱気を感じて
改札口へと、人の流れに連れ立って歩く。
ほぼ手ぶらのままで、駅から自宅まで歩く。
親は、働きに出てるから、迎えももちろん来ない。
蝉時雨の中を歩いていると、耳がどうにかなりそう。
家に帰る前に、少しコンビニに
寄ろう、と気軽に入店した。
『いらっしゃいませ』
あーー、涼しい。
最高…、やっぱり少し歩けばコンビニがあるって
便利な世の中すぎるし。
「…あれ?」
今の声、
なぁんか聞き覚えが…
飲料コーナーから、そっとレジをチラ見した。
『……(ニマッ)』
「さぁく…、、」
マジで!?
マジで…?えー、うさんくさい笑顔が最高に
可愛いんですけど。
ヤバイ、テンションがおかしい。
ひゃー、だって!!
あの、朔だよ?
俺の彼氏でもあるけど、女を確実に
とっかえひっかえしてそうな?
彼氏様だよ。
このままじゃ、不審者だから…何か買うもの、
飲み物買っていこう。
ぁー、でも…朔に見られるんだよね、買うもの。
めっちゃ恥ずかしい。
ダメ、恥ずかしい。久しぶりに会うのに。
自意識過剰過ぎて、辛い。
もう、究極…水で良くない?
うん、水にしよう。
冷蔵庫をあけて、水のボトルを1本取る。
『お客様、落とし物ですよ。』
「!?」
耳のすぐそばに、朔の声がした。
朔は、俺の手をとって、
チャリン、と何かを手渡した。
何だろう?
『休憩はいるから、またね。』
にこりと笑って、朔は事務所に消えた。
俺は、放心状態でレジに向かい
馴染みの店長にレジをしてもらった。
外に出れば、もう灼熱地獄。
逃げ水が見える、道の先。
手の中には、鍵があった。
何の鍵だろう?
とりあえず、夜まで待とう。
さすがに、連絡があるだろうし。
「朔、眼鏡しだしたんだなぁ。」
何してても、かっこいい。
黒髪は、まだ染められてなくて
なんとなく、嬉しかった。
家に帰ると、だれもいない。
夕方だから、そろそろ洗濯も取り込んでおいた方がいい。
雨が降りそう。
昼ごはんは食べてきたものの、
夕飯までには、もう少し時間がある。
「寝よう…。」
部屋に戻って、春の頃と変わらない自室の隅で
俺は、夕寝した。
すぐわきには、飲みかけの水のボトル。
エアコンも効き始めて、涼しかった。
♪~♪
んん、何だ?
眠い、頭痛い。
携帯、鳴ってんのか?
手探りで携帯を探す。
「朔から…あぁ!?い、今今今…何時!?」
慌てて、電話に出た。
『央未、おはよう…寝てた?』
「うん!めっちゃ寝てた。ごめん。連絡待ってるつもりで…」
『今、央未の家についたんだけど。』
「鍵、開いてるから上がって。」
『まだ、親御さん帰らないんだな?もう、8時過ぎだぞ…分かった。』
飛び起きて、洗面所に行き髪に櫛を入れたり
歯磨きをしていると
『おーみー、』
横の廊下を、朔が通って行った。
まぁ、勝手に部屋に行くだろう。
「ごめん、朔。」
部屋に戻ると、朔はコンビニの袋を
床に置いて腰を下ろした。
『央未、晩飯食べた?』
「や、寝てたから全然。」
『やっぱり。何いいか迷ったけど…店で色々買って来たから、
一緒に食べよう。』
「…わ~、なんかゴメン。でも、ありがと。嬉しい…」
『ずっと、お前の両親て働き通しで、大変だよな。研究職だっけ?』
「うん、でも子供の頃から慣れてるよ。」
『でもさぁ、寂しいよ…子供だったら。』
朔は、心があたたかで。
押しつけがましくなくて、いつもただ
素直な、正直者。
だから、好きなんだろうな。
「一人暮らししだすとね、もっと…寂しさに慣れるよ。」
『俺は、そんなの…やだな。』
朔が、ほら、とテーブルの上に食べ物や飲み物を並べる。
「俺も、料理はできるんだけどさ…さすがに帰ってすぐは、出来なかった。」
『疲れてる感じ、してたもんな。』
「お腹すいてるけど、今は…朔が先に欲しいんだけど。」
俺の言葉に、朔は静かに笑ってから眼鏡を外し
両手を広げた。
引き込まれるみたいに、俺は朔と抱擁を交わす。
久しぶりの胸の高鳴りが、心地いい。
触れ合うと、何の違和感も無くて、
自然と求めあうのが、当たり前に思える。
朔の鼓動も感じられて、嬉しい。
頬に触れられるのが、ドキドキして
瞳を伏せると、触れるだけのキスをされた。
「…これ以上は、やめとく」
『?あぁ、今は…ね。』
「朔、そういえば鍵?あれは何の鍵?」
『あ、えーと…』
「車のでもないし、家?」
『俺、実はもう家出たんだよ。姉貴が婿養子貰ったから。』
「え、お姉さん?おめでとう!良かった、…あれ?でも、お婿さんて」
『ん、俺は最初から家は継がないって言ってあるし。で、大学にも
進学して、バイトしてるから部屋借りてる。結局は、大学の斡旋になるんだけどな。』
「情報量が凄い…で、あんまり、連絡来なかったのかー」
『央未、しつこいから。連絡以外のどうでもいいやり取り、好きだろ?』
「うん、すき。」
『俺は、そういうのあんまりしないの、知ってるだろ?』
「知ってます。」
『寂しいのは、感じてたけどさ。…ごめん。』
謝るんかい…、じゃあ
「構ってくれたらいいのに…」
『めんどくさい。バイトしだしたのもあるけど。』
「朔は、直が好きだもんね。」
『介して構ってるのは、なーんか苦手。俺は直に話したいし、触りたいからね。』
ほんと、朔は朔でしかなくて安心する。
「まだ、俺の彼氏だよな?」
『…聞くの?』
「女の子に走ってないか、不安で…」
『俺は、俺の言った言葉が全てだけど。』
「俺、男なのにな…って、思うんだよ。」
『俺も、男なのにな~。』
「…あ、そゆ事?」
『お互い様だろ?央未のコト、好きだって言ってた女の子、
俺は知ってる。言い出すと、気にしなきゃいけなくなるから、
止めようぜ。』
朔には、敵わないなぁ。
2人きりになって、
急に黙りこくる空気が
いまだに照れくさい。
俺から話さなければ、
実はそんなにも
朔って、自分からは
話さないから。
「でも、どうして俺に鍵なんて渡すの?」
『いつでも、遊びに来たらいいよ。寂しいって思う機会が減れば…って。』
「いいの?」
『あ、バイトあったりするけど。でも、深夜とかはシフト入れてないから。ずっと、春から離れて暮らしてて…俺も少しは寂しかった。』
…朔が寂しいって言うのは
きっと、俺とは重みが違う
気がした。
俺のは、ただの中身のない
寂しさだけど。
朔の場合だと、重みが違う。
まだ、少しだけ…
朔の心は傷を負っている事を
俺は知っている。
愛おしくて、何とか
ならないかなって思い続けて。
自由が好きで、心は
まっすぐで。
朔はいつだって、偽らない
心のままに生きている。
自分が、朔にふさわしいのかな?
なんて考えもする。
『俺は、こういう沈黙でさえも居心地がいい。央未だから』
「言葉、思い浮かばなくてさ…」
『言葉に頼らなくてもさ、したい様にすれば良いよ。緊張してる?』
だって、朔が眼鏡を外すから。
なんか妙に落ち着かない。
とりあえず、軽く食事を摂った。
朔の食べ方は、結構男らしいと
言うのかな。
潔い食べ方をする。
必ず食事の前と後には
手を合わせる。
そういう所も俺は、昔から
好ましく見てきた。
『今日から、来てみるか?』
「朔の部屋?」
『結構、帰ってるから、部屋にいるのも少ないだろうな。』
「俺は、朔に逢いたくて…とにかく早く帰らなきゃって来たけど。」
『俺に依存し過ぎない方が…央未の為だよ。』
ぅあ、またハッキリ言ってくれる。
「…分かってる。」
『しっかり勉強もしなきゃ。』
「して、る。前よりかはね。」
『付き合ってはいるけど、俺も央未も将来があるから。それだけは忘れちゃダメだよ。』
朔は、無糖紅茶を飲みながら
眼を細めて微笑む。
「…将来なんて、あるの?」
『分からない。央未次第だから。でも、俺はあると思ってるよ。』
「朔、と一緒に居たいだけなのに。」
『うん。俺も…この先も央未と居たいから、だから、大学でも頑張ってるしバイトもし始めた。』
朔って、時々ホントに
同い年かな?と思うほどの
大人っぽい考えを示してくれる。
今はただ、朔からの考えを
受け止めるしかできない
情けない俺だけど。
やっぱり、朔は自由が選べる
様に頑張っている事を
実感した。
「俺も、頑張る…。」
『好きな事が出来るように、今は成長しなきゃって思ったんだ。』
「俺はね、そんな朔がやっぱり好きだし…尊敬してる。」
『央未、そんな不安な顔しないでさ…ほら、抱っこ?』
朔は、どうしてこんなにも
俺の心を揺るがすんだろ。
こんなにも人を好きに
なった事が無かったから
正直、少し怖い。
大学生の朔は、
女の子と遊んでるイメージ
だったのに。
「…うぅ…。朔が遠くに感じる。」
抱きすくめられて、
肩の力がハッキリと抜けた。
『どうして?こんなに一番近くにいるのに…。』
「多分、俺はまだ…朔よりも子供だからだと思う。」
朔はクスクス笑って
俺の髪を撫でた。
『まだまだ、期間はあるからいくらでも、央未も成長できるよ。』
「そういえば、ちょっと聞いた話なんだけど、…この前ライブハウスで歌ったってホント?」
同級生に聞いた話で、
確か時期はGWあたりたったはず。
『歌ったね、急遽頼まれて…』
「急に言われて…スゴイ。さすが、朔、カッコいい。」
『高校の軽音楽部の知り合いから頼まれただけだよ。知ってる曲だったから、良かったケド。』
このパーフェクト彼氏様は
なんと!
歌も…いや、まず
声からして、良いんだよな。
で、歌も上手いし
声が通るってヤツ。
「聞きたいなぁ…」
『そのうちね。』
簡単にかわされてしまう。
朔はあんまりカラオケには
行きたがらない。
俺が高校の頃バイトで
カラオケ屋さんの受け付けを
してた時も、ほとんど
来なかった。
単純に、相手のバイト先に
知り合いとして顔を出すのを
朔は苦手だからだと
笑っていた。
朔は、古風な面もあって
やっぱり気を引かれる。
『で、来るの?来ないの、央未…』
「悩む…」
『部屋は、結構実家からも近いね。あ、そういえばバイクの免許とるんだ、秋に。』
ホント、朔は器用というか
何というか。
「バイクなんて、危なくない?心配のタネ増える…」
『俺は央未を、後ろに乗せたくてさ』
あー、またズルイ!
このパターン。
俺がチョロすぎるのかな?
「御守り買って来る。」
『あははっ、ありがとう。』
「…朔、ホントだよ?どこにも勝手に俺を置いて行かないでよ。」
『行かない…。央未を置いて、俺がどこに行くってんだよ。』
見つめあって、キスをする。
恥ずかしいけど、
伝える事は伝えなきゃ。
不意に腰を両手で掴まれて
「ひゃっ!?」
間抜けな声を上げると
朔が、わずかに首を傾げた。
あーーー、
多分…そういう事なんだろうけど。
さすがに、親が帰って来るのが
いつか分からないし
そんな中で、なだれ込むには
あまりにも、リスキーだった。
「じゃあ…、朔の部屋に行く。」
一応、書置きをしてから
家の戸締りをして
朔と家を後にした。
ひっそりと、手を繋いで
夜道を歩く。
街灯に照らされて
2人分の影が、道路に
伸びていた。
『ジメジメする…』
「うん。空気が、まとわりつく」
『帰ったらシャワー浴びる。央未も使っていいから。』
あ!
どうしよう
「ぱんつ、忘れた…」
『…取りに行く?』
「朔の借りようかな。」
『良いけど、サイズどうだろ?』
「小さいよりか、マシじゃない?」
『ぶはっ、面白い』
馬鹿な話をしながら、
結構歩いた。
20分くらいかな?
「ここ?」
『そう。鍵…鍵、』
朔が一階の部屋の前に行き
ドアの鍵を開けた。
靴を脱いで、朔の後を歩いて
部屋の中に入り
電気がつく。
「ぉーーー、」
『央未、先にシャワー使って。』
「ぇ、でも…」
『良いから、タオルと着替えも準備しておくし。』
言われるままに、うながされて
俺は朔の部屋のシャワーを
借りる事にした。
使い勝手もなかなかよくて
浴槽はそんなに
広くはないものの、
一人暮らしには充分な
設備だった。
「朔、お待たせ…タオルありがとう。」
置いてあった着替えは
朔のTシャツと
ハーフパンツだった。
それと、なぜか靴下。
「これ靴下履くの?」
『あ、エアコン寒いかと思って。』
「大丈夫、それより朔のぱんつやっぱ大きい。少し下がって来る。」
朔が少し屈んで、
『腰細いからなぁ、央未。まぁ、脱げないなら大丈夫大丈夫。』
髪をドライヤーで乾かしてる内に
朔がシャワーを浴びはじめた。
「なんか、修学旅行みたいで楽しい。」
ふふっ、と笑みがこぼれて
ソファの下で、ゆったりしていると
早速睡魔が襲ってきた。
エアコンの冷風が、適度に
熱くなった頭の熱を
さましてくれて
心地いい。
寝そう、ダメ……
『央未、こんな所で寝るな?』
頬に誰かが触ってる。
「朔?」
『寝るなら、歯磨きして寝ないと。』
「俺、寝てた?嘘~」
『スヤスヤ言ってた。ごめん、せっかく気持ち良さそだったのに。』
「んん、良いよ。ね、朔?俺はどこで寝たら良い?」
『あぁ、ベッド使って。俺はソファのベッドあるから。』
「…一緒には寝ないの?」
『せまいでしょ、央未が』
どうだろう、無理かな?
でも、このまま寝ちゃうのは
もったいない気がして。
「一緒に寝たいなぁ」
『うーーーん、』
朔がソファのベッドを組んで
元のベッドの側にくっつけてみた。
「あ、朔考えたね」
『多少、高低差あるけどね。』
いそいそと、ベッドに上がって
寝そべってみる。
「ぁ…朔の匂いがする~」
『そりゃそうだよ、どう?』
「タオルケット…肌触り良くて気持ちいい。朔に抱かれてる感すごい。」
朔も、体をソファベッドに
横たえている。
互いが指先を伸ばして
絡め合う。
「朔…、」
『央未が発情してる?』
「だって、朔が脚絡めて来るから」
『持て余してるからね、長さを』
「ちょっ、と…足の指器用すぎない?どこ入ってんの、もぅ…」
『央未の脚、綺麗…』
朔の手が俺の脚を撫でて来て
悪戯な手のひらは
太腿を這う。
と、言うか朔に早くあいたすぎて、朝からずっと
ソワソワしてて、自分でもどうかしてると思う。
携帯の連絡って、あんまり朔は返してくれないし
しつこくしちゃダメなのは、重々承知で。
やっと、大学生になってから初めての
長い休みが始まる。
嬉しい…。
春の頃は、遠く離れてしまって
朔とこんなに長い期間、会えなかったことが
無いから。
結構、しんどかった。
電車に揺られながら、緩む頬を自覚しつつ
窓の外を見つめていた。
朔は、俺の彼氏なんだけど
地元の大学に進学してしまい
内心、不安しかない。
だって、朔は昔から女の子にめちゃくちゃ
モテるから。
あーーーーー、無理。
思考するだけで、脳内湧きそうです。
今夜、会いたい。
はぁ、彼女とかできてたら
許さないし。
…俺がいても、彼女いたりしたら
そうだなぁ…、控えめに言って
裂くね。
ふふっ、なぁーんてね、
あ。もう、下車しなきゃ。
ホームに降り立ち、ムッとした外の熱気を感じて
改札口へと、人の流れに連れ立って歩く。
ほぼ手ぶらのままで、駅から自宅まで歩く。
親は、働きに出てるから、迎えももちろん来ない。
蝉時雨の中を歩いていると、耳がどうにかなりそう。
家に帰る前に、少しコンビニに
寄ろう、と気軽に入店した。
『いらっしゃいませ』
あーー、涼しい。
最高…、やっぱり少し歩けばコンビニがあるって
便利な世の中すぎるし。
「…あれ?」
今の声、
なぁんか聞き覚えが…
飲料コーナーから、そっとレジをチラ見した。
『……(ニマッ)』
「さぁく…、、」
マジで!?
マジで…?えー、うさんくさい笑顔が最高に
可愛いんですけど。
ヤバイ、テンションがおかしい。
ひゃー、だって!!
あの、朔だよ?
俺の彼氏でもあるけど、女を確実に
とっかえひっかえしてそうな?
彼氏様だよ。
このままじゃ、不審者だから…何か買うもの、
飲み物買っていこう。
ぁー、でも…朔に見られるんだよね、買うもの。
めっちゃ恥ずかしい。
ダメ、恥ずかしい。久しぶりに会うのに。
自意識過剰過ぎて、辛い。
もう、究極…水で良くない?
うん、水にしよう。
冷蔵庫をあけて、水のボトルを1本取る。
『お客様、落とし物ですよ。』
「!?」
耳のすぐそばに、朔の声がした。
朔は、俺の手をとって、
チャリン、と何かを手渡した。
何だろう?
『休憩はいるから、またね。』
にこりと笑って、朔は事務所に消えた。
俺は、放心状態でレジに向かい
馴染みの店長にレジをしてもらった。
外に出れば、もう灼熱地獄。
逃げ水が見える、道の先。
手の中には、鍵があった。
何の鍵だろう?
とりあえず、夜まで待とう。
さすがに、連絡があるだろうし。
「朔、眼鏡しだしたんだなぁ。」
何してても、かっこいい。
黒髪は、まだ染められてなくて
なんとなく、嬉しかった。
家に帰ると、だれもいない。
夕方だから、そろそろ洗濯も取り込んでおいた方がいい。
雨が降りそう。
昼ごはんは食べてきたものの、
夕飯までには、もう少し時間がある。
「寝よう…。」
部屋に戻って、春の頃と変わらない自室の隅で
俺は、夕寝した。
すぐわきには、飲みかけの水のボトル。
エアコンも効き始めて、涼しかった。
♪~♪
んん、何だ?
眠い、頭痛い。
携帯、鳴ってんのか?
手探りで携帯を探す。
「朔から…あぁ!?い、今今今…何時!?」
慌てて、電話に出た。
『央未、おはよう…寝てた?』
「うん!めっちゃ寝てた。ごめん。連絡待ってるつもりで…」
『今、央未の家についたんだけど。』
「鍵、開いてるから上がって。」
『まだ、親御さん帰らないんだな?もう、8時過ぎだぞ…分かった。』
飛び起きて、洗面所に行き髪に櫛を入れたり
歯磨きをしていると
『おーみー、』
横の廊下を、朔が通って行った。
まぁ、勝手に部屋に行くだろう。
「ごめん、朔。」
部屋に戻ると、朔はコンビニの袋を
床に置いて腰を下ろした。
『央未、晩飯食べた?』
「や、寝てたから全然。」
『やっぱり。何いいか迷ったけど…店で色々買って来たから、
一緒に食べよう。』
「…わ~、なんかゴメン。でも、ありがと。嬉しい…」
『ずっと、お前の両親て働き通しで、大変だよな。研究職だっけ?』
「うん、でも子供の頃から慣れてるよ。」
『でもさぁ、寂しいよ…子供だったら。』
朔は、心があたたかで。
押しつけがましくなくて、いつもただ
素直な、正直者。
だから、好きなんだろうな。
「一人暮らししだすとね、もっと…寂しさに慣れるよ。」
『俺は、そんなの…やだな。』
朔が、ほら、とテーブルの上に食べ物や飲み物を並べる。
「俺も、料理はできるんだけどさ…さすがに帰ってすぐは、出来なかった。」
『疲れてる感じ、してたもんな。』
「お腹すいてるけど、今は…朔が先に欲しいんだけど。」
俺の言葉に、朔は静かに笑ってから眼鏡を外し
両手を広げた。
引き込まれるみたいに、俺は朔と抱擁を交わす。
久しぶりの胸の高鳴りが、心地いい。
触れ合うと、何の違和感も無くて、
自然と求めあうのが、当たり前に思える。
朔の鼓動も感じられて、嬉しい。
頬に触れられるのが、ドキドキして
瞳を伏せると、触れるだけのキスをされた。
「…これ以上は、やめとく」
『?あぁ、今は…ね。』
「朔、そういえば鍵?あれは何の鍵?」
『あ、えーと…』
「車のでもないし、家?」
『俺、実はもう家出たんだよ。姉貴が婿養子貰ったから。』
「え、お姉さん?おめでとう!良かった、…あれ?でも、お婿さんて」
『ん、俺は最初から家は継がないって言ってあるし。で、大学にも
進学して、バイトしてるから部屋借りてる。結局は、大学の斡旋になるんだけどな。』
「情報量が凄い…で、あんまり、連絡来なかったのかー」
『央未、しつこいから。連絡以外のどうでもいいやり取り、好きだろ?』
「うん、すき。」
『俺は、そういうのあんまりしないの、知ってるだろ?』
「知ってます。」
『寂しいのは、感じてたけどさ。…ごめん。』
謝るんかい…、じゃあ
「構ってくれたらいいのに…」
『めんどくさい。バイトしだしたのもあるけど。』
「朔は、直が好きだもんね。」
『介して構ってるのは、なーんか苦手。俺は直に話したいし、触りたいからね。』
ほんと、朔は朔でしかなくて安心する。
「まだ、俺の彼氏だよな?」
『…聞くの?』
「女の子に走ってないか、不安で…」
『俺は、俺の言った言葉が全てだけど。』
「俺、男なのにな…って、思うんだよ。」
『俺も、男なのにな~。』
「…あ、そゆ事?」
『お互い様だろ?央未のコト、好きだって言ってた女の子、
俺は知ってる。言い出すと、気にしなきゃいけなくなるから、
止めようぜ。』
朔には、敵わないなぁ。
2人きりになって、
急に黙りこくる空気が
いまだに照れくさい。
俺から話さなければ、
実はそんなにも
朔って、自分からは
話さないから。
「でも、どうして俺に鍵なんて渡すの?」
『いつでも、遊びに来たらいいよ。寂しいって思う機会が減れば…って。』
「いいの?」
『あ、バイトあったりするけど。でも、深夜とかはシフト入れてないから。ずっと、春から離れて暮らしてて…俺も少しは寂しかった。』
…朔が寂しいって言うのは
きっと、俺とは重みが違う
気がした。
俺のは、ただの中身のない
寂しさだけど。
朔の場合だと、重みが違う。
まだ、少しだけ…
朔の心は傷を負っている事を
俺は知っている。
愛おしくて、何とか
ならないかなって思い続けて。
自由が好きで、心は
まっすぐで。
朔はいつだって、偽らない
心のままに生きている。
自分が、朔にふさわしいのかな?
なんて考えもする。
『俺は、こういう沈黙でさえも居心地がいい。央未だから』
「言葉、思い浮かばなくてさ…」
『言葉に頼らなくてもさ、したい様にすれば良いよ。緊張してる?』
だって、朔が眼鏡を外すから。
なんか妙に落ち着かない。
とりあえず、軽く食事を摂った。
朔の食べ方は、結構男らしいと
言うのかな。
潔い食べ方をする。
必ず食事の前と後には
手を合わせる。
そういう所も俺は、昔から
好ましく見てきた。
『今日から、来てみるか?』
「朔の部屋?」
『結構、帰ってるから、部屋にいるのも少ないだろうな。』
「俺は、朔に逢いたくて…とにかく早く帰らなきゃって来たけど。」
『俺に依存し過ぎない方が…央未の為だよ。』
ぅあ、またハッキリ言ってくれる。
「…分かってる。」
『しっかり勉強もしなきゃ。』
「して、る。前よりかはね。」
『付き合ってはいるけど、俺も央未も将来があるから。それだけは忘れちゃダメだよ。』
朔は、無糖紅茶を飲みながら
眼を細めて微笑む。
「…将来なんて、あるの?」
『分からない。央未次第だから。でも、俺はあると思ってるよ。』
「朔、と一緒に居たいだけなのに。」
『うん。俺も…この先も央未と居たいから、だから、大学でも頑張ってるしバイトもし始めた。』
朔って、時々ホントに
同い年かな?と思うほどの
大人っぽい考えを示してくれる。
今はただ、朔からの考えを
受け止めるしかできない
情けない俺だけど。
やっぱり、朔は自由が選べる
様に頑張っている事を
実感した。
「俺も、頑張る…。」
『好きな事が出来るように、今は成長しなきゃって思ったんだ。』
「俺はね、そんな朔がやっぱり好きだし…尊敬してる。」
『央未、そんな不安な顔しないでさ…ほら、抱っこ?』
朔は、どうしてこんなにも
俺の心を揺るがすんだろ。
こんなにも人を好きに
なった事が無かったから
正直、少し怖い。
大学生の朔は、
女の子と遊んでるイメージ
だったのに。
「…うぅ…。朔が遠くに感じる。」
抱きすくめられて、
肩の力がハッキリと抜けた。
『どうして?こんなに一番近くにいるのに…。』
「多分、俺はまだ…朔よりも子供だからだと思う。」
朔はクスクス笑って
俺の髪を撫でた。
『まだまだ、期間はあるからいくらでも、央未も成長できるよ。』
「そういえば、ちょっと聞いた話なんだけど、…この前ライブハウスで歌ったってホント?」
同級生に聞いた話で、
確か時期はGWあたりたったはず。
『歌ったね、急遽頼まれて…』
「急に言われて…スゴイ。さすが、朔、カッコいい。」
『高校の軽音楽部の知り合いから頼まれただけだよ。知ってる曲だったから、良かったケド。』
このパーフェクト彼氏様は
なんと!
歌も…いや、まず
声からして、良いんだよな。
で、歌も上手いし
声が通るってヤツ。
「聞きたいなぁ…」
『そのうちね。』
簡単にかわされてしまう。
朔はあんまりカラオケには
行きたがらない。
俺が高校の頃バイトで
カラオケ屋さんの受け付けを
してた時も、ほとんど
来なかった。
単純に、相手のバイト先に
知り合いとして顔を出すのを
朔は苦手だからだと
笑っていた。
朔は、古風な面もあって
やっぱり気を引かれる。
『で、来るの?来ないの、央未…』
「悩む…」
『部屋は、結構実家からも近いね。あ、そういえばバイクの免許とるんだ、秋に。』
ホント、朔は器用というか
何というか。
「バイクなんて、危なくない?心配のタネ増える…」
『俺は央未を、後ろに乗せたくてさ』
あー、またズルイ!
このパターン。
俺がチョロすぎるのかな?
「御守り買って来る。」
『あははっ、ありがとう。』
「…朔、ホントだよ?どこにも勝手に俺を置いて行かないでよ。」
『行かない…。央未を置いて、俺がどこに行くってんだよ。』
見つめあって、キスをする。
恥ずかしいけど、
伝える事は伝えなきゃ。
不意に腰を両手で掴まれて
「ひゃっ!?」
間抜けな声を上げると
朔が、わずかに首を傾げた。
あーーー、
多分…そういう事なんだろうけど。
さすがに、親が帰って来るのが
いつか分からないし
そんな中で、なだれ込むには
あまりにも、リスキーだった。
「じゃあ…、朔の部屋に行く。」
一応、書置きをしてから
家の戸締りをして
朔と家を後にした。
ひっそりと、手を繋いで
夜道を歩く。
街灯に照らされて
2人分の影が、道路に
伸びていた。
『ジメジメする…』
「うん。空気が、まとわりつく」
『帰ったらシャワー浴びる。央未も使っていいから。』
あ!
どうしよう
「ぱんつ、忘れた…」
『…取りに行く?』
「朔の借りようかな。」
『良いけど、サイズどうだろ?』
「小さいよりか、マシじゃない?」
『ぶはっ、面白い』
馬鹿な話をしながら、
結構歩いた。
20分くらいかな?
「ここ?」
『そう。鍵…鍵、』
朔が一階の部屋の前に行き
ドアの鍵を開けた。
靴を脱いで、朔の後を歩いて
部屋の中に入り
電気がつく。
「ぉーーー、」
『央未、先にシャワー使って。』
「ぇ、でも…」
『良いから、タオルと着替えも準備しておくし。』
言われるままに、うながされて
俺は朔の部屋のシャワーを
借りる事にした。
使い勝手もなかなかよくて
浴槽はそんなに
広くはないものの、
一人暮らしには充分な
設備だった。
「朔、お待たせ…タオルありがとう。」
置いてあった着替えは
朔のTシャツと
ハーフパンツだった。
それと、なぜか靴下。
「これ靴下履くの?」
『あ、エアコン寒いかと思って。』
「大丈夫、それより朔のぱんつやっぱ大きい。少し下がって来る。」
朔が少し屈んで、
『腰細いからなぁ、央未。まぁ、脱げないなら大丈夫大丈夫。』
髪をドライヤーで乾かしてる内に
朔がシャワーを浴びはじめた。
「なんか、修学旅行みたいで楽しい。」
ふふっ、と笑みがこぼれて
ソファの下で、ゆったりしていると
早速睡魔が襲ってきた。
エアコンの冷風が、適度に
熱くなった頭の熱を
さましてくれて
心地いい。
寝そう、ダメ……
『央未、こんな所で寝るな?』
頬に誰かが触ってる。
「朔?」
『寝るなら、歯磨きして寝ないと。』
「俺、寝てた?嘘~」
『スヤスヤ言ってた。ごめん、せっかく気持ち良さそだったのに。』
「んん、良いよ。ね、朔?俺はどこで寝たら良い?」
『あぁ、ベッド使って。俺はソファのベッドあるから。』
「…一緒には寝ないの?」
『せまいでしょ、央未が』
どうだろう、無理かな?
でも、このまま寝ちゃうのは
もったいない気がして。
「一緒に寝たいなぁ」
『うーーーん、』
朔がソファのベッドを組んで
元のベッドの側にくっつけてみた。
「あ、朔考えたね」
『多少、高低差あるけどね。』
いそいそと、ベッドに上がって
寝そべってみる。
「ぁ…朔の匂いがする~」
『そりゃそうだよ、どう?』
「タオルケット…肌触り良くて気持ちいい。朔に抱かれてる感すごい。」
朔も、体をソファベッドに
横たえている。
互いが指先を伸ばして
絡め合う。
「朔…、」
『央未が発情してる?』
「だって、朔が脚絡めて来るから」
『持て余してるからね、長さを』
「ちょっ、と…足の指器用すぎない?どこ入ってんの、もぅ…」
『央未の脚、綺麗…』
朔の手が俺の脚を撫でて来て
悪戯な手のひらは
太腿を這う。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる