【クソ彼氏から離れらんなくて】クソ彼氏と夏休み、同棲中

あきすと

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選ばない自由

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神様は、ずいぶんと不公平に世の中を作ってしまった。

足りないもの、余るほどあるもの。
ちょうどいい、バランスで保たれたものの
少なさよ…。

俺の彼氏様が、天から二物を与えられて
誰に気兼ねすることなく
今日もまたのびのびと暮らしている事が
悩ましい。

お互いの大学の夏季休業が、無駄に長いせいで
朔とのズブズブな甘酸っぱい同棲生活を
楽しんでいた。

とは言え、朔は真面目にコンビニのバイトにも
出かけるし、集中講義なんかにも
出たりしている。
朔は、忙しそうにしている。
ヒマなのは、俺だった。

昼前までに起きて、朔の食事を作ったり掃除したり
洗濯をしてる。
クソ暑い真夏に、同棲なんて始めたのは
多分、頭が沸いていたのかもしれない。
朔と言う、目の前の餌につられて。

いや、でも…まぁ、好きだしな!!
しょうがない。
今更、実家にも帰るのはしんどいし。
親には、友達の家にしばらく、厄介になるとだけ
伝えた。怪訝な顔されて『妊娠させないようにね。』とだけ
言われて、俺は、赤面した。

かすりもしてないけど、なんか恥ずかしった。

今日も、昨日の夜中に朔とズルズル流されて
シたせいで、体がいたい。
寝汗が気持ち悪くて、起き抜けのまま俺は
シャワーに直行した。

熱いシャワーに、息がむせそうになる。
しんどいの極地。

俺は、風呂でなぜかぶっ倒れた。

起き上がれない、体の感覚が鈍い。
すぐに、多分…朔の足音がしていた気がした。
それからの記憶は無かった。


くるくるくるくる、天井が回る。
気持ち悪い。
目を覚ますと、
『央未…、』
大好きな朔の声がした。

今は、瞬きさえも重い。
「俺、風呂…」
『お前、すっころんで風呂に倒れたんだぞ。近所の医院のじぃさん、来てくれて…診てもらった。』

んんんんん、待って
情報が多すぎるし。

「あたま…?」
『あぁ、頭は切れて無かった、ただ少しだけ背中が切れてて、手当てはしてある。』
「…ごめん。」
『今日は、寝てろ。良かった、今日バイトは無いから。』

朔の相変わらず、カッコいい顔が近くにあって
なんか腹立つのに、安心して、涙が出る。

『おっと、あんまり興奮しなさんな。』
ぐすぐす、と泣き始める俺に朔はタオルをよこしてくれた。
「……っ、」
『ほんと、央未は泣き虫だよな。少し疲れたんじゃないか?』
こんな時の朔の声は、静かで優しくて。
根っからのタラシ根性が遺憾なく発揮される。
『俺の事を、世話しようだなんて思わなくていいから。』

「でも、朔のこと…好きだから色々したい」
『お互い、まだ学生だろう?そういうのは負担にならないか』
「だって、俺ヒマなんだもん。」

朔は、俺の頬を撫でて笑っている。
何となく嬉しそうにも見える。おかしな話だ。
『央未は、本当に俺が好きだな。』
「会いたくて、それだけで…一人を耐えた。」
『俺は、きっと央未には…なんにもあげられない。それでも?』
ベッドのタオルケットを、手繰り寄せて
俺は頷いた。
「好きな気持ちに、酔ってなんかもないし。そばに居たいだけ。」

朔が俺の体を、ゆっくりと撫ぜる。
『本当はさ、家に帰れって言いたい。でも、俺も…こんな央未だから放っておけない』
「鍵くれたのは、朔なのに?」
『そうだよ、でも四六時中の為の鍵じゃなくって…さ。遊びに来なよって意味だった』

あ、また始まった。結局のところ
朔は、自分の自由をしばるものには、容赦しない。

そっと、距離を取ろうとしているのが分かる。
決定打が、さっきの俺のケガのせいだと思う。

朔は、優しいから人一倍心配する。
だから、この場合疲れているのはきっと
朔の方なんだろうと思う。

「帰れなんて、言わないで…朔」
『親御さんが心配するよ?』
「言ってある。言って、あるから」
『俺はね、央未が好きだから強制はしない。おままごとは、苦手なんだ。』

おままごと…

「なんで今、そんな事言うんだよ!!あほ!!」
『俺、あんまり我慢効かない性格だから。』
目頭が熱い、朔の事がやっぱりよく分からない。
優しいのか、残酷なのか。
急に俺を、遠ざけようとする事にも胸が痛い。

「好きだけじゃ、ダメ…?」
呼吸も苦しくて、見かねた朔が背中を撫でようとして
ハッとした顔をすると、手を引っ込めた。

『落ち着いて、央未。あんまり興奮すると傷にさわる…』
「もう、もう…嫌だ。出ていく!」
俺は、自分を見失いながら持って来た荷物をかき集めて
部屋からでる。

当たり前のように降り注ぐ日差しに、眩暈を覚えた。
『…そんな体では、外に出ない方がいい。』
冷ややかな朔の声が、背後からした。
「さぁく~……」
『ははっ、央未って面白い』

朔の涼やかな笑い声で、妙に寒気を感じたが
「くらくらした…怖っ」
『まだ、動かない方がいいって。もうしばらくはココに居て。』
「どーせ、俺が邪魔なんだろ?」
『そんな事思ってない。ただ、央未は夏休みなのにさ、俺の世話だけして
過ごしたい?って事だ。』

この、朔と言う人間は極端に自由を奪う事を嫌がる。
たとえ、それが他人相手でもだ。

「…世話とは思わないよ」
『俺が、ね…央未にしてもらう事で、心苦しいの。これは、分かるだろ?』
「ぁ、うん。」
『もっと、さ。自由に居よう央未。離れてるから嫌いとか、近くにいるから好きだとか。
本当に、それだけだなんて思ってないだろ。』

朔は、俺の荷物を手にして居間に戻った。
疑ってるわけじゃない。
でも、圧倒的に自信がない。
ソファに座ると、机の上に朔の眼鏡が置いてあった。
「割れてる…なんで?」
『さっき、飛び起きて、その時に落ちたのを踏んでたみたい。』

よく見ると、朔の脚には絆創膏がチラッと見えた。
「…ごめん。俺が転んだせいで」
『せい、って言うけど、そんな風に思わないで良いよ。俺は、慌てて起きただけ。』
「でも、痛かったんだろ?」

『央未、俺の心の全部を見ようとしなくてもいいから。』
「俺ね、精神的に…多分、朔の事をまるまる食べてしまいたいんだと思う。全部、全部…自分のものにして…」
『お腹、壊すよ…。俺なんかをさ、』

自分の朔に対する想いは、異常かも。
でも、朔が俺をそうさせるんだ。

「俺の想いと、朔のはきっと重ならない。」
『それでいいんだよ、足りないものを埋め合ってるんだし。』

朔の言葉で、昨日の夜の事を思い出した。
足りないものと、余っているものを埋め合わせて
満たし合う関係。

あの行為自体が、まるで朔と俺の答えみたいで
なんだか笑えた。
身もふたもない。

追われるものと、追うものの終わらない追いかけっこ。

「…やっぱり、無理です!好き…、朔!!」
『ありがとう、俺も、央未が好きだよ。面白いし、飽きないもん。』
「やっぱり?」
『うん、顔が好き。俺のタイプの顔だし…脚も綺麗だし』

「俺も、朔のめっちゃ体目当ての、隠さない所好き…」
『ぶはっ、ビッチみたい。結局似た者同士かもな』
「クソ彼氏なのに、離れらんなくて辛い~」
『いいじゃん、央未…ズブズブなの、スキでしょ?』

朔が一笑してから、俺の隣に座って
キスをしてきた。
気持ちよくなる事に、正直で躊躇わないのは
お互いさまで。
途絶えそうな吐息のままで、交わす口付けが
脳まで痺れそうで、また朔の舌と指に溶かされて行く。
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