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数年前の話。
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大学を卒業して、俺が地元に就職が決まり
戻って来ることになったのを
朔に伝えた数年前。
大学の長い休みの時には、同棲ごっこを
してたんだけど。
就職してからは俺も実家に
しばらく暮らしてた。
朔も大学のアパートから、実家に戻って
会社勤めになって。
仕事に慣れるまでは、互いの家を
行き来して高校の頃みたいに
時々お泊まりをさせてもらたり
しながら、交際は続いてたんだ。
『そうそう、ヤる時は困って…で、先に央未が実家出て今のこの部屋に来たんだよな。』
すっかり体調が良くなった朔。
今日は週末という事もあって、
ソファの上で俺の膝枕で横になってる。
「そればっかりじゃないし、あの家はさ…俺が居てもいなくても変わらないの分かってたから。」
両親共に研究者であり、家に帰宅しても
あまり会話もしない。
疎外感とまでは言わないけど、
俺は昔から漠然と寂しさを通り越して
1人でいる事に慣れすぎていた。
『央未の眼は、ずっと寂しそうだったけどな。』
多分この世界で、俺の寂しさに1番に
気が付いたのが…このクソ彼氏、
蓮花寺 朔なんだ。
だから、好きって言うのも変かも
しれないけど。
やっぱり特別でしかない。
俺は少しだけ身じろぎをしながら
間接的に朔の頭の重みを感じつつ
その髪を柔らかに撫でる。
「朔は、人を結構見てるからなぁ…」
『まぁな。央未には、声掛けなきゃいけない気がしてた。なんだっけ?小学生の頃の』
「臨海学校だよね。」
『そうそう、なっつ!』
知り合った時期は、わりと昔だ。
朔は今で言うところの、陽キャだから
俺はほんの少し苦手意識があった。
「チャラチャラしてそうなのにね、朔は案外真面目だからさぁ。」
『真剣さを求めてる相手には、そりゃ合わせるよ。』
やだなぁ、見抜かれてるみたいで
何だか恥ずかしい。
俺は自分のこの人生で、何となく誰かと
結婚して家庭を持てたり…するのかな?と
子供の頃から疑問に思ってた。
自分の育った環境を思えば、あまり
未来に対しては楽観的にもなれなくて。
「俺は、付き合うなら結婚する相手だと思ってたよ。ずっと、ね。」
朔は俺の言葉に、ただニコニコ笑う。
『なら、俺もしたいよ。出来るんだったらな。でも、俺は別にカタチにはこだわらない。』
朔が俺の左手を握って、くすり指を
スッと右手で撫でる。
「契約なんて、いらない?」
『だって、央未は俺でないと無意味なんだし』
そうだよ、ホントよく俺のことを理解
してくれている。
「そだね…、他の人なんて考えられないよ。あ、でも俺には少し心残りと言うか」
『…こども?』
一瞬、ドキッとした。
「…ぁ、うん。そう…やっぱり好きな人の子供がいたらどんな子かな?って考えちゃうかな。」
『央未…、もしかしてこの前の姉貴の子供預かってたのが影響してる?』
どこまでも、図星をさされる。
俺ってそんなに分かりやすいのかな?
「ちょこっとかな、でもホント可愛かったなぁ。元気に育ってくれるってだけで、親御さんはどんなに嬉しいのかなぁって。」
朔からの視線を感じて、俺は視線を向けると
『央未は家族が欲しい?それとも、恋人が欲しい?』
鋭い質問に言葉に詰まりかける。
「そんな、急には答えられないよ。…でも、今は大切な人が居るから、すごく満たされてるのは確かなんだ。」
自分で言ってて、ちょっとだけ気恥ずかしくて
笑ってしまう。
忘れちゃいけない、いつだって朔は
俺のそばに居てくれる。
当たり前じゃない。
『…央未が大切にしたい人かぁ』
「うん、味方でいたいし…守りたい。」
『俺にも大切な人はいる。その中の1人がお前…未来の事までは約束出来ないけど、ずっと一緒なら良いのになぁって思ってる。』
朔は現実的な言葉で、答えてくれた。
恋人と家族では感覚の違いが大きい。
けど、優しさできっと朔は触れなかったんだろう。
「お見合いしたでしょ、朔少し前に」
『あぁ、何故かしてたな。』
「…俺、性格悪いかな。朔が上手くいかなかったのホッとした。」
『俺もだから、別に気にすんなって。』
「ハラハラして家で待ってて、気が気じゃなかったよ。」
『なんつぅか、央未らしいな。』
ゆっくりと朔が体を起こして、俺の上体を
抱き締めてキスをしてきた。
「っ…ん…、」
子供じみたキスの後に、額と額が
コツンと触れ合う。
逃れられない、距離感。
惚れ惚れする顔立ち、男くさくて
でも爽やかさもあって
垂れ目気味の瞳は、すごく優しげなんだから
モテないはずの無い同性。
ちらっとのぞくお腹は、腹筋が割れてるし
腕の筋の張り方も程良くて
朔の事は細かく見だすと
惚気に走りかけてしまう。
「クソ彼氏なのに、カッコいいなんて…」
『そもそも俺はクソ彼氏じゃねーよ』
今更、と朔はおかしそうに笑い
俺の胸部に両手をまわす。
「クソ彼氏だよ…俺の3年間の想いはどうなんだよ、馬鹿っ」
『…俺も、あんなに央未と離れるなんて思ってなかったんだ。被害者ぶるな、央未。』
こう言うところだよ、朔のクソ彼氏の
所以は。
あー、でもいいなぁ。
ハッキリ言われると、俺もぶつけていいのかなって思える。
「何だよ!ホントは、朔だって…寂しかったくせに!」
『思い出しもしないくらい、想ってた。』
え、
朔?
俺はただ、馬鹿みたいに瞬きすら
忘れて目の前の朔の瞳を
見つめていた。
「…さく?」
『言わなきゃわかんないか?央未』
いつものらりくらり、
気まぐれな朔だから。
きっといつか、飽きられて捨てられても
後悔しないで居たい。
俺はそんな風に朔を見ていたんだ。
「言われても、俺ちゃんと理解できるかな?」
朔と俺が見えてるものが、違いすぎる。
『知らない…でも、俺は央未が思ってる以上に……』
これ以上は言わせちゃダメだよね。
そう感じて、俺から朔にキスをした。
抱き締めあってその夜は肌を重ね、
俺が疲れ果てて堕ちるまで
朔は解放してくれなかった。
戻って来ることになったのを
朔に伝えた数年前。
大学の長い休みの時には、同棲ごっこを
してたんだけど。
就職してからは俺も実家に
しばらく暮らしてた。
朔も大学のアパートから、実家に戻って
会社勤めになって。
仕事に慣れるまでは、互いの家を
行き来して高校の頃みたいに
時々お泊まりをさせてもらたり
しながら、交際は続いてたんだ。
『そうそう、ヤる時は困って…で、先に央未が実家出て今のこの部屋に来たんだよな。』
すっかり体調が良くなった朔。
今日は週末という事もあって、
ソファの上で俺の膝枕で横になってる。
「そればっかりじゃないし、あの家はさ…俺が居てもいなくても変わらないの分かってたから。」
両親共に研究者であり、家に帰宅しても
あまり会話もしない。
疎外感とまでは言わないけど、
俺は昔から漠然と寂しさを通り越して
1人でいる事に慣れすぎていた。
『央未の眼は、ずっと寂しそうだったけどな。』
多分この世界で、俺の寂しさに1番に
気が付いたのが…このクソ彼氏、
蓮花寺 朔なんだ。
だから、好きって言うのも変かも
しれないけど。
やっぱり特別でしかない。
俺は少しだけ身じろぎをしながら
間接的に朔の頭の重みを感じつつ
その髪を柔らかに撫でる。
「朔は、人を結構見てるからなぁ…」
『まぁな。央未には、声掛けなきゃいけない気がしてた。なんだっけ?小学生の頃の』
「臨海学校だよね。」
『そうそう、なっつ!』
知り合った時期は、わりと昔だ。
朔は今で言うところの、陽キャだから
俺はほんの少し苦手意識があった。
「チャラチャラしてそうなのにね、朔は案外真面目だからさぁ。」
『真剣さを求めてる相手には、そりゃ合わせるよ。』
やだなぁ、見抜かれてるみたいで
何だか恥ずかしい。
俺は自分のこの人生で、何となく誰かと
結婚して家庭を持てたり…するのかな?と
子供の頃から疑問に思ってた。
自分の育った環境を思えば、あまり
未来に対しては楽観的にもなれなくて。
「俺は、付き合うなら結婚する相手だと思ってたよ。ずっと、ね。」
朔は俺の言葉に、ただニコニコ笑う。
『なら、俺もしたいよ。出来るんだったらな。でも、俺は別にカタチにはこだわらない。』
朔が俺の左手を握って、くすり指を
スッと右手で撫でる。
「契約なんて、いらない?」
『だって、央未は俺でないと無意味なんだし』
そうだよ、ホントよく俺のことを理解
してくれている。
「そだね…、他の人なんて考えられないよ。あ、でも俺には少し心残りと言うか」
『…こども?』
一瞬、ドキッとした。
「…ぁ、うん。そう…やっぱり好きな人の子供がいたらどんな子かな?って考えちゃうかな。」
『央未…、もしかしてこの前の姉貴の子供預かってたのが影響してる?』
どこまでも、図星をさされる。
俺ってそんなに分かりやすいのかな?
「ちょこっとかな、でもホント可愛かったなぁ。元気に育ってくれるってだけで、親御さんはどんなに嬉しいのかなぁって。」
朔からの視線を感じて、俺は視線を向けると
『央未は家族が欲しい?それとも、恋人が欲しい?』
鋭い質問に言葉に詰まりかける。
「そんな、急には答えられないよ。…でも、今は大切な人が居るから、すごく満たされてるのは確かなんだ。」
自分で言ってて、ちょっとだけ気恥ずかしくて
笑ってしまう。
忘れちゃいけない、いつだって朔は
俺のそばに居てくれる。
当たり前じゃない。
『…央未が大切にしたい人かぁ』
「うん、味方でいたいし…守りたい。」
『俺にも大切な人はいる。その中の1人がお前…未来の事までは約束出来ないけど、ずっと一緒なら良いのになぁって思ってる。』
朔は現実的な言葉で、答えてくれた。
恋人と家族では感覚の違いが大きい。
けど、優しさできっと朔は触れなかったんだろう。
「お見合いしたでしょ、朔少し前に」
『あぁ、何故かしてたな。』
「…俺、性格悪いかな。朔が上手くいかなかったのホッとした。」
『俺もだから、別に気にすんなって。』
「ハラハラして家で待ってて、気が気じゃなかったよ。」
『なんつぅか、央未らしいな。』
ゆっくりと朔が体を起こして、俺の上体を
抱き締めてキスをしてきた。
「っ…ん…、」
子供じみたキスの後に、額と額が
コツンと触れ合う。
逃れられない、距離感。
惚れ惚れする顔立ち、男くさくて
でも爽やかさもあって
垂れ目気味の瞳は、すごく優しげなんだから
モテないはずの無い同性。
ちらっとのぞくお腹は、腹筋が割れてるし
腕の筋の張り方も程良くて
朔の事は細かく見だすと
惚気に走りかけてしまう。
「クソ彼氏なのに、カッコいいなんて…」
『そもそも俺はクソ彼氏じゃねーよ』
今更、と朔はおかしそうに笑い
俺の胸部に両手をまわす。
「クソ彼氏だよ…俺の3年間の想いはどうなんだよ、馬鹿っ」
『…俺も、あんなに央未と離れるなんて思ってなかったんだ。被害者ぶるな、央未。』
こう言うところだよ、朔のクソ彼氏の
所以は。
あー、でもいいなぁ。
ハッキリ言われると、俺もぶつけていいのかなって思える。
「何だよ!ホントは、朔だって…寂しかったくせに!」
『思い出しもしないくらい、想ってた。』
え、
朔?
俺はただ、馬鹿みたいに瞬きすら
忘れて目の前の朔の瞳を
見つめていた。
「…さく?」
『言わなきゃわかんないか?央未』
いつものらりくらり、
気まぐれな朔だから。
きっといつか、飽きられて捨てられても
後悔しないで居たい。
俺はそんな風に朔を見ていたんだ。
「言われても、俺ちゃんと理解できるかな?」
朔と俺が見えてるものが、違いすぎる。
『知らない…でも、俺は央未が思ってる以上に……』
これ以上は言わせちゃダメだよね。
そう感じて、俺から朔にキスをした。
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