きみとは友達にさへなれない(統合)

あきすと

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⑪離

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彼が帰国してから、既に1週間は経過していた。

あの日自分の部屋で言われた言葉が、いまだに心の中で
納得の行くように解釈できずに困っていた。

大学の履修登録期間が終わり、後期日程のスケジュールを確認した。
学内にあるタブレットから、情報は簡単に得られるし
受けられなかった講義のアーカイブまで用意されていて
便利さをひしひしと感じている。

1回生と2回生の内に単位を稼いで、とはよく言うけれど。
違う学部の講義にもいくらか気になる講義があるのを知ってしまうと
好奇心で、受講してみたくなる。

1日最大5コマまで講義は埋められる。
一番遅い講義は夕方の6時前に終わる。

夏が過ぎて、随分と日暮れのタイミングが早くなった。
これからは、徐々に寒い季節へと移り変わっていく。

「久し振りに、行ってみよっかな…」

週末の三連休を使って、俺は久し振りに両親の暮らす
祖父の生家に行こうと決めた。

とにかく頭の中を空っぽにして、何も考えなくて済む時間と
空間を求めていたのかもしれない。

幸いにして、両親はあっけらかんとした
穏やかな性格ではある為、時々電話で話しても
俺に関する事は『元気であればそれで良い』くらいしか言わない。

祖父に、帰宅してからその旨を伝えた。
フェリーでの予約をして、数日後に備えて荷造りを始める。
普段はあまり使わない、高校生の頃に使用していた大き目の
リュックサックに着替えやタオルなどをパッキングして
詰めていく。

今は、誰かの事で頭をいっぱいにする事は厳しかった。
祖父には言えずじまいになっている事も、忘れたくて
やる事が目の前にあれば、何とかなると思っていた。

急な里帰りみたいになるから、祖父は不信がってはいたけれど
もう両親とは何年も会っていない。
単純に、色々と話をしたい気持ちも募っていた頃だから。と
告げると何も言い返しては来なかった。

普段の生活に追われ、旅行と言う旅行は学校の行事以外で
ほとんで行った事も無かった。
なので、祖父は心配そうにしていたけれど。

俺も、もう成人している。
そろそろゆっくりと立身しても良いのだと自分に言い聞かせる。

翌日は、お昼の空き時間に部室を訪ねてみた。
鍵は。開いている。
そっと、ドアを押し開くと机に突っ伏す誰かの頭が最初に目に飛び込んで来た。

向井先輩だ。

部室の鍵の管理をほとんどしているのは、向井先輩だから
空き時間には、わざわざ開けに来てくれたり。
部屋の窓を開けて、空気を入れ替えたりと
案外マメに動いてくれている。

パイプ椅子が軋んで、
『千代くん~?』
「はい。」
『俺、もう駄目かも…。』
ふわふわの髪が、乱れていて何となく幼げに映る向井先輩。

「……どうしたんですか?」
『遠江さんに、嫌われたかも。』
「はぁ、何でまた」
向井先輩の隣に座って、トートバッグを机の上に置いた。

『よく分からないけど…もうココには来ないかもしれない。遠江さん、ああ見えて
結構刹那的な人だから。何するか分からない。』

言われてみれば、思い返すだけでも謎な行動が多い気もした。
「衝動的なんですかね。」
『本人は、そんなつもりも無いんだろうけど。』
「こう言っちゃ何ですけど…厄介な雰囲気は感じます。」
『破滅、だよ。』

向井先輩は、知り得る彼の事をこれでもかと言う程に話してくれた(主に恋愛絡みで)

「凄まじいですね。」
『想われる事の方が圧倒的に多くて、相手が病んでしまったりストーカー化しかけたりってのは
聞いた事がある。でも、遠江さんは最初から誰にも応じた事が無い。』
「なんで、俺にそんな話を?」

場が凍り付いた気がした。
ひとしきり向井先輩が笑ってから
『そんなの、遠江さんが珍しく人間に執着してるからに決まってる。』
「人間に?」
『千代くん、の事だけど。自覚無いの?』
深いため息に変わる。

「アレですよね。因縁。」
『なに、その色気のないやつ…』
「俺からすれば、さっぱり訳が分からないし。ウチの常連だったとか言ってましたけれど。
俺は、あんまり記憶には残ってないんです。居たかなぁ、程度の記憶で。」

『そんな事、絶対に遠江さんの前で言うなよ?』
似た様な事を、少し前にも明子伯母さんに言われた。
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