オッサンと、鬼神(後に嫁)

あきすと

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朝ぼらけの月。

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美祢、男性編です。美祢が男性の時期は
だいたい幕末期程になっています。


この頃の美祢は、葵(全てにおける糸引き役)の元で
ほぼ手駒の様になっており、いい様に使われていたりします。
美祢本人は、全ては国を思い、葵の指示を聞いています。
それを、面白く思わないのが、葵とは同じ組織に
いながらも、色に染まり切れない安芸。

まだ、未来ある美祢がいつか、捨て駒にされてしまうのではないかと
危惧している所です。

ちなみに、白島とは、安芸の苗字でもあります。

柳部は、美祢の世話をしたりする得体のしれない中年です。

終盤で、現代が混じるので美祢が女性として出てきますのでご注意ください。







葉月

暑さの盛り。

背筋も凍る…
そんな話が、市中に
広まっていた。

「出るらしいぜ……夜中に、ここいらの橋あたりで、出くわしたって奴の話を聞いたんだよ。」


ごくっ………


無意識に息をのむ。

「なぁ、美祢。お前は泣く子も黙る遊撃剣士だろ?今晩あたり噂の真相を確かめに行ってくれよ。」


!?

『俺が…?何でだよ…柳部さんが行ったらどうですか。俺は、幽霊なんか信じてませんから。』


夕暮れ時、
一雨きそうな中、
部屋で何をするでもなく、佇んでいたら…

静かな時間は、お預け。
その上…怪談話。

はた迷惑としか言い様がない。

「噂では、市中一美しい娘が、身分違いの戀に落ちて、案の定‥想い人と心中したらしい。赤縄で、互いの足を縛り付け…そのまま川にな。」心中‥‥‥

戀に身も心も捧げて…逝ってしまうなんて。

言葉が詰まる。


死ぬなんて…
恐くないのか?

死んだら終い。

未来がなくなる。
愛する人の温もりさえ…愛しい声さえ聞こえない。

暗く、深い闇に…
落ちていくのに。


『ほら、心中なんかするから…成仏できなくてさ迷ってるんだ。』

「違い無い…女の情念は、恐ろしいもんだからな。」

カラカラと笑って、柳部さんは俺の部屋を出ていった。

「お…白島さん!お久しぶりです。美祢なら、居ますよ。」

「久しいな‥。あぁ、分かった。すまない。」

階段ですれ違ったらしく、安芸と柳部さんが挨拶を交わしている。 

ピリリとした、心地好い安芸の気が、近づく。煙草を燻らせて、据わった眼で…いつもみたいに襖が開いた。

『‥おかえりなさい。』
「家は、ここじゃないだろ。何だ、暇そうだな?」

ツカツカと部屋に入って来て、畳の上で胡座をひとつかく。
その左に、脇差しが置かれた。


『今、怪談話聞かされたとこ。』

ふぅっ、と煙を吐いて安芸が眼を細めた。


「餓鬼だな。」

『そうかな、こう暑いんじゃあ少しくらい涼しくなるような事も考えるよ。安芸の方は、何?偵察?』






お茶を淹れに階下に行き、部屋に戻る。

『……………!』

「どうした?溢したのか…」
『いや…違う。』

ふっ、と襖を開けると微かな安芸の匂いを感じて…なんだか胸が騒ぐ。

二人でいると、俺にも少しくらいはこの香りが移ったりしているんだろうか…
「‥は、変な奴。」

『喧しい。』

余り飲まないのを分かってて、安芸の前にお茶を出す。
「いつまで、戌でいるつもりだ。さっさと引退しろ、若いんだから違う道があるだろ…?」

そう、安芸は唯一俺が剣士であることをよく思わない人物だ。

『全てが新しく動き始めるまでは…やめない。』

「人を斬りすぎだから言うんじゃない。…いずれ、お前はお前がしてきた所業によって苦しむ事になるぞ。」

吸いかけの煙草で、指され…視線を外した。

『それでもいい…新時代が確実に訪れるその日まで、俺は、剣を捨てない。』

その言葉に安芸は、不敵な笑みを浮かべた。


あぁ、
もう後戻りなんか…
はなっから出来ないことくらい分かってた。
「新時代が…皆が皆喜ばしい時代かどうかなんてのは、その時にならないと判らない。」

安芸は、相変わらず一定の温度で俺を何とか説得しようと試みてる。

心には…響いてる。
ちゃんと、
届いてる。

だから、こそ
今は、安芸に根負けできない。

『俺には、俺の役目がある…それを捨てろって言うのか?』

「最後に…お前が捨てられる。これは、脅しでも何でもない。俺にお前を無くさせないでくれ。」

寂しそうで、でもどこか温もりのある…初めて見る安芸の表情に、心が揺れる。
想い合ってるんだと、実感が沸き上がる。

『そんな…大袈裟だ。』
「俺も、あまり目立つ動きは出来ないだけに…心配なんだよ。葵には…特に気を付けろ。逆らえない存在だって思ってるみたいだが、己の命は自分で守れ、そこまで今の俺には、手がまわらん。気を許すのは、俺だけにしておくんだな。」
『‥安芸の心配は、分かった。けど、俺は、この國のためなら命を落としても構わない。それくらいの覚悟だから。』

出会ってから今まで、思えばいつも安芸のは俺を気にかけてくれていた。

何度も、違う道を…と言われ。
その説得の数だけ、俺は、首を横に振ってきた。


安芸、もし…来世があるとしたら。

俺は、もっと安芸に近づけるような人間として生まれたい。

こんな、修羅みたいな自分じゃなくて。

できれば、平和な世の中で…同じような感覚で一緒にいたい。

無い物ねだりだけど…
安芸が、ちゃんとしている分…俺も、それに見合うようになりたい。


「なんだ、やっすい命だな…そんな最後迎えたら美祢は成仏できないだろな。」『全ては、この國のため…』

どうかしてる。

けど、葵様の命に背くわけには行かない。


安芸の言葉も、頷ける。
が、葵様のお役に立ちたい。

「立派過ぎて…俺には、到底理解出来ない。」


『じゃあ…一つだけお願いしてみていいか?』

不思議そうに安芸が眼をみはる。

『できれば…最期は…安芸に看取られたいな。』

「          」









美祢、美祢。

最期のお願い、
聞いてやれなくて…

すまない。


辛い思いをさせてしまった。

そう思って、駆け付けた俺を待っていた美祢は‥
もう、以前の美祢とは言いづらく、刀も全く振るうことが無くなり…

俺は、美祢を預かることにした。最近ようやく見慣れてきた、女の着物に櫛、草履。

そして、白い肌に淡く赤色が差す、柔らかな曲線の頬。

人形みたいに、綺麗なんだ。

生まれ変わった美祢は、愛らしくいつも優しい微笑みをたたえていた。

『これからは…安芸と一緒なんでしょ?』

不意にそう聞かれて、頷きも出来なかったが…
それは、確かだと良いという願いを込めた眼で、美祢を見つめ返した。


「俺が、養う。ただ、近々配属が変更するらしいから…落ち着くまでは、あまり構ってやれないが…」

『え……っ、そっか、そうだよね…時代変わっちゃったから。うん、寂しくない…だって、これからは一緒にいられるんだから。』



「警察とは…また動きづらい職業だな。」
『いいなぁ、警察…安芸にぴったりだよ。あ、俺の事逮捕しないの?いっぱい人を殺めてきた。』

「?あぁ、あいつはもう…この世には居ないから。逮捕もできない。例え生きてても、俺は、逮捕しないけどな。」


クスッと笑って、
安芸の笑顔につられる。


安芸、
安芸は、言葉のままに

運命の人なんだね。


ずっと昔から、不思議な縁で結ばれてる。
今、やっと…叶う想いがある。

安芸と

これからも………。








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