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若波視点(数日後)

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家に帰ると、推しのアイドルがいる。
夢のような話だと思う。
『お帰り、若波!待ってたよ~』
可愛い顔して、37歳のオッサンの俺に
抱きついて来る。

やたら、ふわふわした匂いを漂わせて
腕の中に収まる。

説明がしんどいから、省くけど
俺の恋人である事には
違いないらしく、
ただ、少し違う世界線とやらから
来たらしい。

しかも未来に飛ばされたと言うから
最初ちょっと、疑いかけたが
俺の事をホントによく理解していたし
何より、昔一度だけ会った事はある。
俺が選ばなかった過去から
やって来たなんて。

未来の姿を俺は既に知っている。
長年、お前をひたすら
推して暮らして来たんだ。
タイムパラドクスとか言ってくれるな。

今はただ、21歳の推しの姿に
毎日癒されている。
抱き締めて、キスをして愛を確かめ
合うまで時間はかからなかった。

「ただいま。いすか。そうだ、今夜は花火が上がるらしいから、一緒に観よう。」
真夏の夜、エアコンのよく効いた部屋で
俺といすかは、窓から外に打ち上げられる
花火を見ていた。

いすかは、夏仕様のパジャマの上だけを
着ていて下は、下着だけを身に付けている。
『外、出られないもんね』
「あぁ、まだ外気温は高いからな。部屋の中で我慢してくれ。」

さほど興味も無かったのか、ベッドに
戻って来たいすかを抱きすくめる。
「元の世界に、帰りたいか?」
叶わぬ願いになる。

俺の下肢にまたがって、ゆっくりと視線を合わせた。
『同じ世界には、帰れないの…それくらいは分かるよ。』

いすかを、かくまいながら
夜な夜ないかがわしい行為に溺れてく。

俺を知ってる、元の世界でも
若い頃の俺とこんな風に
寝ていたんだと思うと、心がざわめく。

好きにして良いような気さえして、
自制心を無くしそうになる。

「いすか、これは浮気にはならないのか?」
意地悪な質問ではある。
あどけなく、目を細めて笑う。
答えは、キスで返されて
よく見れば、瞳の奥は濡れている。

帰れないいすかは、どうやって
不安から逃れているのかを
俺が一番知っているってのに。

はだけた胸を、この手のひらが覆って
腹部にかけて滑らせていく。
目の前で揺らぎ、反り始める背中
少し浮き出るあばらが、部屋の
薄暗がりでも見える。

ぷっくりと起きた胸の突起には
触れずに、鎖骨に唇を寄せた。
『んン…っ、』
焦れながら、熱い吐息を混じらせて
『なん…っで…?』
もどかしげに俺を見つめる。

簡単に手に入るものには、人はいずれ
飽きてしまう。
いすかが、この先もここにいる事を
仮定すると、少しばかり意地悪なやり方
だけれど。

「…時間を掛けたい」
『準備、してきたのに……』
顔に似合わず、いすかはこの事に関しては
わりと積極的だから驚いた。

「俺は、いすかをめんどくさいなんて思わない。」
気をつかって、後ろをほぐして来てる
と聞いて最初の内は、確かに
スムーズで良いかとも思ったが
今では、そればかりではない複雑な
気持ちも芽生えて来ていて
より、自分の厄介さが増した。

シーツの上に横たえた体は、
俺に背を向けている。
下着を脱がせながら、白い肌が
あらわにあるのを見ていると、下腹部に
熱が集まるのを感じた。

綺麗なヒップライン。
柔らかな丸みを撫でつつ、
指を奥まった蕾へと差し入れていく。
その度に、身体は敏感に戦慄いて
くぐもった声が、甘く変わり始めていく。

くちゅ、と湿った音が聞こえて来る。
中指はすんなりと、根元まで飲み込んでしまう。
中で指を掻き回すと
『っあ…、ッん…ぅ』
いすかは、タオルケットを掴んで
異物感に耐えている。

これが、推しの姿だなんて今でも
目眩を感じるくらいに刺激的だ。
ましてや、促す様に腰を揺らす隠微な
仕草を見せつけられると
良い年こいた大人が、焦ってしまいそうになる。

「まだだ、いすか…」
『っゃ…はやくぅぅ…』
発情期の雌猫を思い出す。
地面に伏して、悩ましい声を上げながら
腰を揺らすデジャヴ。

元の世界でもきっと、こんな風に
違う世界線の俺を誘ったんだろうと
いう事が分かる。

初めてとか、そうじゃ無い事に
今更気にもならないと思ってたが
相手は過去の自分となると
話は別だ。

心を許して、俺に満たされていたのかと
考えると…いすかは本当に
この松原若波という、存在を
愛しているのだろう。

涙声で、うっすら口を開けながら
負担の少ない体位で受け入れて行く
姿はどことなく切なくも思える。

熱くて、まだ狭く絡みつく
いすかの中で、ゆっくりと抽挿を
しだすと眉根をきゅぅっと寄せながら
甘えた声が、上がる。

『…ンっ…、…っねぇ……、ぇっちな…ぉと…してる…っんぁ…っ』
とろけた瞳が、体と一緒に揺すられて
可愛いって言葉なんかじゃ足りない。

まさかこの歳で、こんな若いのと
こんな関係になるとは思わなかったし
充分にいすかが満足するまでなら
付き合えるだろうけど。

「ほら、いすか…過去の俺と今の俺、どっちがヨクしてくれる?」
一旦動きを止めて、じっと
いすかを見つめる。

ゲスい質問。

ほら、いすかも困ってる。
…ってか乳首えっろ。
前も、そろそろ出したそうなのに
残酷な事するよな。俺も。

『そんなの、決められないよ…。俺はどっちの若波も大好きなんだもん。』
はぁー、クソ可愛い。

元の世界の俺をどれだけ搾り取ったのかって
聞いてみたくなる。
身体がしなやかで、柔らかいから
抱いててもあんまり違和感が無い。

側位とかも、あんまりキツそうじゃないし。
自分の快楽にとても素直で、
溺れそうになるくらい、いすかは
貪欲に求めてくれる。

「ビッチだと思ってたけど、俺にだけなら…許せるかもな。」
『俺はね、松原若波だけが好きなんだよ。どっちかなんて選べないよ。…軽蔑する?』

軽蔑かぁ…。まぁでも、清純なアイドル様って感じはそんなにしなかったと言うか。
飾らないいすかだから、
好きになるファンは多い。

素直で、正直、今も俺の目の前で
そうである様に。

また、ゆっくりといすかの腰を掲げ
律動をしていると、
少しずつ脚が開いていく。
そろそろか、と感じながら
何度も最奥をこそぐ様に突き上げた。

声も出さずに、いすかは身体を小刻みに
震わせながら吐精して、ベッドに身を預けながらしばらくそのままだった。

「いすか、大丈夫か?」
ぽやーっとしながら、いすかは俺の
覗き込んだ首に腕をまわして
キスをする。

こういう所が、愛しくてたまらなくなる。
舌が触れ合うだけで、ビクビクしてる癖に。
「なぁ、いすか。お前…俺と寝て小遣いでも稼ぐか?」

我ながら、鬼畜な思考。
『え…?どういう事?』
いすかの小さな胸の突起を軽く
引っ張りながら
「今働けてないだろ?だから、どうかと思って。」
問いかける。

精液まみれの下腹部も気に留めずに
いすかは、また簡単な快楽の手を取りかける。
『…どこまで、本気なの?若波』
気持ちよさそうな表情で、俺の肩に
なだれ込んでくる。

現役アイドルだったのに、
今じゃただの…
「どうする?いすか。」
『…絶対に、絶対にヤダ!』

いや、これで良い。
竹本いすかは、まだ堕ちてはいない。
だから面白い。

『俺が悪いの、スグに…その、エッチな方に行っちゃったから。そんなんじゃダメだよね。ちゃんと恋人としてお互いが、想いあってるのがいいよ。』
しまいには、泣き出したいすかに
さすがに、やり過ぎたか?と焦って
いすかの涙を手の甲で拭ってやる。

こんな事でも、いすかは嬉しそうに笑う。
泣いたり笑ったり、忙しい奴だ。
『恋した記憶が、今の若波に無いって言うなら…』
「ある、」
『え、あるの?!』
「あぁ、俺はあの日のオーディションでいすかに一目惚れしてた。」

いすかは、顔を真っ赤にして
何か言いたげだ。

『それは、俺だって同じだよ。』
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