眠れない夜は檸檬の香り

あきすと

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のぼせ。

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話が前後するので、ややこしいのですが




『え、石鹸で髪も洗ってたんですか…?』
白島は浴槽に身を沈めながら私の頭部を見ている。
「まぁ、慣れればそんなものだと。」
今でこそ、中性のシャンプーが出回って来たが。

背に腹は代えられない時もあったのは、仕方ない。
『はぁー、大変ですからね。船旅はそんな優雅なものでも無かったでしょうし。』
「でも、美味しい食事のせいで出航する前よりかは、いらないものが付いた気がする。」
腕や、肩を撫でながら白島を見やると何故か視線を逸らされてしまった。

『折れそうな細さだったから、丁度言いくらいだと思いますよ。』
「まぁ、またしばらくすれば…戻るだろうし。」
無遠慮な白島の視線が、私の鎖骨あたりを彷徨っている。
分かりやすいにも程がある。
『いやー、肌が真っ白だなぁって…俺は今年の夏結構焼けたんで。』
白島の腕には、うっすらと日焼けの跡があった。

あつい、あまり長風呂はできない体質で先に湯船から出て
「白島、貸してくれ。石鹸と…『良いですよ。』…ありがとう。」
頭がぼーっとしている。
手桶に湯を張って、髪をすすぎ少し掌に落としたシャンプーに湯を足して
よく泡立てる。すすいだ髪にシャンプーを馴染ませて驚いた。

いい匂いがする。

…これでは、白島と同じ匂いになってしまうじゃないか。
いや、考え過ぎだ。
白島も、鏡をはさんで向かい側に来て先に体を洗っている。
ちらっと見えた背中は、傷一つない綺麗な背中をしていた。

とある噂を昔、耳にした事があり白島の背には何かしらの
絵があるのではないか、と言われていたのだ。
私は、どうでもよくて話半分にさえも聞かなかった。
だから何だというのか?
と、言えればよかったが…聞かないフリをしているだけだった。


ドキッとする様な体の線、無駄の無い綺麗な筋肉がついていて
思わず、自分の体と比較してしまいそうになった。

無意味な事とは思いつつも。
『郁海、終わったら貸して。交換』
「!?この男は、何で今下の名前の呼ぶ?」
『え、別にいいじゃないですか。仕事中でも無いんだし。』
慌てて、シャンプーのボトルを白島に手渡すと
石鹸のケースごと渡された。

「…外で、その名を呼ぶな。馬鹿。」
この名前を不意に呼ぶ時の白島が、なんとなくズルい気がして
嬉しいような、もっと呼ばれてもいい気がするかと思えば
誰かに聞かれるのは、恥ずかしいと。
ほぼ同時に、浴室を出て脱衣所に戻る。
回ってる扇風機は、ほぼ無意味と言えるだろう。
ただぬるい風をかき回しているだけに思えた。

『真っ赤ですよ…、湯船結構熱かったですからね。』
「少し、休みたい」
白島は、着替えを済ませると私の顔を覗き込んで
『何か飲みますか?…と言っても甘いものしかないでしょうけど。』
「いい、いらない…。今甘いものだけは、勘弁してくれ。」
深呼吸をしてから、着替えをしつつ足元も少し怪しいのが
自分でも分かった。

『家、来てください。目と鼻の先だし。薬缶で沸かしたお茶くらいなら出せるんで。』
何とか着替えが終わって、暖簾を出ていくと虚脱感に襲われかける。
無意識に、前を歩く白島の白いシャツを掴んでいた。
『郁海…!』
あぁ、また白島が私の名前を呼んでいる。
頭が重い…。でも、体は一瞬にして軽くなった。

妙な浮遊感に襲われた。
耳もよく聞こえない気がした。
ガラガラと開く引き戸。私は、小上がりにゆっくりと降ろされて
白島は、湯呑にお茶を注いで戻って来た。
ぐでぐでになった私は、起き上がるのもしんどい。
「あつい…、」
もう、何度も言っている。
『水分が足りないんだろ、飲んで少し落ち着け。』
言われるがままに、お茶を飲んでみて少しだけ生き返った気がした。
「気持ちいい…」
『あぁ、冷たいんだろ?井戸水で冷やしてあったからな。』
「口の中、熱くて嫌だったんだ。助かったよ。ありがとう。」

白島は私の顔を見ながら、シャツの首元のボタンを外す。
『汗、まだ止まらないか?』
「もう、平気だ。…いいなぁ、白島の家。廊下で寝ていきたい。」
するっ、と白島の掌がシャツの中に入り込んで来て
『悪い、汗の確認してる。肌は冷たいな…。』
私の鼓動は、ただ煩くなっていくばかりだ。

「平気だよ。少し、落ち着かせてくれ。」
白島は、私の言葉をどう解釈したのか
『分かりました…。』
薄明りに、ゆっくりと白島の顔が照らされている。
紅顔の美少年、と言う言葉を思い出した。
きっと、私の知らない白島はそうだったに違いない。
他の誰もが持ち合わせない、独特の雰囲気に混じる男くささ、色気の
配分が絶妙なのだ。

異性も同性も惹きつけてしまう、罪深さ。とでも言うのだろうか?
何かに肯定する様に、目をつむる。
重なる唇が、心地よくてこのまま身を委ねたくなりそうだ。

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