【クソ彼氏から離れらんなくて⑭】お帰り、クソ彼氏。

あきすと

文字の大きさ
1 / 4

しおりを挟む



『お前の有休を俺にくれ。』
前々から、上司に有給消化を言い渡されて来たけど
まさか、朔にまで言われるとは。

俺が風呂上りに、冷蔵庫のミネラルウォーターのボトルを取って
飲んでいると朔がソファの前に膝を立てて座っているのを立ち上がった。

「やれないよ、朔ってちょいちょい休んでるの?お前仕事なのか休みなのか分かんないもんなぁ。」
『失礼な、ちゃんとほどほどに休んでるだけだし。そうじゃなくって…俺はお前とどっか旅行にでも行きたいだけ。』

タオルで髪を拭きつつ、朔のそばに立って
「珍しい事、言うなよなぁ。ビックリする。なんか、また朔が…居なくなるのかなって。」
朔の胸に寄りかかる。
ちゃんとすぐに、俺の背中には朔の手のひらの熱が伝わって来る。

『行きたい?俺と、2人で…』
ムカつくくらいにカッコいい。同じ男として、たまーにコンプレックスを刺激される。
でも、大好きだ。こんなおかしなイケメンなんて、そうそう居ない。
誰かに見つかったらどうしよう。

「行く。有給どうせたまってるから、いっぱい休む。」
『ぇ、あー…3日くらいでいいぞ?あとできれば、週末挟む形で頼むわ。』
「んー…分かった。で、いつがいいの?」
『お前の誕生日までには。』
「そう、結構長く見てんだね。まぁ、これから暑いしなぁ。」

朔の鼓動が聞こえる。力強くて、思わず顔を見上げてみた。
ばっちり目が合って、
「!?ぅわ…っ」
髪を拭いていたタオルで目隠しをされた。

ぁ……。
キスされてる。
首がつらい。けど、そんな事言えるわけが無いし
息も苦しい。顔が熱い。

朔が俺の後頭部を左手で支えながら、唇の隙間から舌を割り込ませる。
すんなりと侵入を許してしまうと、心のタガはあっけなく外れる。
耳たぶもふにふに触られて、ゾワゾワしっぱなし。
気持ちいいのを思い出させてくれるのは、いつも朔だ。

口内の粘膜を朔の舌先が繊細に撫でる様に、絶妙なくすぐったさで
頭がおかしくなりそうなもどかしさが悩ましい。
とろとろの唾液を飲みそこないかけて、目を見開いて朔の胸を押し返した。

危ない、危ない。

没頭するのもほどほどにしないと。
『水の味する。』
「水、味…?」
『うん。結構、俺は好き。生っぽい…渇きの味がする。』

朔って、たまに不思議ちゃんみたいな事を言う。
「朔は、まだ少し煙草の味…」
『辞める気無いもん。』
「でしょうね。」
『俺は、寂しいの。わざわざ、煙草買って火を点けて吸いたいんだよ。面倒なはずなのに、何でだろうね。』
「朔が、煙草吸ってる時は結構…落ち込んでる時な気がする。」

ニコ、と朔は笑って頷く。俺はソファーの上に座る。
朔は、その下に座った。

『何だろ、反応に困る時ってのが一番合ってるかな。』
「よく言うよね、手持ち無沙汰な人が。って」
『そんなもんだよ。ポケットに手も突っ込むじゃん?あれと一緒。』
「そういえば、今日で復縁?から2年経つわけだけど…どんな心境?」

朔は、少し考えてから
『復縁じゃない。俺はすぐに帰って来るつもりだったよ。』
「うん。まぁ、3年待ったけどさ」
『何にも変わらない自信があった。お前にも…自分にもな。』
「ぁー、言いたい事分かる。」
『だろ?そりゃぁ申し訳ないとは思ったけど。無駄じゃ無かったとも思う。』
「あの頃は、俺も働き始めて慣れるまで煮詰まってたからな。」
『俺も、早く帰って来たくて必死だった。お前に逢いたくて。』

急に改めて言われると、心が騒ぐ。
物腰のやわらかい朔が、俺の方を向いて話してくれる姿が好きだ。
3年馬鹿みたいに待つよ、そりゃ。
「許さない、って思う事もあった。…けど、朔の事を思い出す瞬間なんて無いほどに」
『想いっぱなしだった…?』

こんな時に頭を撫でて来る、無防備になってしまう。
また同じ時間を重ねられる喜びを、今は毎日感じている。

悔しさも無い。
ただ、俺の想いも少し朔に知ってて欲しい。
大きく頷いて、俺はたまらずに朔に抱き着いた。

『…央未、泣いてる?』

朔は快く笑って、俺の頭を撫でては抱き締め返してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...