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頬
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弟には、なるべくこの世界の綺麗なものだけを見ていて欲しいと
願って生きて来たのに。
まさか、それを俺が壊す事になるかもしれないなんて。
近頃の可愛さが酷くて、もういつ本人に打ち明けてもおかしくない
状況だ。
七夕まで、後数週間。俺をたきつける事が起きない事だけを願う。
商店街の七夕製作は、地域の人であれば気軽に参加できる。
俺は、委員会は外れたものの製作には携わっている。
七夕飾りは七月一日から七日まで飾られる。
最後の日には、花火が上がり露店も盛況する程に人は集まる。
ただ、俺や星明が顔を出すと地元の昔つるんでいた連中が
ちょっかいを掛けて来るから、正直うっとうしい。
でも、最終日に観に行かない代わりに存分に七夕気分を味わって欲しくて
星明を連れていくのだ。
念のため、長袖のジャージを指定して夕飯が終われば地元の
公民館まで歩いて行く。
親子連れが多い。自治会長さんや委員の人も多く参加して、軽く
挨拶をしてから、俺は笹に取り付ける飾りを用意する。
『…短冊はまだなんだね』
「まだあんまり、書いてないんだろうな。お子様優先で書いて貰ってはいるんだけど。」
『ウチの地域も、子供さん少ないからね。』
星明は、少しだけ寂しそうに笹を見つめて言った。
俺や、星明が子供の頃はまだ沢山地元にも、子供は多かった。
星明が飾りを折り紙で追加に作っていると、子供が数人集まって来た。
面倒見も良い、子供好きの星明はニコニコしながら机の上で
一緒に折り紙を折り始めた。
まぁ、俺は子供に嫌われやすいからな。寄っても来ない。
『おねーちゃん、ほらヤッコさん!』
『おー、上手、上手♪…俺、お兄ちゃんなんだけど~』
『えー?おねえちゃんじゃないの?かわいいのに?』
星明は子供相手に、赤面して笑っている。
『ちょっと、兄貴も来てよ…!』
様子を見ていた俺に痺れを切らした星明が、やって来た。
「俺は行かない~ちびっ子が俺を怖がるし」
『そんな事ないよ。ね、ほらー…』
俺の手を引いて、無理にでも連れて行こうとするけど俺は
首を横に振って断った。
「あ、加賀が来た。今日は非番かアイツ。」
『え、どこどこ?』
星明は、パッと手を離して玄関の辺りに見に行った。
「…ちっ、そんなに加賀が好きかよ。」
あーあ、なんか面白くないし先に帰るかな。
星明も、加賀が居るんならアイツの事だし家まで送ってくれんだろ?
『兄貴、ほら加賀さん来てくれた。』
これ見よがしに、加賀の横に立って嬉しそうにしてんじゃねぇよ。
なんて、口が裂けても言えないし。
俺は
「悪い、加賀。先帰るからさ。星明の事頼むわ。」
端的に伝えて、公民館を後にした。
背後から星明の声が聞こえた気がしたけど。
聞こえないフリをした。
家に帰って、シャワーを浴びた。
少しは頭の中もスッキリした。
珍しくムシャクシャするから、二階の物干しで窓を開けながら煙草を吸った。
乾ききってない髪に夜風が冷たい、冷える。
星明が、ちゃんとした奴を好きなのは理解できる。
堅実な方が良いに決まってる。
と、どうやら二人が帰って来たらしい。
星明は気づいてないけど。
家の中に入ったのを見届けてから、加賀は顔を上げて
『…話さないか?月夜。』
やっぱりな、言われると思った。
「上って来いよ。庭からまわれ。」
加賀は、俺の隣に来て煙草を差し出すとスッと手を伸ばし口にくわえて
俺が火を点けた。キン、と金属音がしてポケットにしまう。
『星明を、おもちゃにするな。』
「無理ー。だって、弄ばれてるのは俺だし。」
『せめて、いい兄のフリくらいしろ。お前の評判は半々だからな。』
「知ってる。俺も別に星明に意地悪したい気は全然無いよ。」
『俺はお前ら兄弟の味方だからな…』
「きゃ、加賀さん素敵…♡」
『茶化すな。まったく、世界にたった一人の弟を大事にできないなんて。』
「無理だよ、俺さぁ…星明にはマジだし。」
ふと隣を見ると、加賀は薄い笑みを浮かべていた。
『気づかないと、思ってたか?』
うそでしょ?
「もしかして、気づいてた…?加賀」
『なんとなく、そうなんじゃないかと思う事はあった。そうか…星明はいい子だから。
お前が特別に想うのは仕方ない。』
「改めて言われると、ハズいんですけど。」
加賀は、煙草の煙をくゆらせながら夜空を見上げた。
『良かったな。真剣になれる相手がいて』
「でも、弟だけど?」
『関係なかったんだろ、月夜にとっては。』
意外にも、責められずに済んだ事に安堵する。
『お前は、月だから…満ち欠けして、綺麗な部分ばかりを見せたい。そんな奴だから、
大変だろうけど。あんまり星明を泣かすなよ。』
「分かってる。後で、ちゃんと謝っておくし。」
加賀は煙草を吸い終えて、携帯灰皿に吸殻を始末した。
『体、冷えるぞ。そろそろ家の中に戻れ。俺ももう帰る。』
「加賀…ありがとうな。」
やんわりと手を振って、加賀を見送る。
すっかり体が冷えてしまった。
温かい飲み物を淹れようとして台所に行こうとすると
『…っ…く…、』
「!?」
何か、泣いてる?星明。そういえば、あんまり泣かすなよって…言われたな。加賀に。
そういう事か。
どうすんのコレ、めちゃくちゃ気まずいし。
とりあえず、お湯を沸かそう。
電気ケトルだから、あっと言う間に沸きあがった。
たしか、星明の好きなハーブティーがまだあったから。
2人分淹れてみた。
カモミールティか、これ確かリンゴの香りがするんだよな。
星明の背後に立って、抱き締めたい衝動に駆られたけど耐えながら
「さっきは、ごめんな。」
こんな思い言葉は久し振りで。
胸が苦しい。星明は、きっともっと苦しいんだろうな。
『俺の事、嫌いなんでしょ…っ、無視までして…』
泣きながら振り返った星明の目も頬も赤くて、俺まで哀しくなりそうだ。
そんな訳あるか!と言えたら楽だろうに。
言い返せない。ただ、俺は屈んでぎこちなく抱き締めるしか出来ない。
『俺は、兄貴しか…好きじゃないのに…』
「!?」
簡単に言ってる感じでもなさそう?
ちょっと、疑いながら星明を見つめる。
『ほんと、だよ…?』
柔らかく微笑んで星明は俺の口元にキスをして来た。
「ふふっ、ね…、嘘じゃないよ。」
やばーー-こんな可愛いのに、俺が耐えれる訳無いし。
今にも瞳から零れ落ちそうな涙が、とにかく綺麗で愛おしくて
俺は、自分からも星明にキスを返した。
唇を外す事は出来なくて、星明は耳まで真っ赤にさせながら
受け入れてくれた。
願って生きて来たのに。
まさか、それを俺が壊す事になるかもしれないなんて。
近頃の可愛さが酷くて、もういつ本人に打ち明けてもおかしくない
状況だ。
七夕まで、後数週間。俺をたきつける事が起きない事だけを願う。
商店街の七夕製作は、地域の人であれば気軽に参加できる。
俺は、委員会は外れたものの製作には携わっている。
七夕飾りは七月一日から七日まで飾られる。
最後の日には、花火が上がり露店も盛況する程に人は集まる。
ただ、俺や星明が顔を出すと地元の昔つるんでいた連中が
ちょっかいを掛けて来るから、正直うっとうしい。
でも、最終日に観に行かない代わりに存分に七夕気分を味わって欲しくて
星明を連れていくのだ。
念のため、長袖のジャージを指定して夕飯が終われば地元の
公民館まで歩いて行く。
親子連れが多い。自治会長さんや委員の人も多く参加して、軽く
挨拶をしてから、俺は笹に取り付ける飾りを用意する。
『…短冊はまだなんだね』
「まだあんまり、書いてないんだろうな。お子様優先で書いて貰ってはいるんだけど。」
『ウチの地域も、子供さん少ないからね。』
星明は、少しだけ寂しそうに笹を見つめて言った。
俺や、星明が子供の頃はまだ沢山地元にも、子供は多かった。
星明が飾りを折り紙で追加に作っていると、子供が数人集まって来た。
面倒見も良い、子供好きの星明はニコニコしながら机の上で
一緒に折り紙を折り始めた。
まぁ、俺は子供に嫌われやすいからな。寄っても来ない。
『おねーちゃん、ほらヤッコさん!』
『おー、上手、上手♪…俺、お兄ちゃんなんだけど~』
『えー?おねえちゃんじゃないの?かわいいのに?』
星明は子供相手に、赤面して笑っている。
『ちょっと、兄貴も来てよ…!』
様子を見ていた俺に痺れを切らした星明が、やって来た。
「俺は行かない~ちびっ子が俺を怖がるし」
『そんな事ないよ。ね、ほらー…』
俺の手を引いて、無理にでも連れて行こうとするけど俺は
首を横に振って断った。
「あ、加賀が来た。今日は非番かアイツ。」
『え、どこどこ?』
星明は、パッと手を離して玄関の辺りに見に行った。
「…ちっ、そんなに加賀が好きかよ。」
あーあ、なんか面白くないし先に帰るかな。
星明も、加賀が居るんならアイツの事だし家まで送ってくれんだろ?
『兄貴、ほら加賀さん来てくれた。』
これ見よがしに、加賀の横に立って嬉しそうにしてんじゃねぇよ。
なんて、口が裂けても言えないし。
俺は
「悪い、加賀。先帰るからさ。星明の事頼むわ。」
端的に伝えて、公民館を後にした。
背後から星明の声が聞こえた気がしたけど。
聞こえないフリをした。
家に帰って、シャワーを浴びた。
少しは頭の中もスッキリした。
珍しくムシャクシャするから、二階の物干しで窓を開けながら煙草を吸った。
乾ききってない髪に夜風が冷たい、冷える。
星明が、ちゃんとした奴を好きなのは理解できる。
堅実な方が良いに決まってる。
と、どうやら二人が帰って来たらしい。
星明は気づいてないけど。
家の中に入ったのを見届けてから、加賀は顔を上げて
『…話さないか?月夜。』
やっぱりな、言われると思った。
「上って来いよ。庭からまわれ。」
加賀は、俺の隣に来て煙草を差し出すとスッと手を伸ばし口にくわえて
俺が火を点けた。キン、と金属音がしてポケットにしまう。
『星明を、おもちゃにするな。』
「無理ー。だって、弄ばれてるのは俺だし。」
『せめて、いい兄のフリくらいしろ。お前の評判は半々だからな。』
「知ってる。俺も別に星明に意地悪したい気は全然無いよ。」
『俺はお前ら兄弟の味方だからな…』
「きゃ、加賀さん素敵…♡」
『茶化すな。まったく、世界にたった一人の弟を大事にできないなんて。』
「無理だよ、俺さぁ…星明にはマジだし。」
ふと隣を見ると、加賀は薄い笑みを浮かべていた。
『気づかないと、思ってたか?』
うそでしょ?
「もしかして、気づいてた…?加賀」
『なんとなく、そうなんじゃないかと思う事はあった。そうか…星明はいい子だから。
お前が特別に想うのは仕方ない。』
「改めて言われると、ハズいんですけど。」
加賀は、煙草の煙をくゆらせながら夜空を見上げた。
『良かったな。真剣になれる相手がいて』
「でも、弟だけど?」
『関係なかったんだろ、月夜にとっては。』
意外にも、責められずに済んだ事に安堵する。
『お前は、月だから…満ち欠けして、綺麗な部分ばかりを見せたい。そんな奴だから、
大変だろうけど。あんまり星明を泣かすなよ。』
「分かってる。後で、ちゃんと謝っておくし。」
加賀は煙草を吸い終えて、携帯灰皿に吸殻を始末した。
『体、冷えるぞ。そろそろ家の中に戻れ。俺ももう帰る。』
「加賀…ありがとうな。」
やんわりと手を振って、加賀を見送る。
すっかり体が冷えてしまった。
温かい飲み物を淹れようとして台所に行こうとすると
『…っ…く…、』
「!?」
何か、泣いてる?星明。そういえば、あんまり泣かすなよって…言われたな。加賀に。
そういう事か。
どうすんのコレ、めちゃくちゃ気まずいし。
とりあえず、お湯を沸かそう。
電気ケトルだから、あっと言う間に沸きあがった。
たしか、星明の好きなハーブティーがまだあったから。
2人分淹れてみた。
カモミールティか、これ確かリンゴの香りがするんだよな。
星明の背後に立って、抱き締めたい衝動に駆られたけど耐えながら
「さっきは、ごめんな。」
こんな思い言葉は久し振りで。
胸が苦しい。星明は、きっともっと苦しいんだろうな。
『俺の事、嫌いなんでしょ…っ、無視までして…』
泣きながら振り返った星明の目も頬も赤くて、俺まで哀しくなりそうだ。
そんな訳あるか!と言えたら楽だろうに。
言い返せない。ただ、俺は屈んでぎこちなく抱き締めるしか出来ない。
『俺は、兄貴しか…好きじゃないのに…』
「!?」
簡単に言ってる感じでもなさそう?
ちょっと、疑いながら星明を見つめる。
『ほんと、だよ…?』
柔らかく微笑んで星明は俺の口元にキスをして来た。
「ふふっ、ね…、嘘じゃないよ。」
やばーー-こんな可愛いのに、俺が耐えれる訳無いし。
今にも瞳から零れ落ちそうな涙が、とにかく綺麗で愛おしくて
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