転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

文字の大きさ
68 / 324
第2巻第3章 キサラギ亜人王国戦争

レオノルの目的

しおりを挟む
 しばらく黙っていたレオノルはゆっくりと口を開いた。

「いつから気がついていたんですか?」
 
「最初から、かな。最初にあったとき、レオノルさんの胸元から黒いもやが出てるのが見えたからね」

「魔眼、ですか……」

「そう。まあ魔石に由来する魔力しか見えないっぽいけどね」

 それでも十分珍しく強力な能力なのだが、今のレオノルにそれを指摘する余裕はない。

 今はとにかく、自分がダークエルフのだということを隠していた理由をなんとかごまかさなければいけないのだ。

「ダークエルフだということを隠していたことは謝ります。ですが、私には目的なんてありませんよ。亜人の国ができたと聞いたから移住してきただけです」

「本当に?」

「本当です」

「じゃあなんでダークエルフだってことを隠してたのかな?」

「ダークエルフは忌み嫌われているからです」

「そうらしいね。でもさ、うちにはオリガがいるよね。それも、国王である私の側近として。そんな国でダークエルフだってことを隠す必要なんてあるのかな?」

「それは……」

「もう一つ聞かせてほしいんだけど、レオノルさんって、生まれついてのダークエルフじゃないよね?」

「どうしてそう思うんですか?」

「簡単だよ。ダークエルフが自然に生まれるなんめったにあることじゃない。だから生まれたら絶対話題になってるはずだけど、オリガ以外のダークエルフのことを、エメリンさんは知らなかった」

「確かにエメリンさんは物知りかもしれませんが、だからといって全てにダークエルフのことを知っているわけでは……」

「確かにそうだろうね。でも、自分と同い年くらいのダークエルフがいて、それを全く知らないっていうのは流石にないんじゃない?」

 マヤの見たところ、エメリンとレオノルの年齢はほぼ同じくらいに見える。

 エメリンがどれだけ若作りで、レオノルがどれだけ老けていたとしても、2人の年の差は大して大きくないだろう。

「…………それは……そうかもしれませんが……」

「でしょう? それに、エルフの森を出ていったエルフって言うともっと少ないよね。その中にダークエルフがいれば、絶対誰か覚えてると思うんだよね。でも、誰もオリガ以外のダークエルフのことは知らなかった」

 ちなみにジョセフも後天的なダークエルフだが、村長が操られていた、という情報だけでも衝撃的なのに、ましてやダークエルフでした、などと言っては余計に村が混乱するので、ジョセフがダークエルフだということは一部の人間しか知らない。

「だからたぶんだけど、レオノルさんってハーフエルフ何じゃない?」

「はあ……よくわかりましたね。ただの女の子だと思って油断してました」

「はははっ、ただの女の子だよ、私なんかさ。それにしても、やっぱりハーフエルフだったんだね」

「そうですよ。ハーフエルフでダークエルフなのが今の私です」

「色々属性てんこ盛りだ」

「なんですかそれ……。それで、これから私をどうしようって言うんです?」

 レオノルの問いに、マヤはシロちゃんを止めると、その背から降りてレオノルの正面に立った。

 マヤに合わせて、レオノルもシロちゃんから降りてマヤの正面に立つ。

「レオノルさんにやりたいことがあるならやってみるといいよ」

「どういうこと、ですか?」

 レオノルの前で両腕を広げたマヤに、レオノルは訝しげな表情を浮かべる。

「そのまんまの意味だよ。何がしたいのか知らないけど、私が目的なんでしょう?」

「どうして、そう思うんです?」

「はあ、ここまでチャンスをあげたんだから、素直にやっちゃえばいいのに……しょうがないから教えてあげるよ、って言っても、レオノルさんも予想は付いてるんだろうけど」

 マヤは腕を組むと、レオノルへと近づいて、その瞳の中を覗き込むように腰を折った。

「ねえ、見てるんでしょ、ベルフェゴールさん? まあ、私と同じなら声は聞こえてないんだろうけど、魔王なら読唇術くらいできるよね?」

 自分の眼を通してベルフェゴールを、自分の主を覗き込むマヤに、レオノルは思わず顔を背ける。

「…………やはり、気がついていたんですね」

「まあね。ジョセフのこともあったし」

 マヤはくるりと回れ右すると、レオノルから離れて再びレオノルに向き直る。
 
「じゃあ改めて言うよ。レオノルさんのしたいことでも、ベルフェゴールにやるように言われたことでも、やりたいこと、やっていいよ」

「私、は…………っ!?」

 レオノルがなにか言いかけた時、その体が突然強化魔法の光に包まれ、えぐる勢いで地面を蹴ったかと思うとマヤへと肉薄する。

「わわっ!」

 マヤは慌てて飛び退ると、もともとマヤがいた場所に大きなクレーターができていた。

「いきなりだね。この感じ、もしかしてベルフェゴールが操ってるのかな」

「ご明察だ、亜人の王」

「はじめまして、ベルフェゴール。初めての対面が魔人越しだなんて、なんだか不思議な気分だね」

「貴様ごとき、私が直接出向くまでもない。こいつで十分だ」

「ふーん、そうなんだ。その言葉、後悔しないといいけどね! シロちゃん!」

 マヤは出したままにしていたシロちゃんに強化魔法をかけると、そのまま近くに呼び寄せる。

 一瞬でマヤのもとに駆けつけたシロちゃんに乗ってその場を飛び出すのと、マヤがいた場所にレオノルの魔法が炸裂したのがほぼ同時だった。

「シロちゃん、みんな、行くよ!」

 マヤはシロちゃんに乗ってレオノルの攻撃を避けながら、腕輪を使って次々に魔物を呼び出していく。

「なるほど、これが噂の白い魔物か。確かに凄まじい魔力だ」

「そうでしょうとも。それでどうする、降参する?」

「この程度で魔王たる俺が降参するわけがないだろう? レオノル、後はお前がやれ」

 レオノルの体から一瞬力が抜けると、すぐに顔を上げたレオノルと目があった。

「わかり、ました、ベルフェゴール様」

「なに、逃げるのベルフェゴール? ねえレオノルさん、レオノルさんはさ、それでいいの?」

「いいん、です。これで、いいんですっ!」

「うおっ! 今のは危なかったー……」

 やけになったような言葉とは裏腹に、予備動作のわかりにくい動きと、ベルフェゴールに操られていた先ほどまでとは段違いの鋭さで迫ったレオノルの手刀を、マヤはギリギリのところで回避する。

(なるほど、ベルフェゴールが引いたのはこういうことか……)

 ベルフェゴールは逃げたのでも諦めたのでも手を抜いたのでもなかったのだ。

 レオノルの体をレオノルが使ったほうが強いと判断したから、レオノルの体から離れただけだったのだ。

「なるほど、これは殺さずに倒すのはちょっと難しいかな?」

 正直なところ、自分へ強化魔法をかける、という切り札を得たことで、何でもできる気でいたマヤは、ここに来てようやく、自分のあまりにも楽観的すぎる見立てを少し後悔したのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...